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渡辺志保 Jay-Z『4:44』徹底解説

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渡辺志保さんがblock.fm『INSIDE OUT』の中でジェイ・Zの最新アルバム『4:44』について約1時間、みっちりと解説していました。

??#444 #TidalXSprint #Jayz #Beyonce #Blueivy

JAY-Zさん(@jayzfanspot)がシェアした投稿 –


(渡辺志保)今日は私、渡辺志保が……まあ、去年ぐらいから重要なアルバムが出ると放送丸々一本を使ってその最新アルバムについてしゃべるということをお届けしておりまして。今日は6月30日に世界の一部で、世界の片隅で発表されましたジェイ・Zの最新アルバム。ジェイ・Zの13作目のオリジナルアルバム『4:44』についてお届けしたいと思います。まあ、『INSIDE OUT』をリアルタイムで聞いてくださっている方はもうすでにご存知だと思うんですけども。ジェイ・Zの最新アルバム『4:44』。「4時44分」ないしは、「4分44秒」っていう、タイム表記っていうんですかね? そういう表記でございますが……。

(DJ YANATAKE)そうか。普通に「4時44分」って言ってたわ。たしかに、それもありか。

(渡辺志保)「4分44秒」とも読めるという感じなんですよね。で、このアルバムなんですけど、もうね、去年の2月ぐらいにもカニエ・ウェストのアルバムの話をした時に言ったけど、もう超問題作。っていうか、超マジでワック! みたいな。なぜなら、日本で聞けないからっていうね。

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(DJ YANATAKE)(笑)
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TIDALエクスクルーシブ問題

(渡辺志保)で、なぜ聞けないのか? というと、出た! TIDAL。TIDALエクスクルーシブ。なに考えとるんや? という感じです。で、経緯から話しますと、TIDALという音楽のサブスクリプション、ストリーミングサービスがありますよと。で、Spotifyがあります。アップルミュージックがあります。他にもヨーロッパで人気のDeezerとかPandoraとかありますけど。その中のひとつ、TIDALですね。で、これはもともとはスウェーデンの会社だったんだけど、それをジェイ・Zが何年か前に買収しました。で、その後にストーリーがありまして、2017年。今年の1月になんと通信会社のスプリントがTIDALの株の1/3を買収したんですね。

スプリントっていうのは携帯のキャリア。電話のキャリア。通信会社のひとつで、ぶっちゃけ日本のソフトバンクの子会社なんですよ。たとえば日本だとソフトバンク、au、ドコモとかあるけど、アメリカに行くとスプリントとかAT&Tとか、そういう通信会社、キャリアがありまして。その中のひとつがスプリント。で、その通信会社がTIDALの株の1/3を買収しました。それが約2億ドルで買収したっていうことらしいんですけども。その時、2017年1月にすでに「スプリントの顧客に向けた独占サービスをTIDALから発信しますよ」っていうのも発表をしていたんですよね。なので、その時に勘のいい人は「ジェイ・Zの会社を買収したわけだから、もしかしたらこのスプリントの顧客向けのエクスクルーシブコンテンツっていうのは、ジェイ・Zの関連作かな?」っていうのは、たぶん予想していた人は予想していたかと思います。

で、ただTIDALってこれまでにもいろいろと問題が取り沙汰されてまして。故プリンスの弁護士から訴えられそうになった? 訴えられたのかな? に、なったりとか。あと会員数を水増ししているんじゃないか?っていうのがあって。これは結局、「水増ししました」みたいなことをちゃんとTIDAL側も認めていたと思うんですけど。そういう、ちょっとトラブルもありますよというのがTIDALなんですよ。で、今回のジェイ・Zのアルバム『4:44』はスプリントとTIDALの初パートナーシップ作品ということになります。で、みなさんもご存知の通り、TIDALって日本にはまだ上陸していないサービスですから、TIDAL
限定で出されると本当に私たちはどうしようもないっていうか。

ちょっと愚痴ですけど、アーティストが……レコード会社のお偉いさんとかが決めるのはいいんだけど、アーティスト本人がこうやってゲトれる経路を限定してしまう。世界中にファンがいるのに、それによって聞けないリスナーも出てくるというのはすごく非合理的だなというか、ちょっと不平等だなという風に私はすごい感じていて。特にジェイ・Zに関しては全作『Magna Carta Holy Grail』っていうアルバムを出しましたけど、あれもサムスンとサムスンが作った新しいスマートフォン(Android携帯)とそのアプリを通じてしか最初は聞けなかったんですよね。だから全作はサムスンの後ろ盾がある。今作は自分の会社だけどTIDALとあとスプリントの後ろ盾があってリリースしたアルバムということになっていて。それってなんか、もうラッパーじゃなくてただのビジネスマンじゃん、みたいにちょっと思っちゃうんですよ。

で、そういう大企業のバックアップがないとジェイ・Zってアルバムを出すことすらできないのかな、ショボーン……みたいな、ちょっと穿った見方を私もね、していたんですが。まあまあ、それは置いておいて。そんな中、突如6月7日、NBAのファイナルゲームの時に「4:44」と書かれた広告が突然出現したんですよね。で、その時にマハーシャラ・アリ、ルピタ・ニョンゴ、そしてダニー・グローヴァーという本当にいまをときめく……まあ、ダニー・グローヴァーなんかは超ベテラン俳優ですけども、いまのアメリカの映画シーン、ドラマシーンなんかを騒がせている人気の俳優・女優の名前がバッと出て。それでね、「なんの広告だろう?」っていう。


