坂口博信・鳥嶋和彦・堀井雄二『クロノ・トリガー』制作を語る

鳥嶋和彦『クロノ・トリガー』とVジャンプを語る TOKYO M.A.A.D SPIN

堀井雄二さん、坂口博信さん、鳥嶋和彦さんが2023年12月25日放送のJ-WAVE『ゆう坊とマシリトのKosoKoso放送局』の中で『クロノ・トリガー』制作を振り返っていました。

(鳥嶋和彦)それで、それぞれに競いながら出していて。それぞれのものを遊んでいて。それでね、ある時にクロノに至るんだけども。で、経緯は坂口さん、覚えているかどうかわからないけれども。堀井さんがドラクエのナンバリングを出していて。でも僕からすると「堀井さんはもっといろんなことがやれる」と思ってるんで。大変失礼だけど「ドラクエだけで終わっていいのか?」と思っていて。ちょうど鳥山くんも中世風のものじゃなくて、メカとか、動物とかそういうのも書きたいっていう。

で、キャラクターとメッセージの堀井さんと、ビジュアル、それから動きのスクウェアとを組み合わせて。それで鳥山くんが新しいのを書くんなら、すごくいいゲームができるんじゃないかと思ってね。で、ちょうどあのハリウッドでルーカス、スピルバーグ、カッツェンバーグのドリームワークスっていうのができるっていうんで。「ああ、これは面白いコンセプトだな!」って。ちょうど僕はもう、少年ジャンプを離れて、Vジャンプを創刊したんでね。Vジャンプで新しいものを立ち上げて、目玉にしたいっていうのもあって。「オールスターキャストでやりたい」って千田さんに言ったら……。

(坂口博信)どうでした?

(鳥嶋和彦)NO。

(坂口博信)そりゃそうですよね。そこは、どうやってクリアしたんですか?

(鳥嶋和彦)無視(笑)。

(坂口博信)無視なんだ(笑)。この人は本当に……(笑)。

(鳥嶋和彦)坂口さんはOKだったよね?

(坂口博信)僕はOKに決まってるじゃないですか。そんなね、堀井さん、鳥山さんと作れるなんてね。「今すぐやりましょう!」という話ですよ(笑)。

(鳥嶋和彦)話、最初に聞いた時、真面目に捉えました?

(坂口博信)ああ、もう一度、聞いちゃったから嘘とは言わせないっていうか。「一度、聞きましたよ?」ぐらいの感じですよね(笑)。いや、それはもうやるしかないっていう。

「ドラクエ+FF=クロノ・トリガー」

(鳥嶋和彦)で、それもさっきちょっと言ったけども。予定稿を用意していて。「ドラクエ+FF=クロノ・トリガー」っていうね。で、「世界最高のゲームが君を待ってるぞ」みたいな感じで予定稿を作って。で、最後、千田さんに一応コピーを送って。

(坂口博信)すごい。ひどい(笑)。

(鳥嶋和彦)で、千田さんがなんとかこうとか言ってきて。「ああ、わかりました。そうですよね。でも、出します」って言って。

(坂口博信)まあ、エニックス側はそうですよね。スクウェア側はもう万々歳ですよ。

(鳥嶋和彦)で、あの時、それでドラクエ、FFをそれぞれ展開してきた記憶で言うとね、ゲームがリリース直前まで、ちゃんとした画面は出せないじゃないですか。で、それこそ坂口さんと話をして。鳥山さんにいろんな要素の入っている1枚絵を書いてもらって。

(坂口博信)そうそう。あるシーンを切り取ったやつを。

(鳥嶋和彦)で、そこから抽出してゲーム画面にしていくっていう。「ああ、それは映画のスチールに近い考え方だから、それで行こう。それならポスターにもできるし」って。

(坂口博信)そうですね。6枚ぐらい、書いてもらいましたよね。

(堀井雄二)キャンプしている絵とかね。いろいろあったよね。

(坂口博信)原始時代とか。

(鳥嶋和彦)飛空艇に乗っているのとかね。

(坂口博信)あれはすごいよかったですね。

鳥山明のイメージイラスト

(鳥嶋和彦)でね、今思えばあれがね、鳥山さんの絵としては最高峰。一番上手い頃の絵だよね。

(坂口博信)あれが開発に来た瞬間とか、ざわめきましたね。

(堀井雄二)あれが何年ぐらい前だっけ?

(坂口博信)ええと、作っていたのが何年だ?

