近田春夫と高木完 AIが作る音楽を語る

近田春夫と高木完 AIが作る音楽を語る TOKYO M.A.A.D SPIN

高木完さんと近田春夫さんが2024年4月27日放送のJ-WAVE『TOKYO M.A.A.D SPIN』の中でAIが作る音楽について話していました。

(近田春夫)やっぱり最近はさ、いろいろな政治の話が多いっすよね。最近、一番気になってるのは「小池百合子はどうなの?」っていう。それと、あと知りたいのは川勝知事もいたじゃない? リニアモーターカーの問題とか。みんな意外と、そういう知事みたいな人。そういうさ、割といろいろ偉い人がね、最近話題になっていて。それでだから何となく気になるんだけど。でもその1個1個はよくわかんないっていうね。

(高木完)有耶無耶になっちゃうのかな。

(小泉今日子)なんか毎日毎日、そんな話が流れてくるから。集中できないっていうか。その、なんだろう? 全部、起こったことがすぐに消えてっちゃうっていうのの繰り返しで。残っていかない。事柄として、本当はもっとちゃんと話さなきゃいけないとか。本当はもっとちゃんとみんなが知らなきゃいけないみたいなことが、起こっては消えていっちゃうっていうのがなんか、嫌だなって。

(近田春夫)俺たちもその時にはニュースを見るけど。次の日にはもう、そういうニュースも大谷のニュースも一緒になっちゃうじゃん?

(小泉今日子)で、次の日にはまた、新しいニュースを目にして終わるみたいな。

(近田春夫)そういう時代って言えば、そういう時代なのかもしれないけど。そういう時代っていうのが何を意味してるのかな?っていうのは、考えますよ。

(高木完)だからいろんなものが……たとえば、作品を出してすぐに「ああ、あったね」ぐらいで。新譜がすぐに旧譜になっちゃうぐらいな。それで話が変わっちゃって申し訳ないですけど。近田さんはAIの作る音楽とか、どう思います?

(近田春夫)ああ、俺は結構さ、人間は作らなくて済むんだったら、それでいいと思うんだよね。

(高木完)ああ、そう?(笑)。

(小泉今日子)アハハハハハハハハッ!

(高木完)じゃあ、自分はやりたいとか、そういう問題じゃないっていうことですか?(笑)。

(近田春夫)だってさ、そういうもんってさ、機械が作れるんだったらさ、それでいいじゃんっていうさ。だってさ、誰が作ったかなんてのは、聞いてる人はわかんないじゃん?

(高木完)まあ、最近のはそれぐらい精度が高いですよ。

「機械が作れるんだったらそれでいいじゃん」(近田春夫)

(小泉今日子)だから、ものによるんじゃない? そうなっちゃったら、アーティストっていうのは存在しなくなるけど。でもたとえば、なにかの番組の主題歌とか、オープニングとか、エンディングみたいなのとかも、お金もかからないんだったらそういうので作っちゃうみたいなことはありかもしれないっていう感じですよね?

(近田春夫)そう。そっちよ。だからね、極端に言うと映画も何もさ、全部そうやってAIが作れちゃうんだったら、それでいいのよ。そしたらさ、その次のそういう時代になっちゃうだけのことで。それでさ、時代って逆戻りできないじゃん? だから俺はさ、いろいろ阻止したところで始まらないから。それだったらさ、人間がね、それより面白いものを作ればいいだけですよ。その「面白いものを作れない」ってことは単にもう、それだけの才能っていうことだから。

(高木完)さっきかかったチャック・ベリーの古いのを聞くと、たしかにあれはAIじゃ作れないですよね。

(近田春夫)ああ、作れないですよ。

(小泉今日子)だからなんか、どっちも……そういうものが普及をすると、生の音の価値も上がる気もしないでもない。

(高木完)あと、やっぱりコンピューターで作れないものって、絶対にあるじゃないですか。

(近田春夫)あるよ。でもさ、全体の中でコンピュータで作れないものと作れるものって言ったら、作れるものの方が多いですよね?

(小泉今日子)だけど、なんか下地みたいなものを作ってくれたりすると、すごくいいかもしれないですよね。だから作ったのを生で演奏するとか。

(高木完)まあ、そうだね。

(近田春夫)でもさ、阻止できないじゃん? たとえばさ、自分がそういうAIに全部、任せて作ったものを「これ、僕が作りました」っつって納品したら、誰もわかんないじゃん?

(高木完)どうなんですかね?

(小泉今日子)でも、そうそういう権利みたいなのは、どうなるんですかね?

(近田春夫)だからさ、「マークをつけよう」とかっていうね、そういうルールを作ったとしたって、守らない人はいっぱいいるじゃん? だって守らなくたってさ、家でやっていたらさ、「自分が作りました」っつって出しても、証明のしようがないじゃん? だからそれ、防ぎようがないと思うんだよね。俺は。

(高木完)だって外国のソフトなのに、日本語のラップとかも作ってくれるんですよ?

