町山智浩『スキャンダル』を語る

町山智浩『スキャンダル』を語る たまむすび

町山智浩さんが2020年1月21日放送のTBSラジオ『たまむすび』の中でアメリカ・フォックスニュース内のセクハラスキャンダルを描いた映画『スキャンダル』について話していました。

(町山智浩)ということで今日はですね、『スキャンダル』という映画をご紹介します。『スキャンダル』って、もうそういうタイトルの映画が100本ぐらいあるんじゃねえかと思いますけどね。

(山里亮太)そうですよね。たしかに。

(町山智浩)もうちょっと邦題を考えろって思いますけども。

(山里亮太)これ、邦題なんですね。

(町山智浩)そうなんです。これ、もともとは『Bombshell』っていうタイトルで。この『Bombshell』っていうのは本来は「爆弾」という意味なんですけど。これ、2つ意味があるんですよ。ひとつはおっぱいボーン!っていう感じの女の人ですね。で、もうひとつはものすごいスキャンダル爆弾っていう意味なんですよ。

(赤江珠緒)ああ、それを『Bombshell』と。

(町山智浩)そう。『Bombshell』っていうんですけども、日本語になってないからまあ『スキャンダル』という邦題にしたんだと思うんですけども。まあ非常に混同しやすいんですが。この『スキャンダル』という映画は2016年にあのドナルド・トランプが大統領になった選挙がありましたけど。その選挙期間中に起こったセクハラスキャンダルについての実録ドラマです。本当の話です。

(赤江珠緒)はい。

(町山智浩)それで舞台となるのはね、フォックスニュースというね、アメリカのニュース専門テレビ局なんですけど。このフォックスニュースというのはね、アメリカの政治、大統領を動かしてきた、はっきり言うとメディアの世界の黒幕みたいなもんなんですよ。政治の。

(山里亮太)へー!

(町山智浩)で、そのフォックスニュースを取り仕切ってる男、CEOのロジャー・エイルズという人がいまして。これがまた、海坊主みたいな男なんですよ。そこに写真があると思いますが。

(山里亮太)あります、あります。ドンっていう感じの。

(赤江珠緒)そうですね。いかにもね。

フォックスニュースCEO ロジャー・エイルズ

(町山智浩)そう。ハゲててすごく太っていて年寄りでですね。まあ、ジャバ・ザ・ハットみたいな感じですね。見た目が。この人が女性キャスターたちにセクハラとかセックスを強要しまくってたことが発覚したという……。

(赤江珠緒)最低な事案ですな……。

(町山智浩)これに触られたって考えるだけで気持ち悪いでしょう? ねえ。その話なんですけどもね。で、まずこのフォックスニュースっていうチャンネルはですねどういうものかと言いますと、これは共和党をヨイショするためだけに作られたテレビ局です。

(山里亮太)そのためだけ?

(町山智浩)そう。これ、すごいんです。立ち上げたのは世界のメディア王と呼ばれているルパート・マードックという人で。彼は1980年代にイギリスでいろんな新聞を買い占めまして。買収をしてね。その新聞である政治的論調を作って。まあイギリス国民を洗脳してたんですよ。その頃はね、保守党のサッチャー政権だったんですけれども。サッチャー政権派ね、福祉の切り捨てとか金持ちへの減税とか、あとはフォークランド戦争とかを起こしたんですけども。それをその新聞で……たとえば労働者向けの新聞のサンというので「我々労働者は福祉なんかに頼らないぞ。イエーイ!」とかそういう論調を作っていたんですよ。

(赤江珠緒)はー。

(町山智浩)「福祉に頼ろうというやつなんて労働者の風上にも置けねえぜ!」みたいな論調を作って。

(赤江珠緒)そうなの? 世論を作っちゃって?