で、私はてっきりジェイ・Zの新しい映画……ジェイ・Zがもともとマイク・ブラウンなんかの映画を作るなんていうニュースもありましたから。もしかしてジェイ・Zがそのスプリントの出資を受けて、マハーシャラ・アリなんかを配した映画を作るのかな? その広告かな? という風に思ったんですけど、どうやらその後、その『4:44』っていうのはジェイ・Zの新しいアルバムのタイトルらしいということがわかりまして、LAやらNYやら世界中の街角に『4:44』の大きい広告が出始めた。これが6月上旬の話になります。で、なんとここ東京・渋谷にもその『4:44』の広告が出現しまして。あの渋谷のスクランブル交差点のでっかいビジョンに10分間に1回ぐらいの割合でパッとサブリミナル的に『4:44 TIDAL EXCLUSIVE』みたいなのがパッと出て。

私、最初それ、ヤナタケさんに「出てるよ」っていうのを教えていただいて。気持ち悪いんですけど、1日2、3回ぐらい渋谷のスクランブル交差点のところに張ってスマホをかざして、「いまだ!」みたいな感じでパッと写真を撮ったりなんかしていたんですけど。いまもね、流れているんですかね。みなさん、お暇な方はぜひぜひ渋谷のスクランブル交差点に行ってほしいんですけども。

早く聴きたい!

みやーんZZさん(@miyearnzzlabo)がシェアした投稿 –


でもそれで私もさ、「うわー、やった! 『4:44』聞ける! 日本でも発表される!」って思って。でも、自分が撮った写真をよーく見たら「TIDAL EXCLUSIVE」っていう風に書いてあってさ。で、まあいわゆるジェイ・ZのTIDALエクスクルーシブ作戦っていうのは結構皮肉っていうか、斜めに受け取られることも非常に多いんですよ。まあ、カニエの『The Life Of Pablo』もそうだったけど。ビヨンセの『Lemonade』なんかは最初TIDALで。その後にすぐにアップルミュージックなんかでもゲトれるようになりましたけど。なんかある意味悪名高いというか、ノトーリアスというか。で、ちょっと変なジョークですけど、たとえばビヨンセが双子を妊娠して、もうすぐ出産じゃなかろうか?っていう時にも、ジェイ・Zはきっとビヨンセの出産シーンをTIDALエクスクルーシブで中継するはずだとか。

そういうジョークが流れたりするぐらい、ちょっと嫌な感じだったんですよね。「聞けねえじゃん!」みたいな。で、今回はしかもそこにスプリントが絡んでいるから。6月26日までにTIDALにサインアップ(登録)したユーザー、もしくはこれまでにTIDALアカウントを持っていてかつスプリントと契約しているユーザーみたいな、より聞ける範囲が限られてしまった。で、これは本当に直前までバタバタしていたみたいなんですけど、TIDALのオフィシャルアカウントでも「ジェイ・Zの新しいアルバムが聞けるのは今日の深夜○時○分までにTIDALにサインアップしたスプリントユーザーだけです」みたいなことを、本当に超ギリギリのタイミングでツイートしてたりして。それでまた炎上みたいなことがありましたけども。

まあ、そんな感じで本当にすったもんだがありましたっていう感じでリリースされたのが最新アルバム『4:44』なんですけども……でもね、私もいち早く聞かせてもらったんですけど、本当にそういう穿った見方。「ジェイ・Z、ちょっとホンマにビジネスのことしか考えてないんじゃないの?」みたいな、そういう曲がった見方を本当にグワーッと覆すような素晴らしいアルバムだったというのを最初に言っておきたい。「もう本当にホヴァさん、ホンマいらんこと言ってごめんね」っていう感じで言っておきたいんですけども。

まずですね、タイトルの『4:44』っていうのはどんな意味があるんだ?っていうことなんですけど、もともと「4」というのはジェイ・Zとビヨンセ夫妻にとってすごく重要な意味ある数字なんですよ。ジェイ・Zの誕生日が12月4日。ビヨンセの誕生日が9月4日。2人の結婚記念日が2008年4月4日なんですけど、これは8を2で割ると4。プラス4月4日だからということで、この日を記念日に選んだと。そして、2人の左手の薬指にはローマ数字の「4(IV)」のタトゥーがそれぞれに入っている。かつ、2人の間に生まれた長女ブルー・アイヴィー(Blue Ivy) という名前ですけども。アイヴィーちゃんの名前も「Ivy」というスペルですが、「I」と「V」をくっつけるとローマ数字の「IV」になるということで。2人は「4」という数字を大事にしているんですね。

で、ビヨンセももともと『4』っていうアルバムを出していましたし。そんな感じでずっとビヨンセとジェイ・Zの間には「4」という数字がついて回っている。そこで『4:44』が出てくるんですが、この『4:44』はアルバムの表題曲のタイトルでもあるんですけども。「ホンマかいな?」って思うんですけど、ある朝、ジェイ・Zが午前4時44分ちょうどに目が覚めたらしいんですよ。で、それで「この曲を書かねば!」と思ってダッシュで書いた曲がちょうど4分44秒だったんだと。で、「これはアルバムのタイトル曲にせねば!」と思ったそうなんですけども。

