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町山智浩『How To Please A Woman』を語る

町山智浩『How To Please A Woman』を語る たまむすび

町山智浩さんが2022年8月2日放送のTBSラジオ『たまむすび』の中でオーストラリア映画『How To Please A Woman』を紹介していました。

(町山智浩)僕、いつもアメリカで見た映画をこのコーナーで紹介してるんですが。日本で公開されるかどうか全然、気にかけないで見た映画を次から次に紹介してるんで。今回の映画もですね日本で公開があるかどうか、全然知らないんですよ。僕。ただ面白かったんで、ちょっとお話しますと、映画のタイトルは『How To Please A Woman』というタイトルで。日本語に直すと『女の人の喜ばせ方』というタイトルですね。『女性の喜ばせ方』というタイトルで。これ、オーストラリア映画なんですけれども。

監督は女性でですね、ルネ・ウェブスターという女性なんですが。これ、主人公は50代半ばの女性で、ジーナさんっていう人なんですね。で、旦那は60歳ぐらいかな? 夫婦で、旦那が弁護士でね、それでジーナさんはコンサルの会社かなんかで働いてる人で。子供は娘がもう大人になっちゃって、家を出ちゃってるんですね。で、だいたい人生がもうもう一応、ひと区切りっていうトム・クルーズと同じような状況になるわけですけども。ただ彼女はね、ものすごくエネルギーがあり余ってて。働きながら趣味は遠泳で。オーストラリアのきれいな海をずっと遠くまで泳ぐっていうのをやってるんですよ。

で、遠泳の水泳クラブで女の人たちとすごく楽しく仲良くしてるんですが。ある日、誕生日にですね、1人で、旦那が帰ってこないんで家で掃除をしてるとですね、ピンポーンって鳴って。それでドアを開けるとですね、若い30手前ぐらいのイケメンの男性が立ってるんですね。で、「ジーナさん、お誕生日おめでとうございます。これがプレゼントです」って言って、その彼がですねいきなり服を脱ぎ始めるんですよ。

(土屋礼央)おおっ!

(町山智浩)で、踊り始めて。そこに写真があると思うんですけど、ムキムキなんですね。

(土屋礼央)ムキムキですね!

(町山智浩)ムキムキなんですよ。で、「どうしたのかしら?」と思うと「いや、あなたの水泳クラブのお友達があなたのために私を買ってくれたんです。私があなたへのプレゼントで、あなたはこれから2時間、私と何をしてもいいんですよ」って言うんですよ。イケメンのムキムキの彼がね。すると、このジーナさんは「いや、うちは旦那もいるし、ちょっと困るな」ってなるんですけど、「何でもいいんですよ、奥さん……」って彼が言うんですよ。「じゃあね、掃除をしてくれる?」って言うんですよ。

(土屋礼央)ええーっ?(笑)。何でもいいのに?

(町山智浩)掃除をしていたんで。で、まあ彼……トムくんっていうんですけど。ムキムキのトムくんが仕方なく掃除をするんですね。で、実はそのトムくん、本職は引っ越し屋さんだったことがあるんですよ。で、引っ越し屋さんだから、筋肉モリモリなんですよ。力仕事だから。ただ、その会社はちょっと経営がうまくいってないことがわかって。で、ジーナさんが働いてるコンサル会社が担当をして、その会社の立て直しやってることとかがわかってくるんですよ。で、彼女は「だったら彼らをお掃除の派遣や家事の派遣会社で雇って会社を立て直せないかしら?」って考えるんですよ。まあだから、男性メイド派遣業ですよ。

(皆川玲奈)ああ、なるほど。

(町山智浩)で、彼女はチラシとかを作って、「オール男性の家事代行業。派遣します」っていう宣伝をし始めるんですね。ところがですね、そこでそのチラシを読んだ人たちがですね、何をしてるかっていうと……なんというか、そういう筋肉モリモリの人が来ちゃうんで。まあ、奥さんたちがですね、エッチをしちゃうんですね。

(土屋礼央)あらららら……。

(町山智浩)はい。で、「あれ? いや、そういうつもりじゃなかったんだけど。ちょっとイケメンが来て掃除してもらえばみんなが喜ぶと思ったんだけど……」と言うんですが、いろいろと聞いてみると、呼んだ奥さんたちはみんな50過ぎでね。子供ももう大人になっちゃって、旦那との間がご無沙汰さんだったということがわかってくるんですよ。

