町山智浩『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』を語る

佐久間宣行 トム・クルーズが『ミッション:インポッシブル』で一番危険なスタントを最初に撮った理由を語る こねくと

町山智浩さんが2023年7月11日放送のTBSラジオ『こねくと』の中で映画『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』について話していました。

(町山智浩)それでね、(妻がパスポートを盗まれて1週間、アイルランド滞在が延びたため)もうしょうがないから、映画を見に行ったんですよ。やることがなくて。でね、『ミッション:インポッシブル』の新作が公開になったんで見に行ったんですけど。『デッドレコニング』っていうね。(テーマ曲が流れる)あ、これですよ。これ。

(でか美ちゃん)わくわくするー!

(町山智浩)『ミッション:インポッシブル』シリーズはご覧なってます?

(石山蓮華)全部ではないんですが。ちょこちょこ、見ています。

(町山智浩)はい。繋がってないから、つまみ食いでも全然大丈夫なんですけど。どんなシリーズっていう風に思ってますか?

(でか美ちゃん)私のすごく浅い浅い知識のイメージでは、やっぱりこの曲がかかると緑の光線みたいな、線みたいになってるところを当たらないように行くみたいな……。

(町山智浩)ああ、はいはい。トム・クルーズがね。

(でか美ちゃん)もう大活躍みたいな。

(石山蓮華)石山のイメージとしては、とにかくトム・クルーズさんが無茶をするっていう(笑)。

(でか美ちゃん)『ミッション:インポッシブル』という名の通りの。

(町山智浩)そうですね。「不可能作戦、不可能な使命」っていう意味のタイトルですけども。これは『ミッション:インポッシブル』……不可能な作戦だけをさせられるグループの秘密諜報員のトム・クルーズが世界各地でいろんな苦労するっていう話なんですけど。この映画の一番最近の売りになっているのはトム・クルーズがスタントマンを使わないで、自分自身で非常に危険なアクションをするっていうことが売りですね。これね、僕ね、ハリウッドのスタントマンの人に聞いて。「そんなことがどうして可能なんですか?」って聞いたら「普通はできないんだ。映画の契約では主演はスタントをしちゃいけないことになっているから」って。

だって怪我しちゃったら、映画の撮影が止まっちゃって。そうすると、保険会社が保険金を支払わなきゃいけなくなるんですよ。撮影が止まって損害が出た分、お金を払わなくてはいけなくなるんで、それは保険会社が絶対に許さないんですね。主演俳優が実際にアクションをすることを。でも、トム・クルーズはこれ、プロデューサーをしていて、自分でお金を出しているんですよ。

(でか美ちゃん)なるほど。トム・クルーズさんが決めていいんですね?

(町山智浩)決めていいんです。で、保険会社に対しても通常の何倍ものお金を払ってるんですよ。彼。「だから俺は崖から飛び降りたり、ビルを登ったりするぞ!」ってやっているんですよ。

(でか美ちゃん)自分で自分に無茶を課しているというね。

(町山智浩)自分で自分に命がけのことをやらせている、どうかしてる人なんですけども。で、僕と同い年なんで今年で61になっているんですね。

(でか美ちゃん)2人とも若いから、何もしっくりこないです(笑)。

(町山智浩)いやいや、おじいちゃんですよ。本当は、おじいちゃんですよ。でもね、今回の『ミッション:インポッシブル』の新作では、彼が崖からバイクでダイビングしているところがやたらとコマーシャルとか予告編で流れていて。で、この映画のもうひとつ、どうかしているところは、ストーリーなしで撮影をしてるところです。

(石山蓮華)ええっ? どういうこと? 

