大石始さんが2022年8月16日放送のTBSラジオ『アフター6ジャンクション』に出演。盆踊り、民謡の雰囲気を感じさせる注目の新譜として藤井風『まつり』を挙げ、宇多丸さんとその素晴らしさを話していました。
(宇多丸)早速ですが今夜のゲスト、ライターの大石始さんお迎えしてます。大石さん、お久しぶりです。
(大石始)お久しぶりです。
(宇多丸)リモートでご出演いただいております。大石さん、盆踊り、もしくは民謡の雰囲気を感じる曲で大石さんが今、すごく注目している新譜っていうのあるんですね?
(大石始)そうですね。これはもう、僕が説明するまでもないですが。藤井風の『まつり』という曲が今年3月にリリースされて。大きなヒットを記録しましたけど。この曲はですね、様々な祭りの要素が散りばめられていて。僕も含め、祭りたちが大感動しているところなんですね。で、この曲はたとえばイントロから篠笛のフレーズが入っていて。祭りの雰囲気たっぷりっていうのもあるんですけど、歌詞が素晴らしくて。
たとえば青森市のねぶたの「らっせーら」という掛け声が入っているんですが。それが「その閉じた心 今こじ開けな あっけーな らっせーら」という風に韻を踏みながら「らっせーら」に結びつけていったりとか。あと歌詞の中で「花祭り 夏祭り 生まれゆくもの 死にゆくもの 全てが同時の出来事」っていう。この歌詞がすごく日本人の死生観とかですね、そういったものの根本の部分が表現されていて。だからその祭りの風景を描いたポップソングって古くからたくさんありますけど、音楽面だけじゃなくて、その精神面も含めた祭り文化の様々な意味のアップデートがここで行われてるっていうところがあって。もう僕はすごい大感動しましたね。
(宇多丸)まさに生者と死者と過去と現在と未来が一緒くたになったその瞬間としての盆踊り、祭りみたいなことですね。
(大石始)ですね。
RHYMESTER的にも注目の1曲
(宇多丸)しかも実はこの曲、RHYMESTER内でも非常に大きな反響を巻き起こしておりまして。要は、一聴してGファンクなんですよ。まあ1990年代から2000年代について、ものすごいトレンドになったドクター・ドレーが作った、そのLAヒップホップのひとつの形、Gファンクというものがあって。だからGファンクをすごくドメスティックなもに完全に読み替えてみせたというか。
(大石始)なるほどね。
(宇多丸)だから「たしかに! 完全にGファンクなのに、完全に日本の音楽だ!」みたいな。
(大石始)そうですね。Gファンクの哀愁って、やっぱりちょっと祭りの哀愁に近いのかもしれないですね。
(宇多丸)そうなんですよ。あれがやっぱり日本人が聞いてもいいと思うのは、そういう情緒感が通じるところもあったはずなんですよね。それはね。だからそういう意味でも、ヒップホップとしてもやられたっていうところはありますね。ということで、じゃあ聞いてみましょうか。曲紹介、大石さんからお願いします。
(大石始)はい。藤井風『まつり』です。
藤井風『まつり』
(宇多丸)はい。藤井風さんで『まつり』。3月23日に発売された曲です。大石さん、最高ですよ!
(大石始)最高ですよね。もう泣きそうですよね。ちょっとね。
(宇多丸)歌詞、本当に素晴らしいし。やっぱりヒップホップ観点から見てもこれ、ほとんど譜割りとかも含めて、これはラップとしても優れてると思う。という解説を今、ずっと曲を聞きながらしてました。「ほら、こことかもうラップとしてすごいから!」みたいな感じで。よくね、Mummy-Dさんが言ってますよ。「もう藤井風みたいな、ああいうすごいのが出てくると本当に嫌になる。すごすぎる」って言っていて(笑)。ということで、大石さんが注目している盆踊り、民謡の雰囲気を感じさせる、そのイズムを見事に現代に蘇らせた新譜、藤井風さんの『まつり』をお送りいたしました。
<書き起こしおわり>