町山智浩 アル・ヤンコビック伝記映画『Weird: The Al Yankovic Story』を語る

町山智浩 アル・ヤンコビック伝記映画『Weird: The Al Yankovic Story』を語る たまむすび

町山智浩さんが2022年11月15日放送のTBSラジオ『たまむすび』の中でアル・ヤンコビックの伝記映画『Weird: The Al Yankovic Story』を紹介していました。

(町山智浩)で、今日はバカげた話をしたいんですけども。さっきね、堕落っていう話をしていたでしょう? 僕もね、本当に堕落したと思っていてね。最近ね、映画館に全然行く気がしなくて(笑)。

(赤江珠緒)ええっ? 町山さんが?

(町山智浩)そう。というのは、もうアメリカね、劇場で公開されると1週間とか2週間でネット配信されるような状況になっちゃっていて。

(赤江珠緒)えっ、そんなにすぐに?

(町山智浩)同時とかね。もう、悪くても3週間か4週間っていう感じなんで。そうするとね、わざわざ映画館に……映画館に行くと、行って帰って、その時間とかも取られるじゃないですか。で、「ううっ……じゃあ、配信まで待とうかな?」とかってなって、堕落しましたね。本当にね。

(山里亮太)ああ、堕落なのか。

(町山智浩)本当にね、評論家なのにね。でも、こんなに簡単になっちゃうとね。で、今回紹介する映画はね、日本公開はまだ決まってないんですけれども。アメリカではなんと劇場公開なしで、配信だったんですけど。無料配信っていう、すごい映画です。

(山里亮太)ええっ?

(赤江珠緒)映画なのに無料配信?

(町山智浩)映画で、無料配信されたんですよ。「それ、いいのか? 商売する気、ねえのか?」って思いましたけど。で、これは『ウィアード・アル・ヤンコビック物語(Weird: The Al Yankovic Story)』っていう作品です。ウィアード・アル・ヤンコビックって、ご存じですか?

(赤江珠緒)いや、ごめんなさい。

(町山智浩)ああ、そうか。

(赤江珠緒)でもね、スーさんはご存知でしたよ。

(町山智浩)ああ、そうですか(笑)。1984年に大ヒットしたんですよ。全世界的に。『今夜もEAT IT』という歌が大ヒットしたんですよ。全然わかんない?

(赤江珠緒)パロディをされてたっていうのは聞きましたね。情報として。でもリアルタイムでは知らなくて。

(町山智浩)これ、マイケル・ジャクソンの『今夜はビート・イット』っていう歌があったんです。これ、ちょっとかけてください。

(赤江珠緒)これはもう、ねえ。

(町山智浩)ご存知ですよね? それのパロディで『今夜もEAT IT』っていうのがあって。それ、ちょっとかけてもらえますか?

『今夜もEAT IT』

(赤江珠緒)ああ、本当だ。『EAT IT』だ(笑)。

(町山智浩)これ、どういう歌詞かっていうと……あ、マイケル・ジャクソンの『Beat It』の方は「これからお前たち、喧嘩をするんだろうけど、そういう暴力とか振るってないで、家に帰れ」っていう歌なんですね。で、この『EAT IT』っていうのは「あんた、なんでそんなにいつも好き嫌いがひどいの? あれが嫌いとかこれが嫌いとか……世界では貧乏でご飯が食べられない子もいっぱいいるのよ! だから文句言わずに食べなさい!」っていう歌なんですよ。

(赤江珠緒)『EAT IT』。「食べろ」と(笑)。

(町山智浩)「卵も食べなさい! チキンも食べなさい! 残さず食べなさい!」っていうね、お母さんの説教なんですよ。この『EAT IT』って。そういうね、バカバカしい歌を歌っていた人でね。あとね、マイケル・ジャクソンの歌で『Bad』っていう歌があったんですけど。これもちょっと聞いてもらえますか?