なので、『4:44』って本当に自分にとってパーソナルなことしか歌っていない曲。だし、アルバム全体を取っても本当に「自分の霊をむき出しにする」みたいな評もすでに書かれておりましたけども。これまでのジェイ・Zのキャリア。全12作アルバムがありますけども。その中のどれを取っても最もパーソナルなアルバムであるというのがこの『4:44』なんですね。で、1曲目がまず『Kill Jay Z』。「ジェイ・Zを殺せ」というフレーズを冠した曲でございまして。ちょっとみなさん、まだ聞いてない方が多かろうと思いますので。どんな曲で、どんなテイストでこの『4:44』というアルバムが始まるのか。ちょっとここで聞いていただきたいと思います。ジェイ・Zで『Kill Jay Z』。

Jay-Z『Kill Jay Z』



はい。いまお届けしておりますのはジェイ・Zの最新アルバム『4:44』の冒頭を飾る1曲目。『Kill Jay Z』を聞いていただきました。で、これはどんな曲かな?っていうところなんですけども。他者から見た自分を描いているんですね。「ジェイ・Zよ、自分でお前を殺してしまえ」という風に、「エゴを殺せ」ということを歌っていって。かつ、この曲でいきなりカニエ・ウェストとフューチャーに向けたディスラインというのがあるんですよ。たとえば、「あいつに2000万ドルをくれてやったのに、あいつはステージの上の20分間で俺のことをディスっただけなんだ。どうなっているんだ? みんながクレイジーなら、気がふれているのはお前だけだ」みたいなことを言っていて。


これはもう、まさしくカニエ・ウェストだと思うんですけども。カニエ・ウェストもね、すごいお金に困って。「自分にはすげー借金がある」みたいなことをいきなりTwitterで告白なんかしましたけども。その際にジェイ・Zにお金を借りているということが明らかになっていたり。かと思えば『Saint Pablo Tour』でステージ上でジェイ・Zとビヨンセのことをウワーッてディスったりとかして。「お前、本当に狂っているよ」みたいなことをジェイ・Zが言ったりとか。

あとは、「In the Future, other niggas playin’ football with your son(将来的にはお前の息子はお前じゃない男とサッカーをすることになっているかもな)」みたいなことを謳っているんですけども。これは他の第三者がジェイ・Zに向けて「お前がもしあの時に道を正していなければ、将来自分の子供と遊べないよ」って言う意味なんですけども。これはまさにフューチャーに向けたディスラインじゃないか? と言われていて。「In the Future」で「Future」の名前がついているんですけども。「自分の子供と他の男がフットボールする」っていうのが何のたとえかというと、シアラですね。フューチャーはもともとシアラと結婚していて、そこにフューチャーJrっていう自分の息子をもうけたわけなんですけど……結構泥沼裁判離婚をしまして。


シアラはいまね、アメフト・NFLの花形のクォーターバック(ラッセル・ウィルソン)と結婚をしていて。しかも、ことごとくいまのシアラの旦那さんがフューチャーと息子と一緒にフットボールをしていて。しかも、フューチャーの息子が新しいお父さんのことを「パパ! ダディ!」みたいに言っている映像が結構ね、ネット上にもバラまかれていて。しかも、新しい家族3人で雑誌のポートレートに載ったりとかしていて。結構ね、フューチャーとしてはすごい精神的ダメージがウワッと来るようなゴシップがあるんですよ。でもそれって、もともとなんでそういうことになったか?っていうと、フューチャーの浮気が原因なんですよね。だから、ジェイ・Zも自分が浮気をしたけれども、ちゃんと襟を正さなければ自分も――この間、双子ちゃんが生まれて3人いますけども――もしかしたらビヨンセのが他の男と再婚して、せっかく自分の子供がいるのに自分の子供と将来遊べなくなっちまっていたかもな……というようなストーリーを歌っていると。

で、あとは過去、ビヨンセの妹のソランジュがエレベーターの中でジェイ・Zをボコッたっていうニュースなんかもありましたけども。そのことなんかも自分でラップしているんですよね。


なので、本当にいままでのジェイ・Zのラップと全然違うことを歌っている。で、こんな自分が惨めになるようなラップっていままでジェイ・Zって絶対にしてこなかったと思うんですよね。まあ、そういう描写はあったとしても、最後は自分がヒーローみたいな感じで終わることが多かったし。俺は生粋のハスラーだ、ブンブン!っていう感じで通してラップをしていることが多かったんですけども。この1曲目の『Kill Jay Z』で「あら? 今回のジェイ・Zはちょっと様子が違うぞ?」と。本当にこの1曲を聞いただけでも、すごくパーソナルな、自分の普段はさらけ出さない部分をラップしているなというのが感じ取れるんじゃないかなという風に思います。

で、先に表題曲について触れたいと思うんですけども。このアルバムの中でも最もパーソナルな曲っていうのが、「朝4時44分にいきなり起きてパーッと録った曲だ」って言っている表題曲『4:44』。これがまたね、最初の1ライン。「Look, I apologize, often womanize」っていうラインで始まるんですけど。「Look, I apologize(見てくれ、謝るよ)」と。で、「apologize」っていうのは本当に「I’m sorry」よりももっと深い、本当に「謝罪します、陳謝します」みたいなニュアンスが含まれるんですけども。で、「often womanize(女遊びが過ぎてしまった)」という風に言っていて。もう、自分の過去の過ちをここで全部謝っている。しかも、誰に謝っているか? と言えば、もちろん相手は奥さんのビヨンセですよね。

