小島秀夫と三浦大知「遊び」を語る

小島秀夫と三浦大知「遊び」を語る ニッポン放送

三浦大知さんが2022年2月4日放送のニッポン放送『小島秀夫 遊び仕掛けのラヂオ』に出演。小島秀夫さんと「遊び」について話していました。

(奥浜レイラ)さあ、小島監督。ここからは小島監督が気になるゲストの方がご登場。今夜は三浦大知さんにお越しいただきました。三浦さん、よろしくお願いします。

(三浦大知)よろしくお願いします。いつも、ありがとうございます。

(奥浜レイラ)もう何度も共演もされていますし。

(小島秀夫)共演(笑)。

(奥浜レイラ)番組で一緒されていることもあるんですが、三浦さんをご紹介させていただきますと……圧倒的な歌唱力とダンスパフォーマンスを武器に大人気のアーティスト、三浦大知さんです。実は大のゲーム好きということで。特に小島作品は幼い頃からのファンということで。小島監督のゲーム『DEATH STRANDING』にはご本人役で出演もされています。

(三浦大知)恐れ多いです。

(奥浜レイラ)お会いするのは久々ですか?

(小島秀夫)この間ラジオ以来。メールはたまに。

(三浦大知)はい。ちょこちょこ連絡は取らせてもらっていて。

(小島秀夫)なので、1ヶ月ぶりぐらいですかね。

(奥浜レイラ)ああ、結構最近会ったんですね。一番最初って、どういうタイミングで?

(小島秀夫)これはですね、いつかは覚えてないんですけども。対談ですかね。

(三浦大知)はい。対談の企画があって。それでちょっとバカなふりをしてですね、「小島さんとかって対談していただけたりするのかな?」ということで……お忙しいと思ったので。でも、お声がけさせていただいたら「ぜひ」っていうことで。OKしていただいて。そこでお話をさせていただいたというのが一番最初で。だから『デススト』を作られている時ですね。

(小島秀夫)そうですね。普通、入ってはいけないところとかにも入っていただきまして。

(三浦大知)そうなんですよ。

(奥浜レイラ)『DEATH STRANDING』に出演というのは、小島さんから三浦さんに連絡したってことですよね? なぜ三浦さんに?

(小島秀夫)もう三浦さんしかいないですよ。っていうか、世界をつなぐゲームなんですけれども。こういうつながりで物を作っていたので。独立した時に、何もなかったんですけど。つながりだけがあったというので。なので、そういう関係で。作り方も人とつながりながら作るっていう。

(奥浜レイラ)びっくりしますよね。でも。「出演してください」って……。

(三浦大知)いろいろ説明をしていただいて。自分としては本当に、ただのファンなので。その小島さん作品の世界観を壊してしまうんじゃないか?っていう。自分が入ることで。「これ、大丈夫かな?」っていうのがあって。好き過ぎて。それで最初は「いや、それはもう恐れ多いんで」って言って。それで家に帰って泣こうかなと思ってたんですけど(笑)。でもまあ、自分もこうやってつながりを大切にしていただいてっていうところがあったんで。「じゃあ、ちょっと飛び込ませてもらってもいいですか?」っていうことで、参加させていただきました。

(小島秀夫)本当にありがたいですね。

(三浦大知)こちらこそです。

(奥浜レイラ)という、ゲームのお話も伺いたいんですけれども。今回、番組のタイトルが『遊び仕掛けのラヂオ』ということになっていますので。

(小島秀夫)そうですね。遊び。

(奥浜レイラ)ここでは「遊び」をキーワードに伺いたいなと思うんですけれども。これ、よく「遊びが必要だ」とか「遊びがある大人はかっこいい」っていうんですけど、お二人が考える「遊び」って何ですか?

(小島秀夫)まあ、ゲームプレイも遊びの一種なんですけど。僕の中ではちょっと、いたずらというか。過度じゃなくて、人を幸せにするいたずらと、人を幸せにする嘘ってあるじゃないですか。ついてはいけない嘘じゃなくて。そういうものだと認識してます。エンターテイメントの。

(奥浜レイラ)なるほど。それが遊び。三浦さんにとって「遊び」ってなんですか?

(三浦大知)遊び……そうですね。でもなんか、遊びと学びって結構同意義な気もするというか。そういう自分の興味とか、ワクワクさせてくれるようなことから、たくさんのことを学ぶことが人生は多い気がするんで。なんか、そういうものなのかなっていう感じはしますね。

(小島秀夫)「勉強」とか言うからダメなんですね。「遊び」って言うたらいい。「はい、今日は社会の○ページ。じゃあ、遊ぼう!」みたいなことを言ったらやるんじゃないですか?

(三浦大知)うんうん(笑)。

(奥浜レイラ)急に変わりますね(笑)。

(三浦大知)なんか、心持ちが違いますね。やっぱり。

(奥浜レイラ)全然入りやすくなりますよね。今まで作られてきた作品の中で、「これが遊びだよ」っていうのって具体的にどれが……?