(近田春夫)そういうもんですよ。たとえばさ、適当に歌詞を入れるとさ、もうアレンジした曲として、歌がちゃんとできるんだよ。だから俺、自分の曲をさ、歌詞だけね、入れてみたんだよ。そしたら全然違う、J-POPみたいな風に俺の歌詞を作ってくれるんだよ。しかも、面白くはないんだけど完璧なアレンジでね。だからもう、これでいいんじゃないのかなって。

(高木完)でも、それはやっぱり近田さん、入力はしてるもんね。ちゃんと、歌詞を。

(近田春夫)でも歌詞入力なんて、簡単じゃん? そんなの、メールを書くのと一緒だもん。だから俺は何でもさ、もうとにかく後戻りできないから。それを楽しむしかないと思ってるんですよ。どれだけね、反対したって。「私がこれ、書いてきました」っつってもさ、実はAIが作ったってことは私以外は誰も知らなかったら「これ、近田さんが作ったんだな」「完ちゃんが作ったんだな」って思うじゃん?

(高木完)いや、でも僕、そこまでAIのことを知らなかったんですけど。それこそ数日前に「こんなのがあって。これに『ダムド』って入れると、こういう風になりますよ」って見せてくれて。「なに、これ?」ってびっくりして。ちゃんとね、それっぽくなるんですよ。

(近田春夫)なりますよ。

(高木完)でも、それっぽくならないのも面白いけど。

(近田春夫)でもね、そのそれっぽくなる精度はどんどん上がっているんだよ。

(高木完)もちろん、学習をしていくからね。

(近田春夫)だから前も言ったけど。ただそういうコンピューターと人間の一番の違いは、コンピューターは今、完ちゃんが言った通りさ、「学習してく」っていうことはね、要するに勉強をしてさ、そのいい点取るっていう。要するに「秀才」なんですよ。コンピューターはどこまで行っても。だけどコンピューターに天才はいないんですよ。もうゼロから思いつくっていうのはいない。だから、過去のデータを自分の中で組み合わせて作るっていうことだから。

(高木完)チャック・ベリーは生まれないですよね。

(近田春夫)生まれない、生まれない。コンピューターの限界は、そこなんですよ。

(高木完)そういう意味でやっぱりまだ、やりがいがありますよね。人間が。

コンピューターは「秀才」

(近田春夫)ただね、天才の数は少ないんですよ。秀才より。秀才はとにかく、努力していたらできるから。偏差値みたいなもんだからさ。とにかく割と学習して、丸暗記すれば点が取れるんだから。

(小泉今日子)でもね、その音楽が人に対して与えるものって、曲だけじゃなかったりもするじゃない? そっち側は絶対にコンピューターって、できないじゃない? ライブだったり。

(高木完)ライブ、そうじゃないですか。

(小泉今日子)ライブ……だからなんか、共存していくんだろうなっていう気はしないでもないんですけど。

(近田春夫)でもさ、ライブっつったってさ、DJって全部、データでやってるじゃん?

(高木完)ああ、すいません。だからディスクジョッキーじゃなくて、データジョッキーですね。

(近田春夫)でしょう? だってさ、演奏だってさ、ほとんどさ、ポンとスイッチを押せばさ、打ち込みの音がドーッと出てくるだけじゃないですか。

(高木完)でも、データ的に俺はその時その時で……だから俺はAIに頼らないっすよ。正直、そんなに。

(近田春夫)でも、そういうのでも通用している人がいっぱいいるわけじゃん? 昔のDJはさ、重いレコードケースを担いで行ったりしていたけど、そういうのもないじゃん? USBでちょっとやるだけじゃん? で、自分は自信があるから、いいんですよ。

(高木完)近田さんは元々、あれですよね。割とそういう、その時その時の新しいなにか……家電感覚で何かっていうの、好きですよね。

(近田春夫)でもさ、俺の場合はなんで平気かっていうと、それでもコンピューターより絶対に俺は……。

(高木完)ああ、ほら(笑)。

(小泉今日子)だから天才は残っていくっていう。

(近田春夫)俺は天才だからっていう、それだけよ。

(小泉今日子)でもまあ、いろんな形で共存したり。

「天才」は残る(ただし、その数は少ない)

(近田春夫)自分以外の人はどんどんコンピューターに負けなさいね。でも、コンピューターに勝つ人もいますから。その数は少ないですよっていう。それだけよ。

(小泉今日子)やな感じ(笑)。

(高木完)やな感じだよねー(笑)。

(小泉今日子)感じ悪いよねー!(笑)。

(近田春夫)ああ、本当のことを言っちゃったー(笑)。

(高木完)「感じ悪くて当たり前」みたいな(笑)。

(近田春夫)どうせ俺はそういう男だよ(笑)。

(小泉今日子)そんなことないよ(笑)。曲、行きましょうか(笑)。

(高木完)じゃあ、ぶっ飛ばそう。何をぶっ飛ばしますか?

(近田春夫)じゃあ、何度も話が出てきたビートルズの『Roll Over Beethoven』。

<書き起こしおわり>

菊地成孔 AIによる作曲を語る
菊地成孔さんが2024年4月5日放送のNHKラジオ第1『高橋源一郎の飛ぶ教室』に出演。ギルド・新音楽制作工房の仲間たちと取り組んでいるAIによる作曲について話していました。
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