小沢健二さんが2023年9月30日放送のTOKYO FM『土曜日のエウレカ』に出演。麒麟川島さんと東京大学の学生時代、副業的なノリでアーティスト活動をしていた際に学んだことを話していました。
(ナレーション)小沢健二さんは1989年にフリッパーズ・ギターとしてメジャーデビューし、91年に解散。ソロとして活動を始めたのは1993年。先ほどから話に出ているアルバム『犬は吠えるがキャラバンは進む』はこの年の作品です。
(川島明)このラジオ、皆さんにそもそもの話も聞いてるんですが。ちょっと振り返っていただきたいんですが。小沢さん、1989年。34年前でございますけども。
(小沢健二)いつだ?っていう(笑)。
(川島明)21歳の時にフリッパーズ・ギターとしてメジャーデビューというところになるんですが。
(小沢健二)まさにこれ、大学……駒場に通ってる時ですよ。
(川島明)そうか。東京大学に通いながらの。
(小沢健二)通いながらの副業ですね。
(川島明)フリッパーズ・ギターが。
当時行っていた「エゴサ」
(小沢健二)それでやっぱり当時、ネットなんかない時なので。でもですね、今の若い方も安心してほしいんですが。当時のエゴサというのは、あれなんですよ。「自分が出てる雑誌を見に行く」っていうのがあって。で、学校の購買に読みに行くんですよ。インタビューを受けた後とかに(笑)。
(川島明)自分が載っているのを(笑)。それ、購買で立ち読みですか?(笑)。
(小沢健二)立ち読み(笑)。
(川島明)買わない?
(小沢健二)で、購買でこうやってエゴサをしてるんですよ。CDを出した後とかは『CDジャーナル』とか。なんかいろいろあるんですよ。それでチェックして。「こいつ、こんなこと言っている」みたいな(笑)。めっちゃかっこ悪いんですよ(笑)。
(川島明)編集されて、ちょっととんがったこと言ったり。かわいい写真があったりとか。
(小沢健二)そうそう。なんかそれを見たりするのをやっていると……なんかね、その時に感じたのは先生にちょっと目をつけられちゃうみたいなのがあって。特に、大学の先生でちょっとタレントになりたい大学の先生もいるわけですよ。テレビとか出たいな、みたいなタイプの人。
(川島明)いろんな先生、出てましたね。当時、テレビにね。予備校の先生とかもですけども。
(小沢健二)で、そういう人とかは結構、なんていうのかな? 僕がその、大学生でありながらそれこそ、いっぱいかわいい写真を撮っていたり。ファッション雑誌にいっぱい出てて、みたいなのを……そんなの、知らなくていいのに勝手に知ってて。
(川島明)もう向こうもリサーチしてるわけですね?
(小沢健二)よくわかんないんですよ(笑)。「なんか学生に1人、いるらしいぞ?」みたいな(笑)。
(川島明)どんな感じやったんですか? フリッパーズ・ギター、確実にステップアップされて。ドラマの主題歌にもなり。いろんなところで、コマーシャルにも流れて……というところと、なんていうか、素の小沢健二との乖離というか。これ、どんどん離れていくという感覚はなかったんですか?
(小沢健二)それはなんか、あれですね。これはでも割と、年齢が上がってくるとやっぱりすごく、なんて言ったらいいのかな? 真面目になってきますよね。ちゃんとお話しよう、みたいなことは思うんですけど。たとえばじゃあ、フリッパーズ解散したどうのこうのとかっていうとさ、必ず僕と小山田っていうその「本人」に目が向くわけですけど。だいたいのことは周り……っていうか、「大人」によって起こるっていうか。周りの大人っていうのがいるじゃないですか。僕ら、21とか22とかで。それは芸人さんの世界とかでもそうだと思うんですけど。周りっていうのがいるんですよね。大人っていうのとか、芸能界とか、音楽ビジネスとか。で、その人たちは見えないことになってるんだけども、本人たちにとってはめちゃくちゃでかいことなんですよ。今のミュージシャンでも、昔のミュージシャンでも、今の芸人さんでも、昔の芸人さんでも。
で、イメージを作るとか、表を作っていくみたいなことに夢中になってるっていう。その、表面を取り繕うっていくというか。それがすごい気になりました。それは、やっぱりデビューして思ったことで。で、イメージ……パブリックイメージとかっていうもの。実はこの東大の講義も「イメージの影響学」っていう正式タイトルでやるんですけど。「イメージって何なんだろう?」っていうのはもう本当に、デビューして自分が写真撮られた瞬間からすごく考えました。で、漠然とイメージって言われるものについて、やっぱり社会学的に考えたいとか、政治的に考えたいとか。それはずっとあったので。その勉強はもちろん大学でもしているんだけども。大学で勉強しながら、自分が撮られる方でもあるわけじゃないですか。
(川島明)そうですよね。
(小沢健二)自分がイメージを消費される方にいながら、それを勉強するみたいなのがあって。客観的に、そのイメージの消費とは何か? とか。イメージの経済的な意味とは? みたいなことを勉強しながら「ああ、これは俺の話だ!」って(笑)。
(川島明)自分がそのサンプルなってるかも、という。
(小沢健二)自分が使い古されたり……。
(川島明)すごい話だな。
自分自身が実験の対象になっていた
(小沢健二)うん。自分がモロに実験対象になっているっていうか。そのことを、今まさになっていることを大学生で勉強しながらっていうことをずっと考えて。それは僕、大学に5年いたんですけど。出た時に……だから在学中にあの『犬は吠えるがキャラバンは進む』は作っているんですけど。それでああいう面倒くさい文章になっているんです(笑)。いかにも東大4年生、5年生の感じが出ていると思うんです。だけども、やっぱりすごいそこは考えたし。今となれば、今日の授業でもそうですけど。レアな体験を……自分で消費されながら、そのことを勉強するっていうのは面白かったなと思うし。その中でわかることをお話したいと思っております。
<書き起こしおわり>