鳥嶋和彦さんが2023年9月25日放送のJ-WAVE『ゆう坊&マシリトのKosoKoso放送局』で声優の野沢雅子さん、東映アニメーションの森下孝三さんを迎えて『ドラゴンボール』シリーズの17年ぶりの劇場映画『ドラゴンボールZ 神と神』が作られたきっかけを話していました。
(鳥嶋和彦)そうこうしたらね、『ドラゴンボール』。漫画も終わり、アニメーションも終わり。それで、僕は不本意だったけど『GT』もやり(笑)。まあ、バンダイさんとかフジテレビとか東映アニメとか、いろんなお世話んなっているところがあったから。で、それも終わり。で、僕も現場を離れて数年して。ある時、森下さんが……今、こんなにお元気そうですけど。ちょうど12年ぐらい前かな?
(森下孝三)そう。12、3年前だね。
(鳥嶋和彦)ものすごい顔色が悪くて。病気だって知っていたからね。で、僕のところにやってきて。「鳥嶋さん、僕、明日入院するんです」って。「ああ、それは大変ですね」って。正直、僕はもう森下さんには会えないと思って。その時の顔色とかで(笑)。そしたら、そこで「森下さん、何しに来たんだろう?」と思うじゃないですか。明日、入院するのに。「いや、これで僕が無事、病院から戻ってきたら『ドラゴンボール』の映画、1本作らせてほしい」って。で、僕は大変申し訳ないけれども。「戻ってこない」と思っていたから「ああ、いいですよ」って気軽に約束して(笑)。そしたら、しばらくしたら森下さん、数カ月後に元気に戻ってきて(笑)。「ええっ?」ってなって。「鳥嶋さん、あの時の約束、覚えてますよね?」って言われて(笑)。で、映画を数年ぶりに作るってなって。
(森下孝三)それが『神と神』だね。10年ぶりのね。
(鳥嶋和彦)10年ぶりぐらいに映画を作って。で、鳥山さんにオリジナルっていうか、シナリオを総チェックしてもらって。ほぼ全部、書きかえみたいな感じになって。鳥山さんのオリジナルの形になって。
(Naz Chris)それが『神と神』。
(鳥嶋和彦)いやー、まさかね。あの時のうっかりの一言が……。
(森下孝三)今、4本続いているのかな?
うっかりの一言で『神と神』が作られることに
(Naz Chris)劇場版を作るのって、どれぐらいかかるんですか?
(森下孝三)でも早い時は8ヶ月ぐらいかな? まんがまつりの頃はね。
(鳥嶋和彦)『神と神』はどれぐらいかかりました?
(森下孝三)『神と神』は2年ぐらいかかってますよ。
(Naz Chris)2年ですか。
(野沢雅子)すごいかかるんです。
(森下孝三)ねえ。OKをもらって。先生のあれを待って、ずっと作から。
(鳥嶋和彦)2年、ずっとスタッフを確保するのは大変ですよ。
(野沢雅子)もう、ちょっとのことでも私の耳には入れないようにって。ちょっとね、スタッフが「野沢さん、今度の映画ですね……」って言ったらスタッフが走ってきて。「やめてください! 野沢さんの前では何も言わないでください!」ってなって。もう何も知らないで……私は悟空でやっぱり出たいんですよ。
(森下孝三)それがあったからね。この間、やった『SLAM DUNK』があったでしょう? あれはね、14年ぐらいかかっているの。
(Naz Chris)14年ですか!
(野沢雅子)大変ですよね。1本、出来上がるのには。
(森下孝三)ほら、もうずっと、粘りに粘って。
(鳥嶋和彦)でも『ドラゴンボール』は10年ぶりに作った時、スタッフってもう1回、どうやって集めるんですか?
