星野源とオードリー若林「普通」を語る

星野源とオードリー若林『Pop Virus』歌詞書き起こし&リリック解説 星野源のオールナイトニッポン

オードリー若林さんが2021年9月7日放送のニッポン放送『星野源のオールナイトニッポン』の中で「普通」について話していました。

(星野源)僕もちょっと実はぶつけたいっていうか、思ったことがあるんですけど。話してもいいですか?

(若林正恭)お願いします。

(星野源)前に佐久間さんのオールナイトニッポン0に若林さんが出られた時に話していて。あと『しくじり先生』でもその話をされていたと思うんですけど。夜中にバスケットボールのスリーポイントシュートを打つ練習をしていることを他の芸人さんとかに「何やってるんだ?」とか「変だ、気持ち悪い」とか、そういう風に突っ込まれる意味がわからないっていうお話をされていたじゃないですか。「みんな、それを『変だ』とか、『普通じゃない』って言うんだけども。それの意味が本当にわからなくて。どう受け身を取ったらいいかわからない」っていう話をされていたんですけども。僕はその話がめちゃくちゃ好きで。

で、僕は物心ついて、自分の普通の思う通りに行動すると「それ、間違ってるよ」って言われたりとか。「それ、普通じゃないからやめといた方がいいよ」って言われたりとか。たとえば、それが人を傷つける行為とか、暴力的な行為だったならばもちろん、やめた方がいいんだけど。そうじゃなくて、「みんながそれをやっていないから」とか「社会的にちょっと違うでしょ?」みたいなことを言われたりとか。「普通はそうじゃないから」って言われて阻害されるという人生だったんですよ。

それで、なんかバカにされたりとか。で、ずっといろんなことでバカにされて生きてきた中で、若林さんがそれに対して「いや、マジで意味がわかんない」って言ってることに対してすごい「わかる!」って思うし。なんか、人が人に対して「ひねくれてる」とかって言うのは、おかしくね?って。あと、「普通じゃない」とか言うのはおかしくないか?って。

「俺は、まっすぐやっているだけなんだけど。これが俺にとっての『普通』で。社会的には『普通』じゃないかもしれないんだけど、俺にとっては『普通』。で、あなたは自分の『普通』を社会の『普通』にねじれさせて、それを適応させてるんだから、あなたの方が『普通じゃない』んだよ!」って言いたいんですけども。でも、それを若林さんはいろんな行動で示してくれている感じがあって。で、結構その話を佐久間さんとされていた時も、結構胸が熱くなったんですよ。

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(若林正恭)はいはいはい(笑)。

(星野源)でも、そういうのをいつも思います。

(若林正恭)でもそれで言ったらこれ、すごいしゃべりたいです。俺も小学校の時からそうですね。

(星野源)そうですか。

(若林正恭)だから結婚した時もなんかファンの人かな? メールでラジオに「なんだ、普通の人だったんだ。いい夫婦の日に……」って。結婚しただけで「なんだ、普通の人だったんだ」っていうメールがいっぱい来たんですけど。「いや、俺はずっと普通だよ? なにを『普通じゃねえ』と思ってるんだよ?」とか思ったりすることが多くて。で、やっぱり「スリーポイントシュートを夜中に打っている」って言うと、「何のために?」って聞かれるんですよね。「何のためもなにも、あのシュートが入った時のシャポッ!っていうのが気持ちいいからだけなんだ」っていうことがもう人生でずっとでしたね。

(星野源)でも、その結婚の話も「結婚をすることが『普通』って思っていることの方がヤバいよ」っていう話をしていたじゃないですか。「それが『普通』って思っているんじゃないよ」っていう。

(若林正恭)そうそう。今はもうね。

(星野源)それに対して、「おもしろのツッコミだ」って思っていることもちょっとヤバいし。で、なんかそれを人に言うっていうのが……「なんだ、普通の人だったんですね」って、「いや、今まで異常だと思って活動してねえから?」っていう。

(若林正恭)そうなんですよ。なんか、「こっちを異常だと思って、仲間だと思ってるんじゃねえよ?」っていう(笑)。

(星野源)すげえわかる(笑)。そう。異常だと見せたくて異常になっている人と一緒にしてほしくないんですよね。

(若林正恭)そうなんですよね。だから結構『たりないふたり』っていう山ちゃんとやっていた番組も、あれは安島さんっていうプロデューサーがつけたタイトルで。俺は「足りない側で集まって結束しようよ」なんて一切、思ってないし。むしろ、俺は「足りない」なんて思ってないから。俺が一番足りてると思ってる……もうあの映画『タクシードライバー』みたいな男が(笑)。

