荻上チキさんが2021年9月21日放送のニッポン放送『星野源のオールナイトニッポン』に出演。星野源さんとペス山ポピーさん『女の体をゆるすまで』について話していました。
(荻上チキ)やっぱり本を読んで……「いい本」っていろいろあると思うんですけど。やっぱり読んだ後にはもう、違う人生になったなっていう感じられるものってあると思うんですよ。それは、いい映画も、いい音楽もやっぱり同じパワーを持つものだと思うんですけど。特に本は小説のようにその豊かな人生になったなって思わせるものもあれば、その評論とか研究の本というのはたしかに世界がわかった。で、「わかった」って言って「よかった」と思うものだけではなくて、「わかってしまった。じゃあ、どうしようか?」とか「わかってなかったことに気づいてしまった」っていう……逆に、その無知を知らされるというか。そういったような本がやっぱりたくさん、本屋さんにはありますよね。
(星野源)それを、チキさんが紹介していったり、関連したりする本がすごく自分にとってそう感じる本が多くて。先日、『Session』の方でもゲストに出られていた方の『女(じぶん)の体をゆるすまで』という本。
(荻上チキ)ペス山ポピーさんの本。小学館から出ていますね。
(星野源)その本もラジオを聞いて「ああ、読んでみよう」と思って読ませてもらって。なんというか、全然その内容とは違う話になっちゃんですけど。自分がその表現というか、作曲だったり楽曲制作をずっとしてて。今回の『Cube』っていう曲……これからリリースするんですけど。その時に、なんかいろんな気持ちになっていて。いろんな楽曲がありすぎて……たまにラジオで話すんですけれど。「自分がもう作る必要はないんじゃないか?」っていうような。
で、そこでちょっと「はあ……」ってなる瞬間が結構あるんですけども。でも、それでも「自分が好きだから」とか「やりたいことがやれているから」とか、いろんなところを振り絞って作ったりするんですけど。なんか、その『女の体をゆるすまで』を見た時に、ものすごい衝撃というか、こう、エネルギーをすごい感じて。なんて言うんだろう? 途轍もない創作意欲をいただいたんですよ。で、たぶんペス山さんは僕がペス山さんの本を読んで「すっげー!」って……もう部屋の中を歩き回るみたいな。読んだ後に「いやー、すごかった!」って、もうなんか歩き回って。ウロウロウロウロして。「このエネルギーをどうしたらいいんだろう? 創作だっ!」みたいな。
途轍もない創作意欲をもらった本
(星野源)なんかその、「今、俺がやれることをやらねば」っていうか。その、たぶん自分がこんなに影響をされて、元気をいただいているということをペス山さんは知らない。でも、もしかしたら自分の表現だってそうなり得るかもしれない。誰かの背中を押したりとか、奮い立たせたりとか。だったら俺は全力でやろう!っていうことでガーッとやれたんですよね。だからなんか、そういうのも含めてすごくチキさんいはお世話になっているというか(笑)。
(荻上チキ)表現者目線の読み方ですよね。
(星野源)ああ、そうかもしれないですね。
(荻上チキ)ペス山さんのその『女の体をゆるすまで』という漫画は性暴力被害にあった、セクシャルハラスメントにあった当事者である漫画家のペス山さん。本人はトランスジェンダーの当事者でもあるんですけれども。その方が漫画をエッセイマンガを書こうとした時に、どうしても書けなくなってしまって。なぜ書けないかというと、自分のその被害にあったという体験が存在するので、そこより過去を書こうとしてもその記憶がブロックしてしまう。だから、その性暴力という記憶と向き合っていく中で法律について学んだり、カウンセリングについて学んだり。そもそもこの社会で差別とか性暴力がなぜ起きるのかということを考えるという、そうしたエッセイマンガですよね。すごみに溢れてる。
すごみに溢れている本
(星野源)はい。すごみに溢れている本だと思います。すいません。各本を全部説明していただいてありがとうございます(笑)。
(荻上チキ)評論家が出ますね(笑)。
(星野源)ありがとうございます(笑)。
<書き起こしおわり>