町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中で映画『フォードvsフェラーリ』を紹介していました。
(赤江珠緒)この時間は映画評論家・町山智浩さんの「アメリカ流れ者」。今日はカリフォルニア州バークレーのご自宅からです。もしもし、町山さん?
(町山智浩)はい。町山です。よろしくお願いします。
(山里亮太)これ、町山さん。(たまむすび放送が)2000回ですから。かなりの数、我々も映画紹介をしていただいたってことになりますよね。
(町山智浩)2000回? すごいですね。僕は何回ぐらいやったことになるのかな?
(山里亮太)400回くらいという。
(町山智浩)ああ、でも僕、1回休んだんで。400回じゃないと思います(笑)。
(山里亮太)あっ、別にそれを思い出させようと思って言ったんじゃないですよ?
(赤江珠緒)あと、その件は(配布した)たまむすびすごろくに1マス、その件が入っていますから。
(町山智浩)えっ、「1回休み」のところに町山がいるの?(笑)。
(赤江珠緒)「ちょっとしたミステリーに」という1マスがありますから(笑)。
(町山智浩)ねえ。でもすごいですね。2000回。僕はでも、その前からやっているから、全部だといちばん長いんじゃないですか?
(赤江珠緒)町山さんはね。
(町山智浩)何本映画を紹介したのかな? まあ1000本はやってますね。
(赤江珠緒)そういうことになりますね。
(山里亮太)おかげで我々も本当に映画、いろいろと見させていただけるようになって。
(町山智浩)いえいえ。本当にね。今日はね、僕は今年のベストですよ。いまのところ、ベスト。
(赤江珠緒)えっ、今年の?
(山里亮太)実質1位じゃないですか?
いまのところ、町山智浩的2019年ベスト映画
(町山智浩)いまのところそうですね。『フォードvsフェラーリ』という映画になります。
(町山智浩)かっこいい曲ですが、これ、いつごろの曲だと思いますか?
(赤江珠緒)なんかね、ええと60年代?
(町山智浩)そうそう。60年代のね、ロックンロールですけど。この『フォードvsフェラーリ』という映画は1960年代にあった実際のフォードという自動車会社とフェラーリという自動車会社の対決を描いた映画です。
(赤江珠緒)へー! フォードとフェラーリ、対決していたんだ。
明日はとうとう 「#フォードvsフェラーリ 」の試写!!!
アメリカを代表するフォード社vsイタリアの名車フェラーリ
LOGANのジェームズ・マンゴールドが監督が手がける今作
この映画すごい楽しみ!!! pic.twitter.com/FievyayDWD— ゆうたσ (@2000_hon) December 8, 2019
(町山智浩)ものすごいもう熱血映画なんですよ。舞台はル・マン24時間耐久レースです。これはご存知だと思うんですけど、フランスのル・マンという場所で24時間、1台の車を走らせ続けるというレースなんですね。で、レーサーは2人だけで交代してやるんですけども。当時、1960年代は55台、レースに出て10台ちょっとしか完走できないう、ものすごい過酷なレースだったんですよ。で、それは自動車レース界のF1と並んで最高峰のものなんですけれども。そこにフォードが参戦することになったんですね。
で、どうしてフォードが……フォードっていう会社はそれまでレースに出たことがなかったんです。どうしてフォードが出なかったかと言いますと、フォードという会社はヘンリー・フォードという人が始めた会社なんですけど。自動車ってそれまで、贅沢品だったんですね。自動車が始まった頃ですけれども。「それを誰でも買えるようなものにする」という目的でフォードという自動車会社は始まったんですよ。
(赤江珠緒)うんうん。
(町山智浩)そのおかげで、アメリカは一気に庶民がみんな自動車を持つことができて。いわゆるモータリゼーションというのが起こったんですね。だからスポーツカーとかは贅沢品だから作らない方針だったんですよ。
(赤江珠緒)割と大衆車というか庶民的な車を作っていた。フォードは。
(町山智浩)はい。「大衆車」というものを発明した会社なんですよ。で、それによって、ものすごい人数の人たちを工場で働かせて。いわゆるベルトコンベヤーの流れ作業で。それによってアメリカは貧困層と富裕層の2つにはっきり分かれてきたところに、いわゆる中流というものを発明したんですよ。フォードが。自動車産業によって、いわゆる中流という人たちが生まれていったんですね。
