高橋ヨシキさんがTBSラジオ『タマフル』に出演し、宇多丸さんとジョージ・ルーカスについてトーク。彼がなぜ何度も『スターウォーズ』を手直しするのか? や、彼がはじめてその後に世界にスタンダードになった様々なものについて話していました。
(宇多丸)今日は実は、一大テーマで。本当に時間が足りるかどうかわからないぐらいなんですけど。ヨシキさんの最近非常に温めるというか、あれとしてまずジョージ・ルーカス論というのがあるということで。
(高橋ヨシキ)そうですね。ついにジョージ・ルーカスもディズニーに『スターウォーズ』を売っぱらってしまってですね。やっとその呪縛から開放されたというか。本人的には「勝手にやりやがって」と思っていると思いますけども。まあ、でもその人生の総括として、本当にお年にもなってきたしということで。ただ、だからいま我々は結局ルーカスが作ったものの遺産で食っている人は食っているし、こっちは精神が不安定になるということを繰り返しているわけじゃないですか。だからここでもういっぺん改めて、あの人ってなんだったの?って……まだ生きてますけどね。というのはちょっと考えてみたいなというのと……
(宇多丸)うん。
(高橋ヨシキ)やっぱり長年思っていたんですけど、「だいたいなんで特別篇とか作ったの、あの人?」みたいなのもあって。
(宇多丸)作り直しね。
(高橋ヨシキ)そうそう。そういうのもずっと気になっていたので、1回いろいろ考えてみたいなっていうようなことで……どう?っていう話ですよ。
(宇多丸)でも、「ジョージ・ルーカスとは何か?」をちゃんと考えるはイコールさ、「『スターウォーズ』って何?」ってちゃんと考えることにつながりますからね。ほぼイコールだから。
(高橋ヨシキ)ほぼイコールですね。はい。
(宇多丸)なので、すごく僕は有意義だと思いますね。このタイミング。
(高橋ヨシキ)本当ですか。
(宇多丸)ぜひ、お願いしたいと思います。じゃあ、こっから先はもうヨシキさん講義の時間ですよ。
(高橋ヨシキ)ええー、どっから行けばいいのかな? でもね、ジョージ・ルーカスが成し遂げたことっていうか偉大なことっていうのは大量にあるんですけども。それについてはまた後で丁寧に言うとして、やっぱりルーカスってもともとどんな人なの? みたいなところっていうのは僕は大事だと思っていて。
(宇多丸)はい。
ジョージ・ルーカスとはどんな人か?
(高橋ヨシキ)要は、ルーカスが『THX 1138』っていう映画を撮りますよね?
(宇多丸)長編デビューというか。劇場用。
(高橋ヨシキ)劇場用長編の1作目で。で、それの元になった『電子的迷宮』という16ミリの映画があったんですよ。
(宇多丸)日本でも、『スターウォーズ』の日本語吹き替え版が公開タイミングで同時上映でね。
(高橋ヨシキ)そうです。そうです。そういうのがあった頃のルーカスってなにをやってたの?っていう話なんですけど。その頃ですね、ルーカス、実は学生時代に非常に……『電子的迷宮』もそうですけども、まあ、映画学科ですごい優秀な学生でですね。で、有名な話なんですけど、『マッケンナの黄金』という異色西部劇がありますよね?
(宇多丸)はいはい。
(高橋ヨシキ)あれ、すごい面白いんですけども。あれはすごい『インディ・ジョーンズ』とかに影響を与えているんですが。その『マッケンナの黄金』の撮影隊に学生何人かが同行して、それぞれメイキングを撮るっていう企画があって、ルーカスは優秀だったんで選ばれていたんですね。
(宇多丸)うんうんうん。
(高橋ヨシキ)で、3人行ったんですよ。1人はね、監督を追ったドキュメンタリーを作った。もう1人はプロデューサーを追ったドキュメンタリーを撮ったんですよ。
(宇多丸)まあ、ごく真っ当な。
(高橋ヨシキ)ごく真っ当ですよ。僕もそれで、ルーカスも普通にメイキングを撮っていたんだろうと思っていたら、違うんですよ。ルーカスは、砂漠。しかも、セリフ一切なしで。で、映画のスタッフが映っているところなんか、中盤にチラッと映るだけで。しかもすっごい望遠レンズでよくわかんないように撮っている。あとは、もう広大な砂漠! 石! 空! 終わり! みたいな。
(宇多丸)環境映像みたいなのを。
(高橋ヨシキ)そうです。実験映像のようなものを作って。だからそういう人なんですよね。で、そこがすごい面白いんですけども。この頃、学生時代のルーカスが好きな映画っていうのはこの間の『エピソード7』の時にフィンの番号問題というのがありまして。フィンの番号「FN-2187」の「2187」っていうのはアーサー・リプセットというカナダ人の実験映画作家が撮った映画(『21-87』)からの引用で。これがね、また面白いんですけど、これは白黒映画なんですけども。自分がモントリオールとニューヨークで撮った適当な街の雑踏みたいな映像と、あと編集室の床に散らばっていた余り物の映像を繋いで作ったという実験映画なんですね。
アーサー・リプセット『21-87』
(宇多丸)なるほど、なるほど。
