ヤマザキマリ 自身と全く違う思慮深さを持つ息子・デルスを語る

ヤマザキマリ 年々長くなる日本滞在時間と自身に起きた変化を語る 安住紳一郎の日曜天国

ヤマザキマリさんが2023年6月18日放送のTBSラジオ『日曜天国』の中で息子・デルスさんについてトーク。達観したような、思慮深い性格を持つに至った経緯を話していました。

(安住紳一郎)あとは、日本での時間を長くしようということで、息子さんのデルスさんも日本に?

(ヤマザキマリ)そうですね。デルスもなんだかんだで結局、日本に住んじゃってる状態なんですけど。

(安住紳一郎)ああ、いいじゃないですか。

(ヤマザキマリ)いいけど、でも……うちのそばにいるんですけど。ほとんど会ってません。滅多に会わない。

(安住紳一郎)どうしてですか?

(ヤマザキマリ)別に必要ないから。

(安住紳一郎)ああ、そうですか。

近くに住んでいても滅多に会わない

(ヤマザキマリ)「必要ないから」っていうか、向こうも必要ないと思ってるからですけど。必要あらば、呼びますけどね。「買い物に行くからちょっと手伝え」とかって。そうすると「嫌だ」って言われますけど。でも、時々見かけるんですよ。うちのそばの喫茶店でパソコンを広げて何かやっていて。で、目が合うんですよ。でもお互い、シカトして通り過ぎるみたいな。私は別に何も言わないでそのまま通り過ぎて。

(安住紳一郎)挨拶もせず?

(ヤマザキマリ)挨拶もせず。それで「この間、いたよね?」「うん」みたいな話で。そんな感じの関係性です。いいんです、それで。

(安住紳一郎)息子さんはね、またちょっと、ヤマザキマリさんのその性格の反動っていうか。ちょっとおとなしいというかね、哲学的に……。

(ヤマザキマリ)思慮深いですね。

(安住紳一郎)フハハハハハハハハッ!

(ヤマザキマリ)イタリア人たちのその、なんていうか、この大仰な、要するに横溢している様子をずっと見て育ってきてるので、すごく抑制した子供になったんですよ。で、早いうちから仏教思想とかに興味を持つような人になってですね。たとえばですよ、何か起きるわけですよ。コロナの間とかもみんな、イライラがどんどん増してるじゃないですか。で、私がなんか文句をワーッて言ってると、ずっと隣で聞いてるんですよ。「今、聞いてた? 私の話を」「聞いてたけど、今の母の30秒の愚痴。あの30秒があったら、ボーッとしている方がどんなにどんなに有意義だったかと僕は思うんだよ」とかって言われたりとかね。

(安住紳一郎)あら! ちょっとなんか嫌味も理論的。

(ヤマザキマリ)もちろん、すごいですよ。「そんなこと言ったって、始まらないだろう」とかね。私がある日、UberEatsでオムライスを頼んだんですよ。そしたら、息子の分も頼んだのに1個しか来なかったんですよ。そしたら、私は「なによ! もう決済して払っているのに1個しか来ないなんてダメだから。あんた、ちょっと電話かけてちょうだい!」って言って、そのオムライス屋に電話をかけさせたんですよ。そしたら、すごい穏やかにしゃべってるんですよ。「あの、先ほどオムライスを持ってきていただいた山崎でございます」って。

私、もう頭に来て。脇に言って口で「お、こ、れ! お、こ、れ!」って指をさして。「い、か、れ!」って言ったら私の方を手で制御して、どんどん離れていくんですよ。で、終わって「今、持ってきてくれるそうです」とか言って。「あのさ、なんで怒らないの? ああいうのは怒らなきゃダメだよ?」「母ね、母は今、嫌な気持ちになってるけど。あなたの嫌な気持ちをこれでたくさんの人に拡散したところで、何にも解決しないよ? これは向こうは『申し訳ありません』って謝ってるんだから、もうそれでいいじゃない?」って言って。それでオムライスが来たわけですよ。そしたら向こうは「申し訳ありませんでした」って言って、2個ほど追加で持ってきたんですよ。

(安住紳一郎)ああ、サービスがついて。

(ヤマザキマリ)そしたらドヤ顔で来て。「ほらね。冷静に対応したから、このようにオムライスが増えました」って。「オムライスが増えたって、食えねえよ。そんなにいっぱいあっても」って。だけど、そういう風な対応を息子にはされますね。

(安住紳一郎)そうですね。

(ヤマザキマリ)穏やかなんですけどね。すごい思慮深いです。でも、しょうがないですね。そういう風に育ってきたから。

(安住紳一郎)あとはほら、ポルトガルやら、シリアやら、ヤマザキさんのお仕事の都合で。

(ヤマザキマリ)国際転校を繰り返してきたからね。もう、すごい達観してますよ。

(安住紳一郎)だからデルスさんの名言があるじゃないですか。「僕はお母さんの都合で、こんなにいろんな国の歴史を自国の歴史として学ばなくちゃいけないことになるんだ」って。

国際転校でコロコロ変わる国語と歴史

(ヤマザキマリ)そうそうそう(笑)。どこに行ってもその国の歴史を……あと、国語ね。国語が転々と変わるんですよ。ある日の国語はポルトガル語。ある日の国語は英語みたいな感じで。「もう国際引越し、いい加減にしてくれませんか?」って言われましたよね。アメリカにいる時にね。でもね、ああやって行くと、やっぱりほら、「予定調和っていうのは人生にはないんだ」っていうことがわかってくるので、動じなくなるんですよ。「思った通りにいかない」っていうことに対して、怒らない人になってくるわけです。

(安住紳一郎)そうですね。達観するわけですね。

(ヤマザキマリ)達観してますね。そこはね。

<書き起こしおわり>

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