菊地成孔 AIによる作曲を語る

菊地成孔 AIによる作曲を語る NHKラジオ第一

菊地成孔さんが2024年4月5日放送のNHKラジオ第1『高橋源一郎の飛ぶ教室』に出演。ギルド・新音楽制作工房の仲間たちと取り組んでいるAIによる作曲について話していました。

(礒野佑子)その映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』のサウンドトラックの中には、AIを使った楽曲が収録されていましたよね。どんな経緯で?

(高橋源一郎)この話はね、今日、実は聞きたかった話だったんですけど。少し前にゲンロンっていうところでスタッフ4人の方が集まって。音楽の未来の話をされていて。特にやっぱり今、AIが使われているという。で、菊地さんは当然、全面肯定なんですけど。その中で聞いた音楽が、「えっ、これ、AIなんですか?」みたいな感じだったので。実際、AI……当然、いろいろと聞かれると思いますけど。音楽家として、ジャズミュージシャンとしてどういう風に向かい合って、何をしていくべきかっていうのをぜひ、聞きたかった。

(菊地成孔)ああ、なるほど。AIは今、もうまさに日進月歩とは言ったもんで。もう来月には……要するに単なるアップデートとかじゃなくて。全く新しい考え方のAIがどんどんどんどん出てきているので。

(高橋源一郎)毎月のように?

(菊地成孔)毎月のようにですね。僕は今、ギルドを持っているんですけども。

(高橋源一郎)創作者グループですね。言ってみれば。

(菊地成孔)そうですね。その中の……まあ、別にそう名付けているわけじゃないんですけど。要するに、AIを使える人。先端技術の班みたいなのがあるんですよ。

(高橋源一郎)それは、菊地さんはやっていないんですね。直接的には。

(菊地成孔)僕はやっていないです。なので、元々自分の生徒だった人々と新音楽制作工房っていうギルドを……日本では数少ない。音楽のギルドってあんまりないんですけど。

(礒野佑子)ギルドって、メンバーというか、チームみたいな?

(菊地成孔)まあ、言っちゃえばチームですね。

(高橋源一郎)音楽制作者集団っていう感じですかね。

(菊地成孔)そうですね。その中で出てきたものですよ。この間、ゲンロンでかけたやつは。で、AIもね、細かく話すといろいろと……いわゆるディープラーニング型とか、プロンプト型とか、いろんな型があるんですけど。今、まだ法整備とか、倫理整備とかが全くできてないんですね。

(高橋源一郎)そうか。あまりに技術が発達しすぎて、追いついていかない感じだよね?

技術の進歩に法や倫理の整備が追いつかない

(菊地成孔)まあ、テクノロジーあるあるですよね。サンプラーですら、最初はアメリカのギルドなんかは反対を……ミュージシャンのユニオン(組合)が反対したりしたんですけど。やっぱり屈しましたよね。まあまあ、それって産業革命以来、結局ずっとそうなんで。

(高橋源一郎)ただ、びっくりしたのは「これは人間しかできない」っていうことがもうほとんどなくなってきてる感じに聞こえるんですね。

(菊地成孔)まあ、そうですね。テクノロジーって、要するに徐々に進化する場合と、大ジャンプする時があるんですけど。AIはやっぱりちょっとした大ジャンプですね。音楽のテクノロジーは当たり前ですけど、ドンカマチック……リズムボックスだとか、サンプラーだとか、MIDIだとか、いろんなものが少し少しずつ出てくるわけですけど。AIはちょっと飛び抜けたところがあるんですよね。だから法整備だとか倫理整備だとか。フランスなんかは芸術使用をいち早く……フランスはリベラシオンなので。宣言したりしていて。

(高橋源一郎)じゃあせっかくだから一瞬、聞かせてもらいましょうかね。

(菊地成孔)これは映画の方。『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』で使われているAI使用の曲ですね。まだNHKの方とも話していて。「どういうもんかな?」と思ったんですけど「やっちゃえ!」で行っちゃったやつですね(笑)。

(『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』から『AI制作による二つの弦楽四重奏の同時演奏』が流れる)

(礒野佑子)これは『AI制作による二つの弦楽四重奏の同時演奏』という。

(高橋源一郎)どこにどうやっているのか……(笑)。

(菊地成孔)これはMaxという、もう既に旧世代に属するAIのひとつなんですけど。いわゆるディープラーニング型で。子供を塾に通わせるのと同じで、たくさん教養……音源を与えて長時間、ディープラーニングをさせると生成するんですよ。

(高橋源一郎)聞かせてると?

(菊地成孔)そうです。これはサンプリングじゃないんです。サンプリングと生成は大きな違いで。サンプリングっていうのは元々ある音をサンプルするわけですけど、これはサンプルしてないんで。勉強させると……。

(高橋源一郎)勝手に作ってるの?

(菊地成孔)これ、生成です。

(礒野佑子)このバイオリンの音色とかは?

(菊地成孔)生成です。空間とか余韻とか弾き方とかも全部、生成なんで。サンプリングしてないんですよ。

(高橋源一郎)人間は何をどこにマネージしてるわけなの?

(菊地成孔)このマネージは、まず何を……「食わせる」っていう風に業界用語で言うんですけども。何をディープラーニングさせるかっていう音源の選択と、それをどのくらいの時間……まあ、寝てる間も勉強させておくわけですけど。それをやって。で、特にこれはOMaxっていう、片方のMaxが自動生成したものに対して、反応するんですよ。で、弦楽四重奏をいっぱい食わせて、それで生成させると、それに対応するんですよ。で、スイッチを止めない限り、延々とやっているんで。

(高橋源一郎)これをずっとやっているんだ。

(菊地成孔)ずっとやっています。なので、長時間……AIって、これからたぶんそれが問題になると思うんですけど。AIって、倫理的な問題とか、人間の手仕事、職業が、雇用が減るとか何とかっていうよりも、AIって生成物が多すぎて。決定権がどこに来るかがたぶん、問題になると思います。

(高橋源一郎)どこで止めたらいいのか、とか。

(菊地成孔)そうですね。

(礒野佑子)生み出すことはできるけれども。

(高橋源一郎)いくらでも生んじゃうっていうことだね。

AIが生み出したものを誰が「決定」するのか?

(菊地成孔)生み方がすごいんですよ。だから、ビジュアルにも僕、使うんですけど。もう一気に100枚とか上がってくるんで。その中から1個を選ぶっていうことを誰がするのか? 誰が決定するのか?っていう。

(礒野佑子)それは、人間なのかな?

(高橋源一郎)あとは菊池成孔の名前がどこに入るのか、とかね。

(菊地成孔)そうですね。

(高橋源一郎)というか、それは作曲じゃないし。どういう関わりになるのかっていう。

(菊地成孔)これはいわゆる著作権の書類とか、あるじゃないすか。あれ上は、オペレーションをしたギルドのメンバーっていうことになっていますね。

<書き起こしおわり>

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