町山智浩『スケーターガール』を語る

町山智浩『スケーターガール』を語る たまむすび

町山智浩さんが2021年6月15日放送のTBSラジオ『たまむすび』の中でNetflixで配信中の『スケーターガール』を紹介していました。

(町山智浩)さっき、なんかオリンピックの話を……。

(赤江珠緒)そう。町山さんは前の東京オリンピックの時は生まれていらっしゃったんですよね?

(町山智浩)僕は2歳でしたね。

(赤江珠緒)記憶、あります?

(町山智浩)あります。僕、すごくあるんですよ。写真もバッチリあります。僕、マラソンの時に日の丸を振ってましたよ。

(赤江珠緒)旗を振って沿道で応援したんですか?

(町山智浩)そう。アベベってわかります?

(山里亮太)裸足のアベベ?

(町山智浩)そう。「アベベ」って言葉をその時に覚えたんですよ(笑)。

(赤江珠緒)「アブー」の次に「アベベ」みたいなね。スムーズに行けそうだ(笑)。

(町山智浩)子供の覚えやすい名前ですね。今の人はわからないかな? アベベっていう人が東京オリンピックのマラソンで優勝したんですよ。子供の頃はアベベっていうのは一番最初の方で覚えた言葉のひとつですよ。

(赤江珠緒)そうなんですね。

(町山智浩)今もその写真、ありますよ。日の丸の旗を道端で振っているのが。懐かしいですよね。「懐かしい」っていうか……(笑)。写真とかね、いっぱいあったんで。それを見て覚えているのか。

(赤江珠緒)それもありますよね。後になってね、写真でもう1回、刷り込んでるっていう。

(町山智浩)刷り込んだのかもしれないですね。そんな感じで。まさか生きてる間に2回、東京オリンピックを体験するとは。

(赤江珠緒)そしてまさかこんなにいろいろと起きるオリンピックになるとはね。

(町山智浩)ねえ。何があるかわからないですよね。本当に。で、今日も一応スポーツの話ではあるんですけども。日はスケボーの映画についてお話をしたいんですが。6月11日からすでに日本でも配信されてるNetflixの映画なんですが。インド映画ですね。『スケーターガール』という映画について話をしたいんですが。これは監督はインドの俳優さんの娘さんでマンジャリ・マキジャーニという女性がやってるんですけれども。この人、ハリウッドでずっと仕事をしてた監督なんで。いわゆるインドのボリウッド映画みたいな感じじゃなくて、もう完全にアメリカ映画のタッチですね。

この人ね、『ミッション:インポッシブル』シリーズのインドシーンとか、『ダークナイト ライジング』のインドシーンとかを撮影していた人なんですけども。そこで助監督をやっていた人なんですけども。クリストファー・ノーラン監督の下で『ダンケルク』にも参加してたりして。結構注目をされている女性監督で。彼女が自分で企画して、インドで撮影した映画なんですが。女の子がね、スケボーをしようとするという話でね。

で、舞台はラージャスターンという地区らしいんですけど。僕、あんまり詳しくないんですが、パキスタンに近いところで、砂漠みたいなところですね。そのちっちゃな村に住むプレルナという女の子が主人公なんですよ。ただね、彼女は何歳かわからないんですよ。

(赤江珠緒)わからない?

(町山智浩)貧しいからだと思うんですけど「何歳なの?」って聞かれても、答えられないんですよ。で、とにかく貧しくて。彼女は朝、起きると薪を拾いに行って。つまり、薪って枯れ木の枯れ枝をたくさん集めてくるんですよ。要するに、家にガスがないから。お水もないから、水くみをして。で、家のために道端でピーナッツを売って……というような暮らしをしてるんですけれども。で、弟は学校に行ってるんですよね。彼女は女の子だから「学校に来い」って言われても行ってなくて。制服も買ってもらえないし、教科書も買ってもらえないから、学校に行ってもしょうがないというぐらい貧しい女の子が主人公なんですけども。

この映画ね、たぶん見た人はなんだかわからないっていうシーンがいっぱい出てくるんですよ。つまり、なんというかインドの現状について、監督は言いたいことがものすごくあるんだけれども、それを全部言うことができないっていう状況で作るられている映画のようなんですよ。

(山里亮太)「言うことができない」?

