宇垣美里 Rina Sawayama東京公演を語る

宇垣美里 Rina Sawayama東京公演を語る アフター6ジャンクション

宇垣美里さんが2023年1月24日放送のTBSラジオ『アフター6ジャンクション』の中でリナ・サワヤマの『HOLD THE GIRL TOUR』東京公演を見に行った際の模様を話していました。

(宇多丸)ぜひ宇垣さんのお話を伺いたいのは、複数の方から熱い熱いメールをいただいておりまして。ちょっとご紹介しますね。まず、こっちにしようかな? ラジオネーム「八王子の埴輪」さんからいただきました。

(宇垣美里)八王子で、埴輪が取れたってこと!?

(宇多丸)あのね、それをやってると……。

(宇垣美里)ごめんなさい(笑)。

(宇多丸)「1月20日(金)に有明のガーデンシアターに降臨したリナ・サワヤマさまの『HOLD THE GIRL TOUR』ライブに行ってまいりました」。

(宇垣美里)フゥーッ!(拍手)。

(宇多丸)「光を使ったクールの演出の中、2名のダンサーと共に現れたリナさま、キレキレなダンスをしながらも、力強く安定した極上の歌唱力に心底驚きました。アコースティックギターの伴奏で歌うバラード曲も本当に素晴らしく、美しい歌を聞いて涙がはらはらと出るという体験を初めてしました。私はアトロクが始まって以来、新しい洋楽を知る時はいつも音楽ジャーナリスト・高橋芳朗さんの月刊ミュージックコメンタリーに頼りきっていまして。リナ・サワヤマさんをご紹介してくださった芳朗さんに感謝を伝えたく、メールをお送りしております。

宇垣さんも先日、月刊ミュージックコメンタリーのコーナーの際に『今回のジャパンツアー、絶対に行く!』とおっしゃってましたが、見に行かれましたでしょうか? 私は有明の会場中で『どうか宇垣さんがこの素晴らしい時間を共有してくれていますように』と祈っていました。もしよろしければご感想など、お聞かせいただければ幸いです」ということなんですよ。

(宇垣美里)いたよ! そこに、いたよ!

(宇多丸)「私、そこにいたよ」って。

(宇垣美里)もう見て? 今日、私、リナのTシャツを着て、リナのカバンを持ってきて、リナのなんかわからんハンドスプレーを持ってきた。

(宇多丸)なんかわからんハンドスプレー……全部、グッズですね?

(宇垣美里)「これ、なんやろう?」って思いながら買いましたけども(笑)。

(宇多丸)行かれたということで。よかったですね。

(宇垣美里)よかった! もう本当、ちょっと仕事でもしかしたら無理かも……みたいな。結構バタバタだったんですけど。ギリギリで入れて。ただ、まずもう入った瞬間、そのあたりに行った状態で、入る人たちがいっぱいいらっしゃって。「みんな、リナ・サワヤマを聞きに来た人たちだ!」っていうのがもう、わかる。なんだろう?

(宇多丸)お目が高いといいましょうか。

リナ・サワヤマを見に来たユニークな客層

(宇垣美里)まず、すんごいおしゃれな人たちとか、もう髪の色がいろんな色だったりとか。ピンクとか黄色とか、すごいしっかりした発色の人とか。まず、おしゃれで。「えっ、なんで私、こんな白黒の格好をしてきたんだだろう? あわわ……」っていう感じだったんですけども。で、そういうおしゃれな方もいらっしゃった一方で、すごく客層がユニークで。

私の親ぐらいかな? みたいな年齢のご夫婦がいらっしゃったと思えば、たぶん高校生かな?っていうような制服を着てる女の子もいたり。かと思えば私、他のライブではなかなか聞いたことがないぐらい、ものすごく英語が聞こえてきて。たぶんすごく海外の方もいらっしゃるんだなっていうのも感じましたし。

何より、レインボーフラッグを持ってる人が結構たくさんいらっしゃって。そのことはその、リナ・サワヤマも「客席からレインボーフラッグがすごく見えて、とっても安心する」ってお話をしてて。「わかる、わかる!」っていう。なんか、それを掲げようって思う人がいる。で、それを素敵だねって思う人たちがここに来てるんだっていう。なんてセーフティーな、なんて素晴らしいこの空間なんだろう!って。もう、そこにいれること。というか、「リナを好きな人たちじゃん! 仲間じゃん!」みたいな気持ちすごくなって。その場所にいれるだけですごく幸せでしたし、もちろんもパフォーマンスはもう、体感5分! ビビった!

(宇多丸)実際、どのぐらいやったんですか?

(宇垣美里)1時間半くらいかな? 割とサッと、すごくキュッとした感じのライブだったんですけれども。本当に私、5階席だったんで。

(宇多丸)5階席ってあるのね?

