町山智浩 山本弘『宇宙はくりまんじゅうで滅びるか?』を語る

町山智浩 山本弘『宇宙はくりまんじゅうで滅びるか?』を語る こねくと

町山智浩さんが2024年6月4日放送のTBSラジオ『こねくと』の中で山本弘さんの著書『宇宙はくりまんじゅうで滅びるか?』についてトーク。かつて、山本弘さんに救われたという自身の体験を話していました。

(町山智浩)今日はちょっとやることがいっぱいあって。どんどん行きたいんですけども。プレゼントがあります。本を2冊、僕が出すので。同時ですよ。今週、同時発射なんで。1冊目がですね、『ブレードランナーの未来世紀』という本なんですが。朝日文庫から今週金曜日発売なんですが。これね、実は20年前に書いた本なんですよ。

(石山蓮華)そうですよね。この『〈映画の見方〉がわかる本 ブレードランナーの未来世紀』っていう。「あれ? 私、このタイトルの、家にあるな?」って思って。

(町山智浩)ああ、素晴らしい! ありがとうございます。

(石山蓮華)そういう風に思ったんですが。

(町山智浩)もうね、20年前に書いたんですけど。1回、新潮文庫から出て。今回また、朝日文庫から出るんですけど。なんか意外とロングセラーになってるというね。で、これどういう本か?っていうと、『ブレードランナー』っていう1980年代の映画があるんですね。で、それは未来のロサンゼルスが舞台なんですけれども。とにかく世界に衝撃を与えて。なぜか?っていうと、未来のロサンゼルスは日本語だらけなんですよ。日本語の広告がもう、そこら中にネオンで出ていて。その頃はね、日本がね、経済でアメリカを支配すると思われていたんですよ。

(石山蓮華)ねえ……。

日本が経済でアメリカを支配すると思われていた1980年代

(町山智浩)僕は真剣に思ってましたが。ならなかったですね。どうしてそうなっちゃったんだろうか?って思いますが。その頃、1980年代に映画の中で創造された様々な未来社会とか、新しいテクノロジーとか、そういったものを論じた映画を集めた評論集なんですね。たとえばAIの問題とかね。人の心を人工で作った場合に、一体何を人間とするのか?っていう問題ですね。そういったことを論じた本なんですけれども。これがまた出ますので。まず『ブレードランナーの未来世紀』が1冊で。もう1冊、ありまして。それは僕の著書ではないんですが。山本弘さんというSF作家のSFで『宇宙はくりまんじゅうで滅びるか?』っていうタイトルなんですよ。

(でか美ちゃん)面白いタイトル!

(町山智浩)これはね、『ドラえもん』の中で栗まんじゅうを倍に増やしていくというエピソードがあったの、覚えてますか?

(石山蓮華)ああ、バイバインですよね?

(町山智浩)そう。バイバイン! でね、最初はひとつの栗まんじゅうを二つに増やすんですけど。次は四つになるんですよ。で、それがさらに倍になって八つになって……っていうので、無限に増えていく。それで大変な事態になっちゃうという話があるんですけど。あれは結局、その増え続ける栗まんじゅうを宇宙に飛ばして捨てちゃうんですけども。ドラえもんの話の中だとね。で、それが永遠に増え続けると、宇宙が消滅しちゃうんじゃないか? 栗まんじゅうに飲み込まれるんじゃないか?っていうことを徹底的に科学的に考えたエッセイなんですね。

(石山蓮華)うわっ、面白い!

(町山智浩)たとえば栗まんじゅうがものすごい数になると、それ自体に重力が発生するんですよ。

(でか美ちゃん)ああ、そうですね。たしかに。

(町山智浩)そういう話を書いていてですね。これ、著者の山本さんはSF作家なんですが、先日亡くなりまして。実は僕、山本さんに救われた体験があるんですよ。僕ね、宝島社という会社にいたんですけれども。社長に逆らってばっかりいたんで、子会社に左遷されてまして。洋泉社っていう子会社に左遷されて。20代の終わりに。そしたらその会社がね、もう全然経営がうまくいかなくて、本当につぶれる寸前だったんですよ。それで「どうしよう?」っていうことになって。その時に山本さんにお願いして。山本さんがやっていた「と学会」という学会がありまして。そこが「トンデモ本」っていうのを研究してたんですね。トンデモ本っていうのはUFOとかね、ネッシーとか、ノストラダムスの大予言とか。もう知らないと思いますが。

(でか美ちゃん)いや、知っています(笑)。

(町山智浩)ああ、知ってます?

