渡辺志保 R.ケリーの公式YouTubeチャンネル削除を語る

渡辺志保 R.ケリーの公式YouTubeチャンネル削除を語る MUSIC GARAGE:ROOM 101

渡辺志保さんが2021年10月15日放送のbayfm『MUSIC GARAGE:ROOM 101』の中でR.ケリーの公式YouTubeチャンネルがYouTubeから削除された件について話していました。

(渡辺志保)ここで最近の気になるニュースを紹介したいと思います。ちょっと、これからすごくトークがめちゃめちゃ長く重い感じになってしまうので、眠くなってしまったらごめんなさいという風に前置きをしておきます。で、どんなニュースかと申しますと、R.ケリーの公式YouTubeチャンネルが削除されたというニュースですね。で、ここ数年、ヒップホップとかR&Bミュージックを追っている方であれば現在のR.ケリーの状況っていうのはご存知の方もたくさんいらっしゃるんじゃないかなと思うんですけれど。

ちょっと遡って順を追って話しますと、2019年にドキュメンタリーシリーズ、『Surviving R. Kelly』というのが放送されまして。これは現在、日本でもアマゾンプライムで『サバイビング・R.ケリー:全米震撼!被害女性たちの告発』というタイトルで公開されておりますので、もし興味のある方はぜひぜひ見てもらうのがいいかなと思いますが。

(渡辺志保)で、そこで語られているのはですね、もうR.ケリーが10年以上にわたって未成年の女性ばかりを狙って性的搾取、そして強制労働をさせていたんですよね。

で、この番組でも少し話したことがありますが、R.ケリーは以前……94年ぐらいですかね? アリーヤが15歳の時に彼女と結婚しているんですけれども。それも偽の証明書を偽造して、無理やり結婚していたという事実が今回、裁判でも語られております。で、もう本当に本当にこの『Surviving R. Kelly』は私もほぼリアルタイムで見たんですけれども。本当に酷くてで。まあ、めちゃめちゃ卑劣なんですけど。たとえば親子でR.ケリーのコンサートに来た女の子……15歳とか17歳とかの女の子を楽屋に呼んで。「君も歌手になりたいんだったら俺の家で特訓しないか? トレーニングしながら俺の家に住まないか?」みたいな感じで親からまず引き離すんですよね。

それで、それ以降、本当に何をするにもR.ケリーの許可が必要じゃないといけないっていう環境を作り出して。もう本当に酷い話ですけど、排泄までR.ケリーの許可がないと1人ではできないというような環境を作り。かつ、最初に告発した記事がありましたけれども。そこではR.ケリーがセックスカルト集団を作り上げているというような内容で告発されて。で、まさかと思ってみんなが調べてみると、結構その通りだったということなんですよね。

で、彼の裁判がずっとコロナの影響で延期になっていたんですけれども。今年の9月にニューヨークで裁判が開かれまして。そこで9つの罪で有罪が確定したということです。で、子供に対する性的搾取であるとか誘拐。あとは性的人身売買の罪などを含む内容で有罪と確定されたとのことですね。で、その結果を受けてYouTubeがR.ケリーの2つの公式チャンネル……R. Kelly TV、R. Kelly Vevoを閉鎖したということでございます。

で、R.ケリーにおいては今後、新しいチャンネルをYouTube上で設立することも禁止されていると。で、YouTubeのバイスプレジデントの方が声明文を発表していたんですけれども。「作成者責任のガイドラインに従って停止したことをお知らせします」という風に言ってました。で、その内容がたとえば虐待や暴力行為に参加したり、残虐行為を示したり、現実世界の危害につながる詐欺的、欺瞞的な行動に関わることを禁じているということで。それで今回ね、その確定を受けてR.ケリーがこの内容に当てはまるということで停止したそうなんですよ。

でも私がちょっと感じたことと、あとニューヨーク・タイムズで結構詳しくこのR.ケリーのことを説明していて。「with R.Kelly on trial what has become of his music」という記事が載っていまして。その記事を元にこれから話していくんですけども。彼の公式チャンネル2つが削除されても、他のユーザーがアップロードしたR.ケリーの動画とかは引き続き許可されるんですよね。で、あとR.ケリーの曲をカバーした動画も引き続き閲覧が可能ということで。なので、ちょっとそこがアンバランスじゃないかという突っ込みもあったり。

