町山智浩 アイルランドの好景気ぶりを語る

町山智浩 アイルランドの好景気ぶりを語る こねくと

町山智浩さんが2023年7月11日放送のTBSラジオ『こねくと』に滞在中のアイルランド・ダブリンから出演。現地で感じたアイルランドの好景気ぶりについて話していました。

(石山蓮華)先週は旅行先のスコットランドからのご出演でしたが。今日もご自宅とは違う場所にいらっしゃるんですね?

(町山智浩)今日はですね、アイルランドのダブリンという首都にいるんですよ。

(でか美ちゃん)そちら、今何時ですか?

(町山智浩)今、こっちは朝7時ですね。

(石山蓮華)早くから本当にありがとうございます。

(町山智浩)いえいえ、大丈夫です。本当はね、サンフランシスコに帰る予定だったんですけども。帰っているはずだったんですけど……ちょっと1週間ぐらい、ダブリンから動けなくなっちゃって。

(でか美ちゃん)あら? どうしてですか。

(町山智浩)これね、カミさんがパスポートを盗まれちゃって。

(石山・でか美)ええーっ!

(でか美ちゃん)結構、めちゃめちゃ大トラブルが。

(町山智浩)ちょっとね、油断したですね。

(石山蓮華)じゃあ今も、ダブリンに滞在中ということで。本当にその緊急事態の時に、すいません。

(町山智浩)いえいえ。僕はどこでもいいんですよ。世界中、どこでも仕事ができるし。アメリカへ帰らなくてもいいんですけど。カミさんはね、アメリカに会社があるんで、帰れないとやばいっていう。

(石山蓮華)ダブリンって結構治安があんまり良くなかったんですか?

(町山智浩)治安はすごくいいんです。それでね、油断したんですけど。あのね、アイルランドっていう国は、ご存知ですか? 何でご存知ですか?

(でか美ちゃん)でも何で有名なのかって言われたら……。

(石山蓮華)先週の映画の中で紹介されていたのは北アイルランドでしたよね?

(町山智浩)北アイルランドはイギリスの一部で。まだアイルランド系住民と、スコットランド系住民との間で内戦がくすぶっているところで。そこにも行ってきましたけどね。そこもね、安全だった。

(でか美ちゃん)ああ、そうなんですね。でも「アイルランドといえば何?」って聞かれたら、ポッとはちょっと出てこないです。何が有名なんですか?

(町山智浩)一番有名なのは、ギネスビールですね。

(石山蓮華)ああ、ギネスビールかー!

(町山智浩)あと、妖精とかね。そういったヨーロッパの伝説、ありますよね。お城があって、妖精がいて、魔法使いがいて、みたいな。そういうところですよ。元々は。

(でか美ちゃん)ああ、なるほど。ちょっとファンタジーな?

(石山蓮華)景色がきれいな感じのところなんですね?

かつてはヨーロッパで最も貧しい国だった

(町山智浩)そう。景色がきれいですね。夢のようなところなんですけど。ただ、世界で一番……ヨーロッパで一番貧しい国でもあったんですよ。元々は。で、ものすごく人も死にまして。ポテトしか作れなくて。石ばっかりの土地で、農業がすごくしにくいんですよ。土があまりないのと、あと毎日雨が降っていっるので。涼しくていいんですけども。今もひんやりしてるんですけど。ただ、やっぱりお日様が出ないんで育てられる野菜とか果物に限界があって。だから昔から貧しくて。

で、さらにイギリスに占領されていた植民地だったんですよ。長い間。で、とにかく貧しかったんで18世紀とかはたくさん人が死んで。『ガリバー旅行記』ってあるじゃないですか。あの作者がアイルランド人だったんですけど。あんまりにもアイルランドが貧乏で飢えてるから、もう子供を肉として売るしかないっていうところまで書いてるんです。そのぐらいに貧しくて。あまりにもひどいから、アイランド人のかなり多くがですね、世界中に逃げ出しちゃったんですよ。19世紀ぐらいにね。

で、アイルランド人ってね、世界に3500万人ぐらいいるんです。すごいいるんですけど。それは外国に逃げちゃったからなんですけど。アイランド自体には500万人しかいないんですよ。