(高橋ヨシキ)まあだからカットアップ的なね。でね、またかっこいいんですよ、これが。で、これに、ルーカスが本当に感動して。「こういうのをやりたい!」って言っていた青年だったんです。
(宇多丸)うんうん。
(高橋ヨシキ)その頃、ルーカスが好きだった映画っていうのは全部こんなやつばっかりなんです。で、それがたとえばどういうことか?っていうと、スタン・ブラッケージとかね。『DOG STAR MAN』という有名なのがありますけども。あと、ジョーダン・ベルソン。この人はアニメーションとかですね。あと、ブルース・コナーっていうのもそうですけども。これも既存のフッテージだけで。
(宇多丸)カットアップ&コラージュ。
(高橋ヨシキ)カットアップ&コラージュね。そういうね、クールでアートで抽象的な映像が超かっこいいと思っていたのがルーカス青年ということは言える。
(宇多丸)全然お話的な方向には意識は向かっていなかったと。
(高橋ヨシキ)全然向いてないですね。はい。
(宇多丸)それがなぜ、こうなっていくのか?っていうことですね。
(高橋ヨシキ)それがなぜ、こうなっていくのか?っていうことなんですね。その時、もうひとつ重大な事件がありまして。『THX 1138 4EB/電子的迷宮』っていう16ミリの方ですね。を、撮る時は学校の課題だったんで。学校の学生映画っていうのはその頃、16ミリの白黒っていうのが当たり前だったんですけど、ルーカスは「俺、絶対にカラーでやるもんね!」っつって。「カラーじゃなきゃやらない」っつったら、教授が怒って。「そんなの、許さん!」っつったら、「やっちゃえばいいんでしょ?」っつって、やっちゃったんですよ。
(宇多丸)ほうほうほう。
(高橋ヨシキ)しかも、それがめっちゃ評判がよかった。だから、この時から出ているんですけども。なんかね、ルーカスはね、「こういうのってないでしょ?」っていう枠組みがあると、「それ、できちゃうじゃん?」っていう考えの人だっていう人だということはこの時からあったんじゃないかな? と。
(宇多丸)既存のルールみたいなのがあるとしたら、もう違うルールを作ってやっちゃうもんねっていう。
(高橋ヨシキ)そう。俺が作った勝手なルールでやっちゃって。っていうか、そういう場にしちゃえばいいじゃんっていう考えがあるのかな?っていうことは思っているんですよね。
(宇多丸)ある意味、その場を革新していくことそのものに興味があるぐらいの?
(高橋ヨシキ)そうですね。うん。
(宇多丸)なるほど。で、もう実験的なものを撮っていて。その実験感覚みたいなものは、その後も実は続いているっていうことですか?
(高橋ヨシキ)実は続いているんですね。だからたとえば、『スターウォーズ』っていうのはすごい実は実験的な映画で……って言うとまたあれなんですけども。たとえば、『スターウォーズ』はご存知の方も多いと思うんですけど、すごく異常な映画で。つまり、70年代とか当時のSF映画のフォーマットに全然一切乗っていないんですね。最初のタイトルバックのところからもそうだし、途中のワイプとか。そういうののやり方っていうのは全部、連続活劇とかそういうものすごく古いものから。
(宇多丸)もう何昔以上前のものからっていう。
(高橋ヨシキ)そうですね。もうみんな覚えていないようなものから取ってきていて。で、しかもそういうものでやるっていうと、ほら、『グラインドハウス』みたいな、古いものの型の中に入れてっていうのをやるのに……
(宇多丸)レトロな感覚としてやる。
(高橋ヨシキ)ってやるんですね。それを『スターウォーズ』は新しいものとしてやったので。だから、レトロだっていうことに当時、あんまりみんな気づかなかったんだよね。気づかないっていうか、だから話とかは『フラッシュ・ゴードン』みたいなだなって思うんだけども、映像があまりにも斬新だったし、スピード感がすごかったし。しかも、カット割りとかも早かったりとかしたので。これは奥さんのマーシア・ルーカスのあれもあるんですけども。
(宇多丸)マーシア・ルーカスね。
(高橋ヨシキ)そういうことで、『グラインドハウス』的なレトロの枠の映画ではないよという風に思えていたんですけども。実はそういう要素が大量に入っていると。これは、この間ジョージ・ミラー監督も『マッドマックス』を撮る時にそうやっているって言ってましたけども。ジョージ・ルーカスは『スターウォーズ』を明白にサイレント映画として成り立つように作ろうという意図があったんですね。
(宇多丸)言葉がわからなくても大丈夫。
(高橋ヨシキ)大丈夫。っていう風に作ろうと思って、作っています。で、それに合わせて、ジョン・ウィリアムズに音楽をたのんだ時に、だから『スターウォーズ』ってね、ずーっと音楽が鳴っているんですよ。あれがすごい異常なんですね。70年代の映画とか、ほとんど音楽、そんな鳴らないじゃないですか。鳴りっぱなしっていうね。
(宇多丸)うんうん。しかもあんな大仰なオーケストレーションみたいなね。それも一時代前みたいな感じもありますし。
(高橋ヨシキ)そうなんですよ。っていうのでずっとやっていたと。