(町山智浩)はい。これはマイケル・ジャクソンが『Beat It』の続編みたいな感じで出した歌で。「お前は俺の本当の姿を知らないだろう? 俺は本当はBAD、ワルなんだぜ」っていう歌なんですよ。で、これに対してアル・ヤンコビックが歌が『Fat』っていう歌です。これも聞いてもらえますか?

(町山智浩)はい。この歌はね、「俺のズボンのジッパーは弾けて、ベルトのバックルが壊れる。電話ボックスには入れない。自分のつま先は最近、見たことがない」っていう(笑)。

(赤江珠緒)フフフ(笑)。おデブちゃんの(笑)。

(町山智浩)そう。「だって俺はファットだから」っていう歌なんですよ。こういうのがね、次々と世界中でミリオンセラーになって。この人、グラミー賞を取ってるんですよ。

(赤江珠緒)ええっ? グラミー賞を取ったの? 替え歌で?

(町山智浩)替え歌で(笑)。だって、めちゃくちゃ売れたんだもん。すげえ売れたんだもん。あとね、マドンナは知ってるよね? マドンナの『Like A Virgin』は知っていますよね?

(山里亮太)はい。もちろん。

(町山智浩)大ヒット曲ね。『Like A Virgin』をかけてもらえますか?

(町山智浩)はい。これは「私はいろいろ悪いことしてきたけど、あなたと出会ってから、もう自分が初々しい、処女みたいな気分なのよ」っていう歌なんですね。これ、日本では『Like A Virgin』って勘違いしてね、「ヴァージンが好き」っていう意味だと思っている人がいるみたいですけど、そうじゃないですからね(笑)。

(赤江珠緒)それ、どういう歌なの?(笑)。

(町山智浩)「ヴァージンみたいな」っていうことですからね。

(赤江珠緒)「Like」は「○○のように」ですね。

(町山智浩)「Like」で「好き」じゃないですからね。この場合はね。で、これに対してウィアード・アル・ヤンコビックは『Like A Surgeon』っていう歌を作ったんですよ。で、「Surgeon」っていうのは「外科医」っていう意味なんですが。ちょっとかけてください。

(町山智浩)はい。この歌は「僕はまだ研修医なんだけれども、外科医として手術をしなきゃならなくなっちゃった。初めてなのに……」っていう、ひどい歌詞なんですよ。

(赤江珠緒)怖い怖い怖い! 「外科医のように」っていうこと? ええっ?

(町山智浩)「外科医のように」って、外科医じゃないんですよ。まだ研修生なんですよ(笑)。そう。で、やっていたら「あっ、心臓止まっちゃった」っていう、もうひどい歌詞なんですけど(笑)。「ダメだよ、お前は!」っていうね、そういう歌で。これもまた、めちゃくちゃ売れたんですよ。すごいんです。この人、普通はこんなの一発屋とか二発屋ぐらいじゃないですか。でも、それからずっと今まで、だから30年以上、もう40年近く。ずっとパロディだけ、替え歌だけを歌い続けてるんですよ。

(山里亮太)こんな有名な曲、パロディさせてくれるんですね。

(町山智浩)あのね、させてくれない時もあって(笑)。クーリオっていう人がね、『Gangsta’s Paradise』って歌を歌って、結構有名なんですけど。それを替え歌にして『Amish Paradise』っていう歌を作った時があって。アーミッシュっていうのはね、17世紀の生活をそのまま続けてるアメリカ人がいるんですよ。電気とかを拒否して。その人の歌に替え歌した時はクーリオっていう人、めちゃくちゃ怒ってたんですよ。

(赤江珠緒)ああ、それはダメですか。

(町山智浩)そう。だから許可を得なくても替え歌ってできちゃうんだなと思って、結構驚いたですけど。その後でね、「ちゃんと歌ってるのを聞いたら笑ったから、許す」っていうことで、許していましたけども。最初は怒っていたんですよ。でね、ずっとその後、要するにラップだったり、グランジだったり、音楽はどんどん変わっていくじゃないですか。もう40年ぐらい、やっているから。でも、それに合わせてどんどんどんどん替え歌を作っていった人なんですよ。

