ライムスター宇多丸 名古屋ラシックの過酷な廊下ライブを語る

ライムスター宇多丸 名古屋ラシックの過酷な廊下ライブを語る 宇多丸のウィークエンド・シャッフル

ライムスター宇多丸さんがTBSラジオ『タマフル』で、ライムスターが名古屋ZIP-FMにて行った公開ライブについてトーク。商業施設ラシックのパサージュ(廊下)で行った過酷なライブの模様です。

(宇多丸)私、ライムスター本業で、もうすぐニューアルバムが出ると。で、リリース前にいわゆるキャンペーンというね。わかりますかね?要するにラジオ出演。TBSとかもありますよね。『リリース前の○○さんをお招きしております』って、ニューアルバムのお話をしてもらうとか。雑誌の取材を受ける。で、要はですね、各地方とかね、東名阪ですかね。名古屋とか大阪に行って。福岡とか北海道に行って、そのキャンペーン。地方を回るっていうのがちょいちょいあるわけですよ。

まあいま、昔と比べてレコード会社もお金ないですから。あんまりそういうことをまあ、できなくなっている中でも、名古屋、今回は何回か行ってですね。先々週も行っている。で、今週も行っているっていうね。で、ZIP-FMっていうですね、名古屋の有名なラジオステーションがありまして。そこのね、いろいろ出演させてもらったのはいいんですけど、心の傷を受けそうになった・・・要するにプロモーションっていうのはさ、要はレコード会社の社員の人がライムスターのCDを1人でも多くの人に届けるために、要は仕事というか、取ってきてくれる話なわけじゃないですか。

基本的には僕らも大人になったんで、いろんな関係ない、僕らとは直接利害がないような・・・彼らもお金もらってるんだけど、動いてくれて取ってきてくれるんだから、基本的には感謝しなきゃいけない。だからできる限り、自分たち的には、そんなにノリノリって思えないような企画でも、関わったみんながハッピーになるように、できる限り面白くやるし、全力を尽くそう!ってことでライムスターは常に臨んでいるわけです。まあ、3人だっていうのもあって、助かるわけです。

たとえば、『うわっ!なんか投げやりな振り方されて、うわー・・・なんか困るな・・・』っつっても、なんか3人でキャッキャキャッキャやって、なんとか乗り切るみたいなね。これ、以前もお話しましたね。『プロモーションとかで、若手のアーティストに言いたい。そこで腐っても、誰も得しねーぞ!』みたいなことは言いましたけど。まあ、根本的にプロモーションをどうするか?みたいな話は別としてよ。で、行ってきたわけですね。名古屋に。で、いろいろ番組に出させていただいて。

その中で、要はですね、ストリートライブというかですね、いわゆるサテライトスタジオ。ステージがあって、道行く人々もいる中でライブをやる。まあ、インストアライブとかありますけど。たとえばそうだな。関東だと、川崎のラゾーナみたいなところでさ、ステージがあってやっているじゃないですか。よく、アイドルとか。ああいうようなことだと思ってくださいよ。ショッピングモールみたいなところの中にステージがあって。で、ZIP-FM生中継と、で、ライブだって言うんですよ。で、どういう場所かもわかんないなと思って。まあでも、やらしてくれるんなら・・・って、行くじゃないですか。

高級ショッピングモールの廊下でライブ

そしたら、ショッピングモールって言っても、どっちかって言うと、東京で言うとミッドタウンみたいな。ちょっと高級な感じのところなんですね。ラシックっていうところで、すごくかっこいいところなんですよ。結構、おしゃれな、静かなね。ブランド物みたいなところなんですよ。で、そこの、ラシックのパサージュっていうところ。パサージュ。ね。これを、私その、だから『まあ、廊下っすよね?』っていう(笑)。で、店がこう並んでいて。両側に。でも、そんなに広いわけじゃないです。ミッドタウンみたいに、あんなに広いわけじゃなくて、もうちょっと狭い。20メートルとか、そんな感じよね?