(Naz Chris)出たのが95年ですね。

(坂口博信)じゃあ93年ぐらいとかですかね。ちょっと時間かかって。あれは2年ぐらいかかっていると思いますね。鳥山さんの絵が来たのはたぶん93年後半とか94年の頭とかなんですよね。

(鳥嶋和彦)堀井さんもさっき言っていたけども。初めての顔合わせが、六本木の全日空ホテルで。堀井さんと「すごいね。こんなところで」って(笑)。

(堀井雄二)あのね、エニックスは結構、合宿をやったんだけども。トレンディ東大島とかね、合宿所みたいなところでやるから。

(鳥嶋和彦)そうそう。しょぼいんだよね(笑)。

(堀井雄二)自分で配膳するみたいなところでやっていたから。「おお、ホテルだ」って。

(鳥嶋和彦)僕もさ、「マジか。スクウェアってなんで、こんなバブルなの?」って。

(坂口博信)あそこはたぶん、うちの宮本社長が使ってたんですよ。

(鳥嶋和彦)ああ、定宿だったわけ?

(坂口博信)もう時効ですかね。だからソニーとの打ち合わせも全日空ホテルで。僕、3日ぐらい泊りがけで。「本当に組むのか? 組むとしたらじゃあ、何が起こせるのか?」みたいな会議をやっていましたね。

(鳥嶋和彦)じゃあ、あそこでプレステへの参入も、『クロノ・トリガー』のキックオフミーティングも?

(坂口博信)もう全部、全日空ですね。で、何かあって。社長が僕に何かお願いするとかがある時は、あそこの鉄板焼き屋に連れていかれました。「また何か、言われんのか。めんどくせえなー」とか思いながら。「鉄板焼きですか? わかりました。行きます」とかって言って(笑)。だから、あそこでしたね。

(堀井雄二)あそこで、ラスボスをどうするか?って打ち合わせをして。

(坂口博信)ああ、ラヴォスですね。ラスボスの設定みたいなね。

(堀井雄二)それで「ちっちゃくて強いやつで。時間が好きだから、いろんな時間で戦えるようにしよう」とか。いろいろと決めた記憶があるな。

(坂口博信)そうですね。

(鳥嶋和彦)それで一応、大元のところ、根幹は決まったんだね。

(坂口博信)そうですね。もちろん、タイムマシンものっていうベースがあって。できたらね、各時代でラヴォスがいて。本当はいつの時代で倒してもいいみたいな、そんなアイディアもあったけど。実際はなかなか難しいですもんね。そういうアイディアってね。

(鳥嶋和彦)で、鳥山さんもね、カエルとかロボットとかを書けるので、すごい楽しそうだった。

(坂口博信)ああ、カエルもあんな正統派で来るとは思わなかったですけどね(笑)。

(鳥嶋和彦)あんなリアルなカエルだとは思わなかった?

(坂口博信)なかなか、はい。

(堀井雄二)結構なカエルだったよね(笑)。

(坂口博信)もうちょっと着ぐるみ感のあるやつかなって思っていたら。

楽しそうだった鳥山明

(鳥嶋和彦)でね、ある時にその途中のROMを持って、鳥山さんのところに見せに行って。でね、実はいまいちだったんだよね。内容が。

(坂口博信)ああ、まあちょっとね。あんまりよくなかったんですよね。

(鳥嶋和彦)で、名古屋に着いて。カセットを挿して鳥山さんに見せるっていう直前で坂口さんから電話があってね。「悪いけどそれ、見せないで持って帰ってきてもらえますか?」って言われて。でね、僕はものすごくほっとしたの。「中身がいまいちなんで、僕が入って作り直します」って。

(坂口博信)FF6がちょうど終わったんで。6チーム半分ぐらいを引き連れて、元のチームと合体して……っていう感じで最後、やっつけましたね。

(鳥嶋和彦)いや、前から信用してなかったわけじゃないんだけど。初めてね、心の底から信用できるやつだなって思ったね。

(坂口博信)いやいや、最初から信用しようよ(笑)。まあ、せっかく鳥山さんも堀井さんも入ってね。やっぱり本当にいいものにしないと、もったいないですもんね。

(鳥嶋和彦)結果、あれは200万本を超えたんだよね?

(坂口博信)結構行きましたよね。

(堀井雄二)結構売れたと思うよ。

(坂口博信)ねえ。今でもなんか、人気あるじゃないですか。

(堀井雄二)海外でも売れたからね。

(坂口博信)そうですよね。

(鳥嶋和彦)なんか、あれでしょう? ファミ通の平成のベストゲームで1位になったっていうね。

(坂口博信)ねえ。だから、海外も人気あるみたいですね。いまだにね。

(鳥嶋和彦)結構長いこと、支持されてるゲームだったね。

ファミ通 平成のゲーム最高の1本で第1位に

(坂口博信)本当ですね。意外といえば意外。だって「平成の」って言ったら、もっといろいろいっぱいあるじゃないですか。

(鳥嶋和彦)今、エニックスとスクウェアが一緒になったんだから、クロノ2は簡単に出せそうなんだけどね(笑)。

(坂口博信)どうなんですかね? 鳥嶋さん次第じゃないですか。鳥山明さんを、ねえ。

(鳥嶋和彦)いや、僕も神通力はないですから。

(坂口博信)神通力はなくても、いいイラストはできるかもしれないですよ?(笑)。

<書き起こしおわり>

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