(町山智浩)おそらくインドで撮影しなきゃならないので、許可を取ったりしなきゃならないからだと思うんですけども。インドの現状について知ってる人じゃないと、何を言おうとしている映画なのかがわからない映画なんですよ。

インドの現状を知らないと、よくわからない映画

(町山智浩)で、そこの街にですね、ジェシカというインド系イギリス人の女性がやってくるんですね。で、彼女はイギリスでおそらくはITか広告代理店がなんかで働いているクリエイターの人なんですね。で、ものすごい給料をもらってるらしいんですよ。まあ、はっきり描かれないんですけど、2000万とか3000万もらってるみたいなんですね。ただ、彼女のお父さんが生まれ育った村がそこなので、その村にやってくるんですよ。「自分の父親がどんなところで生まれたのか?」っていうことで。で、そこでプレルナというそのヒロインの女の子に会って。ジェシカは「私はロンドンから来たのよ」って言うんですね。ところは「ロンドン」って言われても、なんだかわからないんですよ。プレルナは。

(赤江珠緒)まあ、学校にも行ってないですからね。

(町山智浩)学校にも行ってないから。まあ、そういう状況で。今、インドって経済はものすごいですよね? もう、はっきり言って日本よりもはるかにすごいところはすごいわけですよ。

(赤江珠緒)教育とかもすごいって聞きますもんね。

(町山智浩)すごいんですけど。このへんの地域はそうじゃないみたいなんですね。かなりひどいところで。携帯がつながらないというシーンも出てきますからね。で、そこでジェシカという女性は非常に経済的に成功をしていて。同じインド人なのに。でも、こんな状況があるんだということで衝撃を受けて。そこに彼女のアメリカ人の友達で男友達、ボーイフレンドでインドで英語を教えてるエリックという彼がスケボーに乗って遊びに来るんですよ。そうすると、その村の子供たちはみんな、スケボーを見てものすごいショックを受けて。「こんな面白そうなものがあるんだ!」っていうことで、集まってくるんですけど。

その時に、そのジェシカがプレルナという女の子に「ちょっとスケボーに乗ってみない?」って乗せるんですね。するとその時にプレルナは生まれて初めての衝撃的な感覚を覚えるんですよ。それで彼女はスケボーに取り憑かれていくっていう話なんです。で、それを見たエリックとジェシカはお金持ちなので。スケボーを取り寄せて、その村の子供たちにプレゼントするんですよ。そうすると、村中の人たちと対立していくことになるという話なんですよ。

(山里亮太)対立?

(町山智浩)というのは、「女の子がスケボーをやってるのは許せない!」っていうことになるんですよ。その村では。

(山里亮太)えっ?

(町山智浩)「女はそんなものに乗るべきじゃない!」っていうことで。「この村の伝統を破壊してる!」っていうことになって、騒ぎになっていくという話なんですね。で、その「なんで?」っていうところがちょっとわかりにくいんですけれども。たとえば、こういうシーンがあって。このプレルナという子が弟と一緒に寺院、お寺に行くシーンがあるんですね。ところが、彼女は入れないんですよ。で、弟が「なんでお姉ちゃん、来なかったの?」って言うんですね。すると「私はお腹が痛いから」って言うんですよ。それだけなんですよ。これ、なんだと思います?

(赤江珠緒)寺院。お姉ちゃんだけ。お腹が痛いから……?