(星野源)わかります(笑)。

(若林正恭)だから「ああ、これが変なんだ」って思うことの連続ですね。

(星野源)いや、それはとてもわかるんですよね。

(若林正恭)だからキューバに旅行に行く時も「村上龍憧れですか」とかすごいいろんな人に言われて。「いやいや、行きたいから行くんですけど?」っていう。そういうのが多くて。まあ、なんかテレビも変わってきてますけど。なんか普通に少数派をぶつけると、なんかお笑いって起こりやすいんですよね。それもあるから……まあ、だからじゃあ、そういうことならいじられてた方がいいのか、とか。今はたまにやりますけど。「ああ、これはあれなんだ」って思うこと、テレビを見ていてもよくありますね。「ああ、普通じゃないんだ」みたいな。

(星野源)そうですよね。それをでも、いわゆる司会という立場だったり、それこそ『しくじり先生』でも、なんというか突っ込む側に回らなきゃいけない時ってあるじゃないですか。で、『しくじり先生』はいろんな人がいるじゃないですか。で、なんかで若林さんが「割といろんな人がいて当たり前だから。そもそもそんなに突っ込む気にもならない」って……。

(若林正恭)そうなんですよ。意外とだから気質がツッコミじゃないんですよね。あんまり言われたことないんですけど。

意外と気質はツッコミではない

(星野源)でも、だからそのルールっていうか、番組のポジションをやることもすごいあるわけじゃないですか。突っ込むっていうことも。そのあたりの棲み分けというか。最初からできていたものなんですか? だんだんできてきたことなんですか?

(若林正恭)いや、今もそれはできてないなって思うことがあって。だから『激レアさん』とか俺、来る人来る人、大好きで。『しくじり先生』も各先生、しくじっている時は本気だから。だから、なんて言うんだろう? プロレスのイズムなのかな? その人の熱量とか深さがもっと出るために水平チョップしてみて「出るかな?」っていうのがすごい楽しくて。だから濃いものをもっと聞きたいっていうのために、その手段として突っ込みを使ってるっていう感じですね。だから「それは異常だよ」っていう突っ込みは基本、好きじゃないんですよ。そんなはずはないから。

(星野源)うんうん。そうですよね。「激レアさん」って言って来てもらっているのに「それは異常だよ」って突っ込んでいたら「なんだよ? マッチポンプかよ!」みたいになっちゃいますもんね。

(若林正恭)そうなんですよ。そうそう。

(星野源)僕、あれ大好きでした。ピアノをめちゃめちゃ練習して弾けるようになった漁師さんの回。あれ、めちゃめちゃ感動しちゃって! すごいっすね!

(若林正恭)すごかったですね。あの人。

(星野源)その後、インスタかなんかで「人間って面白いなって思った」みたいなことを若林さんが上げていたような気がするんですけども。カップ麺、即席麺で記憶を取り戻した人とたしか同じ日だったと思うんだけども。なんか、本当に感動したんですよ。

(若林正恭)そうそう。だから漁師で、どこで披露するわけでもないピアノの練習を始めた時点で突っ込んじゃうっていうのは、俺はそれはやりたくないんですよ。そこは。その中で「何時に起きてやってるんですか? 早いな!」とか。それで引き出していきたいっていう気持ちがあるから。なんだろう? まあ、『あちこちオードリー』でもそうなんですけども。いわゆる「変わっている」って言われがちな人が、変わってるまま、何も解決せずに帰れるっていうことが目標なんですよね。

(星野源)ああ、素晴らしい!(笑)。

「それ、おかしいぜ!」とは絶対に言いたくない

(若林正恭)「それ、おかしいぜ!」とは絶対に言いたくはないんですよね。引っ張り出すためには使いますけど。うん。それだから、母親とかからもずっと言われてますもんね。「あなたの言ってること、全部間違ってる」っていう。「今日、先生が……」とかっていうのがあったから。だから最近ようやくですよね。そのへんも扱ってくれるスタッフさんが増えてきたのは。だからラジオは、不思議な媒体ですよね。そのまましゃべってもいけたりしますもんね。たとえば「ピアノを始めた」とか「夜、スリーポイントを打っている」とか。そういうの、しゃべれますよね。不思議と。

(星野源)そうですね。自分も割と否定されてきたので。でも、それに対して「そうなんだ」って思っていたんですけど。中学ぐらいから、まあ反抗期的な時期になってから、なんかその「そうなんだ」と思って、自信がないは自信がないですけど。それとなんか全然違うところから、「何か知らないけど、これだけは自信があるんですけど」みたいな。そういうのがニョキニョキと出てきて。それが音楽だったり、演劇だったりとか。

で、さらにその演劇と音楽をずっとやってるんですけども。「どっちかひとつに絞った方がいいよ。それが普通だから」ってすごく言われて。「いや、でもどっちもやりたいんですけど」っていう。自分が人とコミュニケーションがちょっと苦手で。それを……たとえば怒りとか、いろいろ覚えるんだけど、外には出せないから。セリフをもらって、それで怒るセリフを言うとすごく自分が怒った気持ちになれて。それで実際に怒るシミュレーションにもなるっていう。