あと、YouTubeが運営しているYouTubeミュージックっていうのがあって。そこでは引き続きR.ケリーの音楽が配信されてるんですね。いわゆるSpotifyとかAppleMusicと同じ音楽配信のサブスクリプションサービスなんですけれども。YouTubeでは公式チャンネルが削除された。けれどもYouTubeミュージックではまだまだ配信してますよっていう、そこもなんか突っ込まれておりましたね。ニューヨーク・タイムズからね。で、記事によると、たとえばYouTubeの方がビデオのクリエイターとプラットフォームの距離が近いからこそ、そういったポリシーを掲げて。それでYouTube側が「バンする」なんていう風にも言いますけども。「このアカウントは削除しましょう」とか、そういった行動に出られるのかもしれないですけれども。

YouTubeミュージックではまだ楽曲が配信されている

(渡辺志保)まあR.ケリーはね、言うまでもなくメジャーアーティストなので。自分で自分のビデオを作って自分がアップロードしているわけではなく、その彼のコンテンツとYouTubeの間には明確にメジャーのレーベルであったりとか、パブリッシャーであったりとか、他に権利を保有する人たちがいくつも入って彼のミュージックビデオっていうのが公式チャンネルでアップロードされていたわけですから。通常のYouTubeのポリシーとYouTubeミュージックの分けているポリシーというのはちょっと通用しないんじゃないかということをニューヨーク・タイムズの記事では書かれておりました。

あと、HotNewHipHopというヒップホップブログがあるんですけれども。そこでもですね、たとえば映画プロデューサーのハーヴェイ・ワインスタイン。彼も本当に性的搾取が問題になって。それこそネットフリックスで映画なんかも作られておりますけれども。「ハーヴェイ・ワインスタインが関わった映画とか、あとはマイケル・ジャクソンの楽曲やミュージックビデオは何の対象もされていないのになぜ、R.ケリーだけなんだ?」という、ある意味ちょっとR.ケリーを擁護するような意見も取り上げておりまして。で、ニューヨーク・タイムズも同様にマイケル・ジャクソンの曲を引き合いにして、R.ケリーについて論じてましたね。

で、これも同じ記事の中に書かれていたんですけれども。Spotifyでは現在も約300のプレイリストにR.ケリーの曲が使用されているそうです。で、ニューヨーク・タイムズの記事の中で2019年のドキュメンタリー放送後……2019年の1月のあたりから現在までに約300万ドル。日本円にして約3億円ほどの利益が生まれているそうなんですが、権利保有者であるソニー傘下のレーベルRCAとR.ケリーのソングライティングの権利を保有するユニバーサルミュージックは現在のR.ケリーの楽曲の状況についてはノーコメントだそうでして。

まあ、この3億円ほどの利益がこれまで通りの分配率でR.ケリーのところに流れているのか? それともそれが止まっているのか? とかは明らかになっていないそうなんですよね。で、これってもうめちゃくちゃ難しい問題だなと思うんですけれども。もう杓子定規的な一定の対応というのはたぶんね、定めることが難しいのかなという風にも思いますし。で、以前だと歌手の人に触れることができる音楽メディアってCDとかレコード、カセットテープなんかに限られていたかと思うんですけれども。もう今はね、デジタルの時代ですから。それが、たとえばR.ケリーの曲を使ってTikTokで動画を作っているクリエイターなんかもたくさんいると思いますし。

彼の曲をバックにInstagramなんかで写真や動画をアップしている方たちもたくさんいると思うし。その楽曲の、しかもネット上における2次使用とか3次使用っていうのが本当におびただしいほどの数があるわけですよね。だから本当にどう取り締まっていくか? どこでどう、線を引いていくか?っていうのは本当に難しいなと思うんですけれども。まあ個人的には、基本的にアーティストとその人が犯した犯罪っていうのは分けて考えられるべきかなという風にも思っていて。

