町山智浩 映画『テトリス』を語る

町山智浩 映画『テトリス』を語る こねくと

町山智浩さんが2023年4月4日放送のTBSラジオ『こねくと』の中でApple TV+で配信中の映画『テトリス』を紹介していました。

(石山蓮華)よろしくお願いします(笑)。あの町山さん、おすすめの映画をご紹介いただきたいのですが。今日は、どんな作品でしょうか?

(町山智浩)今日はね、ファミコンってわかります?

(石山蓮華)はい、わかります。

(でか美ちゃん)わかります、わかります。

(町山智浩)でも、ファミコンってなくなったのって90年代半ばぐらいですよね?

(でか美ちゃん)物心ついた時に、最初に九つ上の兄と一緒にやったゲームは、スーパーファミコンでしたね。スーファミ。スーファミはめちゃめちゃちゃんと記憶にあるんですけど。その元のファミコンは、なんだろう? 展示とかでしか見たことないです。

(石山蓮華)そうですね。

(町山智浩)ああー。ゲームはなにをやりました?

(でか美ちゃん)私はね、『ドンキーコング』をやってました。あと『ボンバーマン』。

(町山智浩)じゃあ、それぐらいは大体ギリギリわかるんですね。『いっき』とかはわかります?

(石山蓮華)『いっき』?

(でか美ちゃん)ええと、命のことですよね。1機、2機みたいな。

(石山蓮華)ああ、インベーダーとかがピヨピヨピヨッて行った後の命の数というか? 飛行機の数?

(町山智浩)いや、惜しいな。『いっき』っていうのはね、百姓一揆なんですよ。

(石山蓮華)えっ、そうなんですか?

(町山智浩)百姓一揆ゲームっていうのがあったんですよ。

(でか美ちゃん)へー!

(町山智浩)一揆。お米が取れなくなって、農民が一揆を起こすんですよ。で、鍬とかを持って暴れて、地主とか襲ったりするんですよ。

(石山蓮華)ゲームの中で?

(町山智浩)ゲームで。ファミコンですよ。

(でか美ちゃん)それが、流行っていたんですか?

(町山智浩)めちゃめちゃ流行って。もうみんな『いっき』をやっていましたよ。もうみんな、「イッキ! イッキ!」って。とんねるずも歌っていましたよ。

(石山蓮華)えっ、でもどこまでが本当か、わからない……(笑)。

(町山智浩)自分でもよくわかってないですね(笑)。で、今回はゲームの話で、『いっき』は置いておいて。『テトリス』っていう映画です。

(でか美ちゃん)『テトリス』?

(町山智浩)『テトリス』、わかりますよね? 『テトリス』は、やってた?

(石山蓮華)やってました。

(でか美ちゃん)でも、ファミコンとかじゃなくて。ちっちゃい、その手持ちできるキーホルダーサイズのやつでやってましたね。

(石山蓮華)ああ、そうですね。ピコピコと。

(町山智浩)うわっ、すごいなー。すごいちっちゃいやつですね、それはね。

(石山蓮華)白黒の液晶みたいな。

(町山智浩)最初、ゲームボーイでね、すごく流行ったんですよ。で、今回『テトリス』の映画化なんですよ。

(石山蓮華)『テトリス』って、映画になるんですか?

(町山智浩)ねえ。だから巨大なブロックが宇宙から迫ってくるんですよ。ブワーッて。それを1個1個ね、かわしていくっていう作品なのかな?って思ったんですけど、そうじゃなかったですね。今ね、Apple TV+っていうところで配信されて、もう既に日本で見れるようになってる映画で。『テトリス』というゲームの商品化権を取るまでの話です。

(石山蓮華)へー! 実際にあったお話なんですか?

『テトリス』の商品化権交渉を描く

(町山智浩)実際にあった話ですね。これね、『テトリス』っていうゲームはソ連製なんですよ。

(石山蓮華)そうなんですか。

(町山智浩)そうなんです。1984年にソ連で開発されたんですけども。そうか。ソ連という国が昔、あったんですよ。

(石山蓮華)それは知ってますよ、町山さん!(笑)。

(町山智浩)でも、生まれないでしょう?

