町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中で2016年に公開された映画の中からおすすめ映画10本をチョイスして紹介していました。
(町山智浩)今日は(今年)最後なんで、年間ベスト10というか、10本の見てほしい映画を紹介していきたい思います。
(赤江珠緒)2016年の町山さんのベスト10ということですね。
(町山智浩)はい。ただ僕ね、映画に順位とかをつけるのが大嫌いなんですよ。あと、点数とかをつけるのもすごく嫌いなんで、別にこれ、言っている順番に順位があるわけじゃないので。
(赤江珠緒)わかりました。
(山里亮太)10本のいい映画を教えてもらうっていう。
(町山智浩)そうそうそう。そういう感じです。で、とりあえずまず1本目はいまちょうど日本で公開中の映画『ドント・ブリーズ』ですね。
『ドント・ブリーズ』
(山里亮太)はいはいはい。あのムキムキの怖いおじいちゃんのやつ。
(町山智浩)はい。廃墟と化したデトロイトで人がいなくなっているんで、3人の若者が一人暮らしの老人の家を狙って押し込み強盗をやっていると。そうすると、ひとつの家に全盲の老人がお金を持っているということで、そこに強盗に入ると実はその老人は全身筋肉モリモリの元海兵隊員で。しかも素手で拳銃を持った男をひねり殺せるような殺人テクニックを持っていたっていう話ですね。
(赤江珠緒)怖い話ですねー!
(町山智浩)はい。これ、いま日本でこの間公開して、大ヒットらしいんですよ。すっごい当たっているらしいんですけど。アメリカでも大ヒットなんですけども。まあ、これは最初見ていると3人の若者が強盗に入って「なんだ、こいつら?」って思うんですけど、彼らの素性がわかってきて、彼らにどんどん感情移入していったところで大変な事態になっていくというね……日本の映画館でもそのシーンで悲鳴が起きているらしいです。
(赤江珠緒)へー! そうなんだ!
(山里亮太)見たいんだけど、怖いのが苦手だから見に行けない。勇気が足りない、これは……
(赤江珠緒)なんかホラーの中でもちょっといままでとは違うっていうね。
(町山智浩)そうなんですよ。だからお化けも出てこないし、血もないんですよ。
(山里亮太)そう。なのにめちゃくちゃ怖いっていう。
(町山智浩)そう。赤い血は出ないんですが、非常に気持ちの悪い白い液体が出てきて。それが観客を戦慄させるという恐ろしい映画が『ドント・ブリーズ』なんですね。
(赤江珠緒)ええっ、怖い……(笑)。
(町山智浩)怖いですよ。ゲロ吐きそうになりましたけどね!
(山里亮太)ええーっ! 恐怖のあまり吐きそうになる映画って……
(町山智浩)血まみれシーンも残虐シーンもないのに……痛いシーンもないんですよ。
(赤江珠緒)あ、痛いシーンもないんだ。
(町山智浩)でも、ゲロ吐きそうになるんですよ。
(赤江珠緒)どういうことなの?
(町山智浩)いったいどういうことなんでしょうか? はい。というのが『ドント・ブリーズ』。
(赤江珠緒)これがいま日本公開中の『ドント・ブリーズ』ですね。
(町山智浩)日本でも大ヒットしています。で、次の映画は全く全然違う……まあ、おじいちゃんの話ですけど、いいおじいちゃんの話です。次におすすめな映画は先週お話した韓国映画で『あなた、その川を渡らないで』。
『あなた、その川を渡らないで』
(赤江珠緒)はい。うん!
