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町山智浩『ハウス・オブ・グッチ』を語る

町山智浩『ハウス・オブ・グッチ』を語る たまむすび
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町山智浩さんが2022年1月11日放送のTBSラジオ『たまむすび』の中で映画『ハウス・オブ・グッチ』を紹介していました。

(町山智浩)今日、紹介する映画は1月14日から日本公開の映画で『ハウス・オブ・グッチ』を紹介します。『ハウス・オブ・グッチ』っていうのは「グッチ家の一族」という意味ですけど。グッチはイタリアのファッションブランドですけども。そこはグッチ一族で家族経営をしてたんですね。で、彼らが90年代に家族同士で権利を争って、最終的には殺し合いに発展して崩壊してしまったという実話を映画化したものがこの『ハウス・オブ・グッチ』ですね。で、一番話題になってるのはレディー・ガガさんがパトリツィア・レッジャーニというんですが。グッチ家のお嫁さんを演じて、それがすごい演技だということで話題になってます。

で、グッチ家については元々、靴屋さんで。カバンとかを作ってたんですけども。アルド・グッチという人が世界的なブランドに発展させたんですけども。ところがですね、70年代にグッチ家のロドルフォという五男……アルドが三男なので、その弟ですね。そのロドルフォという人の息子ののマウリツィオという人と、このレディー・ガガ演じるパトリツィアが出会って結婚するところからこの映画は始まります。

(赤江珠緒)ああ、そのマウリツィオはグッチ創業者の孫っていうことですね。

(町山智浩)そうですね。その人をアダム・ドライバーという、『スター・ウォーズ』でカイロ・レンを演じている俳優が演じていて。彼はあんまりグッチ家を継ぐ気がなくて。弁護士になろうとして、大学で法律を学んでるんですけども。パーティーでパトリツィアと出会うんですね。2人ともまだ20代なんですけども。で、「グッチ」っていう名前を聞いて「ああ、グッチのところの御曹司だわ!」っていうことで、もうぐいぐいぐいぐい彼女が押していくんですよ。彼女がもう、なんか追っかけ回すんですけど。「あっ、偶然ね。これって運命よ!」とか言って。「運命じゃねえよ、お前」みたいな。で、彼と仲良くなって結婚しようとするんですが、グッチ家からは反対されるんですよ。っていうのは「庶民じゃないか」っていうことなんですね。

このパトリツィアの家はトラック会社、運送屋さんなんですよ。「そんなところの嫁なんか、もらえないよ」みたいなことを言われるんですね。お父さんに。で、その時にこのマウリツィオは「じゃあ、家を捨てるよ」って家を捨てたんですよ。グッチ家から出て、そのパトリツィアの家がやってる運送屋で働くんです。汗水を垂らして。「いい話だな」と思うんですよね。ここまでは。

(赤江珠緒)でもパトリツィアとしては……「そうじゃないんだ」っていう感じじゃないですか?

(町山智浩)そうなんですよ! その通り。「ええっ? じゃあ、グッチ家と結婚した意味、ねえじゃん!」っていう話になってくるんですよ。で、何とかグッチ家に戻そうとするんですよ。彼女が。で、その時にそのグッチ家の総帥のアルドという人を説得する形になっていくんですけど。このアルドを演じるのはハリウッドの大スターの大物、アル・パチーノさんですけどね。『ゴッドファーザー』のね。で、そのアルドさんがこのパトリツィアをちょっと好きになるんですよ。まあ、すごくやる気のある人だから。それで、彼。マウリツィオの方はやっぱりファッションビジネスに全然興味がなくて。「貧しくても夫婦で仲暮らせればいい」っていうような質素な人なんですよね。

でも、「それは違う!」っていうことで、なんとかグッチ家のビジネスに参加させようと嫁のパトリツィアが一生懸命するんですね。で、この映画はすごい変なんですけど。ものすごいセックスシーンなんですよ。もうすごい、レディー・ガガさんは頑張ってるんですけど。それでもう、メロメロになっちゃうんですけどもね。旦那のマウリツィオの方は。で、反対されてはいるんですが、とうとう正式に結婚して。ところが結婚式にね、グッチ家は誰も来ないんですよ。認めてないから。「あんな庶民とは結婚させん!」みたいなことで。

ところがね、大事なのはやっぱりあれですよ。孫。孫ができたらもうね、許しますよね。嬉しいから。で、「やっぱりグッチ家に戻れ」っていうことになって、グッチ家にマウリツィオは戻って。とうとうレディー・ガガさん、パトリツィアもグッチ家の嫁として正式に認められる形になるんですよ。で、リッチな生活が始まるんですが……彼女は「これはおかしい」って分かるんですね。

(赤江珠緒)うん?

