星野源とマフィア梶田「出口がない」と思っていた時代を語る

星野源とマフィア梶田「出口がない」と思っていた時代を語る 星野源のオールナイトニッポン

マフィア梶田さんが2022年10月18日放送のニッポン放送『星野源のオールナイトニッポン』に出演。現在の仕事を選んだきっかけを話す中で、中高生の頃に学校に馴染めず、「出口がない」と思っていたこと。そしてそこを脱却したきっかけなどを話していました。

(星野源)続いて、メールです。「中村さん、梶田さん、質問です。今の仕事を選んだ理由は何ですか?」。急にちょっと真面目な話になってますけど。何かきっかけみたいなのはあるんですか? でもさっき、専門学校って言ってましたよね?

(中村悠一)僕は声優の専門学校に行きました。もう、声優のなり方がわからなかったから。

(星野源)そうですよね。

(中村悠一)当時なんか、特にインターネットとかないから。もうテレビCMをやってるところに行くしかないし。その後、就職みたいに事務所に入ったら勝手に仕事が降ってくると思ってたんで。実は全然、そんな業界じゃないんだけど。でも、選んだきっかけを僕は吹き替えですね。洋画の吹き替えをずっとテレビで見てて、なんか声優さんに興味を持って。で、その時に迷ってたのが、まあ梶田くんの前で言うのもあれだけど。ファミ通のライターか……。

(星野源)フハハハハハハハハッ!

(マフィア梶田)えっ、本当に?

(中村悠一)これ、言わなかったっけ?

(マフィア梶田)俺、初耳ですよ?

(中村悠一)ファミ通のライターになるか、声優になるか、格闘家になりたかったのよ。

(マフィア梶田)そのラインナップの中で、格闘家はおかしいですよ(笑)。

(中村悠一)いやいや、全然おかしくないよ。

(マフィア梶田)どれですか? K-1?

声優、ライター、格闘家で悩む

(中村悠一)K-1にあこがれていて。空手、やっていたし。でも、格闘家はやっぱり身長が足りないんで。世界を狙えないんですよ。

(マフィア梶田)えっ、世界を狙いに行くつもりだった?

(中村悠一)そりゃ、やるからにはトップでしょう? でも185ぐらいまでないと、リーチの差と、上から振り下ろすパンチに勝てないんで。やっぱり当時ね、K-1を見ていて。身長の低い選手が苦戦するところは見てきたんで。だからちょっと、格闘家は無理だから。あと残ったのが声優かファミ通の編集者だから、どっちにしようかなと思って。

(マフィア梶田)ええと、ファミ通じゃないのはなんでですか?

(中村悠一)理由? ファミ通の募集条件が「大卒」だったの。「そのために大学に行くって、なんか違うだろう」と思っちゃった。で、声優は大卒って書いてなかったから。

(マフィア梶田)そんなことが運命のわかれ道だったんですね。もしかしたら同業者だったかもしれないんですね。

(中村悠一)ライバルだったかもしれない(笑)。

(マフィア梶田)先輩ライターだったかもしれないんだ。なるほど。面白いっすね。

(星野源)梶田くんはライターになるきっかけって、あったの?

(マフィア梶田)シンプルですよ。俺、ライターになってなかったら、マフィアになってたんで。

(星野源)フハハハハハハハハッ!

(中村悠一)しびれるねえ!

(マフィア梶田)マジでしびれる話とかじゃなくて、本当に他になれそうなものがなかったんですよ。消去法です。その時、全てを憎んでいたので。学校がとにかく肌に合わなかったんですよ。管理された社会がどうにもダメだっていうことがその時にわかっちゃって。で、こうなるともう社会から弾き出されるしかないっていう風に思ってたんですけど。それはもう、今となって思うと視野が狭くなっていたんですよ。もう、中学とか高校時代とか、友達とか一切いなかったせいですね。それでもう、完全にそっち方向しか頭がいかなかったんですけれども。そこで、ファミ通に載っていた記事を読みまして。

(中村悠一)なるほど。みんなファミ通だね!

(マフィア梶田)ファミ通にゲームライターの専門学校の広告が出てたんですよ。で、ゲームライターっていう仕事を知らなかったんですよ。当時、ゲームができないもんだから……僕、当時少年院みたいな学校に行かされて。

(星野源)要約すると「厳しかった」ってこと?

(マフィア梶田)要約すると。脱走すると、遭難するんで。

(星野源)なるほど。孤島みたいなところに?

(中村悠一)「脱走」ってなに?(笑)。学校で使う言葉?

(マフィア梶田)結構脱走事件がありまして。そういう学校だったんで、もうゲームをやれないから、ゲームをやった気になろうと思って。歩いて30分のコンビニで、わざわざ毎週ファミ通を買ってきていたんですね。で、そこで広告を見て、初めてゲームライターという仕事を知って。「ああ、この雑誌って、当たり前だけど誰かが書いてるんだな。もしかしたら俺はこの仕事ならばできるのかもしれない」と思って。一旦、マフィアは保留にして、専門学校に一旦入って。「これで本当にダメだったら、俺はいよいよダメなんだろう」という背水の陣で挑んだんですね。そしたら、ありがたいことに今、こうやって表の世界でやらせてもらっていて。

(中村悠一)なるほど。俺の時にはその専門学校がなかったんだ。

(星野源)ああ、なるほど。そうか。たしかにそれを見てたら、もしかしたらそこに入っていたかもしれない。

(中村悠一)そうなんですよ。だから僕はその当時でいうと、ファミ通……だからアスキーの入社条件が大卒だったからやめたんだけど。今だと、ライターの専門学校があるのか。

(マフィア梶田)ルートとしてあるんですよね。ただ当時、俺が高校生の頃もゲームライターの専門学校は2つくらいしかなくて。

(中村悠一)少ないってことね。なるほどね。

(星野源)でもその時って、もうかなり視野が狭くなってるとはいえ、本当に「もうこれしか自分はできないであろう。周りにいる人たちが行くような場所にはもう絶対、行けないんだろうな」っていう風に思っていたわけじゃない?

