佐久間宣行『テレ東音楽祭2021』制作スタッフたちのドラマを語る

佐久間宣行『テレ東音楽祭2021』制作スタッフたちのドラマを語る 佐久間宣行のオールナイトニッポン0

佐久間宣行さんが2021年7月28日放送のニッポン放送『佐久間宣行のオールナイトニッポン0』の中でテレビ東京の後輩たちから聞いた『テレ東音楽祭2021』制作の舞台裏について話していました。

(佐久間宣行)結構前にテレ東音楽祭っていうのがあったんですよ。テレビ東京音楽祭っていうのが1月ぐらい前にあって。その前後から後輩たちからたくさんね、「佐久間さん、聞きました?」みたいな。「佐久間さん、あの話、聞きました?」みたいな、結構いろんな情報があって。それを全部まとめたら……いろんなやつから聞いた話をまとめたら、なんか1本のドキュメントというか、ストーリーが浮かび上がってきたのよ。で、それがまとまったら「あれ? これ……なるほど。こういうことがあったんだ」って思ったんで。それを1回……今回、ルポね。俺、関係ないから。テレビ東京音楽祭は行ってないから。ルポ。ノンフィクションのルポなんだけど。

6月某日にテレビ東京音楽祭スタッフリストが発表されるわけ。だいたい特番って1月前とかにスタッフリストが発表されるじゃん? ラジオでもそうかもしんないけど。そしたら、結構ADたち、制作内がざわついたらしいよ。「これ、なんなんだろうな?」ってなって。それが、年に1度、4時間