(町山智浩)「経営が杜撰だ」って。で、「変なグッチ商品がいっぱいある」っていうことに気が付いてくんですよ。そこらへんに偽グッチがいっぱいあるわけですよ。なんかグッチが作ってるはずのないものがいっぱいあって。グッチそっくりなんだけど、どうも違うとか。グッチ裕三とか、いろいろとあるわけですよ。「これは違うだろう? これ、グッチじゃねえだろ?」っていうものが。

(赤江珠緒)パトリツィアさん、そこまで言った?(笑)。

(町山智浩)やっぱりグッチ裕三は違うと思ったと思うんですよ。

(山里亮太)それ、僕らも気づけますからね(笑)。

杜撰なグッチの経営

(町山智浩)これ、グッチのブランドをいろいろと毀損をしているぞっていうことで、そのアルドさんとか……アルドさん、もう総帥なんですが、その人に言うんですけども。「いや、そんなの気にするなよ。どうせ所詮、偽物じゃないか」ってなって。で、どうもちゃんと話を聞いてくれないし、ブランドの品質管理ができてないだろうという話になってくるんですよ。で、「これは誰も本気で心配をしてない……このグッチというブランドを本当に心配してるのは私だけだわ!」って思うようになってくるんですね。

(赤江珠緒)意外に野望とともに、ちゃんとしたそういう経営の目もあったんですね。

(町山智浩)そうなんですよ。ただね、その野望が出てくるのは彼女がテレビでたまたま見た、占い師にはまっちゃうんですよね。これもよくある話で。韓国のパク・クネ大統領が占い師にはまりましたけど。彼女も占い師にはまって、その占い師をサルマ・ハエックさんが演じてるんですけど。「あなたの方が才能あるわ!」とか「あなたこそ、グッチ家を支配するべきよ!」とか。「あなたはグッチ家の女王になるべきだわ!」とか言って、やたらと煽るんですよ。

もちろん、そうした方がお金が入ってくるからですけどね。占い師としてはね。で、彼女に煽られて、どんどん野望が盛り上がっちゃうんですね。で、「このアルドを排除すればいいんだ」ということで。アルドさんには息子がいるんですけども、その人はあんまり才能がない感じなんですよ。パオロ・グッチっていう人で。そのパオロを……まあ、気があんまり強くない人だから、何とか騙して。父親を裏切らせようとするんですね。パトリツィアは。で、ここでこのパオロを演じている人の写真って、そこにありますか? この、なんというか、落ち武者みたいな感じの人ですけどね。

(町山智浩)この人ね、ジャレッド・レトという俳優さんが演じてるんですよ。ジャレッド・レトという人の写真がそこにないと思うんですよ。

(山里亮太)あります、あります。

(町山智浩)あります? この人、超イケメンなんですよ。

(赤江珠緒)全然違う!

(町山智浩)全然違うんですよ。この人はイケメンでスタイルもいいから、グッチのモデルまでやってた人なんですよ?

(町山智浩)ロックスターですね。それを特殊メイクで、このなんというか、しょぼくれた落ち武者みたいな人にしちゃってるんですよ。すごいなと思って。そんなことをしてもなにもいいことはないのに……と思いますけど。役者根性なんですね。

(赤江珠緒)あら、でも違和感なく。本当に特殊メイクですね。

(町山智浩)すごいんですよ。全然気が付かない人も多いと思いますよ。彼はまあグッチでいろんな服を作りたいんだけども、「お前のセンスは悪い」って言われて、全然経営に参画できないんですね。親父からも認められてないってことでウジウジしているところにこのパトリツィア、ガガさんが来て。「あなたは本当はこのグッチを支配するべきよ。お父さんが排除するべきよ!」みたいな感じで煽って。このダメ息子のパオロは、お父さんを脱税で税務署に売っちゃうんですよ。

(赤江珠緒)あらーっ!

(町山智浩)で、このお父さんのアルド、アル・パチーノ。要するにグッチ家の総帥は刑務所にぶち込まれちゃうんです。で、経営を乗っ取っちゃうんです。この自分の旦那のマウリツィオとそのパオロでまず、経営を取るんですね。で、今度はこのパオロが邪魔になるから、このパオロを排除するという方向に向かうんですよ。完全にこのマウリツィオとパトリツィアの夫婦でグッチ家を支配しようとするというこれ、なんていうかシェイクスピアの『マクベス』ですね。

マクベス夫人の役目のパトリツィアなんですね。ところが、その『マクベス』よりももっとひどいことになっていくのは、この夫婦の愛が冷めちゃうんですよ。マウリツィオに女ができちゃうんですね。それで、離婚ということになっていくんですよ。91年かな? で、離婚する時に慰謝料がすごいんですね。子供がいたからっていうこともあるんですが、慰謝料が1億5000万円。それを、毎年。

(赤江珠緒)えっ、毎年?