家があって車があるんだけども、大金持ちではないという。それで子供を大学に入れられて、普通に生活できるレベルの人たちが拡大していって。その人たちが人口でいちばん多い層に初めてなったんです。その考え方が世界に広がっていって、1940年代から60年代にかけて全世界で中流という人たちが全世界の巨大な文化と産業を作っていったんですね。だからフォードっていうのはすごい人なんですよ。
(赤江珠緒)そうですね。
(町山智浩)二十世紀を作った人なんですけども。そうなるとその中流の中で格差が出てくるわけですよ。そうすると、そこから出てきた若い人たちの中で「おしゃれな車に乗りたいぜ」っていう人たちがいるわけです。「そんなダサいオヤジの車じゃなくて」っていう。それでみんな、すぐに結婚しなくなったので。「お金があるんだけれども独身」という人が出てくるわけですよ。昔は社会に出たらすぐ結婚してましたからね。そうすると、そういう人たちのためのスポーツカーが必要になってくるんですよ。
(赤江珠緒)ああ、ちょっと余裕が出てきて。はい。
(町山智浩)でも、フォードはスポーツカーを持ってないんですよ。売ってないんですよ。大衆車の会社だから。それで、いまさらフォードが出しても……まあムスタングっていうスポーツカーを発売しようとするですけれども。1963年ぐらいに発売しようとするんですけど、フォードの車のイメージが大衆車だから売れないですよ。
(赤江珠緒)うんうんうん。
(町山智浩)「ダサい」っていうことで。だから、レースに出よう。でも、レースのノウハウがないから。「じゃあ、ル・マン24時間耐久レースで5年連続で勝ち続けている最強のチームであるイタリアのフェラーリを買収してしまえ!」とフォードは思うんですね。で、フェラーリを傘下に収めようということで交渉をしてるんですけれども、交渉は決裂するですよ。それは実は、フェラーリがフォードをバカにしていたんですね。
(赤江珠緒)まあフェラーリはイメージ、高級車っていう感じですもんね。
(町山智浩)でしょう? で、イタリアの車だから職人さんが作る手作りの芸術品なんですよ。フェラーリっていうのは。
(赤江珠緒)跳ね馬っていうね。
(町山智浩)で、そのエンツォ・フェラーリっていう元レーサーの人が社長なんですけれども。その人がフォードが大量生産で流れ作業で作っているのを見て、「ダサい工場でダサい車を作っているな」って言っちゃうんですよ。それで、しかも裏でフィアットっていうイタリアの会社と買収の取引をしてたんで、自分たちの会社の値段を吊り上げるためにそのフォードを利用していたんですね。
で、フォードは完全にバカにされていたんですよ。それで、フォードのその頃の社長ヘンリー・フォードの孫なんですけれども。彼が「もうわかった。フェラーリを潰す!」っていうことになるんですよ。復讐のために。メンツがあるから。で、「やつらがいちばん威張っているル・マン24時間耐久レースでフォードが優勝するんだ!」っていう計画を立てるんですよ。
(山里亮太)正々堂々と決闘だという。
(赤江珠緒)火が着いちゃったね。
メンツをかけてル・マン24時間耐久レースで戦う
(町山智浩)そうなんです。だから『フォードvsフェラーリ』というタイトルなんですよ。でも、主人公はフォードの人じゃないんですよ、この映画は。これね、フォードは出場するんですけれども、全然勝てないんですよ。
(赤江珠緒)ああ、やっぱりダメなんだ、そこは。
(町山智浩)ダメなんですよ。1台も完走できなかったんですよ。1964年に出て。で、どうするか?っていうことで、まあ一匹狼の元レーサーのカーデザイナーがいまして。キャロル・シェルビーという人がいまして。これ、マット・デイモンがこの映画では演じています。で、その人を雇って「何とかフェラーリを叩きのめすレースチームを作ってくれ。レーシングカーも開発してくれ」という。なので、このシェルビーが主人公の1人なんですね。で、このシェルビーは「それにはテストドライバー、レーサーが必要なんだ」ということで、その彼が雇うのがケン・マイルズというイギリス人のレーサーで。これはクリスチャン・ベールが演じています。
(赤江珠緒)うんうん。
(町山智浩)だからこれ、バットマンのクリスチャン・ベールと『ボーン・アイデンティティー』のマット・デイモンが手を組むという形になっているんですけど。で、始めるですが、この2人はなんて言うか、はぐれ狼みたいな2人組なんですよ。だから、そのレーサーとしてもエンジニアとしても優秀なんだけれども、フォードとなかなか合わないんですね。この映画の中だと。というのは、フォードという会社は組合とかに関してもすごく弾圧していたりしてたような会社なんですけども。とにかく真面目なんですよ。それで、流れ作業とかを見ても分かるように突出した人はあまり求めない会社なんですよ。忠実な社員がいいんですよ。
(赤江珠緒)ちょっと個性的すぎるのは困るという?
