野田クリスタルさんとランジャタイ国崎さんが2023年12月10日放送のABCラジオ『M-1ラジオ~〇〇のチカラ~』の中でM-1グランプリで吉本芸人が席巻していた時代を振り返り。その理由や現在のような誰が勝ち上がるかわからない状態への移行について話していました。
(野田クリスタル)まあ去年がランジャタイはラストイヤーということで。M-1が終わったわけですけども。どうですか? 終わってからのM-1グランプリっていうのは。楽しめてますか?
(国崎和也)そうですね。やっぱり自分が思い入れのある、応援しているコンビがことごとく今年は落ちてましたね。
(野田クリスタル)ああ、気持ちがいいですね(笑)。結構ね、聞いている人とか、あんまりお笑いが好きじゃない、興味がない人とかはね、勝手なイメージで。「吉本は吉本を応援するんだ」とかね、「身近な芸人を応援する」みたいなイメージがあると思うんですけども。縁もゆかりもない人に優勝してほしいですからね。基本的には(笑)。
(国崎和也)フハハハハハハハハッ! 「こいつ、誰なんだ?」っていう人に(笑)。
(野田クリスタル)友達が優勝するとね、嫉妬しちゃうんで(笑)。基本的には誰1人として上がってほしくない。周りの芸人は(笑)。蹴落とす、蹴落とすで。
(国崎和也)毎度毎度、チャンピオンは更新されていきますもんね。
(野田クリスタル)そうなんですよ。まあ、そんな感じでですね、「◯◯の力」というテーマで話しているんですけども。そうか。国崎はNSCに入って。
(国崎和也)そう。僕は入りました。ああ、そうだ。野田さんは入ってないんですか?
(野田クリスタル)そうなんですよ。で、国崎はそれからソニーに行き、オフィス北野と渡り歩いて、現在はグレープカンパニー。サンドウィッチマンさん、永野さんが所属しているという。
(国崎和也)そうですね。永野さんの。
(野田クリスタル)ここでは「事務所の力」っていうのを掘り下げていくらしいんですけども。これはちょっとリアルな話ですね。今はあれですけど、昔はもしかしたらあったかもしれないみたいな話もしていったら、興味ある人も多いと思うし。ひた隠しにする方がいろいろ気持ち悪いので。僕らも別にね、詳細の方を知っているわけじゃないんで、あれですけども。去年の決勝進出者なんですけども、タイタンが2組(ウエストランド、キュウ)。人力舎が1組(真空ジェシカ)。で、他の7組が吉本であるという感じなんですけども。よく世間は「吉本ばっかりだ」みたいな話がありますが。まあ、芸人の数の割合で言えばこんなもんだっていうのもありますけども。昔は結構、吉本が勝つイメージがありましたよね?
(国崎和也)そうですね。他事務所はだから1組ぐらいっていうのがありましたけども。
(野田クリスタル)そんなイメージでしたけども。吉本から上がってくる決勝進出者も、吉本っぽくない人が出てきて。去年のロングコートダディとか、男性ブランコとか、ヨネダとか、カベポスター、ダイヤモンドとか。みんな吉本っぽくないですね。「こいつら、吉本じゃねえぞ」っていう。
(国崎和也)擬態しています(笑)。
(野田クリスタル)吉本に擬態した他の感じの……(笑)。
(国崎和也)たしかに。吉本のお笑いじゃない感じも……昔の準決勝、準々決勝って吉本以外はほぼほぼ受けなかったっていうイメージがありまして。
(野田クリスタル)たしかにね。
(国崎和也)だから、順当ですよね。決勝に行ったら「そりゃそうだろ」っていうぐらい、他事務所は1組ぐらいしか上がってなかったり。
昔の準々決勝、準優勝は吉本芸人しか受けなかった
(野田クリスタル)まあそもそもね、あんまり愚痴を言うもんじゃないけど。ルミネtheよしもとで予選を開催したりとか。で、MCが吉本の人間だったりとか。基本的にはやっぱり吉本興業というものの土台の上で成り立っていた大会ではあったと思うんですよ。最初はね。で、決勝の審査員も審査委員長の……もう名前は出せない人かな?(笑)。名前を出せない人と、ねえ。松本さんっていう二大トップがいましたから。ちょっとね、「吉本に有利に動くんじゃねえの?」みたいなノリがあって。でも、どうなんですか? NSCに行っていたとはいえ、吉本じゃない事務所にいた暦の方が長い国崎さん的にはこの「吉本が受けるな」みたいな感覚はありますか?
