東野幸治さんが2023年4月28日放送のABCラジオ『東野幸治のホンモノラジオ』の中で宮崎駿さんの映画『風立ちぬ』で声優を務めた庵野秀明さんについて話していました。
(東野幸治)そして、映画ついでにちょっと言わせてもらうと。あの映画、あったんですよね。『風立ちぬ』っていう映画、知ってます? 宮崎駿さんが今から10年ぐらい前に作ったアニメで。それで、僕の下の子供からLINEが来てて。「なんや? 久しぶりに」って思ったら、「ちょっとクレームがあります」みたいな。「なんや? クレームって?」みたいで。それで、なんか電話がかかってきてたけど、出られへんかって。で、その次のところに、LINEやから。「クレームがあります」ってあって、電話がかかってきて、出られへんくて。で、その次に「滝に打たれてください」って。
(渡辺あつむ)ほう。
「クレームがあります。滝に打たれてください」(次女)
(東野幸治)ええっ?って。「滝に打たれた方がいいと思います」みたいになっていて。「なんや、これ? 親をつかまえて子供が『滝に打たれた方がいい』って、どういうことや?」って思って。で、電話して。それで繋がって聞いたら……今から10年ちょっと前。その『風立ちぬ』っていうアニメがあって。宮崎駿さんの。
それは、どんな映画かっていうと、零戦を作った人がモデルで。その人の、青年時代から関東大震災があって。日本が戦争に突入していく。その人は飛行機作りが好き。で、どんどんどんどん人を殺す零戦みたいなのに発注が来て。ほんで葛藤しちゃうみたいな映画。それを淡々と2時間ぐらいのパッケージにした、まあ大人が楽しむアニメみたいな感じだったんですよ。
それで、庵野さん。『シン・仮面ライダー』『シン・ウルトラマン』『シン・ゴジラ』の庵野さんが……宮崎駿さんのNHKのドキュメンタリーを見てたら、主役の人の声が見当たらないってなっていて。今までのアニメ声優でもダメ。俳優でもダメ。「どうしよう? こうしよう?」ってもう、ギリギリまで迷っていたた時に、「もしかして、あいつが!」って言って白羽の矢が立ったのが庵野さんなんですよ。俺も見ながら「なんでやねん?」と思いなが。
俺、あの頃、「早く最後の『シン・エヴァンゲリオン』を作ってくれ!」っていう時で。そこで庵野さん、声優デビューするんですよ。「ふざけんなよ!」って。もう庵野フリークの俺からすると「なんでやねん! そんな別に普段、抑揚ある感じでもない、朴訥としたしゃべり方の庵野監督が宮崎駿さんの『風立ちぬ』の声優? えっ、絶対断るわ!」と思ったら、引き受けるんですよ。「なんでやねん! 『シン・エヴァンゲリオン』、作ってくれ! こちとら、何年も待ってんねん!」っていう気持ちなんですよ。
で、それで、こっちはもう庵野フリークですから。公開と同時に見に行ったんですよ。うちの長女と見に行ったんかな? で、ちょうど下のがまだ早いなと思って。中学生ぐらいやったんかな? 早いし、意味わからんし、タイミングも合わへんかったんかな? 長女と2人で見に行って。で、帰ってきて。「どうだったの? 面白かったの?」みたいなこと言って。で、あれってちょっと話、ややこしいじゃないですか。
戦争とか。なんかね。で、普通の親やったら「実は日本っていうのは戦前、戦中、戦後、こういう歴史があって。こうで、ああで。その時に零戦を作った男の人の話。奥深い。飛行機作り、好きだけども、その零戦によって神風特攻隊じゃないけども。たくさんの命がなくなった。それをアニメにしてる」っていう風に説明せなあかんねんけど。こっちも面倒くさいから。
(渡辺あつむ)はあ?