(町山智浩)そう。この2人はならず者なんで、フォードとしては合わないので。まあ『フォードvsフェラーリ』というタイトルになってるのに、このシェルビーとマイルズチームvsフォードみたいな話になってくるんですよ。
(赤江珠緒)へー!
(町山智浩)だからもう、そのへんがまた面白くて。すごく日本で見た人たちは、そのTBSでやっているような『下町ロケット』とか『陸王』とかのそのちっちゃい会社が巨大な企業と製品開発で戦うみたいな話がありますよね。それに非常に近いものとして見てる人も多いと思います。
(山里亮太)ああ、なるほど!
(町山智浩)で、この『フォードvsフェラーリ』がすごいのは、最近のレース映画って実はCGがほとんどなんですよ。コンピューターグラフィックスなんですね。でも今回はこれ、監督がジェームズ・マンゴールドという監督なんですけれども。「絶対にコンピューターグラフィックス使いたくない!」ということで、現代の車の上にその60年代の車のボディーを乗せて本当にレース場で撮っているんですね。
(山里亮太)へー!
(町山智浩)これがすごいんですよ、もう。迫力が。やっぱり本物だから。
(赤江珠緒)ああ、そうですか。CGなし!?
(町山智浩)CGなしで撮っていますね。背景だけCGで。アメリカのレース場で撮ったやつの後ろにフランスの背景とかをつけてますけど。車自体がひっくり返ったりするのは本当にやってますよ。だからものすごい迫力なんですよ。
CGを使わず実際の車で撮影
映画『フォードvsフェラーリ』の撮影がガチすぎてヤバい?
pic.twitter.com/RTsu9gNA5E— cool cars (@coolcars_kirei) December 10, 2019
(町山智浩)ただね、この映画がすごくいいのは、この跳ねっ返りの一匹狼の2人組……「一匹狼が2人で組む」っていうこと自体がだいたい難しいんですけども(笑)。「一匹狼グループってそれ、一匹じゃねえだろ?」って思うんですけども。お互いにね、このシェルビーとマイルズがね、もう殴り合いのケンカばっかりしてるんですよ。もうそれでケンカしながらダチになるというね、この番長物のような(笑)。「タイマンはったらダチ」みたいな、本当に少年漫画的でね、泣かせるんですよね。
タイマンはったらダチ!(関東のことわざです) #tama954 pic.twitter.com/ZLKWpD2n9V
— みやーんZZ (@miyearnzz) December 10, 2019
(赤江珠緒)でもこれ、実話ベースっていうことは、本当にそういう感じだったってことですか?
(町山智浩)いや、そのへんは誇張しているそうですよ。そのへんはやっぱり。ただね、このケン・マイルズというレーサー、クリスチャン・ベールが演じているんですけども、その当時はもう40半ばなんですよ。で、そのシェルビーの方は心臓病でもうレースができないんですよ。2人ともレーサーとしてもうこの先ないなと思って諦めていたところにこの話が来て。まあセカンドチャンスでがんばるっていうところも泣けるんですよね。
(赤江珠緒)はー! なるほど。
(町山智浩)中年すぎての、世界を取るかどうかという。で、フォードはフォードでもう本当にメンツの問題だから、「これはもうフェラーリと戦争なんだ!」とかね、「あいつらの骨をル・マンに埋めてやれ!」とか言っていたりね。すごいんですよ。ただね、開発期間はものすごい短いんですよ。だっていままでフォードはレースをやってなかったんですから。それをたった3年かなんかで優勝しろって言ってるんですよ。最強のチームを相手にして。
(赤江珠緒)うわあ、かなり無謀な挑戦ですね。
(町山智浩)そう。もう無茶ぶりなんですけど。まあその時にシェルビーがね、マイルズを誘う時の言葉がまたいいんですよ。「2人で歴史を変えようぜ」って言うんですよ。
(赤江珠緒)フフフ、また……!