(町山智浩)それでサッチャー政権をみんなで応援するという体制を作ったのがこのルパート・マードックというメディア王なんですね。で、それと同じことをアメリカでやろうとして、アメリカに乗り出して1996年に作ったのがこのフォックスニュースチャンネルというテレビ局なんですよ。で、それの社長に抜擢されたのがロジャー・エイルズというこの海坊主で。彼はね、元々テレビのプロデューサーだったんですけど、1967年にリチャード・ニクソンに大統領選のテレビ戦略官として雇われて。スカウトをされてね。それから30年ぐらいずーっと共和党の大統領選挙において、テレビ戦略をやってきた人です。

(赤江珠緒)ああ、もう内部の人か。うん。

(町山智浩)まあ、共和党の人なんですよ。だから。で、このロジャー・エイルズが一番悪名が高いのは1988年にお父さんブッシュ大統領の選挙の時に対立したマイケル・デュカキス候補が州知事時代に犯罪者をむやみに保釈していたっていうデマCMを作って。それで決定的に選挙で勝つっていうのをやった人です。ロジャー・エイルズという人は。

(赤江珠緒)えっ、デマのCMまで?

(山里亮太)それを流していて「デマだ」とわかった瞬間に法的な裁きを受けるんじゃないんですか?

フォックスニュースの報道

(町山智浩)それが、そうじゃないんですね。日本でもやっても、たぶん基本的にそれを裁く法律というものはないと思いますよ。でね、1997年にそのフォックスニュースチャンネルでですね、一番視聴率をガンと伸ばしたのはクリントン大統領と研修生のモニカ・ルインスキーのあの、いわゆる「不適切な関係」ですよ。

(赤江珠緒)ああ、ありましたね。

(町山智浩)あれ、あんなに話題になったのって実はフォックスニュースチャンネルが朝から晩までずっとそればかりやっていたからなんです。

(山里亮太)へー!

(町山智浩)そうなんです。他のテレビ局はあんまりやらなかったんですけども、フォックスがあんまりやるんで追っかけたんですよ。結局日本のワイドショーとかもそうなんですけど、裏が何かやっているとしょうがないから同じのを追いかけなきゃいけなくなって。それで「裏が沢尻エリカをやっているんだったら、うちも沢尻エリカを……」って。それでみんなそれ一色になってしまうみたいな。それは要はそういうことなんですね。それでクリントンを弾劾に追い込むまでフォックスはプロパガンダをやったんですよ。

(山里亮太)すごい!

(町山智浩)で、一番悪かったのは、9.11テロの後にですね、息子ブッシュ政権がイラクを攻撃しましたけども。その時に攻撃した理由は「9.11テロの犯人がイラクなんだ」という……まあ、それは後から間違いだったことがわかったわけですけども。「9.11テロの犯人はイラクなんだ」っていうことをもう盛んにテレビでやってたのはこのフォックスニュースチャンネルなんですよ。

(赤江珠緒)うわあ……。

(町山智浩)あと、それからイラク攻撃の理由が変わって。途中から「イラクは核兵器を持っている」っていう話になったんですね。それもフォックスニュースチャンネルが「核兵器を持っている、核兵器を持っている」って毎日のように報道をしていて。それも結局なかったんですよ。

(赤江珠緒)そうですよね。もうデマで完全に扇動をしていたっていうことですか?

(町山智浩)完全にデマで扇動をしていたんですけども。これ、すごいのはね、核兵器もなかったし、9.11テロとも関係なかったということがわかってだいぶ経ってから、大学が調査をしてフォックスニュースの視聴者に「あれ、9.11テロは関係なかったですよ」って聞くと「えっ、知らなかった」って言うんですよ。

(赤江珠緒)ええっ!

(町山智浩)というのは、フォックスニュースはその誤報を訂正していないんですよ。

(赤江珠緒)うわあ……そこからの情報しかその人たちには入らないの?

(町山智浩)入らないんですよ。老人がかなり見ているチャンネルなんですけど、みんなそこしか見ないから。というのは、そのフォックスニュースは「他のメディアは全部嘘だ!」って言ってるから。「他のは見ちゃダメだ」っていうから、見ないんですよ。「新聞も読むな!」っていうから。

(赤江珠緒)うわあ……それはタチが悪いな。

(町山智浩)それでガンガンやっていたのがフォックスニュースというテレビ局で。そのボスがロジャー・エイルズという人なんですね。で、それで視聴率がCNNを抜いちゃっているんですよ。

(赤江珠緒)CNNを抜いたんですね? へー!