(赤江珠緒)すごい。元々、ご自身も歌ってるわけでしょう? この歌唱力。

(町山智浩)これ、本人が歌ってるんですけど。で、ちゃんとずっと売れてるんですよ。でね、ただ歌詞もねすごく発達してきていてですね。60年代のクロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤングっていうフォークグループがあったんですが。たとえばエコロジーとか戦争について非常にメッセージソングを歌っていたグループなんですけども。その人たちのパロディ、替え歌をやった歌でですね、『Mission Statement』っていう歌があって。ちょっと聞いてもらえますか?

(町山智浩)これ、どういう歌詞かと言いますと、こういう歌詞なんですよ。「エフィシェンシーのためにはストラテジーが必要です。テクノロジーにインベストしてコアなコンピーテンシーにレバレッジしましょう。マネジメントのフィロソフィーを使ってマーケットシェアをアドバンスさせるんです。クオリティーへのコミットメントを通じて、サステナブルなリソースをエンハンスするため、サプライチェーンのダイバーシティをプロバイドするんです」って歌っているんですよ。

(赤江珠緒)おお、すごい、すごい。横文字を並べて。

(町山智浩)これ、ビジネス用語ですよ。ビジネスのカンファレンスだったりセミナーに行くと、こういう会話を本当にしてるんですよ。これ、聞いたことないですか?

(赤江珠緒)あるある(笑)。最近、よく言われますね。

(町山智浩)会議とかでこういうことを本当に言う人っているじゃないですか。

(赤江珠緒)で、ちょっとそういうのを使うと、なんか煙に巻くというかね。みんなも「うんうん」ってね、わかった気になるっていうかね。

(町山智浩)「そうだよね」とかって。アメリカ人もこういう言葉、意味わかってないっていう歌なんですよ。

(赤江・山里)ええーっ!

(町山智浩)なんとアメリカ人、英語を使ってますけど、こういう会話、誰も理解してないんですよ。内容を。

(山里亮太)ああ、そうなんだ!

(町山智浩)っていうのをバカにしてる歌なんですけど。だからね、こういうことを言った人は絶対信じちゃダメよ。

(赤江珠緒)そうですか(笑)。

(町山智浩)「サステナブルなリソースをエンハンスする」って、その段階でそれを言ってる人は絶対に信じちゃダメ! 絶対変態だから。たぶん。わかんないけど(笑)。

(山里亮太)変態(笑)。

(町山智浩)ろくなもんじゃないですよ、そういう人は。俺なんて、アメリカに30年いてもこういう言葉、一切使わないでしょう? あ、20年だけど(笑)。

(山里亮太)なんかでも、使ってる人がいるイメージですね。

(赤江珠緒)ビジネス用語っていうのをね。

(町山智浩)俺、一切使わないですよ。アメリカに20年、住んでいて。ねえ。使う人、信じちゃダメっていう。だって、アメリカ人のアル・ヤンコビックが言っているんだからね。ということで、この映画なんですけど。これはアル・ヤンコビックの伝記映画でですね。鉄工所で働いていた父親から「鉄工所で働け」って言われて。ヤンコビック少年はね、「僕には夢があるんだ! 僕は歌手になるんだ!」って言うんですね。で、「どんな歌を歌いたいんだ?」って父親に聞かれたアル・ヤンコビック少年はですね、「有名な人の有名な歌の替え歌を歌うんだ!」って言うんですよ(笑)。

(赤江珠緒)アハハハハハハハハッ! この時から?

(町山智浩)子供の時から一貫した夢を持っていて。それが本当にラジオでかかってね、大ヒットしていくんですけど。で、みんなから「替え歌歌手だ」って言われてね、バカにされたんで頭に来てオリジナルの歌を出すんですけど。それが『今夜もEAT IT』なんですよ。

(山里亮太)えっ、替え歌?

