(DJ YANATAKE)そうか。でもこれさ、一番最初に俺、内容を聞かずにラーメンを食いながら聞いてたんですけど。ビートもこの曲が一番かっこいいなって思うぐらいで。「どれをかけようかな?」っていう風に思いながら聞いていて。1周して。で、後半めにモブ・ディープの『Quiet Storm』を使ったやつとか。「ああ、こういうのもいいじゃん」とか思いながら聞いていたんだけども。次にSNSを開いたら全部『Like That』になっていて(笑)。
(渡辺志保)やっぱりそうなんですね! その「タタタタンタンターン」は1988年のRodney O & Joe Cooley『Everlasting Bass』っていう曲なんだが。これを使ってる曲って、ちょいちょいあって。それで私も「ああ、なるほど!」って。全然知らなかったんだけど。その「タタタタンタンターン」の同ネタを99年にE-40も使っているんですね。
(DJ YANATAKE)それでそのラインがあるんだ。
(渡辺志保)そう。それで私、「ケンドリック・ラマーってすげえな」って思ったんですけども。ケンドリックのラインでE-40とB-Legitっていう2人の西海岸の超先輩ですよね。ちょっとケンドリックの地元のコンプトンとは距離が離れているヴァレーホっていうところ。いわゆるオークランドの大先輩のE-40とB-Legitっていうラッパーがいるわけなんですけども。彼らの名前をすごい巧みに織り交ぜてる箇所があるんですよね。「clickin’ up, but cannot be legit」って。で、「legit」って「real」みたいな意味なんですけども。「束になってもお前ら、リアルにはなれない」って言っていて。で、「no 40 Water, tell ‘em」っていうラインになっていて。そこですごいきれいにB-legitとE-40、そしてザ・クリックっていう彼らのクルーの名前を織り交ぜていて。
で、ここに出てくる「40」っていうのはE-40のこともそうなんだけども。ドレイクといっつも曲を作っているNoah ’40’ Shebibっていうプロデューサーがいますけども。その名前もかけているんじゃないか?っていう考察がなされていたりして。「へー!」って思ったの。
(DJ YANATAKE)あと、なんだっけ? 「40 Water」っていうアルコールが入っていないけどもアルコールみたいな飲み物をE-40が出していたんでしょう? それで、その「40 Waterみたいなものだ」って言っているのはその「アルコールも入ってない」っていう。
(渡辺志保)「腑抜け」みたいなことを言いたいんだろうね。その後にさ、メリー・メルがエミネムをディスったっていう去年のよくわかんない出来事なんかも織り交ぜていたりとか。すごい、ちょっと興奮をしてしまいましたね。
(DJ YANATAKE)本当にこの短いところにいろんなことを言いたくなるようなラインがすごいね。
ダブルミーニング、トリプルミーニングの嵐
(渡辺志保)ダブルミーニング、トリプルミーニングみたいな感じで。で、最後の方もね、「ワンちゃんたちがみんな、埋められちまう前にペットの葬儀場で会おう(’Fore all your dogs gettin’ buried That’s a K with all these nines, he gon’ see Pet Sematary)」みたいなラインがあるんですけども。それも「Pet Sematary」って私、知らなかったんですけども。ホラー映画のタイトルなんですよね。だから「なるほど!」って思いながら読んでいましたね。やばいですね。
(DJ YANATAKE)だからケンドリックは今、こういう濃度なのか。でも、この曲だけでそういう風に吐き出しているのか、わからないですけども。
(渡辺志保)ねえ。どうなんですかね。で、本当にやっぱり世界中のヘッズが勘ぐってるから、フューチャーとドレイクは1人の女性を巡ってこんなにギスギスしてるんじゃないか?っていう、ダイアナちゃんっていう女の子のインスタグラムのページが発掘されて。で、このアルバム中に『Magic Don Juan (Princess Diana)』って曲が入っているんですけど。それはそのダイアナちゃんのインスタのページに「ダイアナ」っていう名前で、その概要欄に「プリンセス」って書かれてるんですよ。「この女の子がまさにプリンセス・ダイアナだ!」みたいな、全然関係ない女の子のインスタのページを引っ張ってきて。それがバーッと拡散されちゃって。「あらら……」みたいな。あとメトロ・ブーミンも「どっちのサイドに付くか選んだら、ずっとそこにいろよ?」みたいなツイートっていうか、ポストをしてて。なかなか挑発的ですね。
(DJ YANATAKE)いやー、すごいですね。なんかだいぶアルバムのボリュームもね、あれだけど。ちょっとこの曲がマジ突出しちゃっていて。
(渡辺志保)突出してる。でも今日、アトランタのAkiさんのインスタグラムのストーリーズを見ていたら、現地アトランタのマジックシティでは『Type Shit』がかかってました。だから純粋な、アメリカでウケるクラブバンガーとか、アトランタでウケるストリップバンカーみたいなのは、トラヴィスとプレイボーイ・カーティが入ってるからっていうのもあると思うんですけど。そういうバンガー的なのはこの『Type Shit』なのかなって思ったり。
(渡辺志保)だから今、Xの精度が高いんだか低いかわかんないけども。『Like That』のことばっかりいいねとかしてたから、私のタイムラインが全部『Like That』なんですよ。それでアメリカの『Like That』民がバーッてポストしているのが私のフィードを埋めてるんですけど。それで週末を経て、「週末、クラブで『Like That』がかかったけど本当に最高だった!」みたいな「クラブでも映えるディス曲って、マジで攻撃力が半端ない!」みたいな。
(DJ YANATAKE)たしかに。しかもみんなこれ、かけそうだよ。でもこの後にドレイクとJ・コール、かけれない感じもしますけどね。
(渡辺志保)でもこれ、ビートがすごいかっこいいし。私、途中でEazy-Eの『Eazy-Duz-It』。あのサンプリングがヌルッと入ってくる感じが本当にかっこいいと思って。
(DJ YANATAKE)なんかゲームとカニエも使っていたよね?