そんぐらいのところにステージがあって。で、そこでこう、日替わりというか、そのステージでいろんな人がライブをやったり放送したりしていると。で、とにかく、そのステージを俺らがやる前に見てきた人が、『ここで、ライムスターやるんすか?えっ、廊下っすよ?』みたいなことを言うわけですよ。で、まあ僕らもね、『泥水特集』で以前やりましたけど。まあ、ありとあらゆる泥水をなめてきています。正直。だからはっきり言って、たとえばデパートの廊下チックなところでやったこともあるんですよ。実は。ぜんぜん。

ただそれは、90年代・・・90年代っす(笑)。とかね。あと、まあたとえば沖縄のレコード屋さんの本当に目の前の道でストリートライブみたいなのをやって。そしたらもう人がウワーッ!って集まってきちゃって。もう電柱に登って見ている人がいたりとか。なんかそれで大盛り上がり。なんかヒップホップっぽい絵面にもなったし・・・みたいな、そういういい思い出はあるけど。90年代っすよ。っていうことで、『うわっ、大丈夫か、これ?』みたいな感じで。要するに、道行く人がね、こうやって通り過ぎる中で『Still Changing』みたいなことを歌うんだなと。『いま眺めている景色を見せてあげたい 俺に』って(笑)。

(宇多丸)『10年前の俺に・・・』みたいな。僕らの中で言うと、昔やった後楽園の、戦隊物のステージとかをやるところで営業をしたことがあって。まったく知られてない時です。CDとかもちゃんと出してないような時で。で、お客が2人。男の子とお父さんがかろうじて座っていたんだけど、僕らがライブ始まって、1分くらいかな?こう、立って・・・っていう。Mummy-Dがラップしながら、『ああー・・・』っていう(笑)。そういう時以来だった。あれ以来の、要は『ああ、これ40半ばを越えて、新しい心の傷をね。まあ、ネタっちゃあネタだけど。エピソードっちゃあエピソードだけど。新しい心の傷、できんのかな?』みたいに思っていたんですけども。

まあ、実際に蓋を開けてみたらですね、ライムスターのファンの方がですね、いっぱい集まっていただいて。まあ、音量とかはやっぱりね、そんなに大きく出せないですけど。みんな、ステージ上にいる僕らも、見ているファンの、結構な数、集まってくれましたよね。みなさんも全員、耳を真っ赤にしながらですね、『言えよ、ホー!』『ホーッ!』とかですね。ジャンプしたりとか。でも、そのうち、やっているうちに、だんだんヤケクソになってきて、ウワーッ!って。まあ、すんごい盛り上がって。要は番組のステージでやったライブ史上、もうとにかくこういうことはあり得ない。司会の女性が終わった後に、『いや、どうでしたか?』『絶句です・・・』みたいな。『絶句ってなんすか!?』とか言って(笑)。

(宇多丸)とにかくその、感動して言葉がつげないぐらい、あり得ないぐらい大盛り上がりになったんだって。で、ZIP-FMの方にも喜んでいただいて。最終的には結果オーライだったんです。ただ、僕はそのお客さんにも言うの、忘れなかったです。『盛り上がっていま、いい気持ちになってますけど。みなさん、知らず知らずのうちに胸の中に傷を負っていると思いますので。心にダメージ、ありますので。心のケアは各自よろしくお願いします』っていうね、話を言いましたけど。

来てらっしゃった方かな?(投稿メールを読む)『いつも楽しく拝聴させていただいております。先日のラシック パサージュでのライムスターのライブ、お疲れ様でした。師匠を廊下で歌わせるなんて、バカか!』(笑)。これ、廊下。パサージュ。これ、言ってましたから。僕は。『すいませんね!なんか廊下とか言っちゃって』って。関係者の方に言ったら、『いや、廊下です。訳せば廊下ですからね』なんつって。(投稿メールを読む)『廊下だと忘れるぐらい熱い熱量のステージでした。大御所なのに廊下でライブするライムスターはどんだけ気さくなんだ!?と感激しました。ステージ脇のお店で働いているのを抜けだして来ていたため、上司の視線が気になり、プチャヘンザできず申す訳ありません。心のなかで両手を上げていたんです。ジャンプもしていたんです。これからもライムスターならびに宇多丸さんのますますのご活躍を地方ながらお祈りしております』。

ありがとうございます。そうなんですね。だから高級な感じのお店がいっぱい並んでいたんで、そこから出てきてくれた。もう、それも散々いじったんですよ。『すいませんね!うるさいでしょ?うるさいでしょ?働いてんのに、こっちは・・・って思うでしょ?俺たちも、働いてるんですっ!』(笑)。ということをね、言いながらね。抱腹絶倒のステージを繰り広げたライムスターでございました。

<書き起こしおわり>

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