小島秀夫作品の中の「遊び」

(小島秀夫)ああ、僕ですか? 僕はゲームなんで、全部が遊びなんですけど。うーん……まあ、わかりやすいのはゲーム中に「パッケージの裏を見ろ」とか言うっていう。あとはサイコ・マンティスの攻撃とか……コントロール2にするとか。ああいうのは僕の中でもちょっと、かなり片方に寄った遊びかもしれないですね。

(奥浜レイラ)ああ、たしかに仕掛けてますね。

(三浦大知)小島さんのやつは本当に遊びがたくさんありますもんね。やっぱり……それこそ、めちゃくちゃ有名なところで言うとダンボールがあって。ある種の、ゲームの中のさらに細分化されたひとつの遊びというか。みたいなものだと思いますし。なんか、『メタルギア3』のワニとかも(笑)。

(小島秀夫)それを遊びのひとつとして捉えてもらえると、ありがたいんですけど。やっぱり「世界観を壊す」とか言う人もいると思うので。で、やっぱり映画とかではやりにくいんですよね。ゲームは、まあスネークがダンボールをかぶると、かっこ悪いんですよ。でも、ゲームってかぶりたい人だけかぶれはいいじゃないですか。映画は選べないですけども。

(奥浜レイラ)そうですね。

(小島秀夫)だからトム・クルーズが『ミッション:インポッシブル』でダンボールをかぶったら、かっこ悪いですけど。ゲームは自分が選択できるからっていうのはあると思うんですよね。

(奥浜レイラ)ああ、そうか。選択できるからこそ、提案もできるってことはありますもんね。

(小島秀夫)遊び心をくすぐるっていうのは結局、それがくすぐられてるのがわかったらダメなんですよ。「自分が遊んでる」っていう風に錯覚をさせないと。でも結局、踊らされてるっていうのはありますけど。なので、そこがちょっと映画とゲームは違うんですよね。

(奥浜レイラ)面白いな。遊びって、たしかにね。

(三浦大知)ならではですよね。ゲームでしかできない表現だなって。

(奥浜レイラ)たしかに。音楽的な遊びっていうと、どういうことになりますか?

(三浦大知)音楽的な遊びですか? どうなんだろう? まあ、もちろんその音楽理論的に普通に考えたらコード進行はこういう感じで、こういうことが琴線に触れやすいとか。こういうことが感動的な音になっているみたいなものとかはあるじゃないですか。で、そこをちょっと外れていくみたいなこともある種の遊びだとは思うんですけど。僕はちょっと音楽理論があんまりわからないので。どっちかって言うと、やっぱりもうちょっと感覚的なところ……なんか普通じゃ入れないような音をたとえば入れてみるみたいなこととか。

この前、車椅子バスケットボールをテーマに楽曲を作る時があったんですけど。やっぱり、それのイメージで。たとえば「金属と金属がぶつかる音が入っているといいな」とか。ちょっと運動靴がキュッとなるようなのとか。それに似た音を探してきて、その楽曲に取り込んでみるとか。まあ、でもゲームも全て遊びかもしれないけど、音楽もある種、遊びというか。やっぱりワクワクするものの集合体だと思うので。

(小島秀夫)音楽は聞くのも遊びですし。演奏も遊び。

(三浦大知)その延長線上に全てがあるような感じはします。

(小島秀夫)歌手の方って音程を外したりとか、遊びとか……ああいうのは遊びじゃないですか。マイケル・ジャクソンが「アウッ!」「ウッ!」っていうのも。ああいうのもね、遊びのうちですからね。

(三浦大知)そうですね。だからまあ、正解がないので。その表現……ゲームもそうだと思いますけど。もちろんセオリーはあっても、正解はないじゃないですか。表現。だからそれが、理論からは外れていても、心地よかったらたぶんそれがきっと最高の遊び方だと思うので。そういうのはなんか見つけていきたいなっていう感じはしますよね。

(奥浜レイラ)たしかに。『デススト』で誰とかと誰かをつなぐとか、つながっていくみたいなのもそうですけど。ミュージシャンの方でコラボする相手とつながるのもある種、遊びの部分ってありますよね? 「ここ、入れたら絶対に面白くなる」みたいな。

(三浦大知)その、つながることでやっぱり知らなかった世界がそこに広がっているっていうのは本当に大きいと思うので。自分の頭の中だけじゃ生み出せなかったものみたいなものがどんどん出てくるという。だからやっぱりつながりっていうのは本当に大切だなっていう。