(でか美ちゃん)私は生後何ヶ月かとかだと思います。ギリ、生まれてます。たぶん。

(町山智浩)ああ、1991年ね。やたらとすごい厳しい国でね。もう毛が生えている人を許さないんですよ。それでこうやって、剃りに行くんですよ。「剃れん、剃れん」ってね。そういう国だったんですけども。「その角度だと、剃れない!」っていう、そういう国だったんですけどもね。

(でか美ちゃん)フフフ(笑)。町山さんって、こんな顔で笑うんだ(笑)。

(町山智浩)いい加減なことを言っているだけですけども(笑)。そのソ連で開発されたんで、そのゲームの著作権を取るのが大変だったんですよ。というのは、ソ連には著作権というものは存在しなかったんです。

(石山蓮華)へー! どうやって、そのないものを買うんですかね?

(町山智浩)そう! そういう話なの。要するに私的財産というものをソ連は共産主義だから否定してたんで。それを買いに行くんだけども。そもそも「ゲームの権利を買いに来た」っていうこと自体が、理解されないっていう話なんですよ。

(でか美ちゃん)概念から、どうしたらいいんだ?っていう感じですね。

(町山智浩)まず、家庭用ゲーム機器というものを説明するところから、入るんですよ。大変な時代なんですね。それでこれね、驚いたことにね、主人公はオランダ系アメリカ人のヘンク・ロジャースという人が主人公なんですね。ただ彼は、日本に住んでたんですよ。奥さんが日本人だったんですね。で、子供もいて日本に住んでたんで。で、この映画を見てとにかくびっくりするっていうかね、「うわっ、懐かしい!」と思って。ある音楽がかかるんですよ。麻倉未稀さんの『ヒーロー』っていう歌がありまして。それを今からかけるので、ちょっと聞いてもらえますか?

(石山蓮華)ああー、この曲か。

(でか美ちゃん)聞いたことある!

(町山智浩)イントロ、長いな(笑)。これ、すごい当時流行ってたんですよ。

(でか美ちゃん)有名な曲ですよね。全世代、知ってるんじゃないかな?

(町山智浩)これ、『スクール☆ウォーズ』ていうテレビ番組の主題歌だったんですよ。『スクール☆ウォーズ』って、知りません?

(でか美ちゃん)名前だけわかるっていう感じですね。

(町山智浩)ものすごい治安が荒れちゃった世界で、学校同士の戦争……要するにもう学校は戦場になっちゃうんですよ。で、その戦争の決着をラグビーでつけるっていう話で。ラグビーボールの中に爆弾が入ってるんですよ。だからそれをみんな、パスするんですよ。爆発すると困るから。

(でか美ちゃん)すごい世界観だ。

(町山智浩)そう。すごい世界観なんですよ。これ、すごかったですね。もう『マッドマックス』みたいなドラマで……って、全部嘘ですからね。俺の言っていることは(笑)。

(石山蓮華)嘘なんですか?(笑)。

(町山智浩)嘘ですから。誰も突っ込まないから、どこまでも進んじゃいましたよ(笑)。

(石山蓮華)「先進的なドラマだったんだ。見てみたいな」って思っちゃいましたよ(笑)。

(でか美ちゃん)でも、『スクール☆ウォーズ』は基本設定はそうなんすね? 爆弾は嘘ですけど。

(町山智浩)いや、基本設計も全部、嘘ですよ(笑)。まあ、でもこれが主題歌だったっていうことは本当なんですけども。あのね、うちの娘は俺がこういうことばっかり言ってるから、昔の話でもすぐ見抜いて。「ジジイ、それ嘘だろ?」って言いますからね。「それ、嘘じゃね?」って突っ込んだ方がいいですよ? 「ジジイ、貴様!」って突っ込んだ方がいいと思うんですけども(笑)。

(石山蓮華)「貴様」って(笑)。

(町山智浩)で、そのヘンク・ロジャースに話が移るんですけど。この人はとにかく『テトリス』というものがソ連にあることを知って。「これはめちゃくちゃ売れる!」ということで。任天堂に行って「これを買いたいんです。任天堂でゲームにして、ファミコンで出したら売れますよ!」って言いに行くんですけど。そこで任天堂の社長が出てきたりするところ、本当にすごいんですけど。そっくりさんがやってるんですが。で、「ソ連に行ってこい!」って言われるんですよね。