(マフィア梶田)ですね。絶対に行けないだろうなって。

(星野源)その中で、でもそこからライターに応募してみようっていうところも結構なジャンプっていうか。すごく何かに飛び込む勇気のある行動だと思うんで。そこって、なんて言えばいいんだろう? なぜ、そこに行けたと思う?

(マフィア梶田)この話、していいのかな? まあ、インタビューとかで話してるから、いいんですけれども。俺、面接まで行ってるんですよ。その体力系のマフィアのところの。ただ、その時の経験がたぶん決定付けたんですけども。面接に来たやつがパキパキにラリッていたんですよね。だからそれで、「ああ、こいつとは仕事を一緒にできないな」って思って。まあ、思ったよりもしっかりしてないというか。

言うても俺も相当ろくでなしでしたけれども。俺以上のろくでなしが来てたんで。「この人と一緒に仕事するのか。いくら何でもな」ってちょっと抵抗を覚えて。それで一旦、踏みとどまって。で、その関係を絶ったんですよ。その当時も知り合いを通じてコンタクトを取ってたんですけれども。当然もう、今は一切付き合いはないんですけれども。名前も知らないですしね。だから……。

(星野源)いや、だから俺、すごく思うのは、たぶんこれ聞いてる人とか、特に今、もっと世の中が無茶苦茶だから。「出口がない」って思ってる人はめちゃくちゃいると思うんですよ。で、僕でさえ「出口がない」と思っていたし。寺ちゃん(寺坂直毅)もそうだと思うし。だけど、そういったところに絶対に出口はあるんだなと思うんだよ。その、意外なところっていうか。だってそのマフィアとファミ通って、全然繋がらないじゃん? でも、その中でちょっとした、なんというか糸みたいなもの。本当に糸ぐらい細い、手繰り寄せるなにかみたいなものが……。

「出口がない」と思ってしまう

(マフィア梶田)やっぱり救ってくれたのはオタクコンテンツですね。俺に蜘蛛の糸を垂らしてくれたのはアニメやゲームだったので。他に全て、すがるものがなかったんですよ。だから現実から逃げて逃げて、逃避した先がアニメやゲームで。「じゃあ、その世界なら俺は永遠にこの人生から逃避し続けることができるんじゃないか?」っていう風に思ったんですよね。

(星野源)だから、あれだよね。今のお仕事も、いわゆる中の人になるってよりかは、コンテンツだったり作品をすすめたり、みんなに「これを見てくれ。面白いから」っていう風に伝えたり、広める仕事だもんね。

(マフィア梶田)それが最高に自分には合ってるっていう風に今になって思いますね。

(星野源)だし、なんかその恩返しをしてる感じが見ていてするんだよね。

(マフィア梶田)まあ、俺はどっちかっていうと、狂信者ですよ。本当に。アニメやゲームに対して、もうファナティックですね。非常に。全てにおいてそれらを最上位に置いて人生を生きてるんで。じゃないと、この世界はつらすぎますわ(笑)。

(星野源)そうだね。だからなんかいろんな……なんかいろんな話を最近よく聞くことがあって。なんか僕らがちっちゃい頃、インターネットとかないから。「出口がねえな。道がねえな」っていう感覚がめっちゃあったけど。なんか、インターネットがあったらあったでその「出口がない」っていう感じの人がもっといるだろうなっていう。なんか、もっとリアルに感じちゃうだろうなって。

(中村悠一)それはあるんじゃないですかね。なんか、インターネットがないからこそ、梶田くんだったら自分の足だったり目で、次の一歩をどっちに踏み出すかを考えたりできるけど。やっぱりそこに場所があると、そういう人たち同士の話はプラスに転がるかどうかはわからないから。ちょっと怖い面はね……。

(星野源)そうですよね。

(マフィア梶田)閉塞感っていうのは本当にものすごくあった時代だったんで。だから俺、星野さんの曲で『地獄でなぜ悪い』ってあるじゃないすか。あれを最初に聞いた時に、ものすごく衝撃を受けたんですよ。ぶっちゃけそれまで星野さんのことをあんまり意識してなかったというか。別世界の生き物すぎて、全然人生で絡むこともないだろうっていう風に考えてたんですけども。あの曲を聞いて「これは本当の閉塞感を知ってる人にしか書けない歌だな」って思ったんですよ。

全てにおいて歌詞で表現されていることが、こっちの人生というフィルターを通して解釈できるんですけれども。地獄だとわかった上で、その楽しい地獄を生きていくっていう、あのメッセージ性がすごく腑に落ちたんですよね。だからそこからですね、「この人は信用できるな。この人は本当の絶望をちゃんと知っている」っていう風に俺は受け取って。まあ、勝手な解釈なんで。二次創作みたいなものだと思うんですけれども。星野さんの楽曲って、すごくストーリー性があるじゃないですか。俺が好きだった80年代とかの曲もストーリー性がすごく強いんですよ。

シティポップとか。そういうところの好みがたぶん、噛み合ったんだと思うんですけれども。やっぱりそのストーリーから自分の人生を照らし合わせて、ファンが曲から受け取って、自分の人生との重ね合わせはそれぞれ違うんですけれども。でもなにかしら、重なるところがあるっていうところがすごくハマったんですよ。

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