(森下孝三)でもね、山室さんがセンターで。小山さんもいたし。だから、あれじゃない? 全然変わらずできたんじゃない? スタッフは。中鶴もいたし。ちょうど脂が乗りきった人たちがいっぱいいたから。
(鳥嶋和彦)今、言っていた中鶴さんって、鳥山さんがたった1人、認めた原画マン。
(Naz Chris)ああ、あの例の、呼び戻された?
(鳥嶋和彦)そうそう。だから「森下さんじゃないと使えない」って言われて。仕事が遅くて。ただ、鳥山さんの絵ってシンプルなんだけど、意外と難しくて。特にこのほっぺの線をちゃんと柔らかく書けないの。そうすると、全くキャラクターが似ない。で、森下さんが「この人しかいない」って中鶴くんを連れてきて書かせても、上手いんだけど。今の人より圧倒的にね。でも、やっぱりちょっと違うんですよ。で、中鶴くんが森下さんにお願いして。「鳥山さんが線を書くところを1回、ぜひ見せてほしい」と。で、鳥山さんの仕事場まで行って、悟空の顔を書くところを何回か見せてもらって。それで彼が「ああ、わかった」って言って。それで鳥山さんがOKのラインで書けるようになったっていうね。
(Naz Chris)すごい話ですね。
(森下孝三)すごい勉強家なんだよね。スケッチブックを持っていってね、先生にね、全部キャラを書いてもらって。近藤さん……鳥嶋はいなかったっけ?
(鳥嶋和彦)近藤が担当で。僕も付き合って。近藤くんっていうのは僕の後の担当でね。
(野沢雅子)みんな、楽しんでね、笑って見ているけれども。大変ですよ。作るのはね(笑)。
(森下孝三)昔は今みたいにシステムがきちっとしていないんですよ。集英社もうちも。で、今の映画の話もそうなんだけども。まんがまつりって春と夏、やっていたじゃない? で、鳥嶋さんが当時、うちの役員だった有賀さん。
(野沢雅子)有賀さん! 有賀さん、怖かったねー!
(森下孝三)で、鳥嶋さんが「もうやらせない」って言ってさ。シュンとして来たんだよ。「森下くんさ、なんかもう夏はダメだって。東映は。もう組んじゃっているって」ってなるわけ。
(鳥嶋和彦)それで言うとなんでダメかっていうと、当時、大変申し訳ないけれども。東映が「これをやる」って言ったら、東映アニメは下請けで映画を作るわけ。そうすると、集英社が鳥山さんに「キャラを描いてくれ」って言ったり、ジャンプが宣伝するとか、シナリオチェックするとか、いろいろするのに数百万しかお金が入ってこない。それなのに、東映は感謝の気持ちがないわけよ。
(野沢雅子)「感謝の気持ち」(笑)。
(鳥嶋和彦)でね、「これじゃ割に合わない」って。で、当然、その頃には僕もいろんな知恵がついていて。小学館の事例とか、いろいろと聞いて。で、森下さんと相談して。で、そういうNOの時にどう言えばYESになるかっていう知恵を森下さんが出したんだよね。「鳥嶋さん。東映アニメも出資するから、集英社も出資しませんか? フィルムに」ってなって。それで今の形になって。そうすると、いろんな人が出した分だけ儲かる。そこでね、僕は「ああ、さすが森下さんだな」って思ったのは「バンダイとフジテレビにも声をかけましょう。そうすると、子供たちが来る時のグッズも、前売りで渡すグッズもいいものになるし。フジテレビも映画の番宣をしてくれます」っていう。それで今に至る最強の組み合わせができて。
(森下孝三)『神と神』ぐらいからね。だから、『神と神』の枠組みは成功しましたよね。
集英社、東映アニメ、バンダイ、フジテレビが共同出資
(鳥嶋和彦)そういう意味で言うと、やっぱりアニメーションを通して学んだのは、どんなに原作が素晴らしくても、関わる人と関わる企業がチームを組んでやらないと盛り上がらないんですよね。声優さんを含めてね。チームですよね。
<書き起こしおわり>