(国崎和也)なんでしょうね? やっぱり劇場、箱があるっていうのがめちゃくちゃ強いなって。他事務所の人たちって、毎回普通の野良ライブに出てるんですよ。で、野良ライブで受けて……本当に10人、20人のところで受けてきているから。500キャパとかを知らないんですよ。
(野田クリスタル)本当にそうだよね。俺もそうだったけど。なんか、笑いの想定が狭いんだよね(笑)。なんかもう全部、隅々まで見てくれる想定でやっているっていうか。もうだってさ、地下ライブに振来るようなお客さんはさ、椅子の背もたれに背をつけずに、前のめりで見るじゃん? だから「全部、見逃してたまるか!」っていう目で見るから、こっちもそれに合わせちゃって。「どんなちっちゃいボケでも入れてやるぞ!」みたいな。そういうの、あるじゃん?(笑)。
(国崎和也)あります(笑)。
(野田クリスタル)でもそれがさ、M-1準決勝とかになった時にさ、悪いけどみんな、椅子の背もたれに背中がついちゃっているから。結構腕を組んで見ていたり、審査員目線で見たりするから。
(国崎和也)だからその箱っていうのがデカかったっすね。ちょむ&マッキーさんって、いたんですけど。なかのZEROホールの地下でやっていた時に、全員が特殊な長細い板の上でやっていたんですよ。バンバン音が鳴るような。で、その後ろの方に隙間があったから、そこに隠れていたりしたんですよ。で、隠れてから出てくるっていう笑いを取っていたんですね。裏口を回って一瞬でワープするみたいな。ワープ漫才っていうのをやっていたんですけど。それがM-1っていう舞台になると、ちょむ&マッキーさん、当日になって「隠れるところがない!」って気付いたっていう(笑)。「後ろに穴がない!」ってなったって(笑)。
(野田クリスタル)「詰んだ!」って(笑)。
(国崎和也)で、ワープして一瞬で行きたいんですけど、ものすごい時間がかかるんですよ(笑)。それで落ちていたりしたから。やっぱりその「箱」っていうのが盲点でしたね。
(野田クリスタル)あと細かいところで言うと、吉本って出囃子が流れながら登場するんですけども。他の事務所とか普通のライブだと、出囃子が鳴り終わってから登場するからね。そういう違いはありますよね。あれ、出囃子が「Because we can, can, can♪」っていう状態で出るのって、俺は吉本に入った時に最初、そこに違和感があったな。
出囃子途中での登場の違和感
(国崎和也)そうか。鳴り終わってからみんな、登場しますね。
(野田クリスタル)そうそう。むしろさ、出囃子っていうものにすごい熱を注いでるのって、吉本興業だから。出囃子文化じゃん?
(国崎和也)たしかに、そういうのはありますね。
(野田クリスタル)でも最初の、前期M-1、2010まで。前半の方は本当に正直言うと「吉本のものだな」っていうか。もっと言うと、「関西の吉本のものだ」っていう印象があって。東京からだってピースさんぐらいしか行けてなかった時代で。
(国崎和也)ああ、そんな時代があったんですね。
(野田クリスタル)どうしてもやっぱり笑い飯さん無双時代っていうか。2010まではね。
(国崎和也)まあ、すごいですよね。
(野田クリスタル)「吉本みたいな漫才をすると強い」みたいな感じもあったかもね。他の事務所の人もね。テンポがいい、小気味よい漫才みたいなのがね。
(国崎和也)イレギュラーがまだ認められていなかった時代だったかもしれないですね。
(野田クリスタル)本当になかった。正直、マヂカルラブリーが決勝に行くイメージ、全くなかったから。
(国崎和也)ああ、本当ですか?