(小島秀夫)だから遊びの連鎖で遊びが広がるというか。遊び方って人それぞれ違うと思うので。友達と遊ぶっていうのはそこがメインっていうか、醍醐味ですよね。

遊びの連鎖で遊びが広がる

(奥浜レイラ)ハマっている遊びとかってありますか? と言うと、たぶんゲームになると思うんですけども(笑)。

(小島秀夫)遊ぶ時間がない……(笑)。仕事が遊びですかね? なんか紹介してください。面白い遊びを(笑)。

(奥浜レイラ)なにか、三浦さんは?(笑)。

(三浦大知)でも、ずっと楽器……音楽は絶対、やられたら一瞬で。もちろん、たぶんめちゃくちゃこだわるとは思うんで。凝り性だから。

(小島秀夫)打ち込みでやりたいんですよね(笑)。

(三浦大知)でも、たとえばキーボードとか、昔のビンテージのサンプラーとか、いろいろ集めてみるとか。そういうことがすごい似合いそうだなっていう感じがして。

(小島秀夫)やりたいんですけども。その、源さんが勧めてくれた昔のシンセサイザー、もう売り切れらしいんで。

(三浦大知)ああ、なかなか手に入らないんですよね。

(小島秀夫)なんか、簡単なやつがいいんでしょうね。

(三浦大知)なんか自分の好きな音色を見つけていくとか。

(小島秀夫)そうですね。オルガンなんて僕、両手になってやめましたもん。両手になったら、もう無理。両手で和音は無理。

(奥浜レイラ)そうですよね。でも、サンプラーだったらリズムでできるから。

(小島秀夫)でも、ハマると僕、ダメなんですよ。そればっかりやってしまうんですよ。

(三浦大知)そうですよね(笑)。でも、これから小島さんが作っていく作品の、たとえば音楽が流れてるシーンで、後ろで「ファーッ……」って鳴っていた音。「実はこれ、小島さんが押しています」とかだったら、なんかちょっとファンとしては「これ、小島さんが鳴らした音なんだ!」みたいな。ちょっとドキッとする感じがあったり。

(小島秀夫)15年後ぐらいに三浦さんの曲とか書いてたりして。書けないかな?(笑)。

(三浦大知)いやいや、そんな参加の仕方が許されるのであれば、ぜひ(笑)。

(小島秀夫)バックコーラスで「ファーッ♪」って(笑)。あ、昨日、『みんなのうた』を聞いてまして。三浦さんの曲が流れて「やったー!」って思ったら、その次の曲がコーラス:浜省って。どんだけ豪華やねん、この『みんなのうた』は?っていう。

(奥浜レイラ)すごいですよね(笑)。

(三浦大知)そう。いろんなことをやらせてもらって。嬉しいなと思いますけども。

(奥浜レイラ)三浦さんは最近、遊びというとなんですか? 去年から実況をやられているじゃないですか。

(三浦大知)ああ、そうですね。ただただ自分の好きなことをやっているだけなんで。

(小島秀夫)あれ、すごいですよ!

(三浦大知)お恥ずかしいですけども。

(小島秀夫)あれ、うますぎですよね。

(三浦大知)いやいや、一度『デススト』をやらせていただいていた時に見ていただいていたみたいで。それから、コメントで「今、監督が見てますよ?」みたいなのが来て(笑)。

(小島秀夫)これもですね、ユーザーがつないでくれるんですよ。僕はツイートしてるだけだったんですけど。直接、入ってはないんですけど。見ながらツイートをしていたら、ツイート経由で。

(三浦大知)そこからもう、すっごい緊張してきて(笑)。

(小島秀夫)すごい説明がうまいんですよ。

(奥浜レイラ)そうなんですよ。

(三浦大知)1プレーヤーとしてできたらいいなと思ってました。

(小島秀夫)三浦さん、なんでもできる人だから。

(三浦大知)いやいや……。

(奥浜レイラ)ご自身にも会いに行ってましたよね?(笑)。

(三浦大知)それはまあ、自分しかできないなと思ったんで(笑)。自分に重たいCDとかを運ぶっていう(笑)。

(小島秀夫)すいませんね(笑)。

(三浦大知)いやいや、すごい嬉しかったです(笑)。

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(奥浜レイラ)さあ、クリエイティブのヒントがたくさん今のお話にもあったと思うんですけれども。ちょっとここで三浦さんの選曲で1曲、お届けしたいんですが。三浦さん、どの曲でしょうか?

(三浦大知)そうですね。ジェイコブ・コリアーの『Time Alone With You』っていう曲があるんですけど。僕、あんまり楽器が弾けないんですけど。そのジェイコブ・コリアーってもう本当になんか、その音楽理論とか、さっきの遊びの話じゃないですけど。全てを理解した上で、そこをどう遊ぶか、みたいなことを常に研究されているイメージがあって。そういう遊びがたくさん入った楽曲だなという風に思ったので、ちょっとこれをかけたいと思います。

(奥浜レイラ)ありがとうございます。では、お願いします。

(三浦大知)はい。それでは聞いてください。ジェイコブ・コリアーで『Time Alone With You ft. Daniel Caesar』。

Jacob Collier『Time Alone With You ft. Daniel Caesar』

<書き起こしおわり>

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