山下達郎 ライブで心がけていることを語る

山下達郎 坂本龍一との出会いを語る NHK FM

山下達郎さんが2023年5月4日放送のNHK FM『今日は一日“山下達郎”三昧 レコード特集2023』の中で3年ぶりの全国ツアーを終え、また新たなツアーを前にした中でライブに際して心がけていることを話していました。

(杉浦友紀)『今日は一日”山下達郎”三昧 レコード特集2023』、達郎さんが思うレコードの魅力、またデジタルとアナログの違いなど、深い話を聞いてきました。ここからは先日、今年の全国ツアーの開催が発表されて、大いにファンの皆さんは沸いたと思いますけれども。そのお話も伺っていきたいと思います。3年ぶりの全国ツアーでした。久しぶりのツアーはいかがでしたか?

(山下達郎)老体に鞭を打って……(笑)。おかげさまで、いいお客さんで。それも不思議なんですけど。お若い方が増えてきて。なんか、予想外な展開ですよね。本当に(笑)。

(杉浦友紀)ライブでしか感じられない何かって、なんでしょうね?

(山下達郎)ホールの気っていうのがありますからね。芸事は結局、日本の場合はね、必ずやっぱり「新しい、新しい、新しい」ってね。「次は何をやるんだ? 次は何をやるんだ?」って、新機軸とか、そういうのがありますけど。リピートっていうことも大事なんですよね。反復。たとえば落語は全部、ストーリーがわかっているじゃないですか。でも、ちゃんと笑えるし。なんでも全部、見れるじゃないですか。文楽も同じで、歌舞伎も全部ストーリーをわかって行くでしょう?

だけどなんで……要するにロックンロールとか、特にポップミュージックは「また同じだ」とか言うのか?っていうね。それは昔から言ってますけども。だから特にこの歳になったらもう、絶対に反復はやめませんから。要するに、大事なモチベーションが統一できてるか。常にだから、そういうこっちのやる気がきちっとあれば、いいんですよね。要するに営業にならなければ。

リピート、反復が大事

(杉浦友紀)うんうん。ライブごとにだから同じ曲でも、やはり感じ方も違いますし。演奏する皆さんもたぶん違うんでしょうね。

(山下達郎)月並みな言い方ですけど。生き物ですからね。100回やっても100回、同じことになりませんから。でもその波が、上下の波をなるべくフラットにできるか。アベレージを揃えられるかっていうのがすごく重要で。

(杉浦友紀)今年はライブを取り巻く社会状況も明るくなってきて。それこそ、声出しが解禁されたりとか。熱気を帯びたライブのこの景色、戻ってきた感じ、しますね?

(山下達郎)またこれもね、なんか切り取りみたいなことを言われてね。「お客が一緒に歌うのはダメだ」とかね、そんなことを言った覚えもないので。あれは自分の番組で、リスナーの人が「ライブで歌っていたら隣にいた奥さんに怒られた。これはいけないことなんでしょうか?」って聞いてきたから「それはよくないでしょう」っつったんですよ。そしたら「山下達郎は客が歌うことを禁止した」とかって言われて。なんでああやってね、切り取るのかな?って。

(杉浦友紀)そうですね。切り取られ方でだいぶ変わりますもんね。解釈が。

(山下達郎)ろくなもんじゃないですよ。

「お客が一緒に歌うのはダメだ」なんて言っていない

(杉浦友紀)なので、「周りに迷惑かからない程度には歌っていい」ということですよね?

(山下達郎)「隣の人に迷惑をかけるのはよくないだろうな」っていうことで。僕の場合は別にほら、全員が大合唱とか、そういうんじゃないんでね。で、1曲目からそういう感じじゃないので。特にお年を召した方には楽だと思いますよ。みんな腰、結構大変ですからね。今。足腰ね。

(杉浦友紀)座ってゆっくり聞けるので。いいことだと思います(笑)。とはいえ、やはりだいぶ……3年ぶりだっていうのもありますけど。コロナ前に近づいてきたかな?っていう印象はありますか?

(山下達郎)そうですね。僕なんかはね、旅の時はずっとマスクなので。だからそれほど自分自身はマスクには抵抗がないんですよ。だからそれはウイルスで、マスクをするべきとかしないとか、そういうことじゃなくて。日常的に、特に秋冬はもうマスクは欠かせないので。ライブには。自分のね。でも、お客さんはかわいそうだなと思います。

(杉浦友紀)ずっとマスクをというのは。

(山下達郎)それで、しゃべっちゃいけないとか。でもそれは、僕のせいでもないし、お客さんのせいでもないんですよ。全然違うもののせいなので。それは僕がメンションする立場にないので。で、結局それはライブをやってる人たちの総意なので。それはやっぱりコンサートイベンターとか、企画してる人たちもそういうことをみんな、真面目に考えてるので。なので、別に雰囲気でどうたらとか、そういうんじゃなくて。

情動的に流されるとか、そういうことじゃないんでね。だからそれは、流れに任せるっていうか。それで、政治的なものでもないので。主催して……我々が演奏する立場、主催する立場、見る立場。そういうのの、皆さんのそういう総意というものが少しずつ改善されていくっていうか。そういう性急なものじゃなくてね、そういうものがいいんじゃないかなとは思いますけど。でもとりあえず私は、ステージの上でマスクできませんのでね。

(杉浦友紀)そりゃそうですね(笑)。

(山下達郎)こっちの演奏が、それによって要するに影響されないようにっていうのが一番の眼目なので。だから「みんなマスクして黙っている客の前でできないよ」みたいな、そういう人がいるかもしれませんけど。僕はそういうの全然ないんで。お客さんがどうあれしようと、こちらの演奏がなるべく、要するに変化しないようにというのがライブでは眼目だったんで。

(杉浦友紀)それを達成できたと?

(山下達郎)できてると思います。

(杉浦友紀)そんな、今年もライブを楽しみにしつつ。今日はですね、過去のライブからライブテイクをお届けしようと思います。

(山下達郎)去年、3枚でもだいぶおかけしましたけども。今までかけてないやつ……『DANCER』をやってみましょうかね。長いから。これ、2013年ってアルバムの『MELODIES』の30周年だったんですよ。だからクリスマスイブに千秋楽をやろうっていう。その時にやった演奏ですね。ライブバージョンの『DANCER』です。

山下達郎『DANCER(Live)』

<書き起こしおわり>

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