で、「See through a woman’s eyes」っていうのが次のラインにあるんですけども。「いま、俺は女性の目を通して物事を見ることができる」っていう風に言っていて。これはたぶん自分にも娘のブルー・アイヴィーちゃんが生まれたからではないかと思うんですけども。で、この曲は1曲の中に7回も「apologize」っていう単語が入っていて、とにかくビヨンセに謝り倒しているんですね。で、しかも去年2月にビヨンセが『Lemonade』っていうアルバムを出しまして。『INSIDE OUT』でもがっつりと触れましたけども。あのアルバムってとにかくビヨンセが「Are you cheating on me?(あんた、浮気してんじゃないの?)」っていう疑惑を脈々と歌う。時にはめっちゃキレながら。そして時には本当に泣きそうになりながら、感情をむき出しにしてアルバム1枚丸々歌うというアルバムだったわけですけども。

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この『4:44』っていうのはまさにその『Lemonade』に対するジェイ・Zからの回答というか謝罪文なんじゃないかという風にすごく言われておりますし。まさに私もそういうことだと思います。で、ビヨンセのアルバムの『Lemonade』の中には浮気相手とされる「ベッキー」という謎の女が出てきましたけど、ご丁寧にジガさん、今回自分のアルバムにも「ベッキー、俺のことを放っておいてくれ」みたいなラインがあって。マジで確信犯みたいな感じがしていたし。で、ファンとしては「ああ、ジェイ・Z本当に浮気してたんだ」っていうのがね、わかる。まあ、そりゃしますよ。だって世界でいちばん稼いでいるぐらいのラッパーだからさ。いくらビヨンセがいようと、妻子がいようと、そりゃもう、遊ぶわ……っていう風には思っちゃうんですけども。

でも、リリックの中にね、「Took for these natural twins to believe in miracles(双子のお陰で俺は奇跡を信じることができた)」と。で、「自分の子供たちが自分がやってきたことを知ったらどうするんだろう? もう恥ずかしすぎて死にたい」みたいなことも言っていて。いや、それはググれば一発で出てきますがなっていう感じがするんですけども。そんなこんなで4分44秒ずっとビヨンセに謝り倒しているような曲がこのアルバムのハイライトというところでございます。


で、いまこの『4:44』に対して本当にポジティブな意見がたくさん……まあ、ラッパーたちもすごいベタ褒めしているし、各種メディアも本当にベタ褒めしているし。私もすっごい素晴らしい曲と思っていて。『4:44』を聞いた時に「ジェイ・Zが奥さんに謝っている!」って思って。なんか私もちょっと、ねえ。夫婦間でイラッとするようなことがあれば、この曲を聞いて。ジェイ・Zですら奥さんに謝るんだから、この曲を聞いて気分を鎮めようと思ったんですけど。もしかしたらね、ハーコーなヘッズの中には「なに奥さんに謝っているんだよ?」みたいな。そういう亭主関白イズムを大事にするような男性ももしかしたらいるかもしれないし。でも、うちの旦那さんなんかは「今回のアルバムはすごい嫌だ」っていう風に言っていて。

(DJ YANATAKE)(笑)

(渡辺志保)まあ、アルバム1枚を通して聞いて私の頭の中には「家内安全」という四文字熟語がドーンと、頭の中に浮かんだぐらいなんですけども。まあまあまあ、そういうアルバムですよと。ここでひとつ、このアルバムのハイライトを申し上げるならば、もう本当にビヨンセに謝るジェイ・Z。で、それを言い方を変えると、過去の過ちを全部認めて、謝罪するというか新しい未来へつないで行こうとするジェイ・Zの姿が見えますので。ちょっとここでアルバム一のハイライトと言われる『4:44』を聞いていただきたいと思います。ちなみにイントロ部分で歌っているのはキム・バーレルというゴスペルシンガーでチャンス・ザ・ラッパーとちょっとモメたりもしましたけど。キム・バーレルもフィーチャーされているのと、あとすごい重要なサンプリングソースがありまして。これはハンナ・ウィリアムズというUKのおばちゃん系のシンガーなんですけども。


このハンナ・ウィリアムズのサンプリングソースがすごいいい感じで効いていますので、そのへんにも注目して聞いていただきたいと思います。ジェイ・Zで『4:44』。

Jay-Z『4:44』



はい。いまお聞きいただきましたのはジェイ・Zの最新アルバム『4:44』の中から表題曲。その名も『4:44』を聞いていただきました。あのね、これは本当に繰り返しますけども『Lemonade』へのジェイ・Zからの回答という風に言われていますから。もうアメリカの音楽ウェブサイトなんかは「このラインが『Lemonade』のこのラインと呼応しているのではないか?」みたいな、そういう答え合わせ特集みたいなのもされていて。たとえば、ビヨンセが『Sorry』のリリックの中で「彼は私の電話をして迎えに来てくれようとしたんだけど、私はその電話をピックアップしなかったんだよね(He trying to roll me up, I ain’t picking up)」っていうラインがあるんですが、この曲の中でジェイ・Zが「たのむ! たのむから電話に出てくれ!(“Please pick up the phone, pick up the phone”)」っていうラインがあって。それがいちいちここと呼応するんじゃないか? みたいな、そういう間違い探しみたいなところもありまして。