(町山智浩)そうすると、後からマイケル・ジャクソンが『Beat It』っていう歌を歌って。「マイケル・ジャクソンにパクられた」って言うんですよ。この映画の中で(笑)。あと、マドンナがね、近づいてくるんですよ。「アルちゃーん」とか言って来て。「あなたに替え歌を歌われると、元の歌が2倍売れるっていう効果があるのよ。私の『Like A Virgin』をパロディにして」って色じかけで来るんですよ。

(赤江珠緒)えっ、マドンナが?

(町山智浩)そう。で、マドンナが恋人になっちゃうんですよ。アル・ヤンコビックの。

(山里亮太)えっ、でも伝記映画ですよね?

マドンナが恋人になる

(町山智浩)これ、伝記映画ですよ。で、これ、アル・ヤンコビックを演じているのはダニエル・ラドクリフくんですね。

(山里亮太)おおっ、ハリー・ポッター?

(町山智浩)『ハリー・ポッター』でかわいかったラドクリフくんがですね、なぜか超筋肉モリモリのアル・ヤンコビックを演じてるんですけど。で、なんかねそのマドンナとね、『Like A Virgin』なセックスを毎日していると、だんだんアル・ヤンコビックは生活が荒れていっちゃって。バンドのメンバーと喧嘩して。で、酔っ払ったまま運転して、交通事故に遭っちゃうんですよ。でも、コンサートが始まるんですよ。

しかも、新曲を作らなきゃなんないの新曲、できないんですよ。彼は。で、交通事故で手術されるんですよ。で、手術されてる時に「うーん、手術されている。なんか外科手術されてるな。あの人たち、外科医だな。Surgeonだな……Surgeon、Surgeon、Surgeon、Virgin、Surgeon。『Like A Virgin』に似てる! 『Like A Surgeon』だ!」って歌を思いつくんですよ。で、手術室から飛び出して、コンサートホールに行って。「今、作った歌です! 『Like A Surgeon』」って歌うんですよ。っていう映画なんです。

(赤江珠緒)めちゃくちゃじゃないですか!(笑)。

(町山智浩)めちゃくちゃなんですよ(笑)。で、なんかメキシコのコカイン王から「お前の恋人のマドンナはさらったぞ! 誘拐した。マドンナの命が惜しければ、俺の誕生パーティーで替え歌を歌え!」って脅されて。で、メキシコの麻薬帝国に行くんですけども。「俺はそんな脅されて歌うような男じゃねえ!」っつって、その筋肉モリモリのダニエル・ラドクリフのアル・ヤンコビックがランボーみたいにしてマシンガンをぶっぱなしてですね、コカイン帝国を滅ぼしたりするんですよ。

(山里亮太)伝記映画ですよね?

(町山智浩)なんだかよくわかんないんですけど(笑)。もう全編、それなんですよ。これが続くんですよ。もう、とんでもない。「やっぱり。だからタダなんだな」と思いましたね(笑)。

(赤江・山里)フハハハハハハハハッ!

(赤江珠緒)全編タダで配信されていて(笑)。

(町山智浩)タダより高いものはないのかなと。いや、でも面白かったですよ。めちゃくちゃ(笑)。日本ではね、どこも全然公開する気がないみたいでね。

(赤江珠緒)そうか。そこまで言われたら、見たいな。

(町山智浩)ねえ。聞いたら面白そうでしょう? ちなみに「Weird」っていうのはね、「キモい」っていう意味ですね(笑)。だから『Weird』っていうのは『キモい』っていうタイトルなんですね。日本公開は未定ですが。タダだから。日本で公開すればいいと思います。全然儲からないので、モチベーションないと思いますが。はい(笑)。

(赤江珠緒)よくラドクリフくんも出たね(笑)。

(町山智浩)ラドクリフも何をやってるんだかね(笑)。

(赤江珠緒)町山さん、ありがとうございました。

(町山智浩)はい。どもでした。

『Weird: The Al Yankovic Story』予告

<書き起こしおわり>

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