映画評論家の町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』で、実在のF1レーサーたちの戦いを描いた『ラッシュ/プライドと友情』について紹介していました。
(町山智浩)今回は、真面目な映画です。今回は、先にちょっとこの曲を聞いていただきたいんですけど。寺尾聰さんの『シャドー・シティ』を聞いていただいけますか?
(赤江珠緒)渋めですね。
(町山智浩)ね?渋いでしょ?あの、かにゴールキーパーとぜんぜん違うでしょ?
(赤江珠緒)世界観が違いますね。
(町山智浩)世界観が違うでしょ?この歌はね、コマーシャルソングだったんですよ。たぶんご存じないと思うんですけど、タイヤのコマーシャルでして。これに合わせて車がサーキットを走っている映像が入るんですけども。これは、ニキ・ラウダというですね、本当にF1のカリスマレーサーが出演していたコマーシャルなんですね。
(赤江珠緒)ご本人が。
(町山智浩)ご本人が。で、もう渋いでしょ?この曲に合わせて、ヨーロッパのサーキットをレーサーが走っているっていう、この渋い感じ。
※0:30からCMが始まります
(赤江珠緒)かっこいいCM。
(町山智浩)かっこいい感じ。そのニキ・ラウダっていうレーサーはですね、本当に当時のカリスマだったんですよ。僕らの世代にとっての。っていうのは僕が、僕は1962年生まれなんですけども。僕が中学校の時にF1ブームっていうのがあったんですよ。
(赤江・山里)へー。
(町山智浩)で、たぶんみなさんご存知のF1ブームっていうのは、フジテレビが仕掛けていたセナのころですね。あの音楽が流れて・・・
(山里亮太)T-SQUARE。
1976年のF1大ブーム
(町山智浩)あれよりも前に、1976年に大ブームがあったんですね。F1ブームが。で、それはどうしてかっていうと、決勝戦を日本で行うことになったからなんですよ。富士スピードウェイでですね、決勝戦が行われると。要するにF1っていうのは1年間、グルグル走ってですね。世界中を。その勝ち点の総合点でチャンピオンが決まるものなんですけども。その最後の最終決戦を日本にするっていう。
(赤江珠緒)最後の最終決戦が日本で。
(町山智浩)最終決戦が日本ですよ。しかも、日本のF1レースの最初の試合だったんですよ。
(赤江・山里)へー!
(町山智浩)だから中学生、大変ですよ!F1のことばっかり考えてるんですよ、みんな。しかも『サーキットの狼』でスーパーカーブームに火がついた後だから、もうとにかく頭の中、車のことだらけなんですよ。ガキンチョは。で、F1ガムっていうガムまで出ましたよ!
(赤江珠緒)ガム?
(町山智浩)おまけがついてるんですよ。F1の(笑)。勝手に作っていたんだと思うんですけど。日本のお菓子メーカーが。絶対許可、取ってなかったと思うんですけど(笑)。で、とにかく子供がみんなですね、子供がですよ。ジョン・プレイヤー・スペシャルとかですね、マクラーレンが・・・とかですね、言ってたんですよ。フェラーリが・・・とか。
(赤江・山里)へー!
(町山智浩)で、その時の、76年の決着をつける時にトップを走っていたのがこのニキ・ラウダなんですよ。要するに、得点数でね。で、その人とそのライバルがいまして。それを追っかけてたのが、ジェームズ・ハントっていうレーサーだったんですね。このジェームズ・ハントとニキ・ラウダの激しい、1976年のチャンピオン争いを描いた映画を今日、紹介します。それが、『ラッシュ』っていう映画なんですね。
(赤江珠緒)はい。
(町山智浩)日本では副題がついてまして。『ラッシュ/プライドと友情』っていうタイトルになってますけども。ラッシュっていうのはものすごい、全速力で突っ走るっていう意味ですけども。ラッシュをかけるっていう意味ですけど。で、この映画がすごいのはですね、まずそのジェームズ・ハントっていう追っかける側のレーサーがね、この人が生涯に5000人の女の人とエッチをしたっていう人なんですね。
(赤江・山里)ええっ!?