(宇多丸)だから要は、サイレントにずっと音楽がついて。音楽自体で言葉じゃないエモーションがもう説明されているような。
(高橋ヨシキ)まさにその通りですね。で、音楽に関してはね、よく「『惑星』とかね。それからストラヴィンスキーだとか、クラシック音楽に似ている、そっくりじゃねえか、パクッてるじゃねえか」っていう話がありますけども、あれは全部ルーカスが最初にテストで付けといた音なんですね。それで、「こういう風にしてね」って言われてジョン・ウィリアムズは作っているんで。
(宇多丸)ある意味、じゃあその音楽のテンポ感なり感じの方に合わせているというか。
(高橋ヨシキ)に、合わせているということですね。まあ、そういうことがあります。
(宇多丸)そのスピード感みたいなのってやっぱり、いちばんこだわっているところっぽいですよね。
(高橋ヨシキ)そうですね。スピード感はルーカス、すごいこだわっていて。で、スピード感……つまり、結局ルーカスはスピード感をもう味わえない人生になってしまったんですね。
(宇多丸)もともとはレーサー志望だった。
(高橋ヨシキ)そうなんですよ。で、この、やっぱりルーカスが学生時代に作った『1:42.08』っていう映画があるんですけど。この題名もね、全部数字にするっていうのも……
(宇多丸)これもパクリっていうか、影響まる出しなわけね。
(高橋ヨシキ)そうです。さっきのアーサー・リプセットの影響なんですけども。この『1:42.08』っていうのはロータスの車のテスト走行を追った映画なんですけど。もう途中のカッティングの早さとかすごくて。
『1:42.08』
(宇多丸)へー。
(高橋ヨシキ)ギュギュギュギュギュン! とかって、とにかくもう観客がデス・スター攻撃に乗っているような感じに作ってあるっていう。まあ、そういうやつなんですね。で、それはほら、『アメリカン・グラフィティ』とかでもやっているじゃないですか。だからそのスピード感っていうものを体感……だから、映画っていうよりも体感感みたいなものに結構興味のある人なんじゃないのか?っていうことは……
(宇多丸)さっきの景色ドーン! に興味があるとかも。すごい景色の中にドーン!って入って、なんかすげー感じ、するで! とか。なんかすごいところに、スピード感に放り込まれて、なんかすごい感じがすんべ?って。そっちの感じってことなんですかね?
(高橋ヨシキ)そう。だからなんかIMAXとかね、VRとかそういうのに近い感じなのかもしれないなと思いますね。
(宇多丸)アトラクション感覚みたいなものはもともとあったと。
(高橋ヨシキ)というようなことがあって。なんか、あれですね。真面目に話しているとだんだん、退屈な人だと思われるんじゃないですか?
(宇多丸)めっちゃ面白いじゃないですか!
(高橋ヨシキ)本当ですか? 大丈夫ですか?
(宇多丸)ヨシキさんが考える面白みみたいなの……前も言ってるじゃないですか。ヤバいなと思ったら、「おっぱい」とか言えばいいんですよ。
(高橋ヨシキ)ああ、まあそれもバカっぽいからなー。
(宇多丸)どっちだよ!
(高橋ヨシキ)(笑)。いやいや、まあね、それで話を戻しますと、なんで『特別篇』とかを作るようになったのかな? と思ったんですけど、でもね、これよく調べてみるとっていうか、知っていた話ですけど。ルーカスってVHSにする時から『スターウォーズ』っていじりまくっているんですよね。っていうか初公開じゃなくてリバイバル公開の時にすでにもう直しているの。
(宇多丸)うんうんうん。
ジョージ・ルーカスが何度も手直しする理由
(高橋ヨシキ)だからいっつもちょこちょこちょこちょこ直していて。で、レーザーディスクの時も直して。さらに、レーザーディスクのTHX版っていうのが出た時に大幅に直してですね。で、それがあってのその『特別篇』なので。
(宇多丸)たしかに。こまかーいセリフとかさ、SEとかさ、変えてるんですよね。ちょいちょい。
(高橋ヨシキ)そうなんですよ。ベルおばさんの声とかね。元の人の声とか、残っていないですからね。
(宇多丸)ひどい話(笑)。
(高橋ヨシキ)まあ、そうなんですけども。で、そんな感じで。
(宇多丸)じゃあ、もともとやっていることだったと。
(高橋ヨシキ)もともとやっていることなんですよね。で、ただ何がやりたいのかな?っていうのを考えてみると、これは要は、僕は先に結論から言っちゃってもいいですか? 先に言っちゃうと、映画っていうのは、他の表現でもなんでもそうなんですけど。基本的にはそれが作られた時代と密接に結びついているっていうことから逃れえないじゃないですか。
(宇多丸)そうですね。これは本人がいくらね、関係ないぜって思っていても、それこそ後から俯瞰して見ると「うわっ、全然時代の産物!」って。ありますよね。
(高橋ヨシキ)ってなるじゃないですか。それは嫌だから、そうならないようにしようと思っているんですよね。具体的に言っちゃうと。
(宇多丸)要は普遍的なものにしたいという欲望ということですか?