(東野幸治)親としてね。日々の生活で、レギュラー番組で忙しいかったから。「どうだった?」って聞かれて、感想としてどうしようかな?って思ったけど。「とにかく庵野監督が主人公で。恋人ができる。そのキスシーンで『チュッ、チュッ、クチュッ、クチャッ……』って。それが気持ち悪かってん。仕事、行ってくるわ!」みたいな感じで仕事をしに行ったんですよ。
ほんで、子供からすると思春期や。思春期で、おじさんの「チュッ、チュッ、クチュッ、クチャッ……」って、それはもう気持ち悪いじゃないですか。「じゃあ、見ないでおこう」ってなって、10何年前はそれで終わったんですよ。
(渡辺あつむ)ほう、見えてきたぞ?(笑)。
(東野幸治)フハハハハハハハハッ! 見えてきました? ほんで、この間次女が、今は海外で暮らしてるから。で、たぶん時間があったんでしょうね。なんか、言うたらどこかの配信のところで「ああ、『風立ちぬ』。うちのダディが『チュッ、チュッ、クチュッ、クチャッ……』っておじさんのキスシーンがって言っていたやつ。当時は思春期で気持ち悪いと思ったけど、もう大人になったから、どんな風にね、朴訥としたセリフを言おうさんがクチャクチャやっているんだろう?」っていうことで、ちょっと面白半分で見たんですって。
ほんだら、感動して号泣したんですって。で、感動して号泣して……「どういう父親だ? この映画見ての感想が『キスシーンのクチャクチャが気持ち悪い』だけで仕事に行くという父に育てられた私の気持ち……もう腹立ってしょうがない! 文句を言いたい! でも、電話は繋がらない!」っていうことで、思わず「滝に打たれろ!」っていう(笑)。
(渡辺あつむ)フハハハハハハハハッ!
(東野幸治)なんかそういう風に……それで延々と叱られたんですけれども(笑)。だから俺も、なんか俺の記憶の中ではもうクチャクチャしか覚えてないですよ。なんか、庵野さんが好きすぎて(笑)。アニメーションを見るより、その向こうのこういうサブのところで、宮さん。宮﨑駿監督。宮さんが「庵野、もう1回、ワンテイク」「ああ、わかりました」って言って。「チュッ、チュッ、クチュッ、クチャッ……」「はい、OK。庵野、いいよ!」っていうのとかを想像しながら見てたから(笑)。作品の向こうを言ってなかったんですよ(笑)。
(渡辺あつむ)あの素晴らしいアニメにより前に、想像ドキュメントを?(笑)。
東野想像ドキュメント
(東野幸治)想像ドキュメント。庵野さんが台本を持って……言うたら、たぶん靴なんか脱いでいるんやろうな。靴下も履いてへんわ。で、丈も長い。裾なんかもう踏んでる感じで。「チュッ、チュッ、クチュッ、クチャッ……」っていうのがもう俺、ファンとしては嬉しいというか。「ちょっと休んでいて、いいよ。『エヴァ』、ちょっと休んでいてくれ。そのキスシーンのクチュクチュ、何回も見せてくれ」っていう気持ちでたぶん娘に言ったから、娘がすごく怒ったんで。ちょっと僕もね、反省して。これは大人としてあかんと思って。
まあ、滝に打たれるの嫌やから、『風立ちぬ』をもう1回、改めてちょっと見ようかなっていう風に思ったっていうことでございますから。『風立ちぬ』と『ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー』。ぜひぜひ皆さん、チェックをよろしくお願いします(笑)。
『エヴァQ』の制作終了後、心身ともに疲弊し切って重い鬱状態になっていた庵野秀明を『風立ちぬ』の声優に抜擢した宮崎駿。「優しく手を差し伸べた」というわけでもないだろうが、結果的に鬱病から回復し、シンエヴァが完成に至ったことを考えると、庵野さんにとっては良い体験だったのかもしれない。 pic.twitter.com/cpPaQqMgXq
— タイプ・あ~る (@hitasuraeiga) March 12, 2021
<書き起こしおわり>