で、まあ本当に分かりやすい例だと、日本でもね、たとえば持っていちゃいけませんよといったものを持っていたとか、使っていたっていう罪で逮捕されてしまった時に、彼や彼女の楽曲が一気にCD屋さんから回収されるとか、ありますけど。それはやはり、それはちょっと違うんじゃないの?って私は思うんですが。たとえばこのR.ケリーのケースとか、ちょっと前にもこの番組の冒頭でも話しましたけれども。日本でもMURVSAKIというビートメイカーが未成年の女の子に性的暴行をずっと加えていたというニュースがありまして。

そうした明らかに被害者がいる場合。で、彼や彼女の著作物っていうのが被害者にとって2次被害を与えるような危険性がある場合っていうのは、やはり処置を考えねばならないのかなという風に思います。ただ、うーん。なんかこれも本当にケース・バイ・ケースだとは思うんですけれども。そのアーティストの作った著作物を全て、世の中から抹殺するのがよしとは私は思っていなくて。その、アクセスできる状態にはあった方がいいと思うんですよね。

しかし、こうしたラジオ番組であるとか、今だと本当にSpotifyなんかのプレイリストとかで、その彼らの曲をフィーチャーすること。その犯罪を犯した、しかも犯罪の程度によりますけれども、重い犯罪を犯した人が作った曲をですね、「皆さん、もっと聞いてくださいよ」とプロモーションに当たる行為をするというのはやはり控えるべきかなという風にも思っておりますし。それもなぜ、このアーティストの曲をオンエアしないのか? なぜこのアーティストをプレイリストに入れないのか?っていうそこのポリシーがそれぞれはっきりしている場合は、そうしたことが正解なのかなという風にも思っています。

それこそね、このR.ケリーの事件がバッと問題になった2019年ぐらいの時にSpotifyが結構いち早くR.ケリーと後は当時、一緒にXXX・テンタシオンの曲も「人々に良くない影響を与えるからSpotifyとしては彼らの楽曲をプロモートしません」ということでブレリストからワーッと外したんですよね。で、それはそれで非常に各プラットフォームの勇気ある行動という風に捉えられるかもしれないですけれども、その後やはりそのポリシーが曖昧ではないかということと、記事で当時、読んだのは有色人種の方たちに対して非常に不利なアクションになってしまうのではないかとか。そのアクション自体が非常に人種差別的なものになってしまうのではないか、みたいなツッコミを受けて。Spotifyはその発言を撤回したんですよね。

で、結果、今も300ほどのプレイリストにR.ケリーの作品が入っているということになるのかもしれないし。あとはもうアルゴリズムで半ば自動生成でプレイリストが作成される場合もたくさんありますから。そうした時に、たとえばですけど今後そのアルゴリズムも書き換えて、R.ケリーの曲は絶対に誰のお勧めにも上がらないようにするとか、そういったことが可能なのか? それは可能なんだろうけど、それが正解なのか? とかね。もう本当にこれからいろんな議論がなされるのかなと思いますし、いろんなタイプの正解っていうのが各所から提示される時なのかなという風にも思います。

いろいろなタイプの正解が各所から提示される時

(渡辺志保)で、これは私も本当にずっとずっと考えていて。なかなかね、自分自身の落としどころっていうのも見つからないような状況なんですよね。で、R.ケリーに関しても私は本当にめちゃめちゃ自分も大好きで。かつてニューヨークのマディソンスクエアガーデンの横っちょにある会場に彼のコンサートを見に行ったこともあって。で、その時ちょうど彼が最初の裁判で……その時にも未成年への性的暴行で立件されたんですけど、無罪を獲得したんですよ。

で、その直後のライブだったんだけど、ニューヨークに行って、会う人に……結構、ヒップホップ好きのお友達とかが現地でできるんですけど。男性にね、「明日、R.ケリーのライブに行くんだよね」とか言ったら「えっ? 何でお前、あんなロリコン犯罪者のライブ行くわけ?」とか結構言われて。で、日本ではね、なかなかそういったことを肌で感じることはなかったから。「ああ、R.ケリーって今、そういう風に捉えられてるんだ」という風にも感じたところでもありましたし。

なんかね、バックグラウンドとかを考えるとね、どれだけ自分の中で正解を示すというか、決めていかねばならないのかなと常に悩んでいることでもあるんですけれども。まあひとまず、ちょっと私のラジオ番組では彼の音楽はかけないとえいう選択を今、しています。皆さんの意見もぜひ伺いたいなという風に思います。

<書き起こしおわり>

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