空気階段の鈴木もぐらさんが2022年11月14日放送のTBSラジオ『空気階段の踊り場』の中で行きつけのタバコが吸える喫茶店で見かけたかっこいい人たちについて話していました。
(鈴木もぐら)でも今週、ちょっと「かっこいいな!」って思った話があって。都内某所の私の行きつけのタバコが吸える喫茶店があって。そこは60代ぐらいのお母さんが1人でやってるところなんですよ。全部、1人で切り盛りしててね。朝からやっていて。で、タバコも吸えるから、ネタ作る時とかに俺、よく行ってるんだけど。それで今週、ちょっと朝から行ったんですよ。8時くらいかな? もう本当に、開店してすぐぐらい。全然人もいなくて。お客さんは本当に俺だけみたいな。
で、しばらくしたら、1人のおじさんが入ってきて。60代ぐらいの人。で、後から娘さんぐらいの……30歳ぐらいの女の人もいて。テーブル席に座ってさ。で、喫茶店のお母さんが赤木春恵さんみたいな感じなの。イメージだと。幸楽のね、お母さんみたいな。で、入ってきたその60代ぐらいの人が角野卓造さんみたいな感じなの。
(水川かたまり)幸楽じゃん。
(鈴木もぐら)「あ、ちょっと幸楽だな」なんて思ったぐらいなんだけど。で、席について……そしたらさ、朝、開店したばかりだったから。そのテーブル席にね、メニューがなかったんだよね。
(水川かたまり)ああ、まだセットしてなかったんだ。
(鈴木もぐら)そう。そしたらさ、その60歳のお父さんがさ、「ドンドンドンッ!」ってやって。「おい! おいっ、ねえよ、メニュー!(ドンドンッ!)」ってやって。
(水川かたまり)ちょっとパワー系だ。
(鈴木もぐら)そう。それでお母さんが「はい。今、お持ちします」ってメニューを持っていって。そしたらさ、俺がタバコを吸ってるのをそのお客さんのね、60代のおじさんが見てたんだよね。そしたらそのおじさんがさ、「ああ、なんだ? ここ、タバコ吸えるのか?」「ああ、はい。吸えますよ」ってお母さんが言って。「おい、灰皿、ねえよ。灰皿!(ドンドンッ!)」ってやって。「はい。今、お持ちします」「早くしろよな!」って。そしたらその「早くしろよ」っていうのでお母さんがさ、もうプッチーン!ってキレちゃって。
「おい! あんた、いくつだ?」「えっ?」「いくつだって聞いてんだよっ!」「えっ、俺? 俺、65だよ。昭和32年……」「はあ? 昭和32? 65? なんだよ? 私の1個下じゃねえかよ! 昭和31年、66だよ! なんだよ、1個下のガキが、えらそうにしやがって? ああ? 『灰皿持って来い』じゃねえんだよ! ここはな、私が1人で切り盛りしてんだよ! 手足が何本もあるわけじゃねえんだ! 黙って待ってろっ!」って。
(水川かたまり)フハハハハハハハハッ!
(鈴木もぐら)それでそのおじさんが「ああ? えっ、あ、はい……はいよ……」って(笑)。
(水川かたまり)かっこいいな(笑)。その歳になっても、あるんだ(笑)。
お母さんが一喝
(鈴木もぐら)バシッと言って。一喝。それで灰皿を持ってきてさ、「はい、灰皿だよ! あんた、なんでここに来たんだよ?」ってお母さんが言って。そしたらそのおじさんがさ、「いや、あの……最近、体を壊しちまってよ。ずっと仕事してたんだけどよ。ちょっと休んでてよ。で、家は近くなんだけどよ、散歩してたら、ここの喫茶店の前をよく通るからよ。ここ1週間ぐらい、気になってたんだよ。それで入ったんだけどよ……「ああ、そうかい。でもな、タバコも何本でも吸っていいけどよ。私の店でデカい顔だけはすんなよ!」って。
(水川かたまり)すごい(笑)。
(鈴木もぐら)で、そこから先は別に喧嘩するとかじゃなくて。で、本当に30分ぐらいしたら「お会計」ってレジに行ったんだよ。その時にさ、そのおじさんが一言ね、お母さんに「あのよ、タバコを吸える喫茶店もなかなかないしよ。明日もまた、来ていいかな?」って言ったの。そしたら「私はね、雨の日も風の日も、台風が来たってね、朝からタバコを吸いてえっていう人間のために毎日、店を開けてるんだよ! 何べんでも来いよ!」って。それで「また明日な」なんて言って、お父さんが行って。「かっけーな!」って思ってさ。
(水川かたまり)かっけーな!(笑)。
(鈴木もぐら)なんか、そのお父さんもね、最初は上から行っていたけどさ。最後に「また明日も来ていいかな?」って言ったのもかっこよかったし。お母さんももちろん、一喝していてかっこよかったしさ。なんかこう、60を過ぎてからそういう新たなお店を見つけて、常連になったりするのかなとか考えると、またそれもいいなって思って。そういうのって全部、結局はタバコがつないだ縁なんだね。MONGOL800で『想うた』。
MONGOL800『想うた』
<書き起こしおわり>