(町山智浩)韓国の貧しい農村に暮らす98才のおじいちゃんと87才のおばあちゃんの、結婚歴76年の夫婦のラブラブな1年間を記録したドキュメンタリー映画です。で、日本ではもうDVDが出ていると思うんですけど。まあこれが本当に奇跡的な映画で。いろんなことが奇跡として起こってこういう映画になったんだなって思うんですけど。この間お話した時に「すごくラブラブな」というだけしか話せなかったんですけど、実は後半、ちょっとすごいことになっていくんですよ。やっぱり98才なんでね。おじいちゃんがね。
(赤江珠緒)うんうん。そうかそうか。
(町山智浩)それで僕がこれをアメリカで知った時はアメリカのレンタルDVD屋さんのハタチぐらいのパンク姉ちゃん……タトゥーしているような、いつもガムをクッチャクッチャ噛んで「あのさぁ~、あたしさ~、ファック!」とか言っているような姉ちゃんがそれを見ながらボロッボロに泣いていましたからね。
(赤江珠緒)大号泣していたという。
(町山智浩)大号泣して、しゃべれないぐらい。だから僕、「なにを見て泣いているの?」って聞いたら黙ってそのモニターを指差していましたからね。
(赤江珠緒)へー! なんかいつもね、カラフルなお揃いの民族衣装を着ていてね。それもまた夢のような画でしたけども。
(町山智浩)はい。もう超かわいい林家ペー・パー子的な素晴らしい映画でしたね。これがまあ、今年いちばんの。
(赤江珠緒)町山さんが「ぜひクリスマスに見てほしい」って言っていた『あなた、その川を渡らないで』ですね。
(町山智浩)はい。本当に感動的なラブストーリーで、これがおすすめの1本ですがまた今度は全然違う映画で。次はですね、『デッドプール』ですね。
『デッドプール』
(山里亮太)全然違いすぎ! いくらなんでも、順番が……真逆ですよ、もう。
(町山智浩)真逆ですよ。『デッドプール』。マーベルコミックスのヒーローなんですけども。見ました?
(山里亮太)見ました、見ました。見に行きましたよ!
(町山智浩)面白かったでしょう?
(山里亮太)はい。めちゃくちゃ面白かったです。もうね、「なんか面白そう」って入ったカップルの彼女がちょっと恥じらっている顔とかもたまらなかったですね、これ! 下ネタの意味を理解しながら……
(町山智浩)ねえ。困りますよね。こっちもラブラブな話なんですよね。『デッドプール』もね。
(山里亮太)ラブラブですけど(笑)。
(町山智浩)ラブラブなんだけど、具体的にセックスをしているラブラブなんですよね。
(山里亮太)ヤリまくっている。
(赤江珠緒)そういうお話ね。
(町山智浩)だから、『あなた、その川を渡らないで』は76年の夫婦の……要するに98才のおじいちゃんと87才のおばあちゃんの1年間。だけど、セックスレスですよ。当たり前ですね(笑)。
(山里亮太)もうその域は超えましたね。
(町山智浩)こっちはデッドプールのラブラブな1年間が描かれるんですけど、そっちはセックスフルなんですよ。
(赤江珠緒)ああ、セックスフルですか(笑)。
(山里亮太)うん。純愛とは結構ほど遠い感じよ。
(町山智浩)そう。だって1年中のありとあらゆる日に……たとえばバレンタインとかクリスマスとか、それぞれの日ごとにそれをテーマにしたセックスを楽しむっていうカップルの話ですからね。
(赤江珠緒)そうなんだ(笑)。あと、ずっとしゃべっているっていう。いろんなセリフをね。
(町山智浩)もうずっとしゃべっているんですよ。主人公が。観客に向ってずっとしゃべり続けるおしゃべり野郎なんですけど、この映画がすごいのは、主演のデッドプール役のライアン・レイノルズっていう人が、この人は前にDCコミックスのヒーローものの『グリーン・ランタン』っていう映画で主役を張って大失敗をしたんですよね。で、しかもそれをバカにされて。『テッド』っていうクマの映画、ありましたよね。あの中でコケにされているぐらいの、ネタにされちゃった人なんですよ。
(赤江珠緒)ふーん!