(DJ YANATAKE)すげーな(笑)。

(渡辺志保)まあ、そういうのをニヤニヤしながら私は追いかけていたわけなんですけども。まあ、そんな感じですっごいパーソナルなことについてラップしているのがこの『4:44』というアルバムなんですね。で、たとえば3曲目に『Smile』という曲がありまして。ここはグロリア・カーターという自分のお母さんがポエトリーリーディングみたいな形で参加しているんですけども。そこでも、「うちのお母さんは子供が4人もいるんだけれども、レズビアンだったんだよね(Mama had four kids, but she’s a lesbian)」っていうことを公表していたりだとか。ちょっといままでのジェイ・Zのラップには見られなかったようなトピックもあります。


で、まあひとつね、ビヨンセのアルバムもそうでしたけど、そういうちょっとスキャンダラスなトピックもありながら、あともうひとつ、このアルバムの軸になっておりますのはウィズダムというか、賢人の知恵というか。これだけね、何十億も稼いでいるジェイ・Zだから言える、大人の男性。しかも、社会的・経済的に成功した大人の男性だからこそラップできる、そういうウィズダムっていうところがすごく重要な柱にもなっているんですよ。で、それがひとつすごく顕著に表れているのが2曲目の『The Story of O.J.』っていう曲なんですよね。

で、もう本当これね、TIDALエクスクルーシブなんだけど、TIDALエクスクルーシブでいまミュージックビデオが発表されているんですよ。で、最初発表されてすぐはTwitterとかにも上がっていて私もRTなんかしていたんですけども。いまね、YouTubeなんかを探してもやっぱり全部消されているっぽいですね。だから早いところみなさんがアクセスできるようにジェイ・Zさん、お願いしますよ!っていう感じがするんですけども。まあ『The Story of O.J.』という曲があります。これはニーナ・シモンの『Four Women』っていう曲をサンプリングしているんだけど。このもともとのニーナ・シモンの曲はニーナ・シモンが「私は○○、私は△△」って言いながら、4人の黒人女性のことを歌っている曲なんですね。


でもって、このジェイ・Zもリリックの中にNワードを用いながらライトスキンなやつ、ダークスキンなやつ、偽物なやつ、リアルなやつ、リッチなやつ、貧乏なやつ、いろんなやつらがいるけども――まあ、この「やつら」って私がいま言ったのは全部Nワードなんだけど――全部、ニガーはニガーなんだぜっていう曲をちょっと自嘲的に歌っている曲なんですよ。で、さっきお話したミュージックビデオなんですけども、これ全編白黒のアニメなんですよ。で、しかもジェイ・Zがジェイボ(Jaybo)っていうね、ちょっとカリカチュア(風刺画)っぽく描かれたジェイボっていうキャラクターに扮していて。

これね、たぶん命名の元ネタは日本でもおなじみかと思いますが。『ちびくろサンボ』というね、お話がありまして。この『ちびくろサンボ』って日本でもたぶんいま絶版になっているんですかね? で、アメリカでもちょっと人種差別的だということで一般的に手に入れることは難しいんじゃないかなと思うんですけども。「サンボ」っていうのはかつて奴隷であったアフリカン・アメリカンの男の子がよくつけられた蔑称みたいな。まあ、軽く見られるような感じのあだ名としてサンボっていうのがよくつけられたと。で、それに扮したジェイ・Zがジェイボとしてこのミュージックビデオには出てくるんですけども。

その中にも、たとえば綿花(コットン)を摘む黒人の姿であるとか、スイカをむさぼる黒人の姿なんかが出てきて。で、スイカっていうのは日本だと夏の風物詩っていう感じですけど、結構アメリカではスイカっていうのはアフリカン・アメリカンを揶揄する時の、あんまりよくないアイテムとして登場することが多いんですよね。一種のステレオタイプですね。なので、黒人+スイカっていうと結構ネガティブなステレオタイプとして受け入れられることが多くて。まあ、そういう姿も描いている。あとは、有色人種であることを表す「Colored」っていう看板がついたバスの座席に座っているジェイボが出てきて。これは言わずもがな、ローザ・パークスの事件なんかもありましたけど。かつて人種差別が激しかった時代は黒人の方はバスに乗る時も後部座席の方に乗らなければならなかったと。

そういったところをミュージックビデオで描いております。で、そんな「Light n*gga, dark n*gga」みたいなことを言っているんだけど、その後ろの方にですね、「house n*gga, field n*gga」っていうのが出てくるんですけど。このハウス・Nワード、フィールド・Nワードっていうのも奴隷制時代からよく言われていたことでして。ハウス・ニガーっていうのはどういう黒人かと言いますと、奴隷制時代に白人のご主人様に仕えて家の中の小間使いなんかをする黒人のことを言うんですよ。で、フィールド……っていうのはどういうことか?っていうと、外の畑でコットンを摘んだりとか、肉体労働を強いられるようなタイプの黒人のことをフィールド……っていう風に言うんですけども。ハウス・ニガーっていうのはよく白人の主人に懐柔されて従順になりすぎてしまった、ちょっと弱腰なやつみたいな風に揶揄されることもありまして。