(高橋ヨシキ)そうそう。だから、いつの時代の人が見てもその時代のものとして見れるぐらいの感じにしたいっていう、まあすごい野望ですよね。これはね。
(宇多丸)まあ、はっきり言って気持ちとしては、わからいじゃないですけどね。その欲望のあり方は。でも、それっていいのか?ってやっぱりどうしても……
(高橋ヨシキ)そうなんですよ。だから僕はね、そこは考え方の違いで。僕だって、「それをやるんだったら1作目の時のアカデミー賞は返せ」って思ってますからね。特に1作目でアカデミー賞をとった時の状態のものを見られなくしておいて、「最初からこれでした」みたいな感じでいま、やっているわけだから。
(宇多丸)記録はしてほしいんだよな。どう変えていったかのさ。「バージョン○○」とかさ。
(高橋ヨシキ)そう。そのアカデミー賞をとった特撮シーンが全部置き換わっていたら、それはどういう詐欺なんだ? みたいな話にもちろんなりますよね。
(宇多丸)だし、その時の技術的な「ここまで来ました」の歴史的検証もできないし。
(高橋ヨシキ)そうなんですよ。
(宇多丸)これ、大問題なんですけどね。
(高橋ヨシキ)そう。だから、それは普通の映画とか芸術とかの枠で考えると、とんでもない暴挙なわけですね。だけど、ルーカスはそこんところは「えっ、いいんじゃないの?」って思っている人だっていう。
(宇多丸)さっき言った「ルールがそういうことになっているって言うけど、俺は知らねえよ」っていう。
(高橋ヨシキ)「俺の考えたルールでやってもらうと、こうなる」っていうね。で、そういう風に考えるといろいろわかることがあって。で、たとえばそうですね。ルーカスの映画で、『THX 1138』はルーカス、特別篇を作っているんですね。で、やっぱり特撮シーンを大幅に増やしたりしてですね。で、いま見ても……もともとすっごいあれ、クールな映画なので。あんまりそんな古びた感じはしないんですけども。それでもちょっとスケール感とか、いろいろ微妙に直しているんです。
(宇多丸)うんうんうん。
(高橋ヨシキ)で、あと人数が足りないところを増やしたりとかね、そういうことをやって広がりを持たせようとしてるんですけども。あれはまあ、未来の話だから。未来像っていうのは時代がたつと古臭くなってしまう。それがあるんで、『スターウォーズ』とか『THX 1138』は直すんですが、『アメリカン・グラフィティ』は直さない。
(宇多丸)直さないですね。これはなぜかと言えば……
(高橋ヨシキ)もともと作られた年代よりも昔を舞台にしているから。
(宇多丸)なるほど。
(高橋ヨシキ)時代をすでに超越しているから、直さなくていいんですよ。
(宇多丸)ああー。最初から、ある意味「古さ」という概念の中でやっているものだから。なるほど!
(高橋ヨシキ)だからそういう風に考えると……
(宇多丸)納得!
(高橋ヨシキ)そうそう。なんか、そうなのかな?って。
(宇多丸)気に入らねえところを直すっていうんだったら、なんでも直すのに。そうだ!