(町山智浩)毎年、1億5000万円。ちょっと「えっ?」っていう感じですけど。それで離婚をするんですが……今度は彼が再婚しそうになっちゃうんですよ。再婚をしちゃうと、慰謝料が削られちゃうんですね。で、また権利もそっちの方に行っちゃうわけですよ。要するに、娘はこっちにいるわけで、娘は遺産相続人だったんですけども、向こうで再婚をしてしまうと遺産相続人がさらに増えちゃうんですよね。

(赤江珠緒)まあ、そうなりますね。

(町山智浩)だから、再婚だけは阻止しなきゃなんないって言っているとまたサルマ・ハエックの占い師が出てきて。「いい手があるわよ。私、ヤクザさんに知り合いがいるの」って。それで、暗殺するっていう方向になってくるんですよ。

(赤江珠緒)ええっ? これ、実話?

旦那の暗殺を依頼(実話)

(町山智浩)これ、実話なんですよ。実話だから、もう既に終わったことだし。95年に大ニュースになったから言っちゃっていいと思うんですけど。ヤクザに金を払って、借金を抱えたピザ屋のおやじに銃を持たせて、自分の旦那を射殺させたんですよ。ひどい話なんですよ、これ。ちなみに、殺しの代金3000万円だったんですけど。まあ、すごいことになっていくという話がこの『ハウス・オブ・グッチ』なんですけど。で、話を聞くと「本当かよ?」って思いますよね? 

(赤江珠緒)そうですよね。小説じゃないんだから……みたいなことになりますよね。

(町山智浩)「本当かよ?」っていう話なんですが、本当なんですよ。実話なんでね。

(赤江珠緒)慰謝料が減るって言ったって、すごい額は入りますけどね。1年にね。

(町山智浩)そうなんですよ。でも、「9000万円ぐらいになる」って聞いたら「そんなの、はした金よ!」って言っているんですね。このパトリツィアはね。すごいんですけども。で、裁判の様子とかも結構テレビで報道されたりしてるんで、知ってる人は知ってると思いますね。このへんは実話なんでね、もう本当にネタバレとかいう話じゃないと思うんで言っちゃうと、懲役29年の刑みたいなことになるんですけどね。ただ、再犯の恐れはないし、彼女自身は凶悪じゃないですからね。お金を払っただけなんでね。一応ね。

それで、途中で保釈をするっていう話になったんですよ。一時。で、日本と違ってアメリカとかヨーロッパには保釈の条件として、働いて……なんていうか、介護施設とか身体障害の人たちのために働くとか、そういう汗水垂らして働く経験をさせるっていうことで減刑をするという条件があるんですよ。日本にはないんですけど。これね、日本でもやった方がいいと思うんですけど。「社会奉仕をするという条件で保釈するよ」って言われたんですよ。2011年に彼女、パトリツィアは。そしたら、保釈を拒否したんですよ。彼女は。

(赤江珠緒)えっ、なぜ?

(町山智浩)「私、ずっとお金持ちで、働いたことないから。刑務所の方がいいわ」って。

(赤江珠緒)ええっ? 刑務所の方がいい?

(町山智浩)すごいでしょう? どうしてかっていうと、この人はお金をそれでも毎年、1億円はもらってたから、そのお金を刑務所にぶち込んで。普通に家にいるのとほとんど同じ、優雅な生活を刑務所の中でもしていたんですよ。

(赤江珠緒)えっ、そんなことをしていたの?

(町山智浩)で、好きなものを食べて。ペットまで飼って。フェレットかなんかを飼って。面会も自由。で、囚人は番号で呼ばれなきゃいけないんだけど、「番号で呼ばせるな」って言って。「パトリツィア様」って言われていたんですよ。刑務所の中で。

(赤江珠緒)そんなのが通用するんですか? それも変な……。

(町山智浩)金の力ですね。でも、アル・カポネとかもアメリカで最初に刑務所に入った時はものすごい豪華な部屋にいて。毎日シェフの料理を食べてたんで、やっぱりそういうことが起こるんですね。刑務所はお金がないっていう問題もあるんで、金持ちが入ってお金をたくさん払ってくれるといいっていう問題もあるみたいですね。

(赤江珠緒)上客みたいに言わないでほしいですね(笑)。

全員、実名

(町山智浩)そうなんですよ。そういう、とんでもない話なんですけど。これ、すごいなと僕が思うのは、全員が実名なんですよ。これって日本でなんできないだろうな?って思うんですよね。「○○家の人々」っていうことで映画にした方がいい人がいっぱい日本にもいるのにね。

(赤江珠緒)でもこれ、グッチの関係者の方はOKなんですか?