(町山智浩)5000人です。休む暇もなかったとしか思えないんですね。はい。人生、あんまり長くなかった人なんでね。で、この人は本当に天才型で。直感で走る人なんですね。センスだけで。センスと、度胸一発で。これ、写真があると思うんですけど。
(赤江珠緒)甘いマスクの。髪の毛も長めで。
(町山智浩)でしょ?金髪でブロンドで。しかも、筋肉モリモリで。で、いつも女の子、体にくっついてるんですね。なんか写真うつる時。
(山里亮太)あ、本当だ。
(町山智浩)こういう人なんですよ。日本では東京ヒルトンホテルっていうところに泊まったらしいんですけど。レースの時ね。そこは日本に来るスチュワーデスさんが泊まるホテルだったんで、大変なことになったみたいですね。
(山里亮太)あら。5000分の何人かがそこに・・・
(町山智浩)33人のスチュワーデス+日本の女の子っていうことみたいですね。日本の女の子とはあちこちでっていうか、レース場でもやってたんで。あの・・・みんな見てたっていうね。
(赤江珠緒)ええっ!?
(山里亮太)応援できない!
(町山智浩)つなぎ脱いでしてたっていう。
(山里亮太)俺、ニキ応援する!
(町山智浩)(笑)。でしょ!でしょ!でしょ!仲間だね!まあ、どうでもいいんですけど(笑)。
(山里亮太)町山さん、ニキ派です!
(町山智浩)ねえ。ニキニキニキニキですよ!
(山里亮太)二木ゴルフでしょ、それ(笑)。
(町山智浩)それがジェームズ・ハントって人なんですね。この人と思い出のある女性も、60才ぐらいの方が何人もいらっしゃると思いますけど。青春だった人がいっぱいいると思いますよ。たぶんこの映画、見に行かれると思います。だからおばあちゃんがね、このラッシュっていう映画見に来てたら、その人は若い頃になんかあったかもしれないですね。
(赤江珠緒)こらこら!断定しちゃダメ!見に行きづらくなるから!
(町山智浩)『このおばあちゃん、ジェームズ・ハントと何かしてた』って思った方がいいですね。
(赤江珠緒)(笑)
(山里亮太)そうじゃないおばあちゃん、行きづらくなっちゃう!
(町山智浩)あ、行きづらくなっちゃいますね。はい、すいません。で、このジェームズ・ハントっていう人はしかもですね、レースの直前まで酒飲んでるんですよ。
(赤江・山里)ええっ!?
(町山智浩)景気づけに、じゃなくて、ずーっと飲んでるんですよ。お酒。それもちょこっとじゃなくて、シャンペンぐびぐび飲んだりしてるんです。ラッパ飲みしてる。それでいきなりレースに出るんですよ。
(山里亮太)飲酒運転?
(町山智浩)だからお巡りさん、捕まえた方がいいですね。
(山里亮太)そうですよね。普通に飲酒運転。
(町山智浩)酒酔い運転ですからね(笑)。
(赤江珠緒)それであのスピードのレースに?へー!
(町山智浩)出るんですよ、これ。危険極まりないけど、これはやっぱり昔だった。76年だったから許されたと思うんですけど。だって、飲んでいるところ写ってるんですよ。写真とかに。
(赤江・山里)ええーっ!?