(でか美ちゃん)ギリ、そういうのを見ていた世代ですよね。UMAとか。

(町山智浩)本当? 何年生まれでしたっけ?

(でか美ちゃん)91年、92年だから。

(町山智浩)でもそれ、「1999年に地球は滅びる」という説ですよ?

(でか美ちゃん)だから、小学生の時にちょっとびびってたよね?

(石山蓮華)そうです。小学生の時に「あれ? 私、大人までは生きられるかな? どうかな?」と思ってました。

(町山智浩)ああ、そうか。それは深刻だ(笑)。

(でか美ちゃん)テレビとかでも全然、やってましたもんね。そういうバラエティが平気で流れてた時代でもあったから。

(町山智浩)そうか。僕はね、その時はもうアメリカに渡ってたんですけど。アメリカでは何の話題にもなってなかったんですね。日本人だけですよ、騒いでいたのは。で、そういうノストラダムスの大予言とか、そういうことを書いた本のことを「トンデモ本」と呼んでまして。それがいかにインチキか?ってことを笑い飛ばすっていうことをやっていたのがと学会なんですよ。「トンデモ本学会」ですね。で、その山本さんが会長をしていて、その本を僕が左遷された先の潰れそうな会社で出させてもらって。それが大ベストセラーになりましてですね。何十万部、売れたかな? 会社が一瞬で立ち直りました。

(でか美ちゃん)すごい。ドラマみたいな話ですね。

(石山蓮華)立役者ですね。

(町山智浩)誰か、ドラマにしてよ?(笑)。

(でか美ちゃん)アハハハハハハハハッ! 誰か、実写化して?(笑)。

と学会本で潰れかけの洋泉社が立ち直った

(町山智浩)本当に、東芝劇場とか……東芝劇場はもうないか。日曜日9時のTBSドラマでドラマ化してくんねえかな?って思いますけども(笑)。

(石山蓮華)見たいですね。と学会物語。

(町山智浩)ねえ。典型的な池井戸潤の世界じゃないですか、それ。

(石山蓮華)そうですね。だいぶサブカル池井戸潤みたいな感じですね(笑)。

(町山智浩)本当にもう、その会社に飛ばされた時にお金が一銭もなくて。その会社。原稿料も払ってなかったんで。「これ、どうなっちゃうんだろう?」と思って。でも一瞬で、立ち直ったんですけど。そういうことで山本さんにはいろいろお世話になってまして。なんで僕がこの本プレゼントがするか?っていうと、この『宇宙はくりまんじゅうで滅びるか?』であとがきを書いてるんですよ。

(石山蓮華)ああ、そうなんですか。

(町山智浩)解説をしてまして。山本さんとの馴れ初めじゃないな。あの人と結婚してないから(笑)。

(でか美ちゃん)それぐらい仲良しのね。

(町山智浩)そうそう。どういう風に出会ったかとか。あと山本さんっていうのはいかに素晴らしい作家だったのかという……本当にあったかい人だったんですね。やさしい人で。山本さんの素晴らしさとかを追悼していますんで、ぜひお読みいただきたいということで。この2冊を同時プレゼントします!

(でか美ちゃん)ありがとうございます!

(石山蓮華)ということで、町山さんのご著書『〈映画の見方〉がわかる本 ブレードランナーの未来世紀』。こちら朝日新聞出版から出ております。税込1089円。そしてもう1冊、『宇宙はくりまんじゅうで滅びるか?』。山本弘さんのご著書。河出文庫から出ております。税込1078円。こちらの2冊をセットにして5名のリスナーさんにプレゼントをいただけるということで。町山さん、ありがとうございます。

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<書き起こしおわり>

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