(でか美ちゃん)へー! じゃあ結構、その貧しさが加速しちゃう気がしますよね。

(町山智浩)ねえ。で、アメリカにいるアイルランド系アメリカ人の方が、アイルランドにいるアイルランド系アイランドよりその人数が遥かに多いんですけど。アメリカで人口が一番多い人種っていうのは、ドイツ系なんですけど。その次がスコットランド系とか、アイルランド系なんですよ。アメリカって、イギリス系の人はほとんどいないんですよ。英語をしゃべってるけどね。イギリスから独立したんだけど、イギリス系の人はそんなに多くないんですよ。

(石山蓮華)英語なんかも全然違いますもんね。

(町山智浩)そうそう。なまりがあったり、イギリスの英語とは違って、アイルランド系の英語に近いんですよ。アメリカの英語は。アイルランド人が多いから。で、そのぐらい貧しかったんですけども。今は1人当たりのGDP……GDPってありますよね?

(石山蓮華)はい。国内総生産。

(町山智浩)それを1人あたりの人口で割った時、アイルランドのランキングは現在、世界で第何位でしょうか?

(でか美ちゃん)ええっ? でも相当貧しかったんですよ? 言うたって、大昔じゃない時代に。でも、わざわざ町山さんがこうやって振ってくださってるということは……。

(石山蓮華)これはちょっと、意外と高いんじゃないですか?

(町山智浩)言っちゃってください。

(石山蓮華)じゃあ、せーの……3?

(でか美ちゃん)えっ、そんなに? 12位ぐらいかと思いました。

(町山智浩)フフフ(笑)。アイルランドはね、2020年の国民1人当たりのGDPは世界第3位ですよ。

(でか美ちゃん)えっ、ぴったり賞!

(町山智浩)大当たりです。

(でか美ちゃん)私、言うたって12位ぐらいかと思っていました。

(石山蓮華)私も3って言ってはみたものの……。

(でか美ちゃん)上にパッと浮かぶ10カ国ぐらいがなんとなくあったから。でも、すごいっすね。3位って。

1人あたりのGDPは世界第3位(2020年)

(町山智浩)すごいんですよ。だから、かつてイギリス支配されて、イギリスと戦争をして独立したんですけども、イギリスよりも遥かに上に行っちゃっているんですよ。

(石山蓮華)そのアイルランドの広さって、どれくらいなんですか?

(町山智浩)そんなに……日本の本州ぐらいしかないんじゃないかな? もっとちっちゃいか。イギリスが本州ぐらいだから、もっとちっちゃいですね。小国で500万人しかいないっていう。

(でか美ちゃん)大変な状況は状況だと思うんですけど。いる分には、楽しい国ではあるんですね。今、それだけ勢いがあると。

(町山智浩)すごいんです。だから、どこに行ってもお金があるから、とにかくきれいに整備されているんですよ。それでね、パスポートをカミさんが取られちゃったっていうのは、アイルランドはどこに行っても治安が良くて、きれいで……だいたい、その国がいいかどうかって、トイレとかでわかるじゃないですか。要するに、きれいにされてなければ治安が悪いみたいな。でも、すごいきれいだし。人もちょっと何かあるとすぐに「大丈夫?」みたいな感じで本当にフレンドリーで。「すごいいい国だ」と思って油断して、パスポートを……免税店で買い物をしようと思って持ち歩いていて。だからあれ、よくないですね。

(でか美ちゃん)ねえ。ホテルに置いておいた方がいいとか、いろいろ言いますもんね。

(石山蓮華)でも免税店だと必要だから……。

(町山智浩)そう。必要だからね。それで、すられちゃったんですけど。それでもう、アイルランドのそこらじゅうの人たちがめちゃくちゃ親切にしてくれて。「取られた」って言ったら。で、彼らが言うにはアイランド、今ものすごくヨーロッパの中でも飛び抜けて景気がいいので。泥棒が外国から入ってくるって言ってましたね。

(石山蓮華)逆にそういうこともあるんですね。

(でか美ちゃん)出稼ぎ犯罪的なことが起きちゃっているんですね?

(町山智浩)そういうところが、ちょっとあるみたいですけどね。だからアイルランドがすごいのは、貧しい人と金持ちの人との差がね、少ないんですよ。ジニ係数っていう、それを示す数字があるんですけど。それが0.28っていう、ものすごく貧富の差がない状態になっていて。

(石山蓮華)へー!