(高橋ヨシキ)そうなんですよ。『アメグラ』とか、直さないじゃないですか。だから、「ああ、そうなんだな」って思って。
(宇多丸)ああ、それはすごいわかりやすいですね。
(高橋ヨシキ)っていうことを思っていたんですけどね。
(宇多丸)しかも、その時代性を剥ぎ取るっていうのはさ、恐ろしいことにそこそこ上手く行ってるっていう……
(高橋ヨシキ)そこそこ上手く行ってるっていうのがね、恐ろしいですよ。だって、本当に普通に若い人とかの話で行くと、『特別篇』じゃない方の『スターウォーズ』とかを見ていると、みんな落胆するって言いますからね。「うわっ、チャチい!」とかって。
(宇多丸)まあ、ねえ。
(高橋ヨシキ)それもわかんないでもないですけどね。
(宇多丸)うん。しょうがないんだろうけど。
(高橋ヨシキ)『特別篇』で見せても言われるっていうことはあるかもしれないですけど。『特別篇』はルーカス、何べんもまたさらに変えてますから。
(宇多丸)それこそCGの技術とかこそ日進月歩だから。やっぱりちょっと前のを見ると、「あらっ?」ってやっぱりね、なりやすいですよね。
(高橋ヨシキ)だからそのジャバ・ザ・ハットもね、1回目のCGがすごい下手くそでかわいかったんですけど。『エピソード4』に出てくるやつ。そっちの方が好きなんですが、あれはその後にもっと上手いCGに変えて。あれもたぶん、機会があればどんどん直して近づけて行きたいと思っているんじゃないのかな?ってことを考えた時にですよ、僕、『エピソード2』をルーカスが……またこの『エピソード2』っていうのが画期的な映画で。
(宇多丸)はい。
(高橋ヨシキ)これがですね、史上初の全編デジタルで撮った映画なんですね。
(宇多丸)デジタルで撮ってデジタルで上映。
(高橋ヨシキ)上映。まあ、『エピソード2』の時はまだフィルムも作っていましたけども。でも、基本的にはそういうことなんですね。で、だからいまの映画のフォーマットの形を提示した作品なんですよ。
(宇多丸)いま、これは普通になっていますけど。当時、僕もそれで「デジタルで撮って、デジタルで上映!?」っつって。
(高橋ヨシキ)「映画じゃねえよ!」って。
(宇多丸)そう。で、見に行って「やっぱりなんか目がチカチカすんだけど……」みたいに思っていたんですけど、もういま普通になっちゃった。
(高橋ヨシキ)いまはもう普通になっちゃった。だから、ルーカスがやっていまはもう普通になっちゃったってことはいっぱいあるんですけども。まあ、その『エピソード2』の時にですね、特に追撮シーンも含めて、メイキングを見るとね、「完全にもうブルーバックしかねえよ、これ」みたいなところで、何もないところで役者が虚空を見つめて演技をしなくちゃいけないことばっかりで。
(宇多丸)うんうん。
(高橋ヨシキ)「えっ、これは本当に役者の人に気の毒だ」とか僕、思っていたんですけど。後から考えてみると、そうやって撮っておけば周りはCGの技術に合わせて全変えられだから。そうしちゃえば、後のリニューアルが超楽!っていう。
(宇多丸)なるほどね!
(高橋ヨシキ)それはもしかしたら、考えていたのかもしれない。
(宇多丸)ああー、そっち優先なんだ。
(高橋ヨシキ)そうそう。だからその時のあれが完成形っていう風には全然思っていない人間のやり口なのではないか? という疑いがある。
(宇多丸)でもその結果、ここがやっぱりルーカスが興味ないところ。いわゆる映画監督と違うところ。要は、演技の質がさ、低くなってもいいのかい!っていうさ。そこはいちばん直せないだろ?っていうさ。
(高橋ヨシキ)うん。だからそこはあんま考えてないんですよね。役者の人がなんか「ルーカスはあんま演技指導してくれない」って、みなさんおっしゃいますよね。
(宇多丸)「そこでバッタリ倒れて」みたいなさ、ことじゃないですか。だけど実際にそれを画面上で見ると、非常に「えっ?」っていう動きになっていたりするしさ。
(高橋ヨシキ)そう。だからシステムの方に、むしろ興味が行っちゃっているんですよね。あと、まあストーリー……だから、逆にルーカスにしてみれば、「それは役者の人っていうのはそういうのをやるのが仕事なんだから、言わないでもわかってくれないかな?」ぐらいの気持ちでいるかもしれないですよ。これ、憶測ですけどね(笑)。
(宇多丸)(笑)
(高橋ヨシキ)まあ、そんな感じはあるかもしれない。
(宇多丸)じゃあとにかく、彼が見ているビジョンそのものが、いわゆる映画監督がいい作品を作るとかっていうのとは根本が違うところを見ているっていうことよね。
(高橋ヨシキ)もういまは完全に……プリクエルぐらいからは完全に違うと思います。で、ルーカスがはじめてやったことっていうのはいっぱいありますけども。でも、ルーカス、『特別篇』とかは自分ではやっていますけども、白黒映画をカラーにするとかね、そういうのには反対なんですよね。この人ね。
(宇多丸)あ、意外にも。
(高橋ヨシキ)あと、だから昔のテレビ放映の時にパン・アンド・スキャンといって、横長の画面が起きていることが(テレビ画面では)見えないから、後から技術的に……
(宇多丸)画面をグーッとね。
(高橋ヨシキ)そうそう。横を向かせるみたいなことをやるのは嫌いだと。ああいうのは許さないって言ってるんですけど。
(宇多丸)おおー、なんでだろう?
(高橋ヨシキ)だから、ルーカスの考えでは映画自体は動かさずに、ガワをどんどん変えていってるつもりなんですね。本人は。本質的な部分は変わっていないっていう。
(宇多丸)要は、作り手のもとのビジョンに近づけてるんだから、こっちは間違ってねえだろう?ってことですよね。
(高橋ヨシキ)そうそう。
(宇多丸)それに反することをやるのは許せねえけど。要は、自分の考えたことをいじられたりするのは嫌だってことですよね。
(高橋ヨシキ)だから自分がやっちゃうんだったらいいんですよ。
(宇多丸)本当、自分の考え!
