佐久間宣行さんが2024年3月27日放送のニッポン放送『佐久間宣行のオールナイトニッポン0』の中で自身の出身校、早稲田大学商学部の卒業式で卒業生に向けてスピーチをしたことについて、話していました。
（佐久間宣行）メールです。東京都江東区の方。「佐久間さん、こんばんは。私は3月25日に早稲田大学商学部を卒業した者です。先日は卒業生歓迎会にて祝辞をお贈りいただき、ありがとうございました。大学2年生で2単位しか取れなかった話を大学構内というこれ以上なく適した場で聞くことができ、ある種の感動を覚えました。コロナ渦の複雑な大学生活でしたが、最後に弊学に入学してよかったと思える素敵な思い出ができました」。あら、嬉しいですね。
そうなんですよ。月曜日に、早稲田大学の卒業式に出てきたんですよね。それは学部長から昨年12月頭ぐらいにお願いが来たんです。で、ちょっと馴染みがない人もいるかもしんないけども。早稲田って独特で。全体の卒業式はあるの。午後にやるらしいんだけど。その全体の卒業式はでっかい、体育館みたいなところでやるのだ。卒業生が全部合わせると8000人ぐらいいるから。で、それ以外に「学部の卒業式」っていうのがあって。それぞれ、商学部だとか法学部の卒業式があって。それが学部卒業式というか、学部歓送会みたいなやつで。俺の年もあったと思うんだけど。それ商学部の学部長から「商学部の卒業式で祝辞を読んでくれ」って頼まれたの。
で、商学部の学部長の先生が横山先生って方なんですけど。俺、たまにこのラジオで話しているんだけど。東京に出てきて。「いろんなおもしろいものを見たい」と思って上京してきたから、それの反動でたくさん面白いものが溢れている東京に溺れて。で、大学2年の時にほぼ授業も受けず、エンタメばっかり見ていたら、2年生の時に2単位しか取れなかったの。で、2単位しか取れなくて即留年したのよ。即留年したどころか、このままのペースで単位を落としてくと2留しちゃうっていう落とし方なのね。2単位しか取れないっていうのは。それで決まっていたゼミも留年のために進めなかったの。で、あまりの自分のふがいなさに落ち込んでいたんだけど。あと、追い込まれてるから。「3年から真面目に授業を受けなきゃな」って思ってた時に赴任されてきたのがその横山将義先生っていう方で。
当時は30歳で。俺が20歳。専任講師だったの。早稲田の卒業生で、いろんなところで勉強をされて、早稲田に専任講師で来た1年目の若い先生で。で、マクロ経済学と教えてくださったんだけど。大学の授業でたまに遅刻して行ったりするじゃん？ そうするとその先生が「おう、なんなんだ。そのでっかいの。遅刻してきて……じゃあお前、終わった後に黒板を消していけよ」みたいなことが最初の出会いで。そこから、面白い先生だから仲良くなったっていうのと。あと俺、ゼミがないから。その時、留年してゼミに入れなかったから、慕える先生がいなくて。で、その先生も来たばっかりで寂しいじゃん？ だから加速度的に仲良くなっていったんだよ（笑）。本当に、マジで。で、俺と何人かがその先生の教室に遊びに行くぐらい仲良くなって。一緒に飯を食いに行ったりするようになって。
で、その先生にプライベートの相談をしたり。先生からちょっとプライベートの相談されたり。30歳だからね、別に若いから。そのプライベートなことを……「合コンが」とか（笑）。そういう相談を受けるような仲だったんだよ。で、たまに酒を飲んだりしていて。その付き合いが、卒業してからも続いてて。たまに飲んだりしてたんだよ。で、俺は20代は地獄の忙しさだったから、そんなに会えてはいなかったんだけど。俺の友達たちはその間も飲んでいて。で、俺は30代になってからまた、ちょくちょく会うようになっていて。だから20数年経って……2020年にはその横山先生が俺が卒業した早稲田商学部の学部長になられたの。
その時も「おめでとうございます」って言われたんだけど。それで、それを2期、やられて。今年が最終年で。だからたぶん、この3月か4月で学部長を卒業するっていう。で、学部長って別に卒業したら教授を引退するわけじゃないから。あれって選挙だから。なので、また教授に戻るんだけど。それで「佐久間よ。俺、最後の学部長だから。やってくれよ」って言われて。それはまあ、もうそんな縁だから、引き受けるじゃん？ 引き受けたんだけど……そこからさ、「卒業式の祝辞って、何なんだろうな？」と思って考えた時に、もう俺の頭に浮かんだのがやっぱり近畿大学のキンコン西野のスピーチ。あれしか浮かばなくて（笑）。もう本当にそれしか浮かばなかったのよ。