(土屋礼央)なるほど、なるほど。

(町山智浩)「すごく寂しくて呼んだ」っていうことがわかって。「じゃあ、これは掃除ということでイケメンの男性を寂しい50過ぎの女性たちに紹介する仕事にしよう」ということで、仕事をシフトしてですね、本格的にオーダーシートを作るんですよ。ジーナさんが。それは、トラブルがあっては困るから。「どういうことを求めてるか?」ていうのをアンケートに書かせるんですよ。たとえば「スピード」ってコーナーがあるんですよ。それはスローがいいのか、ちょっとガガッと来た方がいいのかっていうのを「段階で1から5で書いてください」ってなっているんですよ。で、「3ぐらい」とか「1ぐらいでゆっくりめがいいの」みたいなね。

あと、すごいロマンティックなのがいいのか、ワイルドなのがいいのか。「ワイルドだぜぇ?」っていうのがいいのか。そのワイルド度を数字で書いたりするっていう。そういう注文表を作るんですよ。で、やられたら嫌なこととか、してほしいこととかを全部書かせて。すごくユーザーフレンドリーな男性メイド派遣業を始めるっていう映画なんですよね。で、これね、実はオーストラリアだから成立する話なんですよ。

(土屋礼央)えっ、どういうことですか?

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オーストラリアだから成立する話

(町山智浩)これ、このジーナさんがやってることって何か?っていうと、日本だったら基本的には犯罪になっちゃうんですよ。

(土屋礼央)なんかそんな感じがするよね。よくないよね。

(町山智浩)まあ、デリヘルみたいなものではあるんだけど。全部やっちゃうから。でもそれ、オーストラリアは合法なんです。

(土屋礼央)そうなんですか?

(町山智浩)はい。オーストラリアは1992年に法律が変わって、全部合法になりまして。その後も何度か法改正があってですね。ライセンス制度が整備されて。その、無理やり働かされていないとかね、あとはきっちり性病の検査をしているとか、相手と完全な同意書が交わされているとか、いろんなチェックを政府が完全にするようになっていて。完全な政府の管理下で全く安全なエッチ屋さんライセンスが発行されるようになってるんですよ。

(土屋礼央)なるほど。

(町山智浩)だからこれね、アメリカでもこんな映画はちょっと作れないんですよ。いわゆるそのセックスワーカーというものをちゃんと国が管理してね、彼らの人権を守って、安全にして顧客の安全も守るというようなことの先進国なんですよ。オーストラリアは。

(土屋礼央)えっ、だからこれ、ドキュメンタリーみたいな感じなんですか? この話は。

(町山智浩)ドキュメンタリーじゃないです。ただ本当の話がベースになっていて。

(土屋礼央)コメディなの?

(町山智浩)コメディです。コメディなんですけど、一応本当にあったこととかベースになっているそうなんですね。ただ、派遣していろいろとトラブルがあって。まず、何人か派遣するんですけど、1人は「掃除をして」って言われた時に掃除が全然できないやつがいるわけですよ(笑)。

(皆川玲奈)ああ、そのオーダーがね(笑)。本当のオーダーが(笑)。

(町山智浩)本当のオーダーがちゃんとできないんですよ。そうすると、その頼んだ奥さんがね、「そうやってやるんじゃないのよ。もっとね、家具とかを拭く時は優しく。優しく拭くのよ」とかね、いろいろ教えていくんですよ。ねあと逆に、掃除はできるんだけどエッチが下手なやつがいるんですよ。で、「そんなガッツンガッツンじゃないのよ。優しくね」って、同じことを言ってるんですけども(笑)。「まず手を触り合うところから始まるのよ。相手の目を見つめてね……」とか、そういうのを教えてあげて。これね、この働く人たちが雇う側、クライアントによって育てられていくんですよ。

(土屋礼央)ああー、なるほど! 成長していくわけですね。

(町山智浩)そうなんです。これね、ひとつ面白いのは、その恋人関係とか、結婚してる同士だとセックスについては相手に対して不満があっても、実はあんまり言わないんだってことがわかるんですよ。