(町山智浩)彼女、生理なんですよ。

(赤江珠緒)ああ、うん。入っちゃいけないのか。

(町山智浩)入っちゃいけないんですよ。穢れているから。

(山里亮太)考え方がすげえ古いっていうか……。

(町山智浩)前に紹介した映画で、インドには女性の生理用ナプキンがなかったっていう話をしましたよね? それを作った人がインドを変えたっていう話で。女性は生理になると「穢れているから」っていうことで、家の外に出されるって話を映画にした『パッドマン』っていう作品があって。

(赤江珠緒)ありましたね。小屋とか檻みたいなところに入れられるっていうね。

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町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中でインド映画『パッドマン 5億人の女性を救った男』について話していました。

(町山智浩)そうそう。だから、そういう状況なんですよ。で、それともうひとつ、彼女は生理が来る年齢なんですね。それはもう、結婚しなきゃなんないんですよ。

(赤江珠緒)ああ、そういうことか。年齢ははっきりわからないけど、そうね。生理が来るっていうことは。

(町山智浩)で、この貧しいところでは、女の子が生まれると生理が来る年齢の時には既に嫁に行かせるんですよね。食い扶持を減らすために。要するに、嫁に行くことで彼女が食べるご飯代が減るから。で、嫁に行かせる相手は全部同じ「ジャーティ」の人になるんですね。

(赤江珠緒)ジャーティ?

(町山智浩)ジャーティっていうのは職業のカーストのことです。で、このプレルナちゃんの家はレンガ職人なんですよ。レンガ職人の家の女の子は……まあ、男もそうですけども。レンガ職人としか結婚できないんですよ。

(赤江珠緒)カースト制度が厳しいとは言いますけど。そうなんですね。

(町山智浩)できないんです。で、この映画ではそれをはっきりとは言わないんですよ。そういうことを。なぜか、言わない。映画の中で言わないんですよ。だから、わからないんです。なんでこんな苦しい状況に置かれてるのか。なんでこの子には全く自由はないのかっていうことがわからないんですよ。

(山里亮太)町山さん、これ、時代設定的にはそんなに昔の話っていうわけではないんですよね?

(町山智浩)現在です。

(赤江珠緒)現代物とは思えない内容なのにね。

(町山智浩)インドは表向きにはカースト制度はないことになってるんですよ。政府発表では。それは法律で禁じられていて、それはもうないことになってるんですよ。

(赤江珠緒)でも、思い切りあるんだ。

表向きにはなくなっているはずのカースト制度

(町山智浩)思い切りある。それと、その13歳とか14歳で嫁に行かせるってことも一応、法律では禁じられているんです。でも、実際にはやってるんです。4分の1以上の少女が会ったこともない男と生理があったっていうだけで結婚させられいてるんですよ。

(山里亮太)今?

(町山智浩)で、要するにインドのそれは伝統なんだけども、一種外国の人の目にさらされて批判はされたくない部分ですよね?

(赤江珠緒)そうですね。うん。

(町山智浩)だからたぶん、その部分が曖昧になってるんだと思うんですよ。おそらく。ただ、それが実はドラマのすごくキモで。プレルナちゃん自身が苦しんでることはそこなんですよね。

(赤江珠緒)だって誕生日がわからないって、相当に親も手をかけてないっていう感じが伝わってくる環境ですもんね。

(町山智浩)でもアメリカもね、ブルースシンガーっていう人たちがいますよね。1950年代にブルースを歌ってた人たち。あの人たちの多くは誕生日がわからないんですよ。つまり1910年とかそのぐらいに生まれた黒人の貧しい人たちは、生まれた年も日も、本人は知らなかったりするんですよ。だから生年不詳だったりする人が多いんですけど。まあ、貧しいっていうのは、そういうことですよね。

(赤江珠緒)そういうことですね。

(町山智浩)ただ、そのプレルナちゃんを好きになる男の子が出てくるんですよ。で、その男の子はすごく真面目で誠実で。なんでもしてくれて、教科書も買ってくれるんですけども。ただ、彼はその学校の先生の息子なんですよね。で、彼は「バラモン」というカーストなんですよ。ものすごく上のカーストなんです。だからレンガ職人とは絶対に付き合っちゃいけないんですよ。

(赤江珠緒)そうか……。

(町山智浩)このことはチラッと出てくるんですけども。でも、こっそりデートに行っちゃったりするんですよ。遊園地に行ったりして。で、それを見たそのプレルナちゃんのお父さんは「これはとんでもない! こいつをすぐに結婚させる!」って言って、もう勝手に設定して、プレルナちゃんを結婚させちゃうんですよ。

(赤江珠緒)ああ、結婚させちゃうの?

