堀井雄二 ドラゴンクエスト6・7を語る

堀井雄二 ドラゴンクエスト6・7を語る TOKYO M.A.A.D SPIN

堀井雄二さんが2023年8月28日放送のJ-WAVE『ゆう坊とマシリトのKosoKoso放送局』の中で『ドラゴンクエスト6』と『ドラゴンクエスト7』の制作について話していました。

(Naz Chris)堀井さんが最初、ドラクエを作ろうってなった時って、堀井雄二らしさもまだ、どこにも……世には出てないし。その「◯◯らしさ」がない中で、結構自由に作れたもんですか?

(堀井雄二)自由に作れたんだけども。実は一番のあれは容量と性能の問題があるんで。そこはすごくね、工夫したよね。

(鳥嶋和彦)それは取材したり、記事を作ってる途中でも、堀井さんから聞いた。結構、容量との勝負で。ギリギリまでね。

(堀井雄二)64KBだからね。そこに音楽とね、マップデータとかモンスターデータとかグラフィックデータ、全部入れて。セリフも入れてっていう感じだから。

(Naz Chris)スマホの写真1枚よりない容量っていう(笑)。

(堀井雄二)全然ないよ。スマホの写真、2MBとかあるからね。

(Naz Chris)一番削いでいった要素っていうのは何ですか? 「これはもう落とす」っていうのは?

(堀井雄二)やっぱり1人プレイ。1人冒険。あとアイテムの関係も15種類とかね。15種類だと4ビットで済むとかね。ビット計算とかまで全部して。

(Naz Chris)じゃあもし、そこで余力があったら1人パーティーじゃなかった可能性もあった?

(堀井雄二)だからそれが2になっていくわけ。

(Naz Chris)ああ、それは次でやろうと。

(堀井雄二)それで容量が2倍になったから。「じゃあ、パーティーが作れるわ」とか。

(鳥嶋和彦)でも結果ね、それがすごくなんだろう? RPGに親しむとか、シンプルなところから複雑なところに入っていくっていうのは結果オーライになっているっていうので。さっきの橋野さんもね、中学生の時にお感じになったでしょう? 堀井さんの1の完成度が高かったから。だから2が出せたし、だから3に繋がったしね。で、作っていて、「これ、大丈夫かな?」って迷う時とか、行き詰まる時って、やっぱりあります?

(堀井雄二)いや、あったと思うんだけどね。「これ、面白いのかな?」っていうのが。でもなんか、そういう時にいろいろとやっていて、人から「面白い」って言われた一言がね、自信持ったりするんで。時々、わかんなくなるんですけどね。

(Naz Chris)あるんですかね? わからなくなる時が。

(堀井雄二)特にね、6、7ぐらいからわからなくなるんだよね。やっぱりその、期待値がでかいから。

(鳥嶋和彦)ああ、それはそうだね。というか、「面白くて当たり前」って言われても、困るよね。

(堀井雄二)そうそう。

(Naz Chris)6、7あたりからですか。

(堀井雄二)そうだね。

(鳥嶋和彦)逆に5までは全然悩まなかった?

(堀井雄二)結構、いろいろとやりたいことがいっぱいあって。パーティープレイをやりたいとか、章立てにしたりとか、ゲームで本気で悩ませたいとかね、いろいろとあって。で、6の時には「自分探し」が流行ったの。世間的に。だから、そういうゲームにしようと思って。夢と現実世界で自分を探すっていうのを作ったんだけど。

(鳥嶋和彦)ハッサンが出てくるやつ。いまだに覚えている。

(堀井雄二)あれは結構ね、いろんなことを入れたけれども。

「自分探し」がテーマの『ドラクエ6』

(Naz Chris)その夢と現実で本当の自分っていうのを分けたっていうのはなにか、あったんですか?

(堀井雄二)「本当の自分を探そう」みたいな。で、一番困ったのは、探して合体した後にさあ、どうするんだ?っていう。そこからボスを倒しに行くのに、どういう風に話を持っていくのか?っていうのに一番悩んだね(笑)。

(鳥嶋和彦)フフフ(笑)。でもさ、それは連載漫画と一緒で。とりあえずは面白そうな方向に突っ込んでいくけど、最後は辻褄合わせになっていくんだよね。でもそれは自分でやったものを自分で見ながら、それをどう拾っていくか? そこはプロの作業だよね。だから、本当にそこはね、つらい作業だけど。でも、その思考過程が作品を熟成させていくんじゃないかな?

(橋野桂)ちょうどドラクエ7からたしかプレイステーションフォーマットだったから、たぶん容量があまり気にしなくていいことになりますよね? 突然。

(堀井雄二)そうそう。

(橋野桂)容量が決まっていると、だから引き算をしなきゃいけないんですよ。なんですけど……僕もだからサターンとかプレイステーションになってプログラマーから「橋野くん、もう容量を気にしなくていいから」みたいな、夢のようなことを言われるんですけど。「気にしなくていい」って言われた瞬間に、どこまで作っていいのか、わからなくなるっていうのはあって。

(鳥嶋和彦)ああ、そうだよね。

(橋野桂)堀井さんはそこで悩まなかったですか?

(堀井雄二)でも7はね、はっきり言って作りすぎた。容量が逆に増えたから、ゲーム時間もすごい増えちゃったし。やる方も大変だったと思うんだよね。発売日も2回ぐらい延びたんじゃない?

(鳥嶋和彦)ああ、あれは7の時か。

(堀井雄二)そう。「出ますよ」っていうのが……。

(Naz Chris)でも『エデンの戦士たち』の時はたしかに……。

(堀井雄二)あの時は俺、ちょうど『MYST』にハマっていて。謎解きの。でね、7はそれの影響で、戦闘をするまでに1個、謎を解くことになっちゃってね。

(Naz Chris)そういうことだったんですね。

(橋野桂)『MYST』の影響だったんですか?

(堀井雄二)そうそう(笑)。

『ドラクエ7』に影響を与えた『MYST』

(橋野桂)結構やっているゲームの影響を受けるんですか?

(堀井雄二)受けちゃって(笑)。

(鳥嶋和彦)僕、始めて聞いたよ。「ああ、そうか。『MYST』っていうゲーム、あったな」って。

(堀井雄二)そうそう。あの時、面白いなって思って。

(鳥嶋和彦)あのちょっと不思議なゲームね。

<書き起こしおわり>

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