(土屋礼央)今の話を聞いて、そうそうそんなやりとりはしないですよ。

(町山智浩)しないでしょう? 「そうじゃない」とか「そこなのに!」みたいなところって、実は言わないですよね。

(土屋礼央)関係が悪くなりたくないから。相手を傷つけたくないから。

(町山智浩)そうそう。相手を傷つけたくないから。「下手だ」とか、言わないじゃないですか。「そこじゃない」みたいな。ちょっと嫌なことがあっても、なんか我慢しちゃうでしょう? だから、実は恋人同士とか、結婚してる同士だといいセックスが育たないんだっていうことがここでわかるんですよ。

(土屋礼央)ああ、なるほど。ビジネスライクだから、こういうことが言い合えるわけだ。

(町山智浩)そう。客とプロバイダーの関係だから、お互いに学んでいくんですよ。「そうじゃない。そこなのよ」みたいな。「それじゃダメ」とか。これ、すごく新しい話なんですよ。

(土屋礼央)ねえ。これ、だって他の国ではこんな映画、作れないし。

(町山智浩)これ、作れないんですよ。それでこれ、1人そこで働いてる男の人がいるんですけども。彼は、かみさんに逃げられちゃったんですね。で、かみさんと寄りを戻そうとしてんだけども、どうもダメなんですよ。で、どうしてか?っていうと、やっぱりかみさんとの関係がうまくいってなかったからなんですよ。ところがここで働きながら、要するに、一生懸命働かなきゃならないから、一生懸命勉強をするんですよ。

(土屋礼央)相手の期待に応えたいと。

(町山智浩)そう。サービス業だから。それで「ああ、俺がなんでかみさんに逃げられたのかがわかってきた」っていう風に、だんだんわかってくるんですよ。これ、面白いなと思って。その、お金でやりとりしてるからこそ逆にわかることがあるっていう話なんです。

(皆川玲奈)なるほどね。

サービス業だから一生懸命勉強する

(町山智浩)ただ一応コメディなんで。一応、お掃除代行業っていうのが書いてあるような名刺みたいなものがあるんで。で、それを偶然拾ったその旦那がそれを呼んじゃうっていうシーンがあって。

(土屋礼央)大変だ! それはヤバい(笑)。

(町山智浩)でね、男性が来て。「あれ? あの、旦那さん。私をご指名ですか?」「いや、なんか掃除してほしいから……」「えっ、いいんですか?」って言って、その男性の前で脱ぎ始めるんですけど(笑)。そういうギャグとかもいっぱいあってね、結構おかしいんですけどね。でもこれね、僕が面白いなと思ったのはね、だんだんこのジーナさんが「実は私も満足してないんだ」ってことに気づいていくんですよ。

(土屋礼央)あらら。立ち上げただけなのに。

(町山智浩)そう。で、そのお客さんたちの話を聞いてるうちに「私はどうなのかしら?」っていうことをね、自分で考え始めて。それで今度、旦那を誘うんですけど。旦那はですね、「もうそういう歳じゃないだろう? 俺たちはもうそういうのは卒業したんだから……」とか言って、応えてくれないんですね。でも、そこでやっぱりね、だんだん……旦那の方は「いや、そういうのはなくても、2人でのんびり暮らしていけばいいじゃないか」っていう風に言うんですけど。でも、それも違うんだっていう話になってくるんですよ。そのへんもね、だからこれはものすごい率直な話でね。これ、やっぱり女性が監督して、女性がシナリオを書いてるからこそできるんだなというところなんですけどね。

(皆川玲奈)そういう気づきがあるっていうね。

(町山智浩)そうなんですよ。だからアメリカでは、また結構すごくて。うちの近所に女性専門のバイブレーター屋さんがあるんですよ。

(土屋礼央)へー!

(町山智浩)普通にあるんですよ。で、こっそり入るような感じじゃないんですよ。大人のおもちゃ屋みたいな感じじゃないですよ。すごくおしゃれ。おしゃれなサロンみたいな感じなんですよ。で、ふらっと入れるような。

(土屋礼央)オープンなんですね。そこらへんはお互い、男女関係なく、そこは理解があるというか。

(町山智浩)そう。だからそのへんはね、ここのあたりは日本よりも進んでいるかもしれないんですけども。ただね、この映画の中でね、ジーナさんが思わずちょっとプレゼントしてもらったそのマシンを試したらね、リモコンがコロコロッと転がっていっちゃって。そこにその引越し屋さん働いてる男性が来て。「なんだろう? これ、わかんないけど……リモコンみたいなのが落ちているぞ?」って、拾っちゃうんですよ。

でもジーナさんはそのマシンをつけている状態なんですよ。で、そのリモコンをなんだかわかんないけど、ポケット入れて。それで自転車でエクササイズするやつ、あるじゃないですかね。ちょっとエアロバイクをやろうかなって、ポケットにリモコンを入れたままでエアロバイクをやるんですよ。そうするとジーナさんが「ああっ、ああっ……」ってなっていくシーンがあったりして。

(土屋礼央)なんていう映画ですか?(笑)。

(町山智浩)「なんていう映画なんだ、これは?」って思ったんですけども(笑)。

(土屋礼央)すごいわ。どうですか、皆川さん?