(町山智浩)レース場で。ロクでもないですけど。もうとにかく、なんでもやっちゃう人なんですよ。この人のアダ名は『壊し屋』だったんですね。要するに乱暴なドライビングなんで、もうマシンを壊しちゃうんですよ。
(赤江珠緒)じゃあ、なにもかも奔放だ。
(町山智浩)そうなんですよ。本当にロックスターのようなレーサーがジェームズ・ハントですね。それに対するニキ・ラウダっていう人は、完全にもう緻密な人なんですね。超緻密で。走るコンピュータとか言われる人で。レース場のコンディションであるとか車のコンディションとか音を聞いただけでわかっちゃって。しかもそれをどう直すかっていうのを、的確に直せるんですよ。メカにもとにかく詳しくて。
(赤江・山里)へー。
(町山智浩)ただね、彼はあんまり見た目が良くなかったんですよ。
(赤江珠緒)そうですか?そんなでもないですけど。
(町山智浩)ええとね、写真を見るとよくわからないですけど、ちょっと歯が出っ歯なんですね。
(赤江珠緒)あ、本当だ。正面から見ると、ちょっとね。
(町山智浩)そうなんですよ。で、このジェームズ・ハントはニキ・ラウダが大っ嫌いで。『このネズミ野郎!』って言ってたんですよ。酷いでしょ?
(赤江珠緒)大人げないなー。
(町山智浩)そう。ネズ公とか呼ぶんですよ。で、この2人が性格が全く違いますから。要するに天才のワガママな不良と優等生ですからね。で、片っ方は女ったらしで、片っ方のニキ・ラウダの方は女の人に『私はレーサーなんです』って言うと、『嘘だー!』って言われちゃう人なんですよ(笑)。『レーサーってもっとイケメンでしょ?』って言われちゃうんですよ。
(山里亮太)うわっ!
(町山智浩)で、この2人がすごいライバル争いを。F1の前の前のF3の頃から延々とやり続ける話なんですね。この映画は。でも、互いが嫌いで嫌いでしょうがないんですよ。
(赤江珠緒)たしかに見事にタイプが対極にわかれてますもんね。
(町山智浩)そう。ぜんぜん違うんですけど。で、まあF1で戦いになっていくんですけど。その間もジェームズ・ハントはむちゃくちゃでですね。結婚しては浮気をしてですね。たとえば、まず最初のシーンで病院に血だらけで現れるんですよ。ジェームズ・ハントが。で、看護婦さんが『どうしたの?レースで事故ったの?』って言うと、『知り合いのカミさんに手を出したら殴られた』っつってるんですね(笑)。
(赤江・山里)おお。
めちゃくちゃなジェームズ・ハント
(町山智浩)で、『君も試す?』とか言ってその看護婦をやっちゃうんですけど。すごいんですよ。で、離婚訴訟でニューヨークに逃げた奥さんを追って飛行機に乗って。その飛行機の上でスチュワーデスとしちゃうし。とにかく目の前にあるものはなんでもしちゃう人なんですね。
(赤江珠緒)すごいな・・・
(山里亮太)そこらへんとかも、映画の中で出てくるんですか?
(町山智浩)全部出てきますよ!これね、たぶん日本語吹き替え版はですね、KinKi Kidsが2人を演じることになると思うんですけど。堂本光一くんがその5000人と寝た男ですからね。
(赤江珠緒)光一くんがこっち。
(町山智浩)すごいですよ。もう硝子の少年じゃないですよ、もう!
(赤江・山里)(笑)
(町山智浩)大変な事態になってますけどね。それでニキ・ラウダの方は剛くんの方なんで。もう、正直しんどいんですけど。
(山里亮太)(笑)。KinKi Kidsの現状をすごく把握してますね!
(町山智浩)そういう戦いでですね。76年にニキ・ラウダがF1でですね、どんどん飛ばしてチャンピオンになるんですね。それをジェームズ・ハントが追っかけていくんですけども。あのね、ドイツのレース場でね、雨が降るんですね。コンディションがものすごく悪くなんですよ。レース場の。で、ニキ・ラウダが『ここでレースするのは、いまレースするのは非常に危険だ!俺たちは命がけでやってるけども、命を無駄にするためにレースやってるんじゃないんだ!』って言って、その試合放棄をレーサーたちに呼びかけるんですよ。
(赤江・山里)うん。
(町山智浩)これ、当然ですよね。ところがジェームズ・ハントはですね、こう言うんですね。レーサーたちに向かって。『こいつはいま、チャンピオンだから試合数が少なくなればなるだけ有利になるんだ。だからこいつはレースを中止にしようっつってんだ。こいつの出まかせにのるんじゃねー!』とか言うんですよ。
(山里亮太)嫌なやつだなー!