(高橋ヨシキ)俺王国の俺ビジョナリーですね。
(宇多丸)ねえ。という……でも、そう考えるといろいろ、諸々が納得しやすくなるのは間違いないですね。これね。
(高橋ヨシキ)まあ、そうですね。で、だから『特別篇』の時もルーカスは実は細かいところとかのCGを足したりっていう直しよりも、実は画面をどれだけレストアできるか?っていうところに命をかけていた節があってですね。で、そのオリジナルネガを修復してとか、あと、合成シーンもILMとかが素材を取っておいたんで。その合成のし直しっていうのもレーザーディスクの時にもね、『帝国の逆襲』のホスの戦いとかは合成し直されたりして、大変な目になっているんですけども。『特別篇』の時も素材があるものは合成し直してっていうことをやってて。
(宇多丸)うんうん。
(高橋ヨシキ)だから、素材が残っていて、それがいい状態のデータなりフィルムなりであれば、後からそれをもういっぺん、さらにいい技術でやり直すってことは考えているんですけども。あと、昔の映画はだから粒子とかね、フィルムの質感とか、あるでしょう? それはこの『特別篇』の時にルーカスは極力なくすと。
(宇多丸)これがまさにさっき言った時代感ですよね。
(高橋ヨシキ)その時代感はなくしたい。それでも、残ってますけどね。でも本人はそのへんは、「もうちょっと行かないかな?」って思っていると思いますけどね(笑)。
(宇多丸)本当。でも、もうさ、要するに彼がやりたいと思っても、もうできないんですもんね。そういう意味では。
(高橋ヨシキ)もう渡しちゃいましたからね。そうなんですよ。だからそこで、ちょっと悔しい思いをしていると。
(宇多丸)悔しい思いをしているし、そう考えるともう、ルーカスの行くところまで行くビジョンが行くところまで行った状態はそれはそれで見てみたい! みたいな欲もちょっとありますよね。
(高橋ヨシキ)そうなんですよ。ちょっとあるんですよね。だから、僕は10回ぐらい『特別篇』をやり直したプリクエルとかは、逆に見てみたいですね。どんなものができるのか。
(宇多丸)あるところまで行ったら、急に納得度がこっちも上がったりして。
(高橋ヨシキ)急に上がる可能性はありますよね(笑)。
(宇多丸)「ああーっ!」って(笑)。
(高橋ヨシキ)「あれっ? つまんなかったはずなのに!」って(笑)。
(宇多丸)「『エピソード1』、すげーいいんだけど!?」って(笑)。
(高橋ヨシキ)それはまあなかなか……まあ、つまんなかったですけど、面白いところもありますよ。もちろん。僕はそれは言ってますけどね。はい。
(宇多丸)なるほど。
(高橋ヨシキ)あと、ルーカスがはじめてやったこととかっていうのはいっぱいあるんですけども。
(宇多丸)ルーカスはじめてシリーズ。そしてその後スタンダードになりましたシリーズはもう本当、枚挙に暇がない。
ジョージ・ルーカスとフォトショップ
(高橋ヨシキ)枚挙に暇がないんですけど、僕がいちばんルーカスの恩恵を受けていることは自分の職業上ともちょっと関係があるんですけど。フォトショップというソフトがありますよね? で、これはもともとルーカスが作った特撮工房のILMに勤めていたジョン・ノールという人が……お兄さんが大学の研究者だったんですけども、お兄さんのトーマス・ノールという人と一緒に開発したソフトウェアなんですね。
(宇多丸)ふんふんふん。
(高橋ヨシキ)で、これをジョン・ノールが始めたのは、その頃のILMは割と……いまは徹夜とかしてると思いますけど。作業環境がよくて、9時から5時まで仕事をしたら、あとは暇みたいな感じだったんで。その間にコンピューターをいじっている時に、「ああ、画像がこういじれるソフトがあったらいいな」みたいなことから始まっている。
(宇多丸)へー!
(高橋ヨシキ)で、最初はなんかディスプレイっていう名前のソフトウェアだったんですけども、それがやがてフォトショップになっていくんですね。だから僕はフォトショップを2.0ぐらいから使っていますけど、初期の2.0から2.5、3.0ぐらいまでのフォトショップのスタートアップスクリーンにはジョン・ノールの名前が入っていて。で、俺、「ジョン・ノールって『スターウォーズ』の特撮にいる人だな」って知っていたんですけど。絶対に同姓同名だと思っていて。で、ある日、「ええっ、これ、それなの?」っていうちょっとびっくりがあったりして面白かったですね。
(宇多丸)へー! これ、でもフォトショップがっていうのは意外と知られてない……
(高橋ヨシキ)まあ、ルーカス絡みだとは思われてないですよね。
(宇多丸)しかも、恩恵ってね。デザイナーじゃなくたって、フォトショップはみんな使いますからね。普通の会社の人だったらね。
(高橋ヨシキ)いや、本当ですよ。
(宇多丸)恐ろしいことだ。他に、どんどん行きますか?