(町山智浩)また、もうめちゃくちゃ泣かせる映画でね。
(赤江珠緒)また、もうベタな……みたいな。熱いセリフですね。
(町山智浩)すっごい熱い映画なんですよ。ただね、これを見てやっぱりひとつね、すごい悲しい気分になったところもあったんですよね。僕ね、実はこの間、デトロイトに行きましてね。で、デトロイトのフォード博物館に行ってきたんですよ。で、このフォードがル・マンのために開発したフォード・GTも実際に触ってきました。ル・マンのレースで優勝したやつの現物がありました。
(赤江珠緒)へー!
(町山智浩)翌年も優勝しまして。67年に優勝したル・マンの、もう本当にちょっとクラッシュした跡とかも残っているフォード・GTに触ってきたんですけども。ただね、前も話したんですが、デトロイトはいま、すごい勢いで再生してるんですよ。
(赤江珠緒)そうですってね。うん。
ものすごい勢いで再生中のデトロイト
(町山智浩)もう10年前に自動車産業そのものがもうめちゃくちゃになっちゃったということで崩壊していたんですけど。フォードもゼネラルモーターズもクライスラーもね。で、その後も実はすごく調子が良くなくて。というのは、電気自動車の時代になってきたじゃないですか。で、そのデトロイトの自動車産業自体が、その電気自動車の時代にあんまり追いついていけなくて。まあプリウスに負けていたんですよね。それでこのままではどうなっちゃうんだろうと。電気自動車が普及すると、電気自動車ってはっきり言って誰でも作れるんですよ。自動車のエンジンっていうものはものすごい技術が必要なんですけれども。開発とかするのが。ところが、電気自動車ってモーターだから、結構そこらへんの人でも作れちゃうんですよ。
(赤江珠緒)ああ、そういうものですか。うん。やっぱりガソリンエンジンというものが難しいんだ。
(町山智浩)そうなると、巨大な自動車産業そのものの必要性がなくなってくるんですよ。だからそれもあって、もう滅びるのかなと思っていたんですね。ところがそれがいま、復活していってるという。それで「どうして?」っていうことを聞いて回ったんですよ。それはまあ、電気自動車の開発というものもあるけれども、もうひとつは「自動運転」なんだそうです。
(赤江珠緒)ああーっ!
(町山智浩)いま、フォードもゼネラルモーターズも自動運転に向けて、そのシステム全体を作るということでものすごく開発費をもらって、その開発が盛り上がっていて。逆に自動車の工場とかは縮小してるんですけども、会社自体は調子がいいんですよ。ただその時に話を聞いたのは、この間、全米トラック協会の話をしましたよね。全米トラック組合の話。
(赤江珠緒)はい。それを牛耳っている人の話。『アイリッシュマン』の時に。
(町山智浩)そうですね。150万人以上いるトラック運転手の組合を牛耳っているのがそのトラック運転組合なんですけれども。トラック業界はアメリカの血液とか血管と言われているんですね。それこそ材料……鉄鋼とか一次産業から製品から、もう何から何?まで流通させていますから。でも、このトラックは無人化するだろうと言ってましたね。
(赤江珠緒)へー!