(町山智浩)それを今回、自分でこの『デッドプール』という映画をプロデュースして。自分で脚本にも手を入れて、セリフも自分で作って。ギャグもかなり自分で作って。で、ほとんど自分の手作りみたいな形でヒーロー物としてカムバックしたんですね。だからこれはね、なかなか偉い。ライアン・レイノルズ、すごいなと。不屈の魂だなと。
(山里亮太)続編とか、ないのかな? これ、まだ続いたりしないのかな?って思って。
(町山智浩)ああ、これ続編、(制作を)もうやっていますよ。
(山里亮太)あ、そうなんだ。
(町山智浩)もう続編、やっています。当然。大ヒットしたから。
(赤江珠緒)日本ではもうDVDで発売されていると。
(町山智浩)はい。その次はちょっとヘビーな映画で『アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場』という映画で、これもいま日本で公開中です。先週公開かな? これはテロを描いた映画で、アメリカとイギリスの軍隊の共同対テロ舞台がケニアに潜伏しているテロリストを発見します。彼らが自爆テロの準備をしているのを見て、一刻も早くそれを中止させるために、ドローン(無人攻撃機)でミサイルを撃ち込もうとするんですが、そのテロリストのアジトの近くに1人の少女がいるのを見てしまうんですね。で、そこにドローンからミサイルをブチ込んだら、その少女はほとんど死ぬ確率が高いんですが、その代わり無差別テロによる80人以上の死者が防げるだろうと。1人の少女を殺して80人の命を救うかどうか?っていう選択をアメリカとイギリスの政府が迫られるという映画が『アイ・インザ・スカイ』なんですよ。
『アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場』
(赤江珠緒)うーん……
(町山智浩)これは本当に厳しい選択の物語で。このドローン作戦というのはオバマ政権がずっとやり続けているんですけど。オバマ政権っていうのは8年間、要するに大規模な戦争っていうのをしていないんですよ。継続しているアフガンとイラクでは戦闘は続けているんですけども、それはブッシュ政権が残した置き土産なんで。それは処理しているんですけど、新しい戦争は8年間、起こさなかったんですね。オバマ大統領は。それによってものすごく戦争による死者っていうのは敵も味方もすごく少なくなったんですよ。その代わり、一種の取引でこのドローンとか暗殺とかを中心に行うようにしたんですね。
(赤江珠緒)うんうん。
(町山智浩)だから大きな戦争をするか、非常にモラル的に善悪を問いにくいドローンとか暗殺を取るかっていう、どっちを取るかという形でオバマ大統領は暗殺やドローンを取ったんですよ。っていう、非常にこれ、「レッサー・イーブル」って言われている、どこにも正義がない世界では、より小さい悪を選ぶしかないっていう話なんですよ。
(山里亮太)なるほど。
(町山智浩)これは本当に厳しい映画で、しかもこれって作戦だけが描かれる非常にタイトな、よくできた映画で。まあ、これは傑作でしたね。『アイ・インザ・スカイ』。
(赤江珠緒)そうか。そういう意味では非常にリアルなものを描いているということなんですね。
(町山智浩)はい。だからもう本当にギリギリの選択の中で、実はいまの対テロ作戦っていうのは続けられているんですけど。ここに新しい、トランプみたいな非常にカッとなると何をするのかわからない人が入り込んだら、この微妙な綱渡りをしている状況っていうのはどう崩れるのかわからないですね。要するに、1人の少女を殺すか80人を見捨てるかとか、そういう非常に倫理的な選択でトランプが苦しむとは思えないですね。
(赤江珠緒)たしかにね(笑)。
(山里亮太)なにか即決しちゃいそうな勢いがありますね。「そんなもん、行ったれ!」みたいな。
(町山智浩)ねえ。「そんなの、どうでもいい!」とか。だいたい貧しいケニアの1人の少女のことを彼が気にするだろうか?っていうと、非常に微妙なところがありますよね。だからこれは状況は非常に変わるんですけど、オバマ大統領の8年間の政治の裏で行われたことが描かれているのがこの『アイ・インザ・スカイ』で、非常に厳しいけど素晴らしい映画でしたね。
(赤江珠緒)はい。いま公開中。『アイ・インザ・スカイ』。
(町山智浩)で、次の映画は『ズートピア』ですね。
『ズートピア』
(赤江珠緒)ズートピアね!
(山里亮太)よかった! これも。
(町山智浩)見ました?
(赤江・山里)見ました!
(町山智浩)これは日本ではどういう風に受け止められたのかわからないんですけども。アメリカでは、このズートピアっていうのはアメリカそのものなんですよ。それぞれの国ではいがみ合っているような動物たちがひとつの、1ヶ所のズートピアっていうところに集まって。で、肉食動物も草食動物も仲良く暮らしているというものがアメリカなので。それこそ、世界各国で紛争があっても、それぞれの国の人たちがみんな避難民とかでアメリカに来て。アメリカではみんな仲良く隣人同士で暮らしていますのでね。で、ズートピアはアメリカそのものなんですよ。
(赤江珠緒)うん。
(町山智浩)それともうひとつは、なりたいものになれるんだっていうことなんですね。アメリカっていうのはもともとアメリカに来た人たちは……特にヨーロッパの貧しい農民の人たち、一生農民でいるしかなかった人たちが、それこそ医者になることもできる。やりたいことができるんだということを初めてしたのがアメリカなので、そういうアメリカ賛歌でもあるんですけども、その中で起こる……それでも多民族で暮らしているから起こる問題っていうものをアニメの中に盛り込んで描いていましたね。
(赤江珠緒)そうですね。いろんな偏見みたいなね、そういうものが見え隠れしてね。
(山里亮太)何気ないセリフが実はすっごいそういう偏見とかに対するメッセージだったりするのは、説明を聞いて「ああ、そうなんだ」って思いながら見ましたけども。
(町山智浩)そうなんですよ。だから人種とか民族による決めつけとかね、偏見とかそういったものと戦いながら生きていかなくちゃいけないのがこのアメリカであり、現在グローバリゼーションの中でつながってくる世界全体なんだっていうことが描かれているのが『ズートピア』なんですけども。まあ、それと逆方向の力がいま、動いてますからね。民族や国家で分断していこうという動きですね。全世界で動いているのは。フランスでも右翼政権になるかもしれないとか、イギリスではEU離脱とか。ドナルド・トランプはメキシコからの移民を壁で防いで、アラブ系の移民、イスラム教徒を全て管理する、登録制度にするみたいなことを言っているんですね。
(赤江珠緒)はい。みんな排他的になっていますもんね。
(町山智浩)排他的な方向がいま現在進んでいるので。まあ、それに対してそれが起こる前の理想的な世界がズートピアなんで。このズートピア的な価値観と排他的な価値観のぶつかり合いが今後続いていくんだろうなと思いますね。
(赤江珠緒)うーん……
(町山智浩)で、その次に紹介する『メッセージ』という映画もそういう話なんですよ。これはちょっと、どうしてそういうテーマになるか?っていうのを説明するとネタバレになるんでできないんですけども。SF映画である日突然宇宙から謎の巨大宇宙船が地球にやってきます。ただ、彼らの目的は全くわからない。それでヒロインの言語学者がエイリアンの言葉を翻訳するためにアメリカ軍に雇われるという話が『メッセージ』なんですよ。で、全世界各地に巨大宇宙船が来るので、ロシアとか中国とかもそれぞれに宇宙船と会話を試みようとするんですけども……下手をすると全世界大戦争になる可能性があるんですね。
『メッセージ』
(赤江珠緒)うん。
(町山智浩)で、それをどうやって防ぐのか?っていう非常にSF的な話と、その向こう側に人生とはなにか? 運命とはなにか? 人を愛するとはなにか? とか、そういう非常に誰にでもある問題が実はテーマとして描かれているという、非常に複雑な傑作でしたね。
(赤江珠緒)それが『メッセージ』で日本公開予定は5月ですね。
(町山智浩)はい。だいぶ先ですが。これ、たぶんアカデミー賞に引っかかってくると思います。
(赤江珠緒)ああ、そうですか。
(町山智浩)その次ですね。7本目が『マンチェスター・バイ・ザ・シー』という映画で、これも紹介しました。これはマンチェスター・バイ・ザ・シーっていうのはボストンの郊外にある実在の漁師町の名前で、そこに住む40才ぐらいの男のその過去と現在が交互に描かれます。で、彼はかつては、過去には非常に明るくて陽気で友達も多くて家族思いのパパさんで。娘が3人もいたんですけど……いまは誰も友達もいなくて、ひとり暮らしで、暗くて。で、幸せそうにしている人間を見るといきなり殴りかかるという非常に凶暴な男になっています。
『マンチェスター・バイ・ザ・シー』
(赤江珠緒)ふーん!
(町山智浩)で、どうしてそんな人になってしまったのか?っていうのを描いていくのがこの『マンチェスター・バイ・ザ・シー』っていう映画なんですけども、これはベン・アフレックの弟でパッとしない俳優だったケイシー・アフレックが全く極端に右から左へ変わってしまった男を1人で演じているんですね。で、これはやっぱり役者としての技量が徹底的に試される映画で、まあアカデミー主演男優賞はノミネートは確実だろうと思われます。
(赤江珠緒)これも5月に日本公開予定でございます。
(町山智浩)5月公開なんですけど、これはそういう男がどうしてそんな180度違う男になってしまったのか? という、その原因の部分が描かれるところが本当に声が出るような戦慄すべきことが起こりますので。まあ、衝撃の。本当に辛いんですが、逆に人の本当の痛みを映画として見せて。それを見ることによって逆に癒やされるものもあるという物語ですね。
(赤江珠緒)『マンチェスター・バイ・ザ・シー』。はい。
(町山智浩)それが『マンチェスター・バイ・ザ・シー』で、これが素晴らしかったですが。その役を譲ったマット・デイモンがいちばん偉いと思います。だってこれ、マット・デイモンがやっていたらマット・デイモン、アカデミー賞とれたかもしれないから。それを親友の弟に譲ったマット・デイモンが偉いなという気がしますね。自信がなかったのかもしれませんが(笑)。
(山里亮太)これを演じる(笑)。
(町山智浩)それはわからないですけど(笑)。もう時間ないですね。次、残り3本。もうタイトルだけ言います。次の3本はベスト1の3本です。1本は『サウルの息子』ですね。
(山里亮太)怖かった!
(町山智浩)アウシュビッツのユダヤ人絶滅収容所でユダヤ人の死体の処理をさせられるユダヤ人の話を描いていて。画期的な映像で。まあ、すごい深いすさまじい映画でした。
(赤江珠緒)うん。
(町山智浩)その次は、『ラ・ラ・ランド』ですね。
(赤江珠緒)ああ、これはね、ロマンチックですね。
(町山智浩)はい。ハリウッドを舞台にしたハリウッドスタイルミュージカルの復活を目指したデミアン・チャゼルの大傑作で。これはたぶんアカデミー賞を総ざらいになると思います。
(赤江珠緒)うん!
(町山智浩)で、残り1本はやっぱり『この世界の片隅に』ですね。
(赤江珠緒)ねえ。いまも公開中ですね。大ヒットですよ。
(町山智浩)もうかわいい映画だとみんな思って。やさしい、かわいい映画なんだなとみんな思っている人も多いと思うんですけども。それで、戦争映画だと思っている人も多いと思うんですね。でも、その奥の奥の方には実はすごい嫌な話が隠されている映画なんですよ、これ。
(赤江珠緒)うん、うん。
(町山智浩)最初の結婚式の時に旦那さんが拳を握りしめて、一言もしゃべらずに。ご飯を食べないでずっと下を向いているじゃないですか。あの理由はいったい何か?っていうことですよ。
(赤江珠緒)ほー! うん、うん?
(町山智浩)というね、もうめくればめくるほど、下の方にいくつも層がある、もう本当に深い深い映画なので。何度も何度も見て。もう謎が解けるまで見続けるべき映画が『この世界の片隅に』ですね。
(山里亮太)なるほど! もう1回、行こう。じゃあ。
(赤江珠緒)すごい恋愛話だったりもするしね。実はね。
(町山智浩)最後に出てくるあの”手”はいったい何か?っていうことですよ。
(赤江珠緒)へー、そうですか!
(町山智浩)ということで、何度も見てください。これで10本ですね。
(赤江珠緒)10本。はい。今日は町山さんに2016年の映画、これがおすすめという10本を発表していただきました。町山さん、体調の悪い中すいませんね。ありがとうございましす。
(山里亮太)お大事に!
(町山智浩)すいませんね。お聞き苦しくて本当に失礼しました。
(赤江珠緒)いえいえいえ!
(町山智浩)今年、本当にずっといろいろとありがとうございました。来年もよろしくお願いします。
(赤江珠緒)こちらこそ、ありがとうございました。どうぞ、よいお年を。
<書き起こしおわり>