(高橋ヨシキ)そうですね。アヴィッド(Avid)というノンリニアの編集システムがあって。だからノンリニアの編集っていうのはいま、普通ですよね。映画の編集でも、テレビとか映像の……
(宇多丸)ノンリニアっていうのをわかりやすく説明すると?
(高橋ヨシキ)ノンリニアっていうのをわかりやすく説明すると、いろんなものをデジタル上で編集するので。昔だと、映画っていうのは(テープを)つないでいくから、なにかの先になにかをつないだら、その先にもう1個つなぐかしかないわけじゃないですか。それが自由自在に前後を入れ替えたりすることがもっと簡単になったっていうことですね。
(宇多丸)これ、音楽におけるプロツールズ(Pro Tools)とかもそうだけども、本当に革命的な編集ソフト。
(高橋ヨシキ)これもですね、もともとはIMLで開発していたエディットドロイドというソフトウェアがありまして。それから進化したというか、その途中でルーカスがまた投資したりしてできたソフトがアヴィッドで。これがまあ、いまでは基本になっていますけども。
(宇多丸)もう、そのさっきのデジタル上映と言い、なんなの?っていうぐらいスタンダードを作っちゃって。
(高橋ヨシキ)そうなんですよ。あと、THXサウンドあるでしょう?
(宇多丸)はい。これは一言で説明すると?
(高橋ヨシキ)音響のクオリティーを一定に保つための測定技術ですね。
(宇多丸)昔は映画館とかによっても全然、聞き取れないとかありましたし。
(高橋ヨシキ)そうそう。だからTHXシアターっていうのは定期的に検査して、同じ聞こえ方を保つようになっているんですけど。まあ、音に関してはルーカス、すごいうるさくて。『スターウォーズ』の1作目もあれ、ドルビーなんですけど。ドルビーってあの時、全然なくて。そんな映画。
(宇多丸)ああ、そんなになかったでしたっけ?
(高橋ヨシキ)なかったんですよ。一説によると『スターウォーズ』の前には劇場用映画では2本しかないらしいんですけども。で、そのうちの片方が『ロッキー・ホラー・ショー』っていうね、なかなかうれしい話がありますよ。
(宇多丸)うれしい話(笑)。へー。それも知らなかったです。
(高橋ヨシキ)それからですね、もちろんCGがありますよね。言わずもがなですよね。だからこれ、ピクサーっていうのはもともとILMの一部門ですから。それを考えると、だからアニメーションという概念自体がね、すでに変わってしまったと。
(宇多丸)結局ね、手描きアニメも撤退になっちゃいましたからね。ディズニーもね。
(高橋ヨシキ)そうなんですよ。そのピクサーができたのも、『スターウォーズ』の1作目のデススター攻撃のシーンを基地で説明するシーンから始まっているわけじゃないですか。
(宇多丸)ああ、あそこだ。グリッド状というか、あれのやつですよね。へー。
(高橋ヨシキ)そういうのもあるし、とか、もちろんさっき言ったようなデジタルシネマっていうことがあるし。それから、ゲームね。ルーカスアーツというゲーム会社がありまして。ここはヒット作もいっぱい飛ばしているんですけども。ゲームと映画を同時リリースとかね、そういうことを始めたりとかいうこともやっていて。もちろんいまもルーカスアーツって……いまはなんか違う名前になったのかな? で、まだゲームもやっていますし。『スターウォーズ』もすごいゲーム、あるじゃないですか。これからVRもやるのかな? そういうことでいろいろやっていると。
(宇多丸)ゲームもやっている。
(高橋ヨシキ)で、デジタルシネマっていうのはいま本当に基本中の基本になっちゃって。デジタルで撮ってデジタルで作るのは当たり前でしょって話なんですけど、本当に『スターウォーズ エピソード2』の時は「バカじゃないの?」って言われていたんですよね。
(宇多丸)あの時はまだ、上映側の、映画館側のあれも揃っていないから。「逆に金がかかっちゃって大変だ」なんて言っていたんだけど、いざ揃えてみたら……あら便利って言う。
(高橋ヨシキ)楽だし、元が取れるのが早い、みたいなね。で、それの前にもう1個あって、いまシネコンっていっぱいあるじゃないですか。シネコンっていうかマルチプレックスというか。複数のスクリーンを備えた映画館っていうのは昔はなかったんですよね。
(宇多丸)そうですよね。昔はこう、映画館が単体でボンボンってあるものでしたけど。
(高橋ヨシキ)そうなんですよ。で、それがそういうものになったのは、ルーカスによれば『スターウォーズ』と『ジョーズ』のおかげと。
(宇多丸)要はブロックバスター。
(高橋ヨシキ)そうそう。『スターウォーズ』と『ジョーズ』がめちゃくちゃ儲かって、それのお金が劇場主に入ったので、マルチプレックスを作るその資金になったということを言っています。