2人の女性キャスター

(町山智浩)でね、2004年からそのフォックスはですね、2人の女性をキャスターとして雇います。で、この2人がこの『スキャンダル』という映画のヒロインです。1人はメーガン・ケリーという人で、もう1人はグレッチェン・カールソンという人で。2人ともまあま美人ですね。で、グレッチェン・カールソンなんて元ミスアメリカだったりして、優勝してたりしますから。で、これをこの映画『スキャンダル』で演じるのは、メーガン・ケリーを演じるのはシャーリーズ・セロン。それでグレッチェン・カールソンを演じるのはニコール・キッドマン。これ、もうツートップなんですけども。このシャーリーズ・セロンの顔をちょっと見てほしいんですよ。この映画の。メーガン・ケリーを演じる。別人ですよ。

(赤江珠緒)ああっ、本当だ!

(町山智浩)これね、メーガン・ケリーという人は鼻にまず特徴があって、すごく尖った鼻をしてるんですよ。でも、シャーリーズ・セロンさんは丸い鼻なんですよね。で、メーガン・ケリーさんは頬がこけているんですよ。シャーリーズ・セロンさんはおかめちゃんみたいなふっくらとした頬なんですよ。全く輪郭も違うんですよ。

(赤江珠緒)そうね。顎のラインとかが違う。

(町山智浩)顎のラインとかが違うんですよ。尖っているでしょう? メーガン・ケリーは。これ、特殊メイクでシャーリーズ・セロンの顔をメーガン・ケリーにしちゃったんですよ。すごい技術ですよ。

(赤江珠緒)普通にナチュラルに、普通のお化粧に見えますね!

(町山智浩)これをやった人は辻一弘さんという日本出身の天才特殊メイクアーティストなんですよ。この人がすごいのはね、目の錯覚とかを利用して、シャドウの付け方とかで顔の輪郭とか目の間隔とか、そういったものを錯覚させるんですよ。すごいですよ、この人。もうすでにアカデミー賞も取ってますけれども。で、今回もこの特殊メイクで『スキャンダル』でアカデミー賞のメイクアップ部門を取るだろうと言われてますね。

日本人メイクアーティスト・辻一弘

(赤江珠緒)たしかに本当に……。

(町山智浩)すごいです、これは。でね、シャーリーズ・セロンさんは演技もすごくて。この人は声とかも全部変えていて。メーガン・ケリーさんの声を皆さん、ニュースとかで聞き慣れているんですけども。それとほとんど同じように聞こえるんですよ。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)だからもうものまねショーみたいになっていますけども。それでこれでシャーリーズ・セロンさんもアカデミー賞の主演女優賞に今回、ノミネートされてますね。で、まあそういう演技とかメイクもすごい映画なんですが、このメーガン・ケリーが何でヒロインになっていくかというと、最初はですね、そのフォックスニュースに雇われてオバマ大統領を攻撃するニュースばっかりをやってたんですよ。この2人が。非常に保守的な立場から。ところがそれが2015年にドナルド・トランプが共和党の大統領候補を選ぶ予備選に立候補してから状況が変わってくるんですよ。

(赤江珠緒)ふんふん。

(町山智浩)というのは、トランプは共和党の外から来た人なので、今まで共和党の候補とか政治家を徹底的に批判したんですよ。

(赤江珠緒)そうでしたね。結局内部をまず攻撃しましたもんね。

(町山智浩)そう。外から来た人だから。共和党を潰しにかかったんですよ。で、「共和党の政治家なんてみんなウォール街の手先だし、ブッシュ親子はイラク戦争を始めやがったし。あいつら、政治で食っている政治屋だ!」って徹底的に攻撃をしたんですよ。トランプは共和党の議員や候補者たちを。そしたらフォックスニュースは困るじゃないですか。

(赤江珠緒)そうですね。共和党を全面バックアップしてたんですもんね。

(町山智浩)そうですよ。共和党のために作られたテレビ局なんで。だから彼らはこう決めたんですよ。「トランプを脱落させる。トランプを攻撃する」という。で、フォックスニュースは徹底的にトランプを攻撃していったんですよ。それでその候補者たちの討論会があるんですね。それでフォックスが主催した討論会でも、そのフォックスのキャスターたちが次々と質問してトランプを潰すということになっていたんです。それがロジャー・エイルズからの司令だったんですよ。