(若林正恭)なるほど、なるほど。

(星野源)あと、音楽で歌詞を書いたり、音を作って感情みたいなものを出すっていう訓練をしてみたりとか。それが自分にとって表現が、なんかコミュニケーションを取るために必要だったし。なんか、前に進むためにすごく必要だったので。そのために、どちらかを諦めるみたいなのがよくわかんなかったんですよね。

(若林正恭)うん。全部ね、自分の中ではやりたいし。

(星野源)そうなんですよ。だから「そんなのは間違っている!」っていうよりかは、「よくわかんない」っていう感じだったんですよ。

(若林正恭)あっ、すげえわかる……。俺、だから普通・常識に対して少数派とかをぶつける番組でいい結果を出したことなくて。「なんだ、それ? 若林!」って言われたら「ああ、へえ。おかしいことなんですね」っていうリアクションをするから、全然盛り上がらないんですよ(笑)。

(星野源)番組がやってほしい構造にならないっていう。

(若林正恭)そうそう。だから「おかしくないでしょ!」っていうほど、それほど自分が合っているとも思ってないから。そうそう。それはあるんですよね。

(星野源)なんか若林さん、でもそういう話もラジオでされたりとかするじゃないですか。だから、それを知ってる人はテレビを見てる時にそっち側の、そのプロレス的な役割としてついていて。さらにそれがそのまま、その人のおかしい、面白いところが開花した時に喜んで手を叩いている姿を見て、そっち側につきつつも咲かせるということをやられているんだなっていう、深みを持ちながら笑えるっていうのがすごい楽しいですね。

(若林正恭)これ、すごいことを星野さん言ってくれてません?

(星野源)そうですか?

(若林正恭)すごい俺、嬉しいんだけど。今!

(星野源)アハハハハハハハハッ! よかった!

(若林正恭)いや、その「引き出すために」っていうので、出た時に俺、喜んでますよね。星野さんね。

(星野源)そうそう。そうなんですよ!

(若林正恭)自分で言うのもおかしいけど(笑)。

(星野源)それはやっぱり自覚っていうか、思っていたんですよね? それがすごい好きで。「ああ、出た!(拍手)」みたいな。

(若林正恭)俺、だからやっぱり人との違いとか、自分が伝わってこなかったなっていうのも含めて、人のそのユニークな部分。その人の持っているものがすごい好きで。それを番組内で絶対に出したいんですよ。で、それが出せなかった時が一番悔しい帰り道ですけど。

(星野源)なるほど。

人のユニークな部分を番組内で出したい

(若林正恭)でもやっぱりね、「視聴者に向けてこういう風に映りたい」っていうところに向かって走ってる人もたまにいるんですよ。その人が一番難しい!

(星野源)アハハハハハハハハッ! 「こういうキャラで行きたい」とか。「ちょっと変に見られたい」みたいな人とか。

(若林正恭)そうそうそう。ロープに振っても帰ってこないから。ここは難しい。

(星野源)「私はそっちの方向に帰ってきたいわけじゃないんです!」ってロープを掴んじゃうんですね。

(若林正恭)そう。でもやっぱり佐久間さんってすごくて。正直なことを正直なまましゃべりたいっていう人を『あちこち』ではキャスティングしてくれるんですよね。だから佐久間さんも不思議な人ですよね。あそこまで気配りができて。経歴もすごい人が、いろんな人に寄り添えるっていう。不思議な人ですよね。

(星野源)そうですよね。すごい寄り添うし。でも、ご本人はかなり体育会系だった頃のテレビ局で揉まれてきていて。でも、人には切れたりするのをやめたっていうか、それをやらないという選択して。で、佐久間さんの本の中で若林さんがインタビューに答えられてる中で言っていたのが、その寄り添い方がまさに絶妙で。あと寄り添いすぎないのも絶妙って言ってるのが本当に佐久間さんをめっちゃ表わしてるなって思って。

(若林正恭)星野さんがそれを言ってくださった時、俺は本当に嬉しくて。佐久間さんって、なんだろうな? 会話がね、佐久間さんへの依存気味……共依存気味になってきた瞬間ね、「じゃあ、本番で」っていなくなるの(笑)。

(星野源)アハハハハハハハハッ!

(若林正恭)で、「そこはやっぱり自分の責任、自分の実力でお互いにやりましょうよ」的なことなんだろうなって思って。あの男はね、人間を知ってますよ!

(星野源)アハハハハハハハハッ! いや、どこで学んだんだろう?

(若林正恭)いや、本当に俺も聞きたいんですけど。それはあんまり教えてくれないんですよね。

(星野源)そう。本当は言ってない、ものすごい何かがあったのかも?って思うぐらいですよ。

(若林正恭)俺もそれは思うんですよ。謎だなって。

(星野源)知りたいな(笑)。

<書き起こしおわり>

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