(宇多丸)ルーカスの主張として。
(高橋ヨシキ)ルーカスの主張としては言ってますね。それからもちろん、コッポラがやろうとしてなかなか上手くいかなかったゾエトロープというか。スタジオから独立した自分の帝国を別に打ち立てるという偉業を。
(宇多丸)コッポラはルーカスの兄貴分として、先んじてやろうとしたけどまあ、放漫経営と言いますか。
(高橋ヨシキ)そうですね。何度も失敗して。
(宇多丸)やってしまいましたが、ルーカスはそれをある意味完全な形で。
(高橋ヨシキ)そうですね。それはしかも、そこのもうひとつ、ルーカスがやって偉かったのはマーチャンダイジングですね。
(宇多丸)いわゆるフィギュアとかですよね。これこそさ、いまでこそ当たり前っていうか……
(高橋ヨシキ)いや、本当ですよ。
(宇多丸)ねえ。巨大産業ですけど。全く……まあ、『猿の惑星』はちょろっとあったけど。
(高橋ヨシキ)『猿の惑星』と『007』はちょろっとぐらいですけど。規模もスケールも違います。
(宇多丸)あのさ、脇役キャラとかまでさ、全部あってとかね。こういう世界なんて。
(高橋ヨシキ)本当ですよ。昔なんて『ジョーズ』なんて、ガチャガチャで指にはめる指人形ぐらいしかなかったですから。
(宇多丸)はいはい。「なんだ、そりゃ?」っていう(笑)。
(高橋ヨシキ)まあまあ、僕、幼稚園の時にすごいそれがほしかったんですね。どうでもいいですけど。
(宇多丸)本当にでも、フィギュア市場みたいなものだってなかったかもしれないっていうことですもんね。まだまだ、ちょっと駆け足になるけどいろいろ言えば……
(高橋ヨシキ)そうですね。だからDVDとかの特典映像。これもだから『メイキング・オブ・スターウォーズ』『メイキング・オブ・帝国の逆襲』とかをテレビでやって、それをビデオっていうかレーザーディスクに入っていたりとか。そういうのが走りと言われていて。
(宇多丸)そもそもソフトを、普通の人が……昔は結構高かったじゃないですか。買いたくなるっていう、それがまた結構『スターウォーズ』は……
(高橋ヨシキ)まあ、デカいですよね。で、メイキング映像みたいなものは昔の映画でもたしかにあって。そのメイキング映像を実は予告にするっていうことがかつてはよく行われていたんですよ。
(宇多丸)それこそさっきの『マッケンナの黄金』のメイキングを撮っていたわけだから。あるはあるけども。
(高橋ヨシキ)そういうのはあるんですけど、そんな微に入り細を穿った詳細なドキュメンタリーが流通するようになったのはやっぱり『スターウォーズ』の影響がもちろん大きいし。あと、映画のエンドクレジットがすごく長くなったのも『スターウォーズ』からだし、とかね。
(宇多丸)ああー。
(高橋ヨシキ)言っちゃえばもう本当にキリがないんですよ。ただ、いまの映画の上映形式。どうやって映画でお金を儲けるか。それからどうやって撮影するか。どうやって編集するか。どうやって音響を確立するか。だから全部……
(宇多丸)ガワの部分は全部。
(高橋ヨシキ)ことごとくルーカスの恩恵のもとにあるんです。恐ろしいことです。
(宇多丸)環境はもう全部、ルーカスが整えたというか革命したものの上に乗っかっていると。
(高橋ヨシキ)そうですね。彼だけではないですけど、ルーカスの影響下にあることは間違いないです。だからあの人が、「こういうことをこういう風にできたら便利だよね」っていう時に、それにつぎ込む資金力もあったし、そういう技術に対する理解も早く深かったということがあってのこれなんですね。
(宇多丸)うんうんうん。そういう意味でだから、やっぱり映画監督としてこの映画を撮りましたというところのピンポイントでなにか評価しようとするとそれはよくわからないことになるという?
(高橋ヨシキ)全くそうです。だからルーカスは普通の映画監督っていう風に考えると「ちょっといまいちな作品も多いです」みたいなことを言われがちですが、だからそこがスピルバーグみたいな監督監督な人と全然違うところで。ルーカスはどっちかって言うと、だから本当ビジョナリーというか。なんかそういうビジョンの人ですね。
(宇多丸)まあ、スティーブ・ジョブズ的なというか。
(高橋ヨシキ)的な。まあ、簡単に言っちゃえばそういうこともあるかもしれないし。だからそこが面白いのと、あと、首が最近どんどん太ってきているんだけど、あの中に本体が入っているんじゃないか? という疑惑を僕は捨てきれない……
(宇多丸)そういう特殊な疑惑も持たれていますが。まあジョージ・ルーカス論、ヨシキさんこれいずれね、本とかに書かれたりすることでしょうから。序説というぐらいの感じで。
(高橋ヨシキ)駆け足ですいませんでした。
(宇多丸)いえ、とんでもない。めちゃめちゃ濃かったです。ありがとうございます。
<書き起こしおわり>