(赤江珠緒)うんうん。

メーガン・ケリーによるドナルド・トランプ批判

(町山智浩)で、その時に真っ先に、先鋒に立ったのがそのメーガン・ケリーだったんですね。女性キャスターの。というのはトランプがその頃、女性差別発言を次々としていたんで、メーガン・ケリーは個人的に怒っていたんですよ。「この男、許せない!」って。で、その時にメーガン・ケリーがトランプに追求したのはまず、「あなたは『ブスとデブとのろまな女は嫌いだ』って言いましたね? これはひどい女性差別ですね」と。そしてもうひとつはすごく有名な発言で。「私はセレブだから女性のオマンタをいきなり掴んでも許されるんだぜ」とかって言っていたでしょう? 録音が発見されちゃって。

(赤江珠緒)うん、あった。

(町山智浩)あったでしょう? それとかをメーガン・ケリーが出して。「あなたのような人は大統領に絶対にふさわしくないです!」とか言って、激しくその討論会でトランプに切り込んだんですね。で、「メーガン・ケリーはすごい! 今まで保守的な共和党寄りのキャスターだと思ったけども、やる時はやるな!」っていう感じで女性とかリベラルな人からも評価されたんですけども。それでトランプはものすごく悔しくて。みんなの前でテレビで恥をかかされたから。その後にTwitterですぐにですね、「ケリーというのはビンボー(BIMBO)だ」って……「ビンボー」っていうのは日本語の「貧乏」じゃなくて、「見かけだけのアーパー女」みたいな意味なんですよ。「あの女はビンボーだ」って言ったり、「メーガン・ケリーは怒り狂って目から血が出そうだった。たぶんあそこからも出ているぜ」とか言ったんですよ。

(赤江珠緒)もう最低な文言ですな……。

(町山智浩)それでもうケリーはカンカンに怒って。「これはひどい!」っていうことでトランプと戦おうとしたですが、フォックスニュースのボスのロジャー・エイルズに止められたんですね。

(赤江珠緒)止められた?

(町山智浩)「やめなさい。なぜなら、これはたぶんトランプが勝つ。あれだけ我々がトランプを叩いたのに、トランプの支持率は下がらない。たぶん共和党とかは関係なく、トランプのことが好きな連中というのが多いんだ。これが勝ってしまったら、我々はトランプを叩いていたということで、その後トランプが大統領になったりしたら立つ瀬がなくなるから」っていう。

(赤江珠緒)わかりやすく勝ち馬に乗ると。

(町山智浩)そう。「フォックスニュースはトランプにつく」って決定しちゃうんですよ。それはまあ、ルパート・マードックが決めたんですけどね。で、ケリーさんははしごを外されちゃうんですよ。それで「仲直りしろ」みたいなことまでやられて、強制されるんですけども。その一方で、もう1人のグレッチェンカールソンっていう人は、フォックスをクビになっちゃうんです。それでその時に彼女がすぐにフォックスニュースとロジャー・エイルズを訴えたんですけども、それがね、「この番組でキャスターになるという条件のためにロジャー・エイルズは性的関係を求めてきた。そして断ったら番組を外された」ということで裁判に出たんですよ。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)で、その時にライバルですごくバチバチッて火花を飛ばしていたメーガン・ケリーもハッとするんですね。「それ、私もやられてた」っていう。

(赤江珠緒)ええーっ!

(町山智浩)で、フォックスの他の女性キャスターとかスタッフもみんなやられてたんです。ただみんな、キャリアのため。ギャラをもらうため、黙っていたんですよ。

(赤江珠緒)ええーっ!

