春風亭一之輔さんが2023年2月22日放送のTBSラジオ『たまむすび』の中で『笑点』のメンバー入りした後の反響について話していました。
(博多大吉)でも、これ改めて、どういう感じなんですか? 情報の統制の仕方というか。
(春風亭一之輔)僕に関して言うと、オファーがあって。それで「考えさせてくれ」っつったんですね。まずは。安請け合いをしていると思われるとちょっと嫌なんで。
(博多大吉)もう食い気味で「やります!」じゃなくて?(笑)。
(春風亭一之輔)「ガブッ!」って行ったんじゃないんですよ。一応ね、ちょっと本当に考えないと。これ、一生変わるかもしれないんで。
(博多大吉)いや、落語家さんは人生、変わりますよね。
(赤江珠緒)実際にね、一之輔さんはお忙しくて。毎年毎年、いろんなツアーもされてましたしね。
(春風亭一之輔)ちょっと生きづらくもなりますしね。なんかね。生活しにくくなるし。ちょっと家族のこともあるし。
(赤江珠緒)まあお化け番組ですもんね。これだけの。
(春風亭一之輔)「お化け番組」ってちょっと久々に聞きましたけども。でも、お化け番組ですよ。で、「考えさせてくれ」って言って。それで「じゃあ、やります」って言った時に「もちろん、わかってると思いますけど、内緒で」って言われて。「ああ、もちろん言いませんよ」って。そんなもんですよ。
(博多大吉)ご家族には……たとえば奥さんには?
(春風亭一之輔)かみさんには正直、今までの放送では「家族にも言ってない」って言ったんですけど。かみさんには、もちろん言いました。最初に。
(赤江珠緒)まあ、そうですよね。リズムが変わりますからね。生活のいろいろなね。
(博多大吉)それは人生、変わるもんな。
(春風亭一之輔)急にテレビの放送で、自分の旦那が『笑点』メンバーになったって知ったら、たぶん「なんで言ってくれなかったんだ?」ってね。
(赤江珠緒)夫婦間の溝が(笑)。
(春風亭一之輔)できるでしょう? 溝が深くなるでしょう? だからかみさんには言わないとね。で、かみさんに言って、子供には……子供は正直、『笑点』には興味がないんで。うち、『笑点』を見ない家なんでね。だから「言わなくてもいいや」って。
(赤江珠緒)でも、師匠筋というか。上の方なんかは……。
(春風亭一之輔)そこなんですよ。で、ずっと黙ってた時間が長くて。「もうそろそろ放送だな。発表だな」っていう時に「ああ、そうだ。自分の師匠に言わなきゃな」って。
(博多大吉)おお。それは言っておかないと。
(春風亭一之輔)で、「どうしようかな?」と思いながら時が経って。1週間ぐらい前に自分の師匠の家に電話をして。おかみさんが出たんすけど。「なあに?」「いや、ちょっとお話というか、相談というか、あるんですけど」「ああ、今いないから。電話で聞いとくよ、私」「いや、直接、面と向かって言う方がいいかなと思ったんですけどね」「じゃあ、言っておく、言っておく。空いてる日、この日だから。おいでよ」っていう。で、その日の夜に師匠から電話がかかってきて。「なあに?」っていうから「いや、ちょっと直接、お話を……」「なに、なに、なに? 気になる、気になる。なに? 怖い」って。
「実は、こうこうこういうわけで、お引き受けすることにしたんですよ」「おお、そうか……」みたいなね。一応、そういう段取りで。師匠の耳には入れとかなくちゃなって。ちょっとでもね、うちの師匠って古典一筋で。寄席がメインな仕事場で。もちろん、独演会とかも頼まれればやりますけど。ほら、『笑点』のメンバーになるって……ちょっともう本題に入りますけど。いいですか?
(赤江珠緒)うんうん。
(春風亭一之輔)『笑点』って、なんつーんですかね? この番組でも何度か話してますけど。『笑点』好き、『笑点』しか知らない人たち、いるじゃないですか。おそらく日本の国民の……。
(赤江珠緒)うん、うん。そんなに寄席に行ったりとか、落語を聞くというよりも。
(博多大吉)あれが落語だと思っているっていうような。
(春風亭一之輔)その方たちの持ってる『笑点』に対するイメージと、落語が好き。寄席が好き。ライブが好きっていう人たちの持ってるイメージが、かなりかけ離れちゃっているんですね。言っちゃ落語家、本職の我々もどっちかっていうと、こっち側の落語好きな人間の……いわゆる落語族みたいな人たちと同じイメージはあるわけです。『笑点』に対して持っているものはね。
だから、『笑点』に出ることによる、なんていうか……そういう目でね。だから、本当は皆さん、落語をやっているんですよ。この色とりどりの人たちも。地方で独演会とかもやってるけども……。
(博多大吉)どうも……だから言いづらそうなんで、私が言いましょうか?