この楽曲のバースは「House n*gga, don’t fuck with me I’m a field n*gga, go shine cutlery」っていうラインで始まるんですけども。そういう「従順なハウス・ニガー、俺に構うな。俺は外でハスリンするフィールド・ニガーなんだ」っていうことを言っていたりもしまして。ここに結構そのね、昔の奴隷制から続くアフリカン・アメリカンの男性がいろんなタイプの男性が抱えるあれやこれやをジェイ・Zが代弁しているのかなという風にも思うんですけども。で、この曲でずっとジェイ・Zは結構自分の錬金術っていうか、自分がどういう風に稼いできたか? いま、自分の社会的地位に対してどう思うか?っていうことをラップしていて。

これもさ、たとえばいままで「俺はベントレーに乗って、ロールス・ロイスに乗って。(時計は)オーディマ・ピゲで。1本何百万もするシャンパンを飲んでいるのが俺だぜ」とか。前作の『Magna Carta Holy Grail』でもたとえば『Picasso Baby』で「ピカソの絵を買うリッチなやつは俺だ!」みたいな。そういう結構マテリアリズムとか拝金主義みたいなのについてバンバン語っていましたけど。今作ではまたちょっと違う角度から「金」について歌っておりまして。たとえば、「100万ドルで買った絵が2年後には200万ドルになっている。そしてその後に800万ドルになっている(I bought some artwork for 1 million 2 years later, that shit worth 2 million Few years later, that shit worth 8 million」とかね。そういう、投資の大切さを説いていたりとか。

あとは「お前ら、”グラム”に金を電話のように持ってアップしているだろうけど、その電話、断線しているから。そんな電話みたいに金を持ったってどこにもつながらねえんだぜ(Y’all on the ‘Gram holdin’ money to your ear There’s a disconnect, we don’t call that money over here, yeah)」ってことをラップしています。ちなみに「グラム(’Gram)」っていうのは「Instagram」の略称でして。これ、たしかケンドリック・ラマーも『DAMN.』の『ELEMENT.』という曲の中でInstagramのことを「グラム」って言っていましたけど。よく最近さ、2チェインズとかミーゴスとかがやっていると思いますけども。札束をサランラップみたいに巻いて、それをあたかも電話しているかのように耳元に持ってきて。その姿でPV撮ったりとかInstagramに写真をアップして。「俺、こんだけ金持ってるぜ」みたいなことが若いやつらの中で流行っているので。それを「そういうことじゃねえんだよ」って言っていたりとか。

あとは「ストリップクラブで金を撒くよりも大事な金の使い方、知っているか? それは”クレジット”だ(You wanna know what’s more important than throwin’ away money at a strip club? Credit)」って言っていて。で、「クレジット」ってまさにクレジットカードの審査っていうのがありますけども。その時に重要視される経済的信用度のことを「クレジット」という風に言ってます。もう1個、「クレジット」ってスラングっぽい使い方でそのまま「信用度」っていう意味があって。たとえばストリートで支持されているということを「Street Credがある」って……まあ、「Credit」を略して「Cred」って言うんですけど。そんな風に言ってまして。金があるならストリップクラブで金を使うだけじゃなくて、それをちゃんと自分の社会的地位にちゃんと還元せねばならんぞということを説いていたりとか。

なので、いままで金がある状態であることは常にラップしていましたけど、その裏側に潜むジェイ・Zの考え方。若いラッパーたちに警鐘を鳴らすじゃないですけども、そういうこともラップしている。で、このタイトルになっている『The Story of O.J.』なんだけど、「O.J.」ってなんだ?っていう話なんですが。これはあのO・J・シンプソンのことなんですね。で、O・J・シンプソンの裁判事件というのが1994年だったかな? に、ありまして。黒人のスポーツ選手、かつ俳優であるO・J・シンプソンが殺人容疑をかけられたけども、見事に無罪を勝ち取ったというストーリーなんですが。その時にO・J・シンプソンが「I’m not black, I’m O.J.!」っていう風に言っていて。「僕は黒人じゃなくてO・J・シンプソンという一個人なんだ。有名人なんだ」という有名なラインがあって。

で、それをジェイ・Zもこの『The Story of O.J.』で引用しているんだけども。で、そのセリフを引用した後にちょっと諦めたように「okay」って。「まあ、いいけどね……」みたいな感じで言っていて。「お前がそんなことをいくら主張したって、世間はお前を1人のアフリカン・アメリカンとしか見ていないんだよ」みたいな意味合いを含めて「okay」という風に言っているんですよ。ちなみにこのO・J・シンプソンの裁判って日本では当時は結構騒がれたんですかね? 私もその当時は10才とかだったんでよくシチュエーションがわからなかったりするんだけど。

実はこれ、いまドキュメンタリードラマになっていて。キューバ・グッディング・ジュニアとかが出ているんですけども。それがつい昨日、一昨日ぐらいからアメリカですっごい高い評価を得て、エミー賞を受賞したようなドキュメンタリードラマなんだけど、日本でもNetflixで見れるようになったので。興味がある方はぜひぜひ見ていただきたいなと思うし。

Netflix『アメリカン・クライム・ストーリー/O・J・シンプソン事件』


そのO・J・シンプソンの裁判事件ですごく有能な弁護士がバーッと全米から集められたんですけども、その中の1人がロバート・カーダシアンと言いまして。みなさんご存知、あのキム・カーダシアンの実父。キムのお父さんがそのO・J・シンプソン事件を解決に導いた弁護士の1人ということで、そこでちょっとキム話も挟みつつ……っていう感じなんですけども。なので、本当にいままでジェイ・Zってね、ハスラーの美学ということをとうとうとラップして後世に伝えてきたラッパーですけども。ここではちょっといま、これだけ成功した大人だからラップできるという内容をこの『The Story of O.J.』で色濃くラップしていますので。ぜひぜひここで少しだけ聞いていただきたいと思います。ジェイ・Z『4:44』から『The Story of O.J.』。