(野田クリスタル)俺は無理だなって。決勝に行っても恥をかくだけだな、ぐらいのつもりで思っていたから。
(国崎和也)その時、受けてはいたんですか?
(野田クリスタル)ええとね、寄席は受けるのよ。寄席はね、お笑いファンが……昔の方がやっぱりコアなファンが多かったから。だって「M-1っていうのは決勝から始まってるものだ」っていう風に思われていた時代だから。今はだいぶ、もうポップになって。それこそね、敗者復活がもうテレビで流れている時代だからね。
(国崎和也)ああ、昔は流れてないですもんね。そうか。昔はだから、「M-1のその日の最下位が日本の最下位」みたいな(笑)。
(野田クリスタル)この世で一番面白くないやつみたいな。ザ・パンチさんとか。この世で一番つまらない漫才みたいな。
(国崎和也)「ちょっちょちょーっす」って(笑)。
(野田クリスタル)「ちょっちょちょーっす」「つまらない」って(笑)。
(国崎和也)明確に言われて。面白いけどなー。
(野田クリスタル)で、ここ数年のM-1グランプリは……前まではM-1ってテレビの方が強かったというか。その、力関係が。だから、やっぱりM-1も視聴率を取らなきゃいけない。結局、テレビ番組だから。なので正直、ちょっと看板になる芸人も上げなくちゃいけないみたいな空気はあったと思うの。どうしても。「この人が出ていないと、そもそもM-1というものが続かないし、見られないから。だからこの人は出して当然だ」みたいな。だからこそ、「M-1の決勝、誰が上がるんだろう?」っていうのは昔は予測ができたんだよ。だけど今はM-1の方が力が強いのよ。テレビよりも。やれば視聴率を取るし。極端な話、決勝進出者が全員無名でも、同じ視聴率を叩き出す。M-1ってものが1個、ワールドカップだとかオリンピックみたいな風になってるから。始まれば、もうみんな見るのよ。だから、審査が超シビアになったわけ。そうなると、誰が決勝に行くか、1個も当たらなくなった。もう。
M-1がテレビより強くなり、審査が超シビアに
(国崎和也)いや、そうだと思います。僕たちだって去年、ラストイヤーとかだったから。「M-1さーん?」とか、かなり思ってたんすよ。
(野田クリスタル)「ラストイヤーだし、前年も決勝に行ってますよ?」っていう。
(国崎和也)そう。「ラストイヤーで決勝に行ってるんだから。準決勝は、あれをやって……」みたいな(笑)。
(野田クリスタル)わかるよ。それはたぶん、昔の感覚なのよ。
(国崎和也)そしたらもう、去年は軒並み、準々の段階で「M-1はそんなんじゃないです」ってなって(笑)。
(野田クリスタル)強すぎる(笑)。だから俺、今のM-1は、怖い。優勝しといてよかった。怖すぎる!
(国崎和也)たしかに。今年、だから去年の決勝進出者が軒並みいない可能性、ありますからね。
(野田クリスタル)本当よ。もう誰も知らないやつになってるかもしれない。
(国崎和也)すごいですよ。M-1。今、情緒不安定(笑)。
(野田クリスタル)フフフ(笑)。むしろもう「俺は面白いやつしか、上げません。知っている、知らないは関係ない」っていう。だから今のM-1はたしかに、そりゃあ面白いというか、レベルが高いですよ。
(国崎和也)だから大変だと思いますね。何年連続で行ってる子たちとかも。
(野田クリスタル)そうだね。だって次に行けるとは限らないんだから。全員。
(国崎和也)そうですよね。その年に面白い順で決まってますから。
(野田クリスタル)そうそう。誰が落ちるかわかんないよ、もう。
(国崎和也)大変ですよ。
<書き起こしおわり>