(でか美ちゃん)じゃあ、無茶苦茶ダイジェストみたいなことですか? 無茶をするとか、そういうイメージになっちゃうけど。

(町山智浩)そうそう。シナリオがなくて、ストーリーも決まってない状態で、いつもアクションシーンだけトム・クルーズが「こういうのが撮りたい」とか、「ああいうのが撮りたい」って思ったのを先に撮るんですよ。で、撮ってから、そういうアクションが必要なストーリーを監督のクリストファー・マッカリーって人がでっち上げていくんですよ。

(石山蓮華)でっち上げていくんですか?(笑)。

(町山智浩)で、話が繋がるようにドラマのシーンとかを撮るんですよ。

(石山蓮華)知らなかった!

アクションシーンを先に撮って、後からストーリーをでっち上げる

(でか美ちゃん)全然知らなかったです。じゃあ、何だろうな? なんか本当にトム・クルーズの夢を叶えてあげてるような状態ですよね、もはや。いや、すごいんですけどね。素晴らしいんですけど。

(町山智浩)そう。60のジジイの妄想みたいなものを実現するシリーズなんですよ。で、だからそうやっているうちに制作費がどんどん高くなっちゃって。今回は映画史上最高の制作費になっていますね。で、どうして制作費が高くなるかっていうと、CGを使わないからなんですよ。

(でか美ちゃん)そうか。スタントを自分でやってとか。

(石山蓮華)保険も多めにかけて。

(町山智浩)あと、必ず現場に行って撮ってるんですね。だからたとえば今回の『デッドレコニング』の中で蒸気機関車が橋の上から転落するっていうシーンがあるんですけども。本物そっくりの蒸気機関車を作って、実際に落としてます。

(でか美ちゃん)ええーっ! いや、今どきの技術だったら、たぶんCGでも相当本物に近くなると思うんですけど。やっぱりそこはこだわりなんですよね。トム・クルーズ。

(町山智浩)制作費は2億ドルですね。だから、大変な金額ですよ。ドルって今、150円ぐらいだっけ? ですよね。で、映画史上最高の制作費になっていますけども。

(石山蓮華)日本円にすると……250から300億円くらいっていう。

(町山智浩)はい。ちなみに日本の映画の制作費って今、Netflixが入ってないと1億円いってないのがほとんどになっちゃってますね。

(石山蓮華)じゃあ、250本から300本くらい、日本映画が作れるのを1本で?

(町山智浩)はい。日本の中くらいの規模の映画だったら250本とか作れる制作費を1本の映画に……しかも、今回は1本じゃなくて。前編だけで話が終わっちゃっていて。というのは、後編をどうするのかは決めてないで撮影してますから。この映画が今、公開されてる段階で続編はストーリーが全くできてない状態です。

(でか美ちゃん)そうか。またトム・クルーズがしたいスタントが浮かばないと……(笑)。

(町山智浩)そうです。それから、話を作るので。

(石山蓮華)と、トムおじさん……。

(町山智浩)おじさんっていうか、おじいちゃんなんですけども。俺と同じなんで。おじいちゃん、無理してるんですけど。しかもね、もうひとつの『ミッション:インポッシブル』の売り物は、トム・クルーズが走るんですよ。必ず全力疾走するシーンがあるんですよ。「トムクル走り」と俺は呼んでるんですけど。トムクルランニングはね、ものすごく太もも、ももの位置が高いんですよ。

(でか美ちゃん)疲れる走り方をするんですね。

(町山智浩)そうなんです。それで延々と走るっていうのを今回もすごく長くやってて。これ、いつまでやるの? すげえ!って思ったんですけども。もうね、今回ね、蒸気機関車を落とすところもクリストファー・マッカリーというこの監督はね、「蒸気機関車を落としたかった」っていう、ただそれだけの理由として落としていて。後から話を無理やりでっち上げてるんですよ(笑)。

(でか美ちゃん)でも後からでっち上げるとはいえ、なんか私の『ミッション:インポッシブル』シリーズのイメージって、なんかやっぱりそのミッションをクリアしなきゃいけない物事があるわけじゃないですか。今回、その敵みたいなのは、いるんですか?

(町山智浩)今回の敵はね、インターネット全体に広がってしまったAIなんです。

(でか美ちゃん)ああっ、規模のでかい話だ!