登場からかましたやつ。拍手がまばらだったから「皆さん、もう1回やりましょう」っつって、もう1回入ってきたやつ。あれ、よく聞くと意外にいいんだよ。それは、別にわざとやったわけよ。それで最後に「失敗とか、そういうのも全部、何回でもやり直せますよ」って。それを言うためにわざとやったんだけど、そこだけ取り上げられちゃって（笑）。「かました」っていう風になっていて、かわいそうなんだけど。あと人生を時計の長針と短針にたとえたりしていてっていう。で、それがやっぱり頭から離れなくて。
どうしても頭にちらつくキンコン西野の近大卒業式スピーチ
で、12月にお引き受けしてから、仕事の合間に書こうと思って。2月ぐらいに特番とか『インシデンツ』が終わった後に書こうと思ったんだけど毎回、西野がちらついちゃって。「かまさなきゃ！」ってなっちゃって。もう全然、祝辞が進まなかったのよ。書けなくて。「10分前後」って言われていたから。だいたい1分300文字ぐらいなので、スピーチは3000文字前後なんだけど。すぐには書けないの。書こうと思うと4、5時間かかるんだけど。で、なかなか難しくて。それでもう先週まで、書けていない状態でいて。「やべえ。週の合間で書かなきゃな」と思って。
それで先週、合間で1回、書いたのね。それは横山先生に「今年の4年生ってどんな感じなんですか？」っていうことを聞いたら「学生生活の結構な時間がコロナ渦だったから。いろんなものを奪われたのはたしかにそうだ。でもその分、思慮深いというところはあるけど、なかなかちょっとおとなしい。あと、自分たちがちょっとついてないかな？って思っている節が学生の間があるかな」なんて言っていたから。今度はそっちがすごい頭にちらついちゃって。
で、今度はね、合間で1回書いたやつがなんか、時事に寄った真面目なやつになったのね。でも結局さ、俺たちのところに残っている祝辞ってさ、西野みたいなかましたやつか、大学の学長とかのちゃんと、その学生生活を送った人の祝辞で。俺みたいにふわふわした学生生活を送ったやつって、祝辞してないのよ（笑）。その、学生時代に何も別にやってないやつが残せる祝辞っていうのがあんまりないから、そういうのはなくて。真面目な方に振られて書いたら……「大学時代にコロナとかはありましたけどその分、こういうことがありましたし。それも糧にできて……」みたいなことを書いていたんだけど。それを自分で読み返してみたら、「こんなことはたぶん学生、言われすぎてるな。『またそれかい！』って思うよな。これも、やめよう」と思って。原稿を全部、捨てて。
で、先週の金曜の時点でまだ祝辞、書けてなくて。「やばいな……」って思って。で、土曜の午前中がちょっと仕事が空くから、そこで書くしかないと思っていたの。日曜は大型のロケがあったからね。そう思っていたら、その金曜の夜が『オールナイトフジコ』だったのね。生放送。で、その日、台本を読んだら4年生の卒業だったのよ。『オールナイトフジコ』も女子大生の方々がいるけど、その中でもあれって大学生じゃなくなると卒業するから。それが9人、卒業する回だったのね。で、それは別に楽しいバラエティをやったんだけど。その生放送の直前にフジテレビのプロデューサーから「急に決まったんですけど。今日であいつら、4年生って卒業じゃないですか。生放送終わってからちょっと打ち上げ、MCの皆さんでやりたいんですけど。どうですかね？」って言われたの。
それはわかる。俺もそんなにね、その女子大生たちと生放送以外では接してないから。その打ち上げまあ、いいでしょうって思ったんだけど……「でも今日、言うなよ」っていう（笑）。急に決まったのかもしんないけどね。だってあれ、3時に終わるから。打ち上げを3時半ぐらいからやるのよ。で、その子たちに聞いたら要はあの子たちも卒業式があるから。別日は合わないわけ。あと卒業ライブとかもあるから。だからその日に軽くやるってなったんだよね。それはもちろん、参加しますよ。MCだし。あと、そんなに接してないし。でも俺、心の中で「乾杯ぐらいやったら、おじさんだし。退出すればいいかな」なんていう風に思っていて。で、行きしなにちょっと聞いたら村重も朝6時からロケだったらしくて（笑）。で、村重はもう、お酒自体を飲まない。乾杯だけしたら帰りますみたいな感じで。
で、森田も6時発で愛媛でロケだったらしくて。森田も朝……だからもうそのまますぐに出ますみたいな感じで。「ああ、そうか、そうか。ということは俺、まあまあいた方がいいかな？」とか思いながら、会場に着いたね。会場に着いて。俺たちは3時半ぐらいだったんだけど。よく考えたらその女子大生の4年生の子たちはさ、他のスタッフさんとも別れじゃん。だから、他のスタッフにご挨拶をするわけよ。だから俺たちよりももちろん遅いわけ。いや、それで全然いいんだけど。で、結果、その子たちが来たのは4時近いわけ。それで乾杯して。村重はもう、お酒も飲まずにすぐ帰って。仕事だからしょうがない。名残惜しそうにしてたけど。