(町山智浩)させようとするんです。その時にひとつ、大きいのはそのお父さんが「家財道具を全部売り払って、全ての財産を売り払って借金をして彼女を嫁に行かせる!」っていうセリフが出てくるんですね。これ、どういうことかって言うと、食い扶持を減らすわけだから、その嫁に出す娘の生活費をこの後にずっと、そのお婿さんの家が面倒を見るってことでしょう?

(赤江珠緒)負担を背負うってこと。

(町山智浩)だからお金、持参金をつけなきゃいけないんですよ。インドでは。

(赤江珠緒)ああ……女の子としては本当に厳しい世界だな、それ。

(町山智浩)これは非常にひどいことなんですよ。だからもう、この中でジェシカという、同じインド人でありながら、イギリスで育った子が子供たちに聞くわけですよ。「将来、何になりたい?」って聞くんですよ。でもみんな「えっ? なんでそんなことを聞くの?」ってなるんですよ。だって将来、男の子は親と同じジャーティの職業にしかなれないし。レンガ職人の息子はレンガ職人にしかなれないし。女の子は嫁にしかなれないんだもん。「将来、何になりたい?」って聞かれたこともなければ、考えたことも

(赤江珠緒)そういうことなんだな。

(町山智浩)で、こういう風に強く言うと、非常にインドという国自体の後進性であったり、問題性というものが非常に露骨に出てるじゃないですか。これがたぶんまずかったんだろうと思うんですよ。

(赤江珠緒)そうですか。ちょっと前に町山さんに紹介していただいた『ザ・ホワイトタイガー』。あれもインドの映画で。あれを見てると、交通事故にあっても、親も警察に届けないとか。「いいだろう、このへんの子は」みたいになっちゃうとか。とんでもなく命を軽んじられるみたいなところがあるというのも見え隠れしましたけど。

(町山智浩)あれは路上生活の子たちでね。でも、あれは完全なNetflixのお金で撮られたアメリカ映画なんですよ。『ザ・ホワイトタイガー』は。だからかなり強烈にそのインドの格差社会とか、子供を殺されても親が訴えないひどい状況とかが描かれてるんですけども。

(赤江珠緒)はい。

町山智浩『ザ・ホワイトタイガー』を語る
町山智浩さんが2021年5月4日放送のTBSラジオ『たまむすび』の中で『ザ・ホワイトタイガー』を紹介していました。

(町山智浩)でも、こっちの方はかなりインドの人たちが協力して撮ってるんですよ。この『スケーターガール』は。だからだと思うんですけど、そのへんの……社会やにならないように、ならないように撮ってるんですけど。あとね、インドは今、すごく政権が保守的というか。もうはっきり言うと、ヒンズー愛国主義というのを取ってるんですね。ヒンズーの伝統を非常に重んじる保守政権なんですよ。インドは。だからこういう伝統的なものを批判するのはちょっと、政府的にはあんまり嬉しくなんですよ。

(赤江珠緒)そういうことなんですね。

(町山智浩)それで今、インド政府はものすごくインターネットとかの規制をしています。政府批判を徹底的に潰そうとしているんですよ。だからそのへんはね、やっぱり考えて。非常に気にしながら撮っているんだなっていう気はちょっとしましたね。

(赤江珠緒)でも、やっぱりそういうのが見え隠れはするんですね。

(町山智浩)見え隠れはするんですよね。非常に根本的なテーマなので。でもやっぱりね、「何になりたい?」って聞かれたことも、考えたこともない世界っていうのは、すごいことですよね。で、その中でじゃあなんでスケボーなのか?っていう話なんですよ。で、プレルナちゃんに「なんでスケボーに乗って、そんなに嬉しかったの?」っていう風にジェシカが聞くと「生まれて初めて、自分でコントロールできると思ったから」って言うんですよ。彼女は自分で上手く操れば、操れるものを初めて得たから。人生のすべてを誰かに操られて、支配されて、何も決定権がない状態だったから。

