赤坂アカ『かぐや様』連載中に『推しの子』原作も並行して始めた理由を語る

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『かぐや様は告らせたい』や『推しの子』の赤坂アカさんが2024年11月23日放送のJ-WAVE『TOKYO M.A.A.D SPIN』に出演。『かぐや様は告らせたい』を連載中であるにもかかわらず、『推しの子』という作品を原作者として立ち上げ、2本同時の週刊連載をスタートさせた理由について、話していました。

(鳥嶋和彦)それで手応えがあって。さらにこう聞くと……その連載の最中にもう1本。

(赤坂アカ)『推しの子』ですね。

(鳥嶋和彦)それが信じられないと思って。週刊連載を持っている人がもう1本、起こす。それも原作っていう形で。そのへんはどういうきっかけでやろうと思ったわけ?

(赤坂アカ)僕が結構、手が早い方なんで。書いた後に「この空き時間、僕はボケッとするだけだな」って思って。

(鳥嶋和彦)ちなみに何日、空いたの? 週刊連載で。7日、あるじゃない?

(赤坂アカ)半分は空いてましたね。

(桂正和)すげえ! マジか!? 俺と森田先生は1週間が8日だったんだよ。どんどんずれていくのよ。

週刊連載中に週の半分は空いてしまった

(赤坂アカ)わかります。一番最初の頃、『かぐや様』の1巻って絵柄が前作と比べて結構、荒くなってる部分があるんですね。これは週刊のスピードで回すための絵柄を変えたんですよ。

(鳥嶋和彦)なるほど、切り替えたんだ。でも逆に言うと、読者目線で言うと、見やすくなってる。なぜかっていうと一番ありがちな下手な書き込みをしてないから。ちゃんと空白も作るし、余白もあって。それから、ちゃんと余白があることによって、人物の表情が目に入るようになったから。

(赤坂アカ)ありがとうございます。だから『かぐや様』の1巻の場合だったら、なるべく線を太くして。で、アナログのタッチも入れるようにしようって。デジタルのやつを1回、プリントして。アナログのタッチを加えてからさらに読み込んで……みたいな。二度手間はしていたんですけども。

(鳥嶋和彦)だから、あれだよね。よく漫画家さんが言うんだけど、自分の作品以外にレベルの高い他の人の作品が載ってると、その中で自分の作品がどう見えるかっていうことはやっぱり気になるし、研究するようになるでしょい?

(赤坂アカ)絵柄がみんな、重いんですよ(笑)。

(鳥嶋和彦)なるほど。分かる、分かる。

週刊連載用に絵柄をチューニング

(赤坂アカ)なるべく、そういうタッチも増やしたりとかしなきゃいけないし。その中でも週刊に間に合わせなきゃいけないっていう。なんか絵柄をガラッと変えて。自分でもちょっと、あんまりその絵柄というのがしっくり来ない。しかもラブコメなんで、表情を見せなきゃいけないものだから、目も大きくしようとか、いろいろと……。

(鳥嶋和彦)そうすると、あれだね。週刊で書いて、なおかつ他と比べて目立つようにっていうことを考えながら仕事したってことだね?

(赤坂アカ)そうですね。「どうやったら戦えるか、埋もれないか」とか。そして何より「間に合うか」っていう。

(鳥嶋和彦)そしたら、半分も空くようになっちゃったんだ?

(赤坂アカ)そうです。

(桂正和)すげえなー!

(鳥嶋和彦)深く考えている(笑)。今までの漫画家人生を反省してる(笑)。

『かぐや様』を週刊連載するに当たって絵柄のチューニングなどを行い、それによって作品の読みやすさを確保し、他作品との差別化を達成。そして作業時間も大幅に短縮。結果として週の半分は空いてしまうようになってしまったという赤坂アカさん、とんでもないですね! 週7日なのに作業時間で8日必要だという桂正和先生がこれまでの漫画家人生を反省していたのが印象的でした。

そして『かぐや様』と並行して『推しの子』を立ち上げなくてはいけなかった切実な事情についても赤坂先生は話していきます。

(赤坂アカ)この話って、絵柄問題だと思うんですよね。これに関しては。

(鳥嶋和彦)それで?

(赤坂アカ)それで、僕は『かぐや様』、ギャグを評価していただいて。みんな、「ギャグを書け!」っていう感じの圧を感じてたんですけども、僕がやりたいのはシリアスだっていうのがちょっと心の中であったんですよ。で、「大変だ! このままでは『かぐや様』の中で人死にが出てしまう!」って思って。

(鳥嶋和彦)ああ、そうか。色をつけられたくなかったわけだ。

(赤坂アカ)まあ、それもありますし。自分の中で書きたい欲っていうのが……。

(鳥嶋和彦)書きたいのが要するにシリアスだったってことね?

(赤坂アカ)そうです。「このままじゃ、藤原が死んでしまう!」って思って。

シリアスを書きたいのに『かぐや様』ではギャグを求められる

(桂正和)だから、あれだよね。いい感じのコメディだったのが、急にひょっとして、下手したら死人を出すような展開にしてしまうかもしれないっていう欲望をを抑えるために、ちょっとシリアスなものを書こうってことですよね?