(町山智浩)はい。だから実体がないんですけど、全世界に広がっちゃっていて。で、『ミッション:インポッシブル』っていつもコンピューターのプロの2人を相棒にしていて。その彼らがコンピュータでいろんなハッキングとかをして、それでトム・クルーズが助けられるっていう展開だったんですけど。今回、AIが世界のネットワーク全体を仕切っちゃってるんで、もう逆にそのコンピュータが使えなくなってます。

(でか美ちゃん)ああ、そうか。いつものやり方も通じない?

(町山智浩)まさに『ミッション:インポッシブル』になっちゃっているんですけども。

(石山蓮華)でも、そういおう思いつきのアクションと、そのアクションありきのストーリーでAIを絡めてってやったら、セリフはどうなるんですか?

(町山智浩)あのね、セリフはね、3ヶ所ぐらいで状況説明を延々とするセリフばっかりのシーンがあって。それ以外のシーンはほとんど「ああっ!」「ううっ!」「やめろ!」とか言ってるだけで。車が爆発したりね、列車が落ちたりしてるだけなんですよ(笑)。

(でか美ちゃん)ヤバい。私、今回見に行ったら笑っちゃうかもしれないですよ(笑)。

(町山智浩)笑うよ。お客さん、めちゃくちゃ爆笑していた(笑)。もうほとんどね、昔の無声映画時代にバスター・キートンっていう人がいて。その人が本物の列車を使ったアクション映画を撮ってたんですけれども。監督はそれを現在に再現させるって言ってるんですよ。

(でか美ちゃん)そうか。じゃあもうコンセプトがそっち側というか。

(町山智浩)そうなんです。だから、昔は実はジャッキー・チェンがそれをやっていたんですよね。キートンの後継者っていう。で、もうジャッキー・チェンはお年なので、今トム・クルーズがそれを継承してるんですが。トム・クルーズの後継者が今いなくて、困ってるという老舗のキートン業界の話なんですよ。はい。で、まあとにかく爆笑するんで、ぜひ見ていただきたいと思います。

(でか美ちゃん)日本ではもうちょっと先に。

(石山蓮華)日本での公開は来週の7月21日、4DX上映の映画館もあるそうです。

(町山智浩)4DX、めちゃくちゃ大変でした。映画最初から最後までアクションばっかりだから、ずっと振り回されてボコボコにされる感じで(笑)。すごかったです。

(でか美ちゃん)いいなー(笑)。

(石山蓮華)これはぜひ大画面の映画館でご覧になってほしいです。ということで来週、公開される映画『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』をご紹介いただきました。

(町山智浩)映画は配信ばっかりになっちゃってるけど、トム・クルーズはスクリーンで見ないとならない映画を作り続けているんですよ。命がけで。彼はもう世界の映画を救う最後の救世主になってますね。61歳ですが。

(でか美ちゃん)じゃあ絶対に映画館で見ましょう。

(石山蓮華)そうですね。町山さん、ありがとうございました。

(町山智浩)どうもでした。

命がけで大画面で見るべき映画を作り続けるトム・クルーズ

<書き起こしおわり>

佐久間宣行 トム・クルーズが『ミッション:インポッシブル』で一番危険なスタントを最初に撮った理由を語る
佐久間宣行さんが2023年7月5日放送のニッポン放送『佐久間宣行のオールナイトニッポン0』の中で映画『ミッション:インポッシブル』最新作でトム・クルーズが最も危険なスタントを一番最初に撮ったという話を紹介していました。
町山智浩『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』を語る
町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中でトム・クルーズ主演映画『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』を紹介していました。 (町山智浩)で、今日はですね、その中でもトム・クルーズ史上第二位のヒットと言われているですね、『ミッ...
町山智浩 『ミッション:インポッシブル フォールアウト』を語る
町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中でトム・クルーズ主演のアクション大作『ミッション:インポッシブル フォールアウト』を紹介していました。
タイトルとURLをコピーしました