(町山智浩)ね。ところがね、ジェームズ・ハントの方が豪放磊落だからレーサー間でも人気があるんですよ。で、ニキ・ラウダの方は非常に真面目な優等生でね、ユーモアがあんまりないんで、あんまり好かれてないんで。レーサーたちはジェームズ・ハントの味方をしちゃうんで、レースが実行されちゃうんですよ。
(山里亮太)うわー。
(町山智浩)このへんもね、いろいろ人生学ぶところがあるんですけどね。まあニキ・ラウダって典型的なドイツ人の。真面目なレーサーっていうのの典型なんですけど。で、そのドイツでレースが始まってですね、ニキ・ラウダ、大事故を起こしてですね。車、大爆発を起こしちゃうんですよ。
(山里亮太)やめろって言ってたのに・・・
(赤江珠緒)ニキ・ラウダの方が事故を起こしちゃう。
(町山智浩)起こしちゃうんですよ。これは危険だから走るな!っつった通りになっちゃうんですよ。で、爆発してると、他のレーサーたちは車を止めてレースをやめてですね、ニキ・ラウダを助けようとするんですけども。レースをやろうぜ!って言ったジェームズ・ハントの方は、ラッキー!っていう感じでスルスル抜けていくんですよ。
(赤江珠緒)えっ!?
(町山智浩)止まんないで。酷いんですよね。
(山里亮太)嫌い。俺は嫌い。ジェームズ・ハント。
(町山智浩)どうしてかって言うと、ジェームズ・ハントがどんどん追い上げてきて嫌いだから、ニキ・ラウダその前にジェームズ・ハントが優勝したレースで優勝した後に、『あいつの車はたぶん1センチぐらい規制のサイズよりもオーバーしてるぞ』っていう風にレースの実行委員会の方に言いつけたんですよ。
(赤江・山里)うん。
(町山智浩)それで測ったら1センチぐらいオーバーしてたために、ジェームズ・ハントのその回の勝ちがなくなっちゃうんですね。だから『ニキ・ラウダ、言いつけやがって!あの野郎!』って感じでムカムカしてたから、ニキ・ラウダが事故っても平気で飛ばし続けるんですよ。ジェームズ・ハントは。
(赤江・山里)はー!
(町山智浩)ものすごい関係でしょ?これ。2人。
(赤江珠緒)これ、実話というか。本当にこの関係でね。
(町山智浩)本当なんですよ。しかも僕が中学の頃には、逐一報道されてたんですよ。そういう関係が。5000人とか知らなかったですよ。子供だったから。子供の時、それを知っていたら僕はどう思ったか?わからないんですけど(笑)。中学生で。
(赤江珠緒)(笑)。その情報、子供知らなくていい。
(町山智浩)神だと思ってたかもしれないですけど(笑)。まあ、それは置いておいて。で、ニキ・ラウダ、車が燃えちゃってですね。車が燃えた時に、炎を吸い込んじゃうんですよ。で、全身火傷だらけになるんですけど、それ以上にすごかったのが、ものすごい温度の有毒ガスを肺いっぱいに吸い込んじゃうんですね。で、そのレースがまだ続いている間、肺からそれを取り出す手術になるんですよ。麻酔なしで。
(赤江・山里)ええっ!?
(町山智浩)普通だったら耐えられない苦痛らしいんですよね。それは。でもそれを吸い出さないと死んでしまうんですけど。その手術をしている間、テレビをつけさせるんですよ。ニキ・ラウダは。ジェームズ・ハントがラッキー!っていう感じでクルクル回ってるわけですよ。トップをきって。すると、『馬鹿野郎!テメーなんかに負けてたまるか!この野郎!』って頑張って、手術を乗り越えるんですよ。
(山里亮太)えっ、すごいな!