で、俺は「森田が帰ったら帰ろう」と思っていたの。最初ね。そしたら森田が……これは営業妨害になるかな？ まあ、いいか。あいつ、いいやつだから1時間半ぐらい、いるんだよ（笑）。もう途中から……あいつ、酒も飲まないんだけど。その女子大生の悩みとかを聞きながらいるから。森田がいるってことは、俺の方が森田よりスケジュール的には余裕があるから、そりゃあいるよなっていう風になっていて。で、そこで俺も腹を決めて、いたんだけど。で、その子たちと話した時にみんな、4年で卒業するじゃん？ で、卒業の後に就職する子もいれば、芸能生活を送りたい。けど、まだ事務所も決まってないし、大学卒業しちゃうからちょっとフリーターみたいな感じになっちゃう子もいるみたいなので、悩み相談になるわけ。その悩み相談になった時に「佐久間さんはどういう学生生活だったんですか？ 今みたいな、要はバラエティを作ったりして、ディレクターとして活躍できると思ってました？」みたいなことを女子大生たちから聞かれて。
それで「いや、そんなこと思ってないよ。だって俺、大学で2単位しか取れなくて留年したりしていたし。あと、もの作りはしたかったけど、大学1年の時に会った人たちがすごくて。実はドラマの名プロデューサーの子とか、あとは映画監督の西川美和さんとか、『トトロ』のプロデューサーの子とかに1年生の時に会って。『ああ、無理だ』と思って。すぐ諦めて、サークル辞めちゃって。もう大学2年の時なんか、暗黒時代よ」みたいな。「ああ、そうなんですか。でも今、やってるんじゃないですか」「ああ、そうそう。それでね、大学2年の時に留年したけどエンタメばっかり見てたっていうのがあって。それで就活のフジテレビの面接の時に『すごい詳しいね』みたいなことを言われて。もう1回、制作職で作受けたり。あと大学2年で留年したから出会えた教授が学部長になって。今度、明後日、俺、卒業式で祝辞をやるんだよ。これ、すごくない？」っつって。「すごいっすね！」ってなって。
俺はそれ、悩んでる子たちを励ますつもりで言ってる途中で気づいたの。「あれ？ これを話した方がよくね？」っていう（笑）。要は「どっちかというと普通の学生かつ、ダメ学生だった俺が、そのダメ学生だったことも全部、糧になって。結果、人生逆転することもあるっていうこと。そっちの方が血が通ってる話ができるな」って思って。「これだ！」と思って。で、その時に心の中で「ちょっとフジテレビ……今日、大学生と会わせてくれてありがとう！」ってなって。大学生相手に、しかも卒業する子たち相手に何が響くかがわかったわけ。そしたら明らかに俺の失敗から始まった話の方が響くから。「ああ、これをベースに書けばいいんだ。やべえ。本当に申し訳ないけどこれ、忘れないうちにこの会場から出てメモりたい！」と思ったんだけど（笑）。
『オールナイトフジコ』卒業生たちとの会話がヒントに
（佐久間宣行）で、その飲んでる時に、ちょっと酔っ払った女子大生の1人……名前は言わないけど。「でも私なんか、お先真っ暗ですよ」「いや、そんなことないじゃん」「でも佐久間さん、地球ってもうすぐ終わるって聞いたんですよ」って言い始めたのね。1人が。「地球ってもうすぐ終わるって聞いたんですけど、終わらないですかね？」って言い始めたから。「ああ、潮時だな」と思って手を挙げて。「佐久間、帰ります」っつって（笑）。それが5時半ぐらい。「すいません、佐久間、帰りまーす」「えっ、どうした？ どうした？」「いや、ちょっと、そうですね。こいつが『地球が終わる』って言い始めたんで、帰ります」って（笑）。いたんだな、世紀末思想（笑）。それですんなり帰って。帰りのタクシーで忘れないように全部、メモって。そのまま家に帰ってから書こうと思ったけど、そこではその元気はなくて寝ちゃって。
で、起きてVTRチェックを3本した後、その数時間の間にある程度、形にできたのよ。大学時代の後悔とか失敗。2単位しか取れずに留年したこととか、クリエイターになりたい気持ちを早々に諦めたとか。社会人なってからは自分を低く見積もって、なかなか挑戦できなかったとか。不安が歳とともになくならないとか。そういったマイナスのことも全部、プラスできるな、みたいな。その横山先生に会えたのもね、2単位しか取れなくて、ゼミに行けなかったから。そういう構成が見えて、書けて。で、翌日のロケの合間に仕上げて。それで当日、月曜日。まあ、あいにくの雨だったんだけど。朝一ぐらいで大隈講堂っていうね、早稲田にある有名な、よく画像で出てくるような講堂。俺もその講堂にはあんまり入ったことなかったんだけど。そこに入って。