江口寿史さんが2024年5月25日放送のJ-WAVE『TOKYO M.A.A.D SPIN』の中で鳥嶋和彦さんと大友克洋さんについてトーク。その衝撃を話していました。
(江口寿史)『パイレーツ』は3年しかやっていない。80年に終わらせたから。でもね、それに代わって出てきたのが大友克洋さんを始め、絵の新しい人たちですよね。
(鳥嶋和彦)出ました!
(江口寿史)それで僕、「自分の絵はこれじゃダメだ」と思いだして。ギャグよりも絵の方に興味が行っちゃって。それで、だんだん絵が緻密になっていくっていう流れです。
(Naz Chris)大友先生の『ショート・ピース』を読んだ時って、どういう衝撃があったんですか?
(江口寿史)だってこんな絵、今までの漫画の描き方と全然違うし。記号じゃないんですよね。あの人の絵は。要するに、全部がリアルに。リアルなものを見て書くっていう。
記号ではなくリアルな大友克洋の絵
(鳥嶋和彦)編集的に言うとね、こんなヒョロヒョロした線で。特に書き込みもあるわけじゃないわけ。
(江口寿史)背景が白かったですね。
(鳥嶋和彦)白いの。ただ、やたら印象に残るわけ。で、見たシーンは忘れられないの。「この存在感は何なんだろう?」って。で、当初ほら、長編を書かないで、短編の集まりだからね。ものすごい切れ味があるわけ。
(江口寿史)そうそう。
(Naz Chris)この絵を描きたいがために、ストーリーを考えるっていうところがあったりとか。
(江口寿史)そういうのもありますよね。だからストーリーがなかったりね。
(鳥嶋和彦)それで、あれでしょう? それで言うと「鼻の穴にやられた」っていう。
(江口寿史)そう。鼻の穴。鼻の穴と、骨格がちゃんとある書き方。で、今までの漫画の鼻のこの三角みたいのがちょっと説得力がなくなっちゃって。
(鳥嶋和彦)そうだよね。それまでって鼻は目とか口の位置を決めるためのものだもんね。
それまでの漫画ではあまり描かれてこなかった「鼻の穴」
(江口寿史)そうですね。だから「これに対抗するには……」と思って鼻の穴をつけたんだけど、これにつけるとね、ちょっともう異様になっちゃうんですよね。鼻の穴ってマイナス要素だったんで。
(鳥嶋和彦)それでね、今回そういう話、江口さんが大友さんの鼻にやられたっていうのを見て。実は今日、家で『Dr.スランプ』を1巻、パラパラッと見たんですよ。で、鳥山さんは則巻千兵衛にだけ、鼻の穴を書いてますね。で、女性キャラは一切書かない。
(江口寿史)そうそう。書いてない。
(鳥嶋和彦)江口さんの鼻の穴から始まって、僕は初めて自分が担当した漫画を見て。「則巻千兵衛にだけ、鼻の穴がある」っていうことを発見したんだよ。
則巻千兵衛博士、このとき28歳。80年代では28歳でも「ええトシしたオッサン」だったのだな~。 pic.twitter.com/0VVisSzmql
— 奈良崎コロスケ (@korosu_k_n) April 10, 2024
(江口寿史)鼻の穴っていうのは、漫画の歴史ではブサイクとかの記号だったんですよ。
(鳥嶋和彦)ということは、女性キャラには書きにくいよね。
(江口寿史)書きにくかったの。書くと、ちょっと違うものになって。だからそれで私のかわいく書こうっていうチャレンジですよね。そこから3、4年、苦労しましたけどね。どうしてもかわいくならなくて。
(鳥嶋和彦)そういう、いわゆるなんだろうな? パロディの時代が漫画から去りつつある流れと同時に、絵をもう1回見始めた江口さんが『ひのまる劇場』を経て『ストップ!! ひばりくん!』に行くわけだよね。このへんはどういう風に? スッと『ひばりくん』に行けた?
<書き起こしおわり>