ところが、この『テトリス』の版権を持っているっていうやつが別にいるんですよ。それは、イギリスのメディア王なんですね。ロバート・マクスウェルとその息子がですね、『テトリス』の版権を既に取っているって主張するんですよ。で、そのマクスウェルっていうのはイギリスの新聞、デイリー・ミラーという新聞を作っていて。メディア王と言われて。そのお金で『テトリス』の版権を取って、売ろうとしてるんですね。

で、この『テトリス』の版権を取るために、まずイギリスの会社との戦いになってくるんですよ。この主人公のヘンク・ロジャースの。それで行ってみたら行ってみたで、そのソ連はもうめちゃくちゃで。まず、さっき言ったみたいにファミコンというものを説明しても、なかなか通じないっていうこともあるし。「買いに来た」ってこと自体が、理解されないんですよ。

(でか美ちゃん)「どういうこと?」ってなっちゃうと。

(町山智浩)そう。「どういうこと?」ってなるんですね。で、「まずファミコンというものがあって……」って、そこから説明しなきゃなんないんですよ。で、さらに「これからゲームボーイというものを売ろうと思うんだ」って。1989年に発売されるんで、もうその頃は開発が終わってるんですよ。で、「最初にそのゲームボーイに『テトリス』をつけていたら、めちゃくちゃ売れるはずだ。だから『テトリス』の権利を絶対取ってきてくれ!」って任天堂が言ってくるんですね。つまり、それまで子供のおもちゃだと思われてたものを、この『テトリス』を入れることで、大人もやるでしょう?

(でか美ちゃん)シンプルだからこそというか、誰でもやりたくなりますもんね。

(町山智浩)そうなんですよ。

(石山蓮華)今、スマホゲームとか大体『テトリス』みたいな感じのゲーム多いですよね。

(町山智浩)でしょう? 落ちゲーってあるでしょう? 上から落ちてくるやつ。『キャンディクラッシュ』とか『ぷよぷよ』とか。あれの元祖ですよね、『テトリス』って。で、あの頃、『テトリス』がめちゃくちゃ流行って。ソ連でもう既に流行っちゃっていて。で、行くとソ連で「テトキン」っていうのが行われてるって言われるんですよ。

(石山蓮華)テトキン?

(町山智浩)みんな、仕事してるように見えて実際には『テトリス』をやってるっていう。でも、当時結構そうでしたよ。みんな、仕事してるように見えて『テトリス』やってるって、ありましたよ。結構職場で。わかんないから。音を出さないと。

(石山蓮華)ああ、そうか! 

(でか美ちゃん)結構、本当に中毒性ありますもんね。やりたくなるから。

(石山蓮華)で、積んじゃうとまた1面から、みたいな。消して、積んで、消して……。

(町山智浩)一気に消える時の快楽がね。

(でか美ちゃん)「長い縦棒、来い!」っていうね。

(町山智浩)そう。「縦棒、来い、来い! 入ったー!」っていうね(笑)。「777」が並ぶみたいな感じがあるんですよね。パチンコのね。だから、もうすごい中毒性があるんで、「これを出したら、絶対売れる!」っていうんで、争奪戦になってくるんですけど。で、そこに入ってくるのがね、KGBなんですよ。

(でか美・石山)KGB?

(町山智浩)KGBとはソ連の秘密警察で、国民を監視していてですね、国に反対してるやつをさらって拷問したり、殺したりしてるような人たちなんですよ。

(石山蓮華)怖い……。

(町山智浩)それが、途中で入ってるんですよ。

(でか美ちゃん)その『テトリス』の権利を買うということだけと言ったらあれですけど。命に関わってくるんですね?

(町山智浩)命がかかってくるという。こんなすごい話が『テトリス』の裏にあったのかってね、ちょっと驚くんですけど。

(石山蓮華)命がけのゲームなんですね。

(町山智浩)あと、言うのを忘れちゃったんだけど。この主人公の奥さん……日本人だって言ったんですけども。演じている方がですね、長渕剛さんの娘さんです。

(でか美・石山)ええーっ!

