町山智浩さんが2022年5月31日放送のTBSラジオ『たまむすび』の中でテキサス州の小学校で発生した18歳の男性による銃乱射事件について話していました。
The Justice Department says it will review the law enforcement response to the Texas elementary school mass shooting https://t.co/HQiX5dLfEJ pic.twitter.com/asGplFNytf
— CNN Breaking News (@cnnbrk) May 29, 2022
(町山智浩)アメリカは今、この間あった乱射事件の件でね、ずっともうみんな、お通夜みたいな感じになっちゃってます。18歳の男の子が、なんというか、おばあちゃんと喧嘩をして。おばあちゃんを撃って。18歳の誕生日に買ったばかりのライフルを持って。30連発の弾倉をつけて近所の小学校に乱入して。小学校4年の教室に閉じこもって、中にいた子を皆殺しにするという事件でしたね。
(赤江珠緒)うん……。
(町山智浩)で、その時に殺された女性の先生の旦那さんもショックのあまり、死んじゃったんですよね。
(赤江珠緒)ええっ!? そうですか……。
(町山智浩)そう。あまりの悲しみに、旦那さんも亡くなったみたいですね。で、なぜそういうことが起こったのか?って、日本でどう報道されてるかわかんないんですけれども。バイデン大統領は「18歳の男の子は誕生日に何のチェックもされずに、お店に行っただけで30連発のライフルを買えるなんて、おかしいだろう」という風に言ったんですけれども。うちの方、カリフォルニアでは買えないんですよ。
(赤江珠緒)ああ、州によって違うんですか?
(町山智浩)こっちは21歳からなんですね。ところがテキサスの方は18歳から買えるんですね。その誕生日から。で、一番大きいのはお店にいきなり行って、そこでいきなり買えちゃうんですよ。テキサスは。うちの方、カリフォルニアとかの州ではチェックが入って。犯罪歴とか精神病歴とか、いろんなチェックが入って。それでやっと銃を手に入れられるんですね。いきなり買いに行っても、その場では買えないんですよ。カリフォルニアは。だからテキサスは銃を持つ条件とかがすごくゆるいんですね。あと、銃を持ったまま道を歩いてたらカリフォルニアでは逮捕されるんですが、テキサスでは逮捕はされないんです。それだけでは。
(赤江珠緒)ええっ? テキサスはそれもOKなの?
(町山智浩)そうです。無許可で銃を持ったままコンビニに行ったり、商店街に行ったりしていいんですよ。
(赤江珠緒)本当に銃社会ですね。
(町山智浩)オープンキャリーっていうんですけども。
(山里亮太)それはテキサスだけがそんなにゆるいんですか?
銃規制がゆるいテキサス州
(町山智浩)テキサスが特にゆるいんです。テキサスとかアリゾナとか、一部の州だけものすごくゆるいんですけど。それは、テキサス州の州議会というのがありまして。その州議会の圧倒的多数が共和党の人たちで。州知事も共和党なんですが。共和党はライフルの所持の権利を守る団体というのがありまして。NRA(全米ライフル協会)というところがありまして。共和党はそこから莫大な選挙資金とかの献金を受けてるんですよ。
(赤江珠緒)はー! 完全に支持母体なんですね。
(町山智浩)そうなんです。その額は毎年、200億円以上なんですね。毎年、しかもそのNRA、全米ライフル協会の会員が全米に500万人ぐらいいまして。その人たちの票も獲得できるから、共和党の政治家たちというのはライフルとか銃を持つ権利に関しては絶対にゆるめる方向にしか行かないんですね。
(赤江珠緒)うん……。
(町山智浩)で、今回もこういう事件があったにもかかわらず、アボットさんという州知事は「絶対に銃の規制はしない」という風に断言をしたという状況になっていて。全然、18歳から銃を買えないようにするとか、そういうことには動いてないので、こういったことはこれからも続くだろうと思いますね。
(山里亮太)そんなことがあっても、変わらないんですか?
(赤江珠緒)繰り返されてますもんね。
(町山智浩)変わらないんですよ。で、アメリカは各州ごとに法律が違うんでね。じゃあ、連邦議会……国全体でもって銃規制ができないか?っていうことで、連邦下院議は銃に関して買う時に身元調査をするとか、あとは非常に精神的に不安定だった場合には銃を取り上げることができるとか、そういった法案を通そうとしたんですよ。ところが、その法案が上院の方を通過しなくて。今、上院が50対50で共和党と民主党にわかれてるんですが、共和党は全員、法案に反対票を投じて。で、民主党の議員が1人ですね、やっぱり反対票を投じたんでその銃規制法が吹っ飛んだですね。
(赤江珠緒)だってトランプ元大統領もね、「銃規制をするのではなく、教師の方が銃を持つことで強化しよう」みたいなことをおっしゃってますよね?
(町山智浩)その通りなんですね。そのNRAの全国大会にその虐殺事件が起こった翌々日ぐらいに出て。そのNRAの大会があったところはその虐殺現場から非常に近いところなんですけど。そこにトランプ前大統領が出席しまして。「銃規制はしない」という。今、赤江さんおっしゃったように「銃規制をするのではなく、学校の先生たちに銃を持たせるんだ」という風に言いましたけど。それは『ビッグマグナム黒岩先生』ですよね。はい。
(赤江珠緒)なんかとんでもない……。
(町山智浩)ああ、ご存知ないですか?
(赤江珠緒)存じ上げないですけど……。
(山里亮太)そのワード、ちょっと興味ありますね。
(町山智浩)新田たつお先生の漫画で。
(山里亮太)新田たつお先生って『静かなるドン』の?
(町山智浩)そうです、そうです。文部省が唯一、銃を携帯することを許可した先生として黒岩先生っていうのがいて。その先生を荒れた学校に派遣するんですけど。黒岩先生、44マグナムをぶっ放すんですよ。で、それを本当にアメリカはやろうとしてるよ。
(山里亮太)漫画の設定を実際にやろうとしてる?
(赤江珠緒)現実でね。
『ビッグマグナム黒岩先生』
(町山智浩)でもね、今回殺されたのは小学校の先生だったんです。小学校1年とか2年とかのかわいい子たちを教えたくて、学校の先生やってるのに。そんな人がなぜ、なぜ銃の訓練をしなきゃいけないのか? なぜ銃を持たなきゃいけないのか? そんなの、異常な世界ですよね。という、とんでもないことがありました。
<書き起こしおわり>