(宇垣美里)そうなんです。ほぼ豆粒みたいな感じだったんですけど。

(宇多丸)ガーデンシアター、デカいね。

(宇垣美里)そう。でも、声が本当に正直、アルバムよりもパワフルで。で、ものすごくうまいし。なのにキレッキレのダンスを踊りながらやってるんですよ。「えっ、どういうこと?」って思いながらも、そのパフォーマンスに何度も圧倒されて。もう泣いて、立ち上がって「フゥーッ!」って言って……みたいな。で、一番最初にね、リナが「ここはすごく安全な場所で、隣の人にまず『ハロー』って言いましょう。隣の人にリスペクトを持ちましょう」って言って。で、隣の全然知らない人に「ハーイ」って挨拶して。なんか、それだけでも「ああ、来てよかった!」って。

(宇多丸)でもその「安全な場所」っていう言い方をするのがね、また……。

(宇垣美里)「ここは本当に安全な(セーフティー)な場所」っておっしゃっていて。でも、そうだなって思ったんです。

(宇多丸)特にリナさんがその曲の中で表現されたようなことって、欧米圏とかだとさらに、もっと本当にヒリヒリするというか、身の危険を感じるような、そういう差別的な状況であったりとか。それが暴力に転じるような状況はいくらでもある中でいろんなメッセージみたいなものが発されているから。なんかその「ここは安全」っていうのが刺さるっていうか。

(宇垣美里)それはもちろん、日本のことも「この国は同性婚を認めていない。そういう国だから。私たちが私たちらしくあることを時々、家族とか国とか、そういうところが否定してきたりするけれど。でも、この場所ではさ……」っていうことをおっしゃっていて。

(宇多丸)そういうMCもあったんですね。

(宇垣美里)そう。それだけでも「くぅーっ!」ってなりましたし。で、アコースティックの演奏もあって。アコースティックで歌う『Chosen Family』のしみいることと言ったら! もう私はハラハラと涙を流しましたし。

(宇垣美里)その中で「初めての大きい会場で……」って。

(宇多丸)リナさんにとっても大きい会場だったんですね。

(宇垣美里)「キャリアの中で一番大きい箱だ」っておっしゃっていて。

(宇多丸)でも、これからどんどんね。

(宇垣美里)そう。「こんなの、一番ちっちゃいようなもんよ!」って思いましたけど。その中で「私が歌を歌いたい、パフォーマンスをしたいと思った原点の人の歌を歌いたいです。昨日は彼女の誕生日だったんです」って言って宇多田ヒカルの『First Love』を歌い出した時のもう……それもまた、胸に来て。

(宇多丸)それもすごい話ですね! 宇多田さんもすげえな、それ。

(宇垣美里)「小さい頃にこの曲を聞いて、すごくソファーで揺れてたんです」って話をされてるのもめちゃくちゃかわいいし。で、なんだろう? 彼女が歌う『First Love』って、また違った刺さり方をするというか。すごく、やっぱりもうとにかくよくて。全員が……もう隣のお兄さんがずっと「すごい……すごい……」って言っていて。「わかる! わかるよ!」って思いながら聞いてました。

Rina Sawayama『First Love』

(宇垣美里)で、アンコールで私が大好きな『This Hell』っていう曲だったんですけど。この曲に入る時に、アンコールだったんすけど。バーン!って出てきて。「みんな、一緒だから。今日は地獄で華金じゃー!」って叫んで出てきたんですよ。

(宇多丸)これ、ヨシくんも説明をしていましたけども。「『地獄に落ちろ』なんてことを言うやつらがいるけども……」っていう。そこから来るわけですよね。

(宇垣美里)「私たちは地獄に堕ちるのかもしれないけど……」って。

(宇多丸)まあ、たとえばその性的指向だったり、そういうようないろんな違いみたいなものに対して、そういうことを言うやつがいるけども……って。

(宇垣美里)「でも、どうせ地獄に行くのなら、あなたと一緒に。私たちがいるから楽しいね」っていう。そういう曲だなと私は受け止めてるんですけど。だから「地獄だけど、今日は華金だね!」っていう。「そうだね!」って、もう泣きながら、ぶち上がり、騒ぎ……わけがわかんない情緒でしたけど。ちょっとその曲、皆さんにもお聞きいただきたいので。ぜひ。リナ・サワヤマで『This Hell』です。

Rina Sawayama『This Hell』

(宇多丸)はい。リナ・サワヤマさんで『This Hell』をお聞きいただいております。

(宇垣美里)わーっ!(拍手)。

(宇多丸)これを、アンコールでカマしたんですもんね?

