山里亮太さんが2020年10月20日放送のTBSラジオ『たまむすび』の中で蒼井優さん主演の映画『スパイの妻』を見た乾燥を町山智浩さん、赤江珠緒さんと話していました。
『スパイの妻』試写で鑑賞。1940年、裕福な貿易商の妻聡子は夫が満州で目撃した恐ろしい国家機密を知ってしまう。日本が戦争に向かう様子と不穏な空気が日常を侵食していく黒沢清演出が嫌になるほど合う。不安定な時代に己の正義を貫いて生き抜くことの難しさと尊さを突きつける映画。 pic.twitter.com/LY43ad8B1S
— ビニールタッキー (@vinyl_tackey) October 12, 2020
(赤江珠緒)町山さん、ちょっと冒頭でも言ったんですけども。『なぜ君は総理大臣になれないのか』を見ました。面白かった。あれは価値あるドキュメンタリーでしたね。
(町山智浩)ねえ。ちっちゃいお家に住んでるところがいいんですよ。
(赤江珠緒)それでまたね、ご家族がね、お父さん、お母さんも含めてなんかいいですね!
(町山智浩)美容院をやってるんですよね。中心人物になっている香川県の小川淳也議員のお父さんとお母さんが美容院をやられていて。
(赤江珠緒)ごくごく普通の方で。なんかすごく好感度の高いお父様、お母様でしたね。
(町山智浩)ねえ。で、あの方ね、東大に入って官僚になって……っていうことでお父さんとお母さんがすごい期待していたら「政治家になる」って。それでしかも全然お金になんないんですよね。で、またあの娘さんたちがね……。
(赤江珠緒)そう! また娘さんたちもいいんですよー! ちっちゃい時から見ているからね。でね、家族がみんなね、「政治家になんかなってほしくない」っていうスタンスなんですよ。でも、応援するの。
(町山智浩)そう。
『なぜ君は総理大臣になれないのか』
(山里亮太)これ、でも面白そうだなって思うんですけども。これは今、もう見れないわけでしょう? こうした場合、どうしていけばいいんですかね、町山さん。どういう行動をすれば、またどこかで見れたりするんですかね? なんかあるんですか、こういう時って?
(町山智浩)ああ、でも今は全ての映画館のスクリーンが『鬼滅の刃』で埋め尽くされて、他の作品が入れない状況になってますよ(笑)。
(赤江珠緒)あたた、そうか(笑)。
(山里亮太)僕も映画、見に行ってきましたけど。もう周りは『鬼滅』の子供ばっかり。大人ももちろんですけども。
(町山智浩)ああ、映画館に行ったんですか? 『鬼滅の刃』を見に?
(山里亮太)僕はね、『スパイの妻』を見てきました。
(町山智浩)あら? 奥さんと?
(山里亮太)いや、奥さんが「一緒に行くのはちょっと恥ずかしい」っていうことで、1人で(笑)。
(町山智浩)フフフ、そうですよね(笑)。どうでした?
(山里亮太)でも、町山さんのご説明を聞いていて。たしかに戦争映画とかじゃなくて、夫婦の心がどう……その繋がるきっかけは何であれ、繋がっていった時の夫婦の、それを表情で見せてくれるとか。愛情表現の仕方だったり。で、戦争が背景にあるから難しいかなと思ったら、いやいや、しごくわかりやすいっていう。
(町山智浩)そうですね。でも、あの蒼井優さん奥さん、あの人は怖い奥さんですよ。
(山里亮太)いやー、そうですね。聡子さん。
(町山智浩)ねえ。高橋一生さん扮する旦那の心を掴むために、それで被害を受ける人が他にいても別に構わないっていう、あの態度。
(山里亮太)その被害を受ける人の被害の受け方が尋常じゃないんですよね(笑)。
(赤江珠緒)そうですね、そうですね!
(町山智浩)「多少の犠牲はしょうがないわね」とか言うんですよ(笑)。
(山里亮太)あの犠牲を「多少」って言うあたりの狂気みたいなのはありましたね。そういうシーンもあるんですけども。
(赤江珠緒)愛情の狂気みたいなのは感じますね。全体にね。
(町山智浩)そうなんですよ。でも、あれでもうスパイの妻っていうことになって、あの嬉しそうなこと! デートする時の。
(山里亮太)そうそう。キャッキャするっていう。ねえ。
(町山智浩)もう全世界を敵に回して。でも「2人の愛が……」みたいになっちゃっているところ。それをまたひっくり返していくんですけどね。
(赤江珠緒)うん。面白いですね。
(山里亮太)そういう映画なんですね。だからね、それも見てほしいなって。今、映画館でやっているところも少ないけど。なんとかして見ていただければ……っていう。
(町山智浩)そうですね。あの映画で僕、不思議だなと思うのは高橋一生さんがスパイでビジネスマンなんだけども。同時に映画監督でもあるでしょう? で、あの映画自体は黒沢清監督がほとんど蒼井優さんのアップも撮らないで。誰の表情もはっきり撮らないという感じでロングで撮っているんですけども。高橋一生さんがその映画の中で撮っている映画は昔風のメロドラマなんですよ。ノワール系の。そこで、その蒼井優さんの素晴らしいアップがあるんですよ。
(赤江珠緒)ああ、そうですね!
(町山智浩)そう。それを見た時に思わず、その映画の中の人たちもみんな「おおーっ!」って言うんですよ。でも、自分はやらないっていうね。黒沢清監督は(笑)。
(赤江珠緒)ああ、そういうことか。映画の中で彼女を。そうだな。
劇中内映画の意味
(町山智浩)で、あの高橋一生扮する旦那はね、奥さんを愛してるかどうか非常によく分からないんだけど。でもあの映画を見ると「ああ、愛しているんだな」と思うから、そのへんがまた不思議なんですよ。
(赤江珠緒)なるほど。あの映画にも意味があるんですね。
(山里亮太)感情とかの見せ方がだから、「ああ、ここでそういう表現なんだ」っていう。
(赤江珠緒)ああ、そういうことか。
(町山智浩)そうそうそう。だからまったく感情は分からないように本編を撮っているんだけども、その映画内映画ではものすごいメロドラマをやってるんですよ。そのへんのすごいひねくれたところが面白いですよね。だからたぶん蒼井優さんは「この人、私を愛してるのか、愛してないのかわからない」と思いながらも、あの映画を見ると「こんなに私が美しく撮れている。絶対にこの人は私を愛してる!」って思ってるんですよ。
(赤江珠緒)そういうことだ。ああ、なるほど!
(町山智浩)というドラマですよ。
(赤江珠緒)ちょっと話は尽きないですが、『スパイの妻』は現在上映中。そして『なぜ君は総理大臣になれないのか』はポレポレ東中野ではまだ上映中ですね。
(町山智浩)ロングランですね。大ヒットですよ。
<書き起こしおわり>