(春風亭一之輔)言ってください。
(博多大吉)「落語の手を抜いてんじゃないか?」って。大喜利なんて……「なんて」っていう言い方をしたらあれだけども。「大喜利は寄席の遊びでやるようなやつで。そればっかりやって金を稼いでるのはずるいじゃないか」みたいな。「大喜利と、ラーメンでしょう?」みたいな。でも、そんなことないのよ。そんなことは、もちろんないんだけども。そういう風に……。
(春風亭一之輔)思われている。でも、一方で「落語はわからないけども、『笑点』だけは見ている」っていう人は大好き。落語家といえば『笑点』っていう。それがちょっと、隔絶した……。
(博多大吉)「えっ、一之輔さんが『笑点』?」っていう。そういうファンもいるでしょう。そりゃ。
世間一般と落語好きの『笑点』に対する認識のギャップ
(春風亭一之輔)だから我々、若手の頃はよく言われる。よくあるのは地方にお仕事に行く。実際に今日、する話の中でも若い人で、地方で商工会議所みたいなのをバリバリやってる人が私に若い頃……仮に「Aさん」としますよ。Aさんがね、私に声をかけてくれたんですよ。「ちょっと落語なるものをみんなで聞いてみたい」と。それで呼ばれて1人で行ったんですよね。そしたら「初めて聞いたんですけど、案外面白いもんですね」みたいな。興味を持ってくれた。で、その打ち上げの時に言われたのが、まあこれは若手、結構言われるんですけど。「末には『笑点』に出るような、立派な落語家さんになってくださいよ」っていう。「そのために、乾杯!」みたいな。
(博多大吉)向こうは悪気、ないのよ?
(春風亭一之輔)悪気はない。
(赤江珠緒)ああ、そうか。大ゴールみたいに?
(春風亭一之輔)「ゴール目指して頑張れよ! 『笑点』を目指して……」っていう。そんなAさん。で、こっちも複雑。まあ、メンバーの方々の素晴らしさはわかってるけど、あれが落語だと思っては……「俺たち全員が『笑点』を目指してると思うなよ」って。まあ実際、2次会、3次会で言いましたけど。「そうじゃねえんだよ。落語っつーのはね、もっと面白いもんなんだ。大喜利は余芸だから。わかってくれよ、Aさん」っつって。「ああ、そうなんだ。じゃあまあ、来年もやろうよ」っつって。それで次の年もやるようになった。で、落語好きを広げていくというのは僕らの仕事だなと思いながら。若い頃からね、毎年毎年毎年毎年、やって。
そのAさんも本当に落語が好きになって。その仲間も、「他の人も呼びたい」って。「ああ、全然いいじゃないですか。僕と同期とかも、来てもらったりとか」「色物さん、落語以外の芸もみたい」「じゃあ、いいじゃないですか。来てもらおうよ」って。それで結構ちゃんと、落語会をやるようになったんですよ。で、それぞれのメンバーも、その主催者も、落語が好きになった。
そしたら、この間の2月5日の放送見てAさんからメールが来て。「候補に挙がっているのは知ってましたけれども、まさか一之輔さんが本当に引き受けるとは驚きました。一之輔さんがとても遠くへ行ってしまったようで、寂しいです」って。「『笑点』に出るように頑張ってくれ」って言ったやつがですよ、『笑点』に出ることが決まったら、言っちゃえば「『笑点』に出るなんて、がっかり」みたいなことを言い出して。僕、どうしろって言うんですか?
(赤江珠緒)なるほどねー! 複雑!
(博多大吉)でも、「今までみたいに気軽に声もかけられなくなるしな……」みたいな。そんな寂しさもあったと思うけれども。
(赤江珠緒)ある意味、その一之輔さんの啓蒙活動がうまくいったんじゃないですか?(笑)。
(春風亭一之輔)そうなんですよ(笑)。ちょっといきすぎちゃったんですね。だからそれぐらいのちょっと断絶があるから。『笑点』と落語に対してね。なんか間に溝があるから。だから僕がオファーを受けた時に悩んだのは……。
(赤江珠緒)悩まれたでしょうね。
(春風亭一之輔)悩みますよ。そういう感じで、色がつきすぎるのも、ちょっとあれだし。あと、不遜な言い方ですけど、やらなくてもいいかなとは……。
(赤江珠緒)そうなんですよね。一之輔さんって、もうめちゃめちゃ売れてるじゃないですか。
(春風亭一之輔)いや、でもその上もあると思うんですけど。その先もね。
(博多大吉)で、やっぱりこういう言い方するとプレッシャーになるかもしれないですけど。もう生涯の仕事やないですか。途中でやめるとなると、ちょっとごたつくというか。
(春風亭一之輔)そう……ですかね? まあ、別にでも僕はそれ、ありだとは思うんですけどね。
(博多大吉)途中で? でも単純に、世代的にこれで増えたんでしょう? 40代がね。宮治さんと……。
(春風亭一之輔)でもね、聞いてくださいよ。宮治と僕が入るまでは、平均年齢が68.7歳だったんです。で、僕らが入ったら、64.3歳になったっていう。どうなんですか? この焼け石に水な感じは?