ライバルを見ながら手術を乗り切る
(町山智浩)すごいんですよ。互いのこのライバル心。壮絶なんですよ。だから武蔵と小次郎ですよね。アリとキリギリスというかですね、ウサギとカメというかですね。全く違うタイプの2人が互いに『テメー!テメー!』『この野郎!この野郎!』って言いながら。要するに互いにそれを目的として生き続けるっていう話なんですね。それでやっているうちに、2人とも自分たちの実力以上の実力を出していくんですよ。
(山里亮太)切磋琢磨。
(町山智浩)戦いだから。要するに敵がいないと実力以上のものは出せないですよね。
(赤江珠緒)まさにライバルでね。
(町山智浩)そうなんですよ。っていう話なんですけどね。
(赤江珠緒)へー。だけど町山さん、プライドと友情って、友情はぜんぜん・・・
(町山智浩)友情がね、ぜんぜん聞こえてこないでしょ?この後ですね、ニキ・ラウダは顔がグチャグチャに焼けただれて。耳とかほとんどなくなってしまって。太ももの皮膚を顔に移植してですね、すさまじい顔になってしまうんですね。当時、あんまりそういう技術もよくなかったっていうのもあるんですけども。見る影もない顔になってしまうんですよ。ところがそれでレースにすぐに復帰するんですよ!
(山里亮太)すぐ?
(町山智浩)すぐ。死ぬか生きるかのところにいたのに。で、みんな奇跡の復帰だと思うんですけども。で、ちょっとこの曲を聞いていただけますか?はい。
(町山智浩)的を狙えば外さない~♪鷹の誇りはおれのもの~♪この曲はですね、当時放送されていたアニメなんですよ。『グランプリの鷹』っていうアニメなんですけども。
(赤江珠緒)グランプリの鷹。
(町山智浩)この中に、ニック・ラムダっていうレーサーが出てくるんですね。その人が顔の火傷をマスクで隠したレーサーなんですよ。
(赤江・山里)あー!
(山里亮太)じゃあ完全にニキ・ラウダを意識した。
(町山智浩)ニキ・ラウダにささげているキャラクターなんですね。で、その全身焼けただれた、生死の境をさまよった傷からですね、事故からレースに復帰したってことで不屈の男として、当時子供たちのカリスマだったわけですよ。アニメのキャラクターになるぐらいの。
(赤江珠緒)でもそれはそうですよね。このケガで・・・
(町山智浩)もうこれは奇跡じゃなくて、根性ですよね。でもね、友情ってついているように、もしここでジェームズ・ハントがいなかったら、彼はそれができただろうか?ってことなんですよ。あいつがいるから俺はなにがなんでもレースに復帰してやる!と思ったわけですよ、彼は。
(山里亮太)あいつをぶっ倒してやる!と。
(町山智浩)そう。絶対負けないぞ!と。で、それに対して。彼のものすごい不屈の闘志に対して、ジェームズ・ハントも応えるわけですよ。そのシーンは映画を見て、ご覧になってのお楽しみということで。本当に泣けるシーンなんですよ。そこで、『あ、友情ってこのことだったのか!』って思うんですけどね。
(赤江珠緒)なるほど!
(町山智浩)そうなんですよ。それでもニキ・ラウダはケガして、レースに何個か出なくてもまだ依然として総合得点ではトップなんです。その76年は。そこにジェームズ・ハントが追いついていくわけですよ。どんどん追っかけて。そして、富士スピードウェイでの決勝戦になるわけです。
(赤江・山里)わー!
(町山智浩)すごいでしょ?これ、神様が書いたシナリオですよ。
(山里亮太)すげー!
(町山智浩)これ、やっぱり神様っているなって思いますよ。シナリオ書きとして。尊敬するシナリオ書きですけど。脚本家ですけど。ねえ。そのジェームズ・ハントは富士スピードウェイの最終決戦で優勝すれば全体で優勝するんですよ。その年のチャンピオンになるんですよ。ね?もう本当に運命の決戦になるんですけども。その時に富士スピードウェイは試合当日。豪雨ですよ!