Jay-Z『The Story of O.J.』



はい。いま聞いていただいておりますのはジェイ・Zの13枚目のオリジナルアルバム『4:44』から『The Story of O.J.』。まあ、ジェイ・Zも47才だから。アラフィフだからさ、いつまでも「モリ、パコセッ!(molly, Percocets)」みたいな。誰かさんみたいにラップできないし。



「ママが言ったんだよ、働けってよ」みたいなことも、「俺たち、お揃いの色のTシャツだぜ!」みたいなことも、「俺のビッチはバッド&ブジーさ。カップラーメン食ってるんだよね」みたいな。そんなこともラップできませんから。しかも、こんだけラップ業界で成功して、かつこのアルバムを出す数週間前にははじめてラッパーとしてソングライターのホール・オブ・フェイム(殿堂)入りしたという、本当にそれこそ「Cred(クレジット)」があるジェイ・Zですから。やっぱり彼がいまどういうラップをするか?っていうのは本当に全世界のリスナーが気になるところだし。彼が言うと、やっぱり説得力も段違いじゃないですか。なので本当にね、学ぶことがたくさんあるなと思うアルバムなんですけども。

で、このアルバムね、全部で10曲しか入ってませんで。さっき冒頭に話したカルヴィン・ハリスのアルバムもそうなんだけど、全部で10曲でかつ、40分未満のすごいタイトな作りなんですよ。で、10曲目。どんな曲で終わるかといいますと、『Legacy』っていう曲で終わるんですね。レガシーって日本でもおなじみのフレーズだと思うんですけども。この曲は冒頭、愛娘ブルー・アイヴィーちゃんの声で「遺言ってなに?(Daddy, what’s a will?)」っていう言葉で始まるんですね。「Will」っていうのが「遺言」っていう意味なんですけども。まあ、「遺言ってなに?」ってブルー・アイヴィーちゃんに聞かれてジェイ・Zが話し始める。「そんな子供が『遺言ってなに?』とか言いますかね……へー。さすがカーターさん家の娘さんは違いますね」みたいなね。絶対に私なんかは鼻水たらしているだけの子供だったと思うんですけども。「遺言ってなに?(Daddy, what’s a will?)」って聞いて曲が始まると。

でも、すっごいいいことを歌っているんですよ。「もし自分がなくなったら、自分の遺産は家族に譲り渡します。近親者に分けて、その後は全部”B”(ビヨンセ)に渡す。もしかしたら彼女はそのお金で学校を設立するかもしれない。恵まれない子たちのために学校を自分の遺産で作るかもしれないでしょう」っていうようなラップをしていまして。もうね、こんなこと言えるラッパー、いなくね? みたいな。カニエとか絶対にこんなこと、言わないぜ? みたいな感じがするんですけどもね(笑)。

なので本当にとことん、最後の最後まで一成功者のアフリカン・アメリカン、47才のショーン・カーターさん。ジェイ・Zじゃなくてショーン・カーターさんっていう感じでラップをしているんですよ。で、さっき『The Story of O.J.』の時に言い忘れていたんですけども。ジェイ・Zが「経済的に成功することが俺にとっての唯一のフリーダム(自由)だ」っていう風にも言っていて。やっぱり、物事を所有することに対してすごく執拗に、そこにこだわっているんですよ。それって、ちょっと話が逸れちゃうかもしれないけど、それこそミーゴスとかフューチャーとかがね、現金をInstagramにアップして自慢するとか、買った高級車をすぐにInstagramにアップして自慢するとか。

「俺のBMW、マットブラックに塗りました!」とかってすぐに自慢するみたいな。なんかそういうところにもちょっと共通するかなという風に思っていて。というのはアメリカ社会、古くから、人種差別が色濃かった時代からアメリカ社会で言われていた言葉が「持てる者、持たざる者」っていう言葉がありまして。持てる者……富裕層はどんどんどんどんなんでも手に入って持つことができるけど、持たざる者。そういったものに手がとどかない者に関してはいつまでたってもその富が行き渡らない。それで貧富の格差がどんどん広がっていくという。で、大抵持たざる者っていうのは人種的にもマイノリティーであったりとかするわけですよ。それはもう本当に何十年も昔から言われてきたようなことであって。やっぱり、そこにすごく執着するのかなという風に思いました。何かを所有するというね。それは本当に車とかお金かもしれないし、やっぱり家族かもしれないしということを非常に感じたところであります。

でもって、本当にこのアルバムは自分のすごいパーソナルなところもそうだし、あとは家族についてめちゃめちゃラップしている。それは謝る場面があろうと、愛・感謝を伝える場面があると、やっぱり家族についてすごいラップしているんですよ。これはちょっと私がぼんやりと思っていることなんだけど、たとえば去年、カニエのアルバム(『The Life Of Pablo』)でもすっごい家族についてね、「どんだけキムとノースとセイントが俺にとって重要か?」っていうことをラップしていましたし。ちょっと手法は違うけど、J・コールに関しても、やっぱり自分の友達の視点を借りながら、家族とか愛についてラップするアルバムを作っていたし。あと、ケンドリックもそうだよね。『DAMN.』ですごく家族のことをラップしていましたから。

渡辺志保 Kendrick Lamarアルバム『DAMN.』を語る
渡辺志保さんがblock.fm『INSIDE OUT』の中でケンドリック・ラマーの新作アルバム『DAMN.』について1時間、たっぷりと話していました。 ケンドリック・...