(町山智浩)OKじゃないです。みんな怒ってますよ。

(山里亮太)やっぱりそうなんだ、ちゃんと(笑)。

(町山智浩)怒っていますよ。ただ、これは『ハウス・オブ・グッチ』っていうノンフィクション小説があって、それの映画化という形だからいいんです! でも別に、そういうのの映画じゃなかったとしても、基本的にはアメリカはこういったスキャンダルものは全部実話で、実名でやっちゃうんですよね。前に紹介した『スキャンダル』という映画では、FOXニュースという保守系のニュースチャンネルであったセクハラ事件のことを全員実名でやってましたけど。それもつい1年前にあったことで、出てくる人は全員存命なんですが、全部実名でやってましたよね。許可なしで。

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(赤江珠緒)そうか。

(町山智浩)一切許可なし。だからそれは「映画、芸術は自由なんだ」っていうのがやっぱりヨーロッパやアメリカのポリシーなんで。なんで日本でそれをやらないか?って思うんですが。やるべきなんです。やって裁判になって、それで判例が出たらその後は全部OKになるから。誰か、どこかの映画関係者やテレビ関係者が勇気を出して、裁判の危険を冒してやるべきです。実名で。で、1回通ったら、あとはOKだから。判例になるから。誰かやらないのかな?って思いましたね。これを見て。

(赤江珠緒)ちょっと町山さんが占い師ばりに焚き付けてますけども(笑)。

(町山智浩)この占い師さんがサルマ・ハエックっていうのがまた、すごいんですよ。っていうのはね、サルマ・ハエックってメキシコ出身のハリウッド女優なんですけども。この人ね、フランソワ・アンリ・ピノーという人と結婚したんですね。その人の3人目の奥さんになったんですけども。このフランソワ・アンリ・ピノーっていう人はですね、総資産が540億ドル、約5兆5000億円なんですよ。その人の3人目の奥さんになったんですけど。サルマ・ハエックは。

この人のその旦那が持ってる会社っていうのはケリングっていう会社なんですね。日本でも表参道かなんかにありますけど。このケリングっていうのは高級品のブランドを次々と買収して傘下に収めるブランド・コングロマリットなんですよ。で、このケリングが持っている会社はバレンシアガとサン・ローランとグッチなんですよ。グッチは最終的に買収されて、現在ではサルマ・ハエックの旦那のものになってるんですよ。だから、占い師としてパトリツィアを煽ってグッチを崩壊させたという、これはサルマ・ハエックが本当の犯人だったんだっていうね。言っていることの前後関係、めちゃくちゃですが(笑)。

(赤江珠緒)なんという……でも、そうね。ちょっと因縁めいたキャスティングでございますね(笑)。

(町山智浩)すごい話なんですけどね。そういうね、僕もね、『映画秘宝』というブランドを立ち上げた男としてね、それがいろんなことがあって。乗っ取られたり、いろいろあるというのでね、他人事じゃなかったですよ。本当にもう。だからアル・パチーノのアルドにめちゃくちゃもう感情移入しながら見てましたよ。何もかも、失っていくんですよ。本当にグッチの人々が。みんな、これからグッチを買う時はね、「このグッチを作った人たちはもう何もかも失って死んでったんだ」っていうのを本当に思いながら……まあ、そんなに気安くは買わないですけどね(笑)。

(山里亮太)もし、物を持つ時はいろいろなものに思いを馳せながら。

(町山智浩)そう。大変ですよ。グッチっていう名前だけでグッチ家は全部、滅びてるんですよ。

(山里亮太)実際に本当の話だっていうのがすごいですよ。

(町山智浩)本当の話。ついこの間の話なんですけどね。もう本当にブランドとかね、高級だとは言いますけれども。それを作った人たちが幸せとは限らないというね。まあ強烈な映画がこの『ハウス・オブ・グッチ』なんで。今週末公開ですから、ぜひご覧ください。監督は巨匠リドリー・スコットでした。忘れてました(笑)。『エイリアン』『ブレードランナー』の巨匠でした。巨匠の名前を忘れて、どうしようもないな。映画評論家としては(笑)。すいませんでした。

(赤江珠緒)『ハウス・オブ・グッチ』は1月14日から公開でございます。町山さん、ありがとうございました。

(町山智浩)どうもでした。

『ハウス・オブ・グッチ』予告

<書き起こしおわり>

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