(山里亮太)あらっ!コンディションが悪い。
(町山智浩)僕、覚えてるんですけど。みんな楽しみにしてたら、もう豪雨なんですよ。で、どうなるか!?っていうのがクライマックスですね。
(赤江・山里)うわー!
(山里亮太)実話だから結果とかは調べようと思ったらわかっちゃうけど。調べないでいってみよう。
(町山智浩)調べればすぐわかりますけどね(笑)。過去のことなんでね。いやー、でも知ってても燃えますよ、これ。
(赤江珠緒)あ、そうですか。
(山里亮太)あと町山さん、F1のあのブームの時のことを知らないとか、F1カーってわかんないわ、っていう人でもぜんぜん・・・
(町山智浩)ぜんぜんわかるように作ってます。本当にね、その76年1年間だけをね、徹底的に描くことで。もう彼らの人生全てをそこに凝縮されてるんですね。でね、レースの結果は、その時のチャンピオンが誰になったかっていうのは言いませんけども。調べればわかりますから言いませんけれども。これは実はその1年間のレースを通して、実はもっと大きなレースである『人生』っていうレースの物語になってくるんですよ。最後は。この人生っていうレースにおいてのチャンピオンはどっちだったか?
(赤江・山里)はー!
(町山智浩)っていう話もありましてですね。本当にこれ、深い映画になってますね。
(赤江珠緒)そうですね。いや、こんなに見事にタイプの違う天才が2人。同じ時代にっていうのもね。
(町山智浩)そう。たった1年。しかも日本で決着をつけたか!っていうね、ことなんですよ。
(山里亮太)わくわくするぞ、この戦い。
(町山智浩)わくわくするんですよ。で、ジェームズ・ハントの方は瞬間瞬間を生きることしか考えてなくて。その瞬間に全てを尽くす男なんですよ。もう明日のことなんか考えないんですよ。だからこういう人生なわけですけど。目の前にお姉ちゃんがいたら、とりあえずやる。お酒が置いてあったら、とりあえず飲むって人ですからね。目の前にチャンスがあったら走る男ですよ。で、ニキ・ラウダはそうじゃないわけですね。それは一体どういうレースを彼が見ているのか?っていうことになってくるんですよ。後半。
(山里亮太)なるほど!
(赤江珠緒)うわー、なんかF1。すごく急に・・・見たい!ってなりましたね。
(町山智浩)これはもう是非ご覧になっていただきたいですね。最後に、非常にニキ・ラウダがですね、いい言葉をいうんで。これだけ言っておきたいんですけども。これはバルタザール・グラシアンっていうスペインの哲学者の言葉を引用するんですけども。彼が。『偉大なものというものは、凡人が味方から得るよりもはるかに多くのことを敵から得るもののことを言う』って言うんですよ。
(赤江・山里)はー!
(町山智浩)凡人は味方からいろんなものをもらったり得たりですね、するんですけども。本当に偉大なものというのは、味方ではなく敵から多くのものを得るもののことを言うという。戦国武将みたいな感じですけど。
(赤江珠緒)これは・・・なるほど。
(山里亮太)ちゃんと敵のいるところに身を置かないとダメだなー。
(町山智浩)そう。人生はライバルが必要なんですよ。ライバルがいると、自分の力の何倍もの力を出せるんですね。
(赤江珠緒)あと敵からね、もらえないと思っちゃうじゃないですか。普通は。何も。
(町山智浩)そうなんですよ。その戦いの中から、何かを見出すやつが本当に強い人なんですね。というのが『ラッシュ/プライドと友情』。
(山里亮太)たしかに、かにゴールキーパー見てる場合じゃなかったかなー!?
(町山智浩)かにゴールキーパー見てる(笑)。まあ、それもいいんですけどね。
(赤江珠緒)かにゴールキーパー、楽しんでくださいよ。この『ラッシュ/プライドと友情』は日本では2月7日公開予定でございます。町山さん、今日もいい映画、ありがとうございました。
<書き起こしおわり>