(宇垣美里)そう! もう思い出して、泣いてしまう。どうしよう?

(宇多丸)みんな、もう合唱みたいな?

(宇垣美里)もうブチ上がってる人もいれば、絶対泣いてるじゃんっていうお姉さんもいたりして。

(宇多丸)こんなね、軽快な曲調だけど。そういうエンパワーメントの度合いが、深みが半端じゃないということですよね。本当にだからレディー・ガガとかのラインというか。彼女が切り開いたようなところを……そのぐらいのスターダムになっていくでしょうね。

(宇垣美里)「マジ、伝説!」って思いながら見ておりました。

(宇多丸)本当にでも、そのぐらいの規模で見れたのが自慢になる感じじゃない? 初来日公演ね。メールをもう1個、読んでいいですか? このリナ・サワヤマさんの関係で。「鮭の塩焼き」さんです。「宇多丸さん、宇垣さん、こんばんは。いつも楽しく拝聴しています。初めてメッセージさせていただきます。リナ・サワヤマの東京公演、行ってまいりました。リナが登場した瞬間にその力強いかっこよさとキュートさに鳥肌。会場のみんなへ、勇気と元気と愛と優しさをくれる、本当に素晴らしいライブでした。恥ずかしながら私は11月29日(火)の最新洋楽解説、高橋芳朗さんの特集を聞くまでリナ・サワヤマのことを知りませんでしたが『This Hell』を聞いた瞬間に、落ちました」。

(宇垣美里)わかる!

(宇多丸)「その時点でなんと、まだライブのチケットが販売中。即購入し、ライブを励みに毎日過ごしていました。嫌なことがあっても『1月にはリナに会える』と思うと乗り切れました。リナ・サワヤマの存在を知る前と知った後の人生、こんなにも変わるとは……。あの時、アトロクを聞いていなかったら知らないままだったかもしれないと思うと、ちょっとした恐怖すら感じます。人生を明るくしてくれたリナ・サワヤマとそれを私に教えてくれたアトロクには感謝しかありません」。いやいや、そうやって聞いていただくのも我々にとっても喜びですから。

(宇垣美里)ねえ。本当に。

(宇多丸)「コロナ禍がきっかけでアトロクリスナーとなり、早3年。いつもたくさんのカルチャーを摂取させていただいており、私の半分はアトロクできてると言っても過言ではありません。お礼をお伝えしたくてメッセージいたしました。これからも応援しております。お体に気をつけてお過ごしくださいませ」。

(宇垣美里)ありがとう!

(宇多丸)鮭の塩焼きさん、私どもこそ、こういうお言葉をいただいて。お礼を言いたい。
(宇垣美里)ホーメですね。でも、本当にね、リナが「社会とかが時々、自分らしさを閉じ込めてきたりするけれど、諦めずに自分を貫いて貫いて、生きていきましょう」って。そう言われた瞬間、グサーッ!って刺さって。「ああ、明日からも頑張ろう。だってリナがいるもん!」みたいなうん気持ちになって。

リナがいるから、頑張ろう

(宇垣美里)もうあまりにも大きいものをもらいすぎて。どう返していいか、わからないんですよ。もう、どこにお金を払えばいいのか……いつも、その話をしちゃうんだけど。

(宇多丸)で、グッズを?

(宇垣美里)そう。始まる前に買ったけど。でも、そのぐらいすごいパワーをもらって。「私は1年、頑張れるな」って思いました。

(宇多丸)宇垣さん、もちろんいろんなアーティストとかね、音楽ライブも含めてファンも多いですけど。これはちょっと、私が見る限り、深刺さりが。音楽アーティストとしては。

(宇垣美里)いや、本当に! あと、こんなにも本当に客層がユニークなのは初めてだなと思います。やっぱりどこに行っても、「ああ、この曲を好きな人だな」っていう雰囲気があるじゃないですか。それが楽しかったりするんですけど。これだけ幅広い……。

(宇多丸)文字通り、ユニバーサルというか、なんというか。本当に多様な皆さんが来てるってことですもんね?

(宇垣美里)いや、本当にすごかったですね。

(宇多丸)いや、ちょっとね。俺、金曜だったから、これは行けなかったんですけども。だから、もう今日はその話は譲りますよ!

(宇垣美里)いや、本当に。自慢しようと思って、Tシャツを着てきちゃった!(笑)。この格好で、やぶそば食べていたんだから(笑)。

(宇多丸)やぶそばね。実は同じところで食っていたっていうね(笑)。ありがとうございます。こんな、宇垣さんレポもそうですけども。ぜひ皆さんもこういう、この番組で紹介したあれに行った、これに行ったみたいなのもぜひぜひ、引き続き。

(宇垣美里)嬉しいです。

<書き起こしおわり>

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