(町山智浩)近い将来、無人化するだろうと。
(赤江珠緒)そうすると、そこの雇用がまた変わってきますね。
(町山智浩)150万人の運転手が要らなくなるだろうという。それはアメリカにはフリーウェイという高速道路をトラックが移動してるんですけれども。その街に着いても、その街のステーションに停まればいいので、街中にトラックは入る必要はないんですよ。実際にいまもそうなんですよ。それだったら完全に無人化して、そのフリーウェイの上を移動するだけだったら人間はいらないんですよ。
(赤江珠緒)うわー、でもそうなってくると本当にまたね、機械に委ねることで人の仕事がなくなっていくっていうのもあるな。
(町山智浩)なくなるんですけど、それまでの間はその200万台と言われるようなそのトラックを全部、自動運転に切り替えていく間はものすごく儲かるんですよ。ひとつの産業自体をゼロから作ることになりますから。あと、彼らが言っていたのは「街の中でのそのタクシーやバス。これも全部自動化されるだろう」って言ってましたね。で、もう既にそれは進んでいるんですよ。Uberとかがやってますからね。だから、それも全部システムを作っている間はずっと、アメリカの自動車産業はまあ好調なんですよ。
(赤江珠緒)だからいま、デトロイトが復活してるんだ。
(町山智浩)復活してるんですけど。ただこの時に思ったのは、もうそのガソリンエンジンで走る車をテクニックで競うというこのカーレースというもの自体が、もうなくなるんじゃないかなと思いましたね。
(赤江珠緒)ああ、そうか! そこを競っても意味なくなるんですもんね。
自家用車に乗ることをやめつつあるアメリカ人たち
(町山智浩)はい。自家用車に乗ること自体、もうアメリカ人がどんどんやめているんですよ。いま、UberとかLyftっていう、スマホで呼ぶと来るタクシーよりも便利になったやつにみんな切り替えているので、車を持つのやめ始めてルンですよ。アメリカ人が。まあ、車を持つとコストもかかるしね。だからそのエンジンのある自動車に乗るという人は本当に趣味の人しかいなくなるような気がします。
(赤江珠緒)ふーん!
(町山智浩)そうすると、レースなんかも本当にいまの馬術とか競馬とかと同じような……つまり人が馬に乗っていた時代というのはあったんだけど、いまはもう馬に乗るっていうのはスポーツしか残ってないわけですよね。自動車のレースもそうなるでしょうね。
(赤江珠緒)そういうことですね。そうかー。
(町山智浩)はい。だからね、本当に博物館に行ってそういうのを見せられるんですよ。未来とか将来を。近い将来ですね。そうすると、なんかこういうレース映画ってそれこそ西部劇とか時代劇のようなものになっていくんだろうなと思いますね。
(赤江珠緒)過去のものになっていくのか。へー!
(町山智浩)うん。だからこの2人がね、なんていうかカーボーイとかね、侍のように見えるんですよ。もうすでになくなってしまった文化を担い続ける英雄のように見えて。で、しかも最後はこのル・マン24時間レースでですね、フェラーリと一騎打ちになるんですけど。もう完全にこれは西部劇の決闘であったり、時代劇の侍の果し合いの世界なんですよ。ものすごい熱いです!
(赤江珠緒)町山さんはもうドンピシャ、ハマりましたか。
(町山智浩)これはハマった! これ、最後、背中に寒気がブワッと来ましたよ。
(赤江珠緒)ああ、本当ですか。いまの車をね走らせるっていうことは、すごい車に詳しい人はエンジン音とかでわかったりするんじゃないですか?
(町山智浩)ああ、エンジンはちゃんと当時の記録フィルムとか当時のエンジンがまだ残ってるやつを動かしたりして。エンジン音だけは当時のV8エンジンのエンジン音にしています。それはうるさい人がいますんで(笑)。
(赤江珠緒)そうですよね。結構そういう人、いますもんね。ふーん!
(町山智浩)そういう感じでね、いろんな意味でその熱く燃えるんだけど、もう滅びゆく文化なのかなと思うと非常に切なかったりして。もう本当に泣ける映画が『フォードvsフェラーリ』ですね。
『フォードvsフェラーリ』予告編
(赤江珠緒)じゃあ60年代の戦いと、ちょっといまはまた違う見え方がするというね。そういうものなんだな。なるほど。『フォードvsフェラーリ』は2020年の1月10日公開でございます。とにかく町山さんが今年一、いまのところベストだという。
(町山智浩)もう最高でしたよ!
(赤江珠緒)はい、そうか。わかりました。町山さん、ありがとうございました。
(町山智浩)どうもでした。
<書き起こしおわり>