宇多丸さんが2021年5月25日放送のTBSラジオ『アフター6ジャンクション』の中で『地下鉄道 ~自由への旅路~』を紹介していました。
(宇多丸)でね、「今はいいよ」っていう話でいうと、やっぱいろんな配信サービスで見れるものがあって。お家にいながらにして……っていうのがあるじゃないですか。で、ずっと話したい、話したいって言ってたのは『ミッチェル家とマシンの反乱』っていうアニメ作品がネットフリックスであって。これの話をしよう、しようというまま1週間が経ってしまったんですけど。その前に……これはするならやっぱり火曜かなと思っているんですね。今日の特集の翻訳大賞の話とも通じるから。まあ、海外文学とも関連する話なんで。
(宇垣美里)はい。
(宇多丸)私、見つけちゃったんですけど。
(宇垣美里)えっ、「私、見つけちゃった」の?(笑)。
(宇多丸)「見つけちゃった」っていうのも失礼な話なんだけど。アマゾンプライムでね、マイケル・B・ジョーダンの『ウィズアウト・リモース』っていう作品の映画評なんかをしましたけども。
(宇多丸)5月14日に配信が開始されていたんですけどね。昨日、こうやって見ていてさ、「あっ? えっ? なにこれ? えっ? こんなの、始まっていたの!」みたいな。アマゾンプライムで『地下鉄道 ~自由への旅路~』というタイトルで。
バリー・ジェンキンス監督によるAmazon Studiosのドラマシリーズ「地下鉄道 自由への旅路」("The Underground Railroad")が、5月14日から日本でもAmazon Prime Videoで配信されるようだ。 pic.twitter.com/1mfFHeJXZ0 (映画ナタリー)
— cinepre (@cinepre) March 9, 2021
(宇多丸)これは元はピューリッツァー賞、全米図書賞などいろんな賞を取った名作小説。コルソン・ホワイトヘッドさんの『地下鉄道』という小説があって。これ、『アフター6ジャンクション』では2018年5月。木曜日のBlack Lives Matterにまつわるさまざまな作品であるとかを紹介するという特集をやって。その中で触れたことがある作品なんですね。
(宇垣美里)うんうん。
(宇多丸)まあ「地下鉄道(Underground Railroad)」っていうのは元々その南部にいた黒人奴隷の皆さんを北部に逃がす組織の話なんですよ。これ、実は『Fallout4』というSFゲームの中にもそういう組織あって。それは要するにアンドロイドなんだけど。まあ、黒人奴隷を逃したレイルロードという組織をSF的に模したものなんですね。ま、あアメリカ史をぎゅっと凝縮したようなゲームが『Fallout』だったりするんで。なんだけど、このコルソン・ホワイトヘッドさんの『地下鉄道』という小説は本当にそれが比喩ではなく、地下に北部に逃げるための地下鉄道が引かれていたという仮想歴史というか。
(宇垣美里)トンネルとかじゃなく、ちゃんと電車が通っているということですか?
(宇多丸)列車が通っていて。それを通すための組織があって……っていう。で、主人公の女性がそこを使って逃げて。それを追手である賞金稼ぎが追いかけるという、そんなような話なんですけど。これがななな、なんとですね、アマゾンプライムでテレビドラマシリーズとして5月10日からもう配信開始がされており。しかも監督はあの『ムーンライト』『ビール・ストリートの恋人たち』のバリー・ジェンキンス!
(宇垣美里)もう約束されるじゃないですか。
(宇多丸)おおっ、見逃し! 見落とし!
(宇垣美里)もうエピソード10まで出ている?
バリー・ジェンキンス監督作
(宇多丸)たぶん10で終わるんだと思うんだけどね。元の小説があれなんでね。いやー、これは参った、参った。もう「ペチン!」って感じですよ。もう。
(宇垣美里)「言ってや!」っていう。
(宇多丸)「アマゾン! 教えてよ!」みたいな。で、これに昨日の夜に気づいて。すいませんね。これ、「お前、なにを今更言っているんだ?」っていう人も多いと思うけども。私はようやく昨日の夜に気づいて。最初の1話だけ見たんですね。だから主人公が地下鉄があることに気づくというか、発見するところぐらいまでの流れなんですけど。そうなんですよね。で、実際ね、そこまではすごく苛烈な南部でのプランテーションでの奴隷労働であるとか。
奴隷労働だけじゃなくて、やっぱりひどい扱いをするというね。『それでも夜は明ける』とか、あとはリチャード・フライシャーの『マンディンゴ』とかでも描かれたようなエグい、なんというか本当に人を物として扱うというものがあって。非常に暴力的なシーンとかもあって。1話目とかでも結構すごい場面があったりとして。なかなかショッキングな作品でもあるので。ちょっとそこは覚悟して見てくださいねっていう感じなんですけども。これね、『フロントロウ』というところのネットの記事によると、バリー・ジェンキンス監督は現場にセラピストを常駐させて。要するに、先祖たちが実際に遭ったというひどい目を……。
(宇垣美里)追体験させるじゃないですけども。
(宇多丸)そうです。なので、これはすごいんですが。カウンセラーをつけて、カウンセラーが問題があると思ったら、いつでもカットをかけられるっていう。
(宇垣美里)ああ、止めてもいいと?
(宇多丸)そう。普通は監督のみに許されるカットの権限を持たせて撮影をしてるっていう。
(宇垣美里)それはでも、すごい丁寧ですよね。
(宇多丸)そうなんですよね。なので、まさにインティマシー・コーディネーターの話をこの番組でもやりましたけども。ちょっとそれとも通じるような話というか。そういう配慮をもって作られている。でもそれが必要なぐらい、なかなかちょっとぎょっとするような場面とかね。そこは実際のところは合成で撮っているんで、実際に目の前で何かが起こっているという撮影ではなかったんだけど。やっぱり誰もが……これは1話目に出てくるんですけど。やっぱり起こっていること。そして、現実に撮影しているその場で「かつてはこれ以上のひどいことが起こっいてた」っていうことを知っているから。
(宇垣美里)どうしても、思いをそこに馳せるざるを得ないというか。うん。
(宇多丸)でも、そのような配慮のもとにこの10話が作られているということで。私も1話しか見てないので、いろんなことは言えないのですが。追いかけてくるバウンティーハンター役をジョエル・エドガートンが演じていて。これがまた、いいんですよね。なんかね。とにかくね、これを昨日、うっかりと発見してしまい。「おいおい、全部しゃべりきってもいないのに……」っていう。
『地下鉄道 ~自由への旅路~』予告
<書き起こしおわり>