(町山智浩)ずっと黙っていたんですよ、みんな。でね、フォックスを辞めると他のテレビ局に行けないんですって。

(赤江珠緒)まあ、特殊な感じですもんね。テレビ局として。

(町山智浩)そう。「お前はとんでもない共和党の手先だろ?」とか言われて、他のテレビ局に行けないんですって。だから他に行き場がないから、もういくらイタズラをされても我慢しているという状態になってると。

(赤江珠緒)うわあ……。

(町山智浩)でも、このアメリカの大統領すら決定するだけの力を持つ、パワーを持っているこのロジャー・エイルズとどう戦うのか?っていうことで、その女性たちの逆襲が始まるという映画がこの『スキャンダル』なんですよ。

(赤江珠緒)おおー、すごいですよ! だって相当な権力を持っているここに立ち向かうわけでしょう?

女性たちの逆襲の物語

(町山智浩)「相当」っていうか、大統領面すらを決定するかもしれないぐらいの力なんですよ。これはとんでもない戦いですよ。

(赤江珠緒)これはとんでもなく勇気がいる……。

(山里亮太)ここも全部事実っていうことなんですか?

(町山智浩)そうなんですよ。だからね、これ日本の人は聞いて「えっ?」って思うんですよ。「えっ、全部実名でやってるの?」っていう。しかもわずか2年前のことなんですよ。「全部実名で2年前のことを映画化なんて……なんでできるの?」って思っちゃうじゃないですか。

(赤江珠緒)たしかに。

(町山智浩)この『スキャンダル』という映画は。でもこれ、出てくる当事者の許可なんか全然取っていないんですよ。

(赤江珠緒)ええーっ? 取らないの?

(町山智浩)取っていないですよ。去年、公開された『バイス』っていう映画がありまして。それはブッシュ政権の副大統領のディック・チェイニーがイラク戦争をでっち上げたっていうことをコメディとして実名で映画化してましたよね?

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(赤江珠緒)ああ、そうでした。

(町山智浩)あんなの、ディック・チェイニーの許可なんか取っていないですよ。

(赤江珠緒)そりゃそうだ。取りようがない。

(町山智浩)ねえ。訴えられてはいないんですけど、もし訴えられても戦うつもりで作っているんですよ。だからそれがアメリカと日本の本当の大きな違いなんですよ。

アメリカと日本の本当の大きな違い

(赤江珠緒)そうかー。えっ、この映画が上映されるようになってから、アメリカでそのフォックスニュースに対して見方とか変わってきてはいるんですか?

(町山智浩)でもこの事件自体が先にあったから、その段階で変わりましたよね。

(赤江珠緒)その時点で、そこまで。テレビ局としては。

(町山智浩)これは過去の、2年前のことを映画化しているんで。だからやっぱりアメリカでは映画とかアートとかジャーナリストたちの表現の自由での戦い方っていうのはすごいですよ。本当に。だって日本なんかテレビのプロデューサーが女性をレイプして民事裁判で有罪になったんですけど。これ、アメリカだったら絶対に実名で映画化されますよ。

(赤江珠緒)ああーっ!

(町山智浩)でも日本では映画どころか報道すらほとんどされないんですから。あの事件は。

(赤江珠緒)そうですね……。

(山里亮太)たしかに。

(町山智浩)で、それは政治の問題じゃないんですよ。マスコミとかメディアとか芸能界とか映画界の勇気が問題なんですよ。「政治が悪いから」じゃないんですよ。悪いのはメディアなんですよ。映画会社なんですよ。テレビ局なんですよ。だからここはね、すごく決定的にこの『スキャンダル』という映画が日本人に考えさせるところなんですよ。「やれよ!」っていうことなんですよ。

(山里亮太)「できるんだぞ!」っていうことですもんね。

(町山智浩)そう。「やろうと思うなら、やっちゃえばいいんだよ」っていう。でも、本当にやらないですね。はい(笑)。

(山里亮太)まあ、全くそんな感じじゃないですよね。

(町山智浩)でも実際にこれ、戦った女性たちの実名のドラマなんで、ぜひご覧ください。『スキャンダル』はいつ公開かな?

(赤江珠緒)2月21日から全国ロードショーということで。まあメディアもそうですけど、人ととしてのプライドみたいなところの戦いかもしれませんね。これね。

(町山智浩)本当にそう思います。

(赤江珠緒)はい。町山さん、ありがとうございました。

(山里亮太)ありがとうございました。

(町山智浩)どもでした!

<書き起こしおわり>

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