(渡辺志保)ああ、ザ・ゲーム feat. カニエのね。やってた、やってた。そうなんですよ。なので何重にでも、どんどん深堀りできる曲だなっていう風に思っていますね。
(DJ YANATAKE)それでさ、そのさっきのカニエとタイダラとか、ビヨンセの三部作じゃないけども。4月の終わりにメトロとフューチャーがもう1枚、出すっていう。
(渡辺志保)ねえ。後半が出るっていうことでね。
(DJ YANATAKE)すごいですね。
(渡辺志保)いやー、ちょっとどうなっちゃうのかな?って思いますね。
(DJ YANATAKE)だからそれ以外のが吹っ飛んじゃっていて、かわいそうなんだけど。
(渡辺志保)そうそう。だからザ・ウィークエンドも元々、デビュー当時はドレイクにめっちゃお世話になってると思うんですけど。今回ね、ザ・ウィークエンドもこのメトロ&フューチャー側についてるような感じがありますから。そのへんの何かドレイクさんの人望っていうか。あとは「へー」って思ったんだけど。Navが……。
(DJ YANATAKE)ああ、フォローを外したとかね。
(渡辺志保)そうそう。とか。
(DJ YANATAKE)Navってレーベルは変わりなくっていう感じだよね?
(渡辺志保)そうそう。どうなっちゃうんだろう?っていうね。
(DJ YANATAKE)あと俺もちゃんと最後、追いかけられてないんだけども。一応、ドレイクがライブでコメントしたんだよね。このディスを受けて。
(渡辺志保)ちょうどドレイクがフロリダで、しかもリル・ウェインと一緒にステージに立つっていう日だったんですよね。で、私もちゃんとそこ、ディグってないんですけども。
(DJ YANATAKE)なんかその「ビッグ3」みたいなことに対するアンサー的な感じなのかな? 「世界で友達になれるやつは誰もいない」みたいな。
ドレイクの反応
(渡辺志保)「マジで俺は俺」みたいな感じですよね。きっと。いや、今年の初めだったかにドレイクってモス・デフにも「スーパーでかかってるみたいな音楽でしょう? あんなの、ラップじゃないでしょう?」みたいな感じのことバッサリ言われておりますし。彼もね、その前回の『For All The Dogs』の売り上げもちょっとあんまり芳しく。が、ツアーの売り上げはすごい好調っていう。それは21とかJ・コールとかと一緒にツアーしてるからっていうのもあるとは思うんですけど。ちょっとどうなっちゃうのかなって思いますよね。
(DJ YANATAKE)なるほどね。なんでそんなにドレイクが言われちゃうんだろう? ひがみみたいなのも、あるのかな?
(渡辺志保)うーん。でもなんか、やっぱり言いたくなるんじゃないですか。かつ、わかんないけども。これは私の妄想みたいな感じだけど。もちろんメトロとフューチャーはアトランタでずっと地道にやってきていて。ケンドリック・ラマーもコンプトンでずっとやってきたアフリカン・アメリカンなんだけど。ドレイクってトロント生まれで、ちょっと背景が違うんですよね。バックグラウンドが。だからそういうところも含めて「いけ好かないな」って思っている節もあるのかもしれないですよね。
(DJ YANATAKE)なるほどね。
(渡辺志保)あと今回も「じゃあビッグ3だとして、誰が一番なんだ?」みたいな。「ドレイクか? ケンドリックか?」みたいな時に、ドレイク擁護派はやっぱりヒット曲の数とか、No.1を取った楽曲の数とかでドレイクを擁護してるんですよね。「言うてもNo.1のアルバム、何枚もありますぜ。グラミー賞のノミネート、受賞歴がこれだけありますぜ」みたいな。でも逆にケンドリック擁護派は「そういうことじゃないじゃん? ラッパーの誇るべきところって、そういうコマーシャルなところじゃないじゃん?」みたいな。そういうのを見ていて、ちょっと面白いなっていう風に思いました。
(DJ YANATAKE)なるほどね。今後、またちょっと続報を……。
(渡辺志保)続報をね。来週……来週、ちょっとビヨンセの話が多めになっちゃうかもしれないですけど。何かしらね、動きはあるかと思いますから。
(DJ YANATAKE)J・コールはまだ何も声明は出してないのかな?
(渡辺志保)なのかな? どうなんでしょうか。
(DJ YANATAKE)まあ、ちょっと引き続き。でもこれ、アルバム・シングル同時1位になりそうなんで。また、それで話題にね。
(渡辺志保)で、やっぱりアルバム全体がすごいすごい骨太で。フューチャーのラップもどこを切ってもめちゃめちゃ鋭くて。やっぱりかっこいいなっていう感じだったので。まだ聞いてないという方はですね、まるっとアルバム1枚を……全部で60分ぐらいあるアルバムなんだけど。でもやっぱり私はアルバムは60分ぐらいあってほしいなって思うタイプなんで、嬉しかったですね。そんなこんなで熱く語り過ぎてしまったので1回、聞いてください。フューチャー&メトロ・ブーミンで『Like That feat. ケンドリック・ラマー』。
Future, Metro Boomin, Kendrick Lamar『Like That』
<書き起こしおわり>