なんでしょう。政権がトランプに変わってどんどんどんどんアメリカがすごい個人主義になっているのかなと思っていて。で、家族って社会における最小の集団という風にも言うじゃないですか。だから、なんかそういうマインドになっているのかなというのをふと感じました。っていうのと、あとこのジェイ・Zの『4:44』は本当にビヨンセに謝りながら家族を大事にすることを歌い、成功した大人の黒人男性としてラップをするウィズダム(知恵)が詰まっているんですよというアルバムなんですが、まだここで言い切ってしまうのは非常に性急だという風に思っておりまして。なぜかというと、7月7日。今週の金曜日に早くもフィジカル盤が出るんじゃないか説と、TIDAL以外でも聞けるんじゃないか説っていうのがありまして。しかも、フィジカルバージョンにはあと3曲、追加で収録されるという風にも言っていますし。


予約ポイント10倍!ジェイ・Z(Jay-Z)の4年振りとなるスタジオ・アルバム『4:44』


あと、いちばん最初の広告にフィーチャーされていたマハーシャラ・アリ、ルピタ・ニョンゴ、ダニー・グローヴァーの3人はいったい何なんだ? ということにもなりまして。しかも、マハーシャラ・アリが自分のInstagramに映画のポスターみたいなものをアップしているんですよ。でもって、実はジェイ・Zのこの『4:44』はビジュアルアルバムなんですよということを軽く示唆するところなんかもありまして。まあ、ビジュアルアルバムと言えば、まさにビヨンセの『Lemonade』があるわけなんですけども。まあ、あんだけ名うての俳優たちの名前をバーッと最初にクレジットしておいて、なにもないわけがないので。この後、この『4:44』から始まるストーリーみたいなのがどんどんどんどん展開していくはずだ、展開していくべきだと思っておりますので。その暁にはまたね、ここで長々としゃべりたいと思うし。

あとは、ゴシップネタでごめんなさいだけど、ちょうど日本時間の昨日深夜ぐらいにカニエ・ウェストがね、「もうTIDALとのエクスクルーシブ契約は破棄したい」っていう風に言ったというニュースが流れ込んできまして。で、ジェイ・Z側というかTIDAL側がカニエに払っていない未払金がもう何百万ドルとあるということが報じられもしましたし。で、最初の話に戻るけど、本当にさ、みんなが聞けないアルバムを出さないでほしいというのが私の正直なところでもありますので。ちょっとこの『4:44』が今後どうなるのか、『INSIDE OUT』でも逐一みなさんにお知らせしたいと思うし。早くみなさんで聞いて堪能したいなという風に思っておりますので。このタイミングでその『4:44』を締めくくる最後の曲をオンエアーしたいと思います。さっきのブルー・アイヴィーちゃんの「遺言ってなに?(Daddy, what’s a will?)」っていう語りで始まりますこの曲を聞いてください。ジェイ・Zで『Legacy』。

Jay-Z『Legacy』



はい。いま聞いていただいておりますのはジェイ・Zの最新”聞けない”アルバム『4:44』を締めくくる最後の曲『Legacy』を聞いていただきました。まあでも本当に私もラップファンとしてたまに考えるのが、「ラップって未来、どうなるんだろう?」っていう。真面目か!っていう感じなんですけど。70年代後半にアメリカで生まれたヒップホップ、ラップですけども、たとえばさ、その時代にデビューして商業的にドカンと爆発したのが83、4年とかだと思うんですけども。LL・クール・Jとかで。たとえばLL・クール・Jがいまも最前線でラップしてドッカンドッカン儲かっているか?っていうと彼は司会業とか俳優業とかがあるからいいけどさ。ラップでずーっと第一線でやっている人ってやっぱりいないじゃないですか。アメリカにおいても。

しかも、いつまでたっても「俺の女はバッド&ブージー」とかラップできないしさ。やっぱりそうなるとさ、「若い時はジェイ・Zを聞いていたけどもいまのジェイ・Zは聞けないっすよね」みたいな人はたくさんいると思うんですよね。でも、そういった時にじゃあ成熟した大人の男性がどんなことをラップするんだろうか?っていうのは私もずっと常々個人的に思っていて。まあ、たとえばナズとかもさ、自分のライフステージに合わせてどんどんどんどんリリックの内容なんかを変えていくし。日本だとZornさんとかECDさんとかもさ、そういう感じなのかな?っていう風にちょっと思うんですけど。

ここでジェイ・Zがこの『4:44』っていう、イケイケじゃないですよ。決してイケイケじゃないし、クラブでバウンスできる曲は全然ないんだけど、プロデューサーのNo I.D.とがっちりタッグを組んでこういうアルバムを提示してくれたということは本当にラップ、ヒップホップシーンの未来を見たなという感じもしますし。いくら日本で聞けないアルバムだとしても、そしていくら大企業が背中についていたとしても、やっぱりそこはジェイ・Zの力量っていうのはすごい感じましたので。早くみなさんにも聞いていただきたいなと思う次第です。

<書き起こしおわり>

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