(赤坂アカ)発散場所ですね、これは(笑)。

(鳥嶋和彦)それで?

(赤坂アカ)それで、最初は「やりたいです、やりたいです」って言っていたんですけど。「ダメ、ダメ、ダメ、ダメ」って。

(鳥嶋和彦)担当の酒井くんが。

(赤坂アカ)そうです、そうです。「無理、無理、無理、無理!」って。

(鳥嶋和彦)まあ、言うわな。

(赤坂アカ)そうなんです。だから「漫画家さんとか捕まえてきてくださいよ」って言ってたんですけど「はい、はい。分かりましたよ」みたいな感じだったんですよ。

(鳥嶋和彦)スルーされていたわけね?

「シリアスなものを書きたい」という自身の欲求と、コメディで評価されている『かぐや様』ではその欲求を満たせないため、新しくもう1本作品を立ち上げる……理屈としてはわかりますけど、それを実際に実現させようと動くというのはちょっととんでもないですよね(笑)。そんな赤坂先生、作画担当の横槍メンゴを自身でスカウトしてきた模様をこんな風に話していました。

(赤坂アカ)それでもう、しょうがないからネームを書いて。(横槍)メンゴ先生に「ちょっとこのネーム、読んでくれませんか?」って。

(鳥嶋和彦)そのメンゴ先生とはどういう知り合いだったの?

(赤坂アカ)僕、結構古い知り合いで。本当に20歳前後ぐらいの時から。メンゴ先生がちょうど『クズの本懐』っていう作品を書き始めた頃ですかね。その頃に知り合って。で、そのメンゴ先生も今、ヤングジャンプにいらっしゃるっていうことで。で、「メンゴ先生、読んでください!」って言って。「えっ、何? 相談? 面白いじゃん」って言ってくれたんで「『面白い』って言いましたね? じゃあ、書いてくれませんか?」って。またバカのふりをして、ちょっと言ってみたんですよね。

(鳥嶋和彦)その「バカのふりして作戦」は、なかなかあれだね。ずっと有効なんだね。

「バカのふりして作戦」で横槍メンゴ先生を口説く

(赤坂アカ)そう。ずっと有効なんですよ、これ(笑)。そして「メンゴ先生を口説きました。酒井さん、ネームを書いてきました。連載会議、出してくれませんか?」って。

(鳥嶋和彦)その時の酒井くんのびっくり仰天ぶりって、相当だったんじゃない?

(赤坂アカ)でも「『かぐや様』を書きながら連載会議の準備、できるんだ」って言ってくれました。「ああ、できるならいいですよ」みたいな。

(鳥嶋和彦)ああ、そう? へー!

(赤坂アカ)そこからですね、『推しの子』は。

(鳥嶋和彦)それで、連載会議に出してくれたわけね。そうすると「『かぐや様』と2本、やれるのか?」っていうことを、やっぱりちゃんと説得できたわけだ。

(赤坂アカ)なんとか、できました。

(鳥嶋和彦)それで連載会議を通って。でも、2本連載ってほぼ……漫画と原作の2本って僕も聞いたことないよね。原作2本は聞いたことあるけど。梶原一騎さんがそうだから。

(赤坂アカ)僕が元々、ヤングジャンプに来た時には「原作者としてお願いします」っていう。一応、その、始まりだったんですよ。なんですけど「絵、描けるなら描いて」っていう感じだったので「じゃあ、書きます」っていう。

(鳥嶋和彦)じゃあ、シリアスであり、原作でありっていうのはバカのふりをしてやった赤坂先生の作戦成功で、本丸に行ったわけね。

(赤坂アカ)そうですね。割と本丸……本丸っていう感じでもないかもしれないんですけども、自分の心の声としては、真に近いところがある作品になりました。

この放送の前の部分で話していた「バカのふりしてお願いしてみて、やってもらったら大儲け」作戦を横槍メンゴ先生にも発動し、見事『推しの子』作画を担当してもらうことに成功した赤坂先生、すげえっす!

赤坂アカ「バカのふりをしてお願いしてみる」ことの有用性を語る
『かぐや様は告らせたい』や『推しの子』の赤坂アカさんが2024年11月23日放送のJ-WAVE『TOKYO M.A.A.D SPIN』に出演。学生時代、同人ゲーム制作を行う会社を起業したという赤坂アカさん。会社自体はうまく行かず、すぐに畳んでしまったそうですが、その時に学んだ「バカのふりをして声をかけたら、意外とみんなやってくれる」というスタンスについて、話していました。

「連載会議、出してください」といきなり言われた担当の酒井さんも相当驚いたでしょうね。赤坂先生自身が人任せにせずに全部自分で動くことで実現した2本同時週刊連載。しかも『かぐや様』も『推しの子』も結果的に大ヒット作品となったわけです。赤坂アカ先生、超人ですわ!

『TOKYO M.A.A.D SPIN』2024年11月23日放送回

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