(町山智浩)びっくりしました、僕。

(でか美ちゃん)女優さん、やられているんですね。

長渕文音さん

(町山智浩)そう。長渕さんの奥さんは志穂美悦子さんなんですけど……志穂美悦子さん、わかりませんか?

(石山蓮華)ちょっとわからないです……。

(町山智浩)志穂美悦子さんはミシェル・ヨーさんが出る前の、世界一のカンフースターです。

(石山蓮華)そうなんですか!

(町山智浩)はい。千葉真一、志穂美悦子、真田広之というのはブルース・リーの次のスーパーカンフースターだったんです。志穂美悦子さんはその頃、ビルのてっぺんから飛び降りたりしてた人ですよ。ご存知ない?

(石山蓮華)すいません。ちょっと不勉強で……。

(町山智浩)長渕剛さんと夫婦喧嘩して、志穂美悦子さんが長渕剛さんを半殺しにしちゃった話とか、ご存知じゃないですか?

(石山蓮華)聞いたことがないです!

(でか美ちゃん)というか、あの最強の人にしか見えない長渕さんが、そうなる?

(町山智浩)長渕剛さんが最強になった理由、知らないんですか? 志穂美悦子さんと夫婦喧嘩して殺されかけたから、体を鍛えたんですよ。

(石山蓮華)本当ですか?

(町山智浩)本当ですよ。

(でか美ちゃん)今まで聞いた町山さんの話で、一番信じちゃう。

(町山智浩)これだけが本当だよ!

(でか美・石山)アハハハハハハハハッ!

(でか美ちゃん)でも、そんなお二人の間に生まれた娘さんが?

(町山智浩)そう。最強というね。英語もペラペラなんですよ。

(でか美ちゃん)でも、アクション的なシーンって、きっとないですよね? この物語を聞く限りはね。

(町山智浩)いや、やっぱりKGBに対して志穂美・長渕娘が戦っていくしかないでしょう、これは!

(石山蓮華)えっ、そうなんですか?

(町山智浩)後半、だからKGBと女ランボーである長渕娘の大戦争ですよ、この映画!

(でか美ちゃん)町山さんが嘘ついてる時の目、初日にして、ちょっとわかってきたぞ?(笑)。

(石山蓮華)ああ、さすが! ピンと来ました?(笑)。

(町山智浩)もう、何を言っているのかわかんないと思うんで。何が本当かは実際に見て、たしかめてください。

(でか美ちゃん)でもすごい面白そう。なんか、そんななじみ深いゲームにそんな裏話が……。

(町山智浩)すごいですよ。戦っていると、巨大なブロックが空から降ってくるんですから。バンバン!って。

(でか美ちゃん)あ、これは違う。

(石山蓮華)これは違いますね。でも、やっぱりすごく身近で。私たちの世代からすると、あって当たり前かなと思っていたゲームの裏側に、交渉の物語があったんですね。

(町山智浩)そんなことがあったって、どこまで本当かわかんないんだ、この映画もまた(笑)。

(石山蓮華)まあ、あくまで映画ではあるけれども……。

(町山智浩)ということで、とりあえず見てくださいあwラ。

(石山蓮華)これはApple TV+にて先週の3月31日から既に配信中なんですね。

(町山智浩)はい。日本語もちゃんとついてます。

(石山蓮華)監督はジョン S. ベアードさん、出演はタロン・エガートンさん、ニキータ・エフレモフ、トビー・ジョーンズ、文音さんなどなど。

(町山智浩)長渕文音さんですよ。

(でか美ちゃん)そこにも注目しつつ、見てみよう!

(石山蓮華)ぜひ見てみたいです。ありがとうございました。

(町山智浩)はい。どもでした。

『テトリス』予告編

<書き起こしおわり>

石山蓮華とでか美ちゃん 映画『テトリス』を語る
石山蓮華さんとでか美ちゃんさんが2023年4月11日放送のTBSラジオ『こねくと』で町山智浩さんと映画『テトリス』について話していました。
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