(赤江珠緒)そういうことか。

スケボーは自由の象徴

(町山智浩)「初めて自由とか独立とか、自分でコントロールを握るということを感じれたからだ」って言うんですね。これはインドに限らない問題で。前にもこの番組で紹介したんですが。『行き止まりの世界に生まれて』というドキュメンタリー映画がありましたよね。あれは2019年のアメリカの話だったんですけど。アメリカでスケボーをしている黒人とアジア人と白人の3人の幼なじみの友達のドキュメンタリーで。

「なぜ僕たちはスケボーを子供の頃にしてたんだろう?」っていうことを遡って考えてみると、3人とも父親にものすごい暴力を振るわれたことが分かってくるっていう映画だったんですよ。で、支配されていてコントロールができないから、その支配から逃れるため、自分で自分をコントロールすることが全てのスケボーに逃避していったんだということがわかっていくっていう映画だったんですね。あれもそうでした。あれはアメリカの話でしたよね。

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(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)あとはこの『スケーターガール』の監督が非常に影響を受けたと言っているドキュメンタリーがあって。短編ドキュメンタリーで2019年にアカデミー短編ドキュメンタリー賞を取っている映画で『スケボーが私を変える アフガニスタン 少女たちの挑戦』っていう作品がありまして。それがね、アフガニスタン……タリバンのイスラムの男尊女卑国家だったわけですけども。そこから解放された少女たちにスケボーを教えるというプログラムについてのドキュメンタリーなんですよ。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)それは今まで、要するに頭から布をかぶせられて「何もするな」って言われていて。「勉強をしちゃいけない。本も読んではいけない」と言われていたアフガニスタン女の子たち。その彼女たちに勉強をするという前にスケボーを教えるんですね。で、スケボーすることによって「自分は何をしてもいいんだ。自分したいことは何でもできるんだ」ということを覚えて。そこから勉強をしようとしたり、夢を語るようになって。「私はなりたいものがある」という風に女の子たちのマインドを……。

(赤江珠緒)解き放つというか。

(町山智浩)そうそう。解放をするためにスケボーが使われているというドキュメンタリーだったんです。それは。だからスケボーじゃなくてもいいんですよね。これは。で、これも前に紹介したことがあると思うんですけど。サウジアラビアの映画で『少女は自転車にのって』という映画があったんですよ。これはやっぱりサウジアラビアで、女の子は自動車の運転をしてはいけないっていう時代でね。まあ、現代でしたけど。それで自転車にも乗ってはいけないという時にどうしても自転車に乗りたいという女の子の話だったんですね。

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(町山智浩)だから結局、スケボーとか自転車とか、全部同じで。なんというか、自分を解放して自由に生きるということを掴むためのきっかけとして出てくるんですね。

(赤江珠緒)そういうのの象徴なんですね。

(町山智浩)そうなんですよ。その心に巻き付いている鎖を引きちぎるための道具として出てくるんですよ。という映画なんですね。で、この映画がすごいのは、結局ジェシカがいろんなことを画策して、その村に巨大なスケボーパークを聞くんですよ。それは、この映画のためにスケボーパークを作ったんですけど、本当に今もスケボーパークとして使われてるんですよ。で、この映画『スケーターガール』の最後では、今現在のそのスケーターガールで地元の子たち。女の子たちがスケボーをしているところで終わるですよ。

(赤江珠緒)ああ、そうなんだ。それは希望にちょっと感じられるところですね。

(町山智浩)そうなんです。だからインドのその古い因習とかを攻撃する、それを解放するということは非常に難しいんですけど。法律で禁じられても続いているわけだから。ただ、このスケボーによって少しずつ変わっていくんじゃないかと。その種をまく映画になってるんですね。だからね、日本でもほら、これを見ると「インドってひどいな。古いな」って思う人もいるかもしれないですけど。でも日本で夫婦別姓に反対してるのも同じだから。外国から見ると。全く同じですよ。そういうことでね、『スケーターガール』はNetflixで配信中です。

(赤江珠緒)はい。今、Netflixで見れるということですね。そうか。抑圧されていることへの自由の象徴になっているんですね。

(町山智浩)象徴なんですね。

(赤江珠緒)わかりました。町山さん、ありがとうございました。

(町山智浩)どうもでした。

<書き起こしおわり>

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