町山智浩さんが2023年1月17日放送のTBSラジオ『たまむすび』で韓国映画『パーフェクト・ドライバー/成功確率100%の女』を紹介していました。
(町山智浩)この間、韓国に行ってきたんで。いろいろね、流行ってるものを見てきたんですけども。今週日本公開の映画で『パーフェクト・ドライバー/成功確率100%の女』という映画と、来月の16日ぐらいに……まあ、バレンタイン公開ってことで。ラブストーリーの『別れる決心』という2本の韓国映画を紹介します。で、『パーフェクト・ドライバー』の方はですね、あの『パラサイト 半地下の家族』で、長女がいたでしょう? 非常に冷めた目の、もう本当に「世の中、どうしようもないわ。終わったわ」みたいな感じで、冷めきった目をしていたあの女優さん。パク・ソダムさんの単独主演第一作っていう感じなんですね。
(赤江珠緒)へー!
(町山智浩)『パラサイト』のあの本当冷めきった感じで世界的な人気が出たんで、その後にどんどん映画が出るかと思ったんですけど……彼女はがんになっちゃっていて。
(赤江珠緒)ああ、そうだったんですか。
(町山智浩)それで、治療をしてたんで、なかなか映画に出れなくて。世界中から呼ばれていたみたいなんですけど。それでやっと、その治療が終わって復帰してこれが第一作なんですね。
『パラサイト』のパク・ソダム主演
(町山智浩)で、彼女はその韓国の女優さんでは珍しく、目をいじってない人なんですね。あの一重のね、冷めきった目が今回の映画でも非常にハードボイルドな感じでよく出ていてですね。北朝鮮から脱出してきて、散々な目にあったんで、もう世の中を完全に諦めて。ただ自分のことしか考えなくなったプロの逃がし屋を演じてます。
『パーフェクト・ドライバー』ってのはそういうことなんです。逃がし屋ってのはまあ、非常にヤバい物とか、ヤバい人を車に乗せて、警察を巻いて逃がすという仕事なんですけど。これ、英語でも「Getaway Driver」って言って、そういう職業あるんですよ。有名なのは『トランスポーター』というのがそうでしたね。あと『ベイビー・ドライバー』とかね。古くは『ザ・ドライバー』とか、あとは『ドライヴ』とか、山ほどあるんですが。ただ少し、韓国で撮ってるんで。これは釜山で撮ってるんで、ものすごく入り組んだ……韓国の道って、めちゃくちゃ入り組んでいて、まっすぐ通ってないんですよね。
その狭い道をガンガン、ものすごい疾走してですね、ヤバい物を運ぶというのがパク・ソダムなんですけども。いつもはとにかくヤバい仕事ばっかりやってて、お金を受け取るとそれっきりっていう彼女が、野球賭博でギャングと警察から追われてる男を逃がそうとして。行ってみたら、そこにはかわいい男の子しかいないんですよ。5、6歳の男の子しかいなくて。で、実はそれは野球賭博の悪いやつの息子で。その父親はですね、もう賭博の元締めに捕まって、リンチされて殺されてんですよ。
(赤江珠緒)ああ、もう消されてしまっている?
(町山智浩)はい。で、この子だけを助けなきゃならないとなって、最初は嫌がるんですよ。「こんな子供を抱えて……私、ヤバい仕事をしてるんだから、できないよ」と思うんですけど。この追っかける元締めというのは、警察官なんですよ。
(赤江珠緒)うん?
(町山智浩)要するに腐敗した警察官で。警察のネットワークを使ってこの子供を追っかけてくるんですよ。で、その子供が実はものすごい大金の隠し場所と繋がってるんですね。で、この子を何とか逃がさなきゃなんないという話なんですけど。これは『レオン』ですよね?
(赤江珠緒)ああ、そうですね。『レオン』ね。たしかに。
(町山智浩)あれはナタリー・ポートマンがまだ少女だった頃にね、マフィアに狙われた家族が皆殺しになって。それを殺し屋のレオンが助けるって話だったんですけど、それの韓国版っていう感じで。で、『レオン』はねとにかく敵のを襲ってくる悪徳刑事をゲイリー・オールドマンがやっていたんですけど。ものすごい、演技がめちゃくちゃだったんですよ。ジョーカーみたいな感じでね、ふざけながら人をガンガン殺してくるやつで。それに今回の敵も非常に近いんですよ。
で、凶暴で手がつけられないんですね。で、このパク・ソダムさんがですね、実際に格闘してもめちゃくちゃ強くて。そのへんはね、『キック・アス』のヒットガールになってたり。いくつの映画を1本の映画に盛り込んでるんだ?っていう感じの、もう本当にアイディア盛りだくさんというか、他から持ってきたものですけども(笑)。でも、食材は最高にいい食材を揃えていて。いい職人が作ってるんで、めちゃくちゃ面白かったですよ。
(赤江珠緒)へー!
(町山智浩)これはねやっぱりね、韓国の職人技がよくわかる映画ですね。何も欠点がないんですよね。何も新しいアイディアはないんですけども(笑)。
韓国の職人技が光る作品
「パーフェクト・ドライバー 成功確率100%の女」鑑賞 「グロリア」+「トランスポーター」にバディムービーの要素をぶち込んだストーリーにキャラクターも多彩で面白い。逃走劇と迫力あるカーアクションが楽しめる。 pic.twitter.com/lRQm77HYDT
— ぱぱた (@errorman64) January 12, 2023
(赤江珠緒)そうですか(笑)。「私は絶対に失敗しない」っていう言葉も、ちょっと日本だと……(笑)。本当に美味しいものという言葉もなんかね、ちょっと日本だとそうそうあれみたいだね。
(町山智浩)そうそう(笑)。あれみたいなね。失敗しない人みたいな感じだけど。いろんなものを盛りだくさんにして、それで「ああ、ダメだな」というところが全然ないんですよ。これはやっぱり韓国映画の職人技が本当にすごくなっているんだなと思いましたね。
(赤江珠緒)そうですか。それが『パーフェクト・ドライバー』。
(町山智浩)まさにパーフェクトな感じなんですけど。で、もう1本の方は、逆になんだかわけがわからない映画です。職人技とは全く逆の方向です。
(赤江珠緒)ふーん!
<書き起こしおわり>