(太田光)で、言ってみればフジテレビの不祥事ではあるわけですね。そこで「触れてほしくないな」っていう気持ちは十分わかるんだけど……我々としてもこれ、ネタを提出して。「いや、これをNOとは言えないよね?」みたいなところもあるわけですよ。ただ、そこで言ってみればあの時……あのネタってね、あそこだけ切り取られるけど、あれはあの後の本ネタに対するフリなんですよ。要するに俺がワーッとめちゃくちゃなことを言って。で、その後のネタで昭和と令和の違いについて「昭和はみんなタバコを吸っていた。信じられないってゆうちゃみが驚く。そんな番組、いっぱいやってますよね?」っていう話で。
「でも今、令和だっつってもこれから10年、20年したらまた時代が変わって。今度、今のものが非常識になるんだろう。その頃の番組っていうのはまさに今日のこの我々のネタをVTRで流して。『昔、令和の時代っていうのは正月早々、こんな不謹慎なネタをやってたんですね』ってやって若いタレントが『えええーっ!?』って言ったら年取ったゆうちゃみが『爆笑さんじゃーん! 懐かしいのう……』って。まだ出てんのか!」みたいな。っていうフリなんですよ。そのために、言ってみれば大きな劇中劇みたいなことで言うと、最初に我々が不謹慎であればあるほど、そこに効いてくるっていう構成になっているんですよ。こんなことは説明するのは野暮ですけど。
言ってみればそういうためのフリだから、あそこはできるだけみんなが引くぐらい不謹慎なことをやって。「令和の時代はこれが通ってたんだね」っていうところに繋げるっていうネタなんですけど。それでもまあ、フジテレビに提出したり。提出したのはこの際だから言いますけども。「『だれかtoなかい』に代わって【だれかtoだれか】という新番組が始まる。みんな、いなくなっちゃうよ」っていう。そこまでは書きました。で、それを秋葉に提出させて、それが通りました。フジテレビにね。だけど僕は実は「日枝、出てこい! Aプロデューサーって誰!?」っていうのは誰にも言わずに……。
(田中裕二)フハハハハハハハハッ!
「日枝、出てこい! Aプロデューサーって誰!?」は誰にも言ってなかった
(太田光)これはね、たまにあるんです。滅多にないです。これは皆さん、私達を信じてください。私達はそんな危ないタレントではありません。ただし、私はたまーに、これはその場まで言うか言わないか決めずに出ることがあるんです。危険なタレントですよね? そういう意味では。だけども、あの時はこれ、思いついちゃってはいたんです。だけどお前にも一切、言ってなかった。
(田中裕二)だから俺はびっくりしたからね。「こいつ……」って思ったから。あの時、わからないけど俺、相当突っ込んでますよ? お前のことを。本当に。「バカじゃねえか?」っていうくらい。
(太田光)1回、昔そういうことをやってフレームから外れたことがあるんですよ。田中、」突っ込みじゃなくて突き飛ばしたんですからね。だからああいうのは生放送のトーク中は全部、アドリブですからあれですけども。だけど漫才にはおいてはめったにないんですけども。まあ「日枝、出てこい! Aプロデューサーって誰?」っていうのは俺はもう本当に舞台に上がるまで、言うか言わないかは決めてなかったです。
で、この番組をずっと聞いてくれてる人は分かると思うんだけどあの元旦の大晦日から年明けて一発目のカーボーイ。バッテリィズやアルコ&ピースが来て。あとネコニスズとか。あれ、生放送だったでしょう? で、その日の昼間、ずっと『爆笑ヒットパレード』のネタの練習をしてて、そのまま、それでもずっと考えながら。今の世の中の雰囲気とか。やっぱり漫才ってコミュニケーションですからね。お客さんと世の中との。「これ、どうだろう? どういう感じ、雰囲気だろう?」っていうのは見てるわけですよ。
そんな中、僕はあの日の放送で『爆笑ヒットパレード』を自分がいかに愛してるか?っていうのを長々と語ってるんです。それはもう、言ってみれば子供の頃、家で元旦にあれがやっていて。憧れの南伸介さんが司会してた頃があって。そこから漫才ブームが始まって。要するにたけし、さんま、タモリのビッグ3の時代で。高田文夫先生や三宅さんがやって。山藤先生が題字を書いてっていうので。「本当に俺にとっては特別な番組です」っていうのを割と笑いも抜きで滔々とたぶん話したと思うんですよ。その時に私が内心、思っていたのは「俺は数時間後、その『爆笑ヒットパレード』を壊してしまうかもしれない」っていう。
(田中裕二)フハハハハハハハハッ!
(太田光)だから先に愛情を言っておきたいっていう。
(田中裕二)そんなん、伝わんないよ(笑)。
「俺は数時間後、『爆笑ヒットパレード』を壊してしまうかもしれない」
(太田光)伝わらないですよ。もちろん、それはわかっているけれども。俺はもしかしたら「日枝、出てこい!」って言っちゃうかもしれない。だけど俺、本当に大好きな番組なんだっていうことはここの番組のリスナーには遺言のように言っていたんです。で、ずっとその話をしたと思うんですよ。その時にも「明日、どうするかな?」っていうのは考えていたんですよね。
それで結局、やっちゃって。要はそうするとね、俺は何を考えたか?っていうと現場のスタッフがあのネタまで、日枝さんの名前を出すことまでは通せないだろうなっていうのはちょっとあったんですよ。で、それを通した場合、彼らがどうなるんだろう?っていうのもあったわけです。だからこれはもう、社長に怒られようが、何だろうが俺1人の判断にしなきゃダメなんですよ。ああいう時って。まあ、かっこつけてるわけじゃないですよ。
でも、そういうことってたまにあるんです。だから、とんでもないことになることが多いんですけども。それでやって、まあ案の定、大騒ぎになりますよね。でも僕は一言言いたいのは放送に一番最初に乗っけたのは沢田幸二です。これだけは言いたいんですけど。九州の『PAO〜N』の沢田幸二はもう暮れの時点で言ってました。女性セブンが出た時点で。「沢田幸二、何を言うかな?」と思ってたら「中居正広が……」っていきなり言ってましたから。まあ、沢田幸二が一番悪いと思いますよ。私は。
太田さんの「日枝、出てこい!」発言に至るまでの逡巡がすごく伝わってくるトークでしたね。ラジオを聞いていると太田さんがどれだけ『爆笑ヒットパレード』に思い入れがあるかは伝わってきていましたし、そんな中でもいろいろと思い悩んだ末でのぶっこみだったと考えると、あのネタの見え方がまた違ってくるかもしれないなと感じました。
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