(博多大吉)いやいや、それでまたほら……もう、あんまり言うのもあれだけども(笑)。皆さんの年齢だけを見ると、木久扇師匠はもう85ですよ?
(赤江珠緒)いや、すごいですね。本当だ!
(博多大吉)いや、それはできる限りは続けていただきたいし。
(春風亭一之輔)いいですよ、続けなくても。85歳の人は賃金稼ぐ必要ないですからね。お金、持っているからなー。でも、最初の収録の時に僕が思ったのは、木久扇師匠をいじる答えを言ったんですよ。「年齢的に介護が必要だ」みたいな、そんな感じのことを言うと、木久扇師匠、優しいですね。ちゃんと前にズッコケたんですよ。
(赤江珠緒)そうそう。今はもう椅子に座ってらっしゃるんですけど。その椅子からコケて。
(春風亭一之輔)コケて、ひと笑いみたいな。あれ、どう思います?
(赤江珠緒)でも、なんかもうそこから、舞台から落ちる勢いになったから。皆さん、本当に「危ない、危ない!」って。
(春風亭一之輔)「ああっ!」って言っていたでしょう? あれ、編集してますけど、実際に収録、止まってますからね。なぜならその時に、頭を打ってゴン!って音がしたんですよ。スタジオ中に。で、看護師さんが飛んできて。
(赤江珠緒)ええっ?
(春風亭一之輔)後ろに看護師さんがね、ずっといるんです。何かあった時のために。で、看護師さんが飛んできて、一応見て。「ちょっと赤くなってるけど、大丈夫ですか?」っつったら「うん、大丈夫。続けます」って。で、続けたんです。で、僕はあそこの映像はたぶん全部カットだと思ったんですけど。ディレクターさんに「あれ、使えないですよね? ウケたけど」って聞いたら「いや、音を消せば、大丈夫です」って。
(赤江珠緒)アハハハハハハハハッ!
(春風亭一之輔)で、オンエアー、本当に音が入ってなくて。
(赤江珠緒)いや、貴重。本当に貴重な番組。
林家木久扇師匠のダイブ芸
編集されてこの音だったんだ…。修羅すぎる…。
春風亭一之輔 林家木久扇の『笑点』転倒・頭強打事件を語る https://t.co/DJo8lmIuYv pic.twitter.com/OMbtFoS1Rv
— ねこやま (@LoveRadioCat) February 10, 2023
(春風亭一之輔)でもね、結構年齢のこととか。「もうすぐあの世行き」とか。普通、あの時間帯で、ファミリー層が見る時間帯で、「お年寄りがもうすぐ死ぬ」みたいな、そういうネタが言えるっていうのはすごいですよね。『笑点』ってね。
(赤江珠緒)うん。本当ですね。
(春風亭一之輔)あと、小遊三師匠の下ネタとか。本当に下ネタがすぎて、客席の女性から「ひい……」っていう引きの悲鳴が聞こえて。それでまた止まるっていうこともね。
(博多大吉)本当、年齢のことを言うのもあれですけども。70代で下ネタ、普通はもう言わない。もう分別つくんだから。
(春風亭一之輔)大人として。すごいですよね。
(博多大吉)でもこれで本当にね、宮治さんは喜んでたでしょう? やっぱり。
(春風亭一之輔)宮治はなんか、「一緒に頑張ろうよ」みたいなLINEが来ましたね。自分が知った時かな? ちょっと前に知ったみたいですけど。なんかすごい、もう過剰な僕を好きな感じのLINEが……「兄さんが入ってくれて」みたいな。「気持ち悪いな……そういうもんじゃないだろう」と思いながらね、行きましたね。でも効果、すごいですね。まず、電報が届きますね。
(博多大吉)祝電が?(笑)。
(春風亭一之輔)祝電が4通、来ましたね。「おめでとうございます」って。「おめでとうかな?」って思うんですけども。あと、花が届いたり、お酒が届いたり。あと、お客足。2月5日に放送されて6、7、11、12、13、14って地方で独演会がずっと続いたんです。それぞれ、今まで7割が8割5分ぐらいだった入りが、ほぼ全部満員になって。
(博多大吉)宣伝効果っていうか。
(春風亭一之輔)いやー、複雑ですよね。
(博多大吉)あの日、だからネットニュースでずっと1位にいたでしょう? 「春風亭一之輔」って名前が。最初、見た時、ドキッとして。もう、悪いことしかないじゃない? 『たまむすび』メンバーが1位に躍り出る時は。「な、なんだ?」って思って。「ああ、日曜日のこの時間……ああ、やっぱり! はー、こっちのニュースね」って思って。
(春風亭一之輔)いや、でもなんかコツコツコツコツ、沖縄とかで独演会を毎年ね、入らないなりにね、なんとかジリ貧で続けてきたものがね、「一夜にしてチケットが300枚、はけました」っつってね、ウハウハで沖縄の人が喜んでるのを見てるとね、ムカつきますよ!