(町山智浩)たとえば日本なんかだだと、ジニ係数はかなり高くて。0.33。日本って結構貧富の差があるんですよ。でも、こっちは全然差が少ないからね、本当にそういう点では治安も良かったんですが……それで油断したっていう。

(でか美ちゃん)そうですね。旅というものは、楽しいけれども。

(石山蓮華)ねえ。先週は『こねくと』出演後に北アイルランドのベルファストに行かれるとおっしゃってましたけども。ベルファストはいかがでしたか?

(町山智浩)やっぱり道ごとにアイルランド系とスコットランドから来た人たち。プロテスタントっていうんですけども。プロテスタントとカトリックの境界線がそこら中にあるんですよ。

(でか美ちゃん)おっしゃってましたもんね。壁がどんどん建てられているという。

(町山智浩)そう。で、「ここから先はプロテスタント系だ」とか。あとね、壁があるだけじゃなくて、要するに街の中だから。「壁があっても道路で抜けられるじゃん」と思ったんですよ。そしたらね、夜になると道路も閉鎖になっちゃうの。鉄の扉で閉めちゃうの。びっくりした。

(石山蓮華)先週、『ぼくたちの哲学教室』という作品を紹介いただきまして。私もでか美ちゃんも見まして。

(町山智浩)はいはい。あの映画の中で、プロテスタントの地域に取り残されちゃったカトリックの学校に対して、小学校に通う子たちにプロテスタントの親たちがワーッて邪魔したり……あれ、爆弾が仕掛けられたりしていたでしょう?

(でか美ちゃん)で、その避難するまでにかかる分数を校長先生が測って、褒めてあげたりするみたいなシーンとかもありましたけど。でもなんか、そういう分断とか、内戦のしこりが残ってる場所に対して、哲学で、暴力じゃない方法でなんとか子供たちに伝わるように……という物語だったじゃないですか。すごくいい作品だなっていうのと同時に、この映画に描ききれてない、途方もない校長先生の努力みたいなのも感じて。なんか、「いい作品だったな」で終わらせられないなと思いましたね。

(町山智浩)あの校長先生の過去は描かれないんですけど。あの校長先生、体ムキムキに鍛えてるんですよね。

(石山蓮華)すごいもう、筋肉マッチョマッチョでしたね。

(町山智浩)そう。それでロックンロールが大好きで、エルヴィス・プレスリーをいつも聞いていて。若い頃、絶対にただもんじゃなかったと思いますよ?(笑)。

(石山蓮華)でも、なんか映画の中で少しだけ「昔は僕も結構大変で」みたいなことを一言だけ、言うところがありましたけども。

(町山智浩)というのはその頃、北アイルランドではカトリックもプロテスタントも子供の頃からテロをするように周りが教育していたんで。お母さんとかがそこから子供たちの関心を切り離すというのが大変だったみたいなんですよ。だって街を歩いてると「ここでアイルランド人の誰が殺された」っていう写真がそこら中に貼ってあるんですよ。

(石山蓮華)壁画がありましたね。

(町山智浩)そうそう。そういうテロの形跡が残っていて。「絶対忘れない」っていう壁画が書いてあるから。これはもう「やれ!」っていう風な感じになってるんですごく難しいんですけども。でも、街の中心部ではみんな一緒になって暮らしていて。同じ会社に勤めて、同じところでお酒を飲んでたりするんですけど。中心部のところは境界線がないんですよ。一切。だから、すごく奇妙な感じでしたね。でも、ベルファストも今、景気がいいの。今、アイルランド全体がものすごく景気がいいんで、ベルファストもね、荒れ果ててないんですよ。全然。

(でか美ちゃん)ああ、そうなんですね。

(町山智浩)で、テロがすごく減っているんのはね、たぶんお金があるからだと思いますよ。

(でか美ちゃん)ああ、その不満が生まれづらくはなるんですね。やっぱり体制とかに対するものも。

景気がいいとテロがなくなる

(町山智浩)あのね、IRAの元戦士だった人とも話したんですけど。タクシーの運転手さんをやっていてね。で、やっぱり景気がいいから……「停戦条約をしたしばらくの間は結構、テロがあったんだけども。でも最近は景気がいいからな」って言っていましたね。やっぱり、お金があると人は悪いことを考えないなと思いましたね。

(石山蓮華)なるほど。やっぱり格差が少ないっていうのは大事ですね。

(町山智浩)大事だと思いましたね。はい。

<書き起こしおわり>

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