(皆川玲奈)町山さんがそこのシーンをちゃんと説明するっていうね(笑)。

(土屋礼央)でもこれ、夫婦で見に行った方が……誰と見に行くのがいいですかね? この映画、おすすめは?

(町山智浩)これはやっぱり、夫婦で行くべきなんでしょうね。

(土屋礼央)これを考えるきっかけに、2人で話し合う。

(町山智浩)そう。「本当はどういうのがいいのか?」とかね。そんな話、しないですよね。

(土屋礼央)なかなかできないよ。

(町山智浩)なかなかできないけど、まあそういう会話をね、し始めないと。逆にその、子供が大きくなってからね、もう子供を作る目的じゃない時からまた、新しいそういった恋愛関係が始まるんだっていうね。これはなかなか新しい、すごい映画だなと。それでこれね、オチになってくるんでちょっとあれなんですけど。このビジネス、大成功していくんですよ。どんどんと。

(土屋礼央)あらっ!

(町山智浩)で、完全に合法です。オーストラリアだから。こういう展開の映画って、日本じゃ絶対にあり得ないですよね? ねえ。女性が男性派遣業を作って、大成功っていう終わり方って。

(皆川玲奈)ないですね。

(町山智浩)ないですよね。これ。オーストラリア、すげえ!って。アメリカよりすごかったですね。オーストラリアね。

(土屋礼央)これ、18禁とかそういうのはあるんですか? オーストラリアには。

(町山智浩)これ、直接的な描写はないんで。

(土屋礼央)なるほど。じゃあ、見れるわけだ。

(町山智浩)ないと思いますね。あとね、50過ぎの女性しか出てこないので。そういう……若い人がなんていうか、そういうエッチ目的で見ることはほとんどないだろうなと思いますけどもね。

(皆川玲奈)やっぱり夫婦なんだな。

(町山智浩)夫婦で見る映画なんだと思うんですよね。で、タイトル通りね、その女性の喜ばせ方ということを学んでいくための、非常に学習的なね、教育的な映画でもありましたね。

非常に学習的で教育的な映画

(土屋礼央)いいですね。だから妻から「あなた、これ見といて」みたいなことを渡される可能性もあるね。

(町山智浩)そうそうそう。

(土屋礼央)プレゼントとしてね。「これを見て、理解して」みたいな。

(皆川玲奈)それで会話が生まれるみたいなね。

(町山智浩)そうですね。そこから「本当はどういうのがいいの?」みたいなね、ことだと思うんですが。

(土屋礼央)どうですか? 皆川さん。「はじめまして」でこの映画は? 町山さん、すいませんね、これ。元々は赤江さんと山里さんでこのお話だったのに。我々だからこうしたわけじゃないでしょう?

(町山智浩)いや、大丈夫ですよ(笑)。すいません。猛暑の真っ昼間からこんな話ですいませんでした。こっち、夜の11時半なんで全然そういう感じなんですよね(笑)。

(土屋礼央)夜のテンション。そりゃそうですよ。

(町山智浩)夜のテンションなんで。すいませんでした(笑)。

(皆川玲奈)はじめて町山さんとお話をするのに、この映画を紹介されて……。

(土屋礼央)どういう風にしていいか、わかんないよね。皆川さんね。

(町山智浩)すいません。困らせて(笑)。

(土屋礼央)まあ、でも日本では作れないからこそのね、面白みがあるから。これ、日本で公開はありますかね?

(町山智浩)されるといいと思いますよ。はい。

(土屋礼央)楽しみでございます。

(皆川玲奈)『How To Please A Woman』、日本の公開はまだ未定ということですね。町山さん、ありがとうございました。

(町山智浩)はい。どうもでした。

<書き起こしおわり>

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