(赤江珠緒)そういうことを、言わない!(笑)。
(春風亭一之輔)ムカつきますよ! 今までの俺がね、コツコツやってきたものは何だったんだ?って。
(赤江珠緒)そういうのも含めて、違う層も来ていただくっていうね。
(春風亭一之輔)まあ、そうなんです。それですよね。
(赤江珠緒)それが決め手ですか?
(春風亭一之輔)はい、もちろんですよ。その先……『笑点』を見て、その先に「ああ、一之輔っていう落語、やるんだな。今度、独演会で来るけど、行ってみよう」とか。その300人埋まったね、その空白を埋めてくれた人たちを繋ぎ止めるように、これからちゃんとしたね、芸を、落語を聞いてもらなきゃなっていう。そう思いながらね、生きてますけど。どうなんでしょうね?
(赤江珠緒)一之輔さん、遠くに行っちゃうんですか?
(春風亭一之輔)遠く、行きますね。
(赤江珠緒)また酔って、メールしてもいいですか?(笑)。
(春風亭一之輔)もう内緒にしてること、いっぱいありますから。来週、ウクライナのキーウにも行きますしね。あと、日銀総裁にもなって。
(赤江珠緒)絶対にならないでしょ! ホラを吹くのはやめてください(笑)。
(春風亭一之輔)ええ。あとタラちゃんの次の声も僕です。
(赤江珠緒)違うでしょう(笑)。なんでもかんでも引き受けないでしょう?
(春風亭一之輔)なんでも引き受けますよ。
キーウ行き、次期日銀総裁、次期タラちゃん声優も引き受ける
(博多大吉)時が経つのかしら?っていうことでしょう? もうタラちゃん、高校生ぐらいになるのかしら? でも本当ね、僕が学生の頃というか。ずっと『笑点』と同じメンバーでやってたじゃないですか。だから芸人になるまで、福岡に住んでたから、若い落語家さんがいるっていうことが想像できてなくて。初めて若手の落語家さんを見た時、めっちゃ驚いたんすよ。落研をやっていたくせに。
(赤江珠緒)ああ、そうですよね。先生、落研ですもんね。
(博多大吉)やっていたけども、やっぱり有名な人しか知らなかったし。だから、「20代で落語家さんって、いるんだ。そりゃ、おるか。よく考えたら、そうか」っていう。
(春風亭一之輔)でもそういう人、いっぱいいますけどね。日本中にね。
(博多大吉)だって芸人になった僕がこんなことを思っていたんだから。普通の方はもっと、思っているかもしれない。
(春風亭一之輔)だから、よかったらこれを聞いてる人も、『笑点』を初めて見た人も、私がやってるところ。落語を聞きに来てもらえば、一之輔もいるけども、後輩とか、ゲストを連れてったりとかしますしね。いろんな芸人がいるっていうことを、その『笑点』の中に出てる僕の上とか、後ろとか、いっぱいいるっていうことを。寄席にも来てもらえたらありがたいなと思って。はい。そういうことです。これね、所信表明演説に代えさせていただきます。
(博多大吉)これをもって(笑)。
(春風亭一之輔)ずっとこれ、言ってるんですよ。今、独演会で。本当に枕。言い訳しながら生きてるんですよ(笑)。「お前、なんで『笑点』なんか出てるんだ、おい」みたいな、そういう目で見る落語好きたちに。「ちょっとね、『笑点』へのアレルギーをなくしてくれ。落語会の中に『笑点』があると思ってみんな、付き合っていこうよ」って。。遠くへ行かないよ、珠緒さん。
(赤江珠緒)いいですか? じゃあ、また酔ってメールしても。
(春風亭一之輔)メールしてくる割には、俺が返信したらそれに返さないっていう(笑)。
(博多大吉)投げっぱなしね(笑)。あと、くれぐれも『笑点』の師匠たちも普段は落語をちゃんと、いろいろ全国を回って。いろんな地方でね、九州を中心にポスターを見ますから。「ああ、皆さん、ここにも来るんだな」ってね。
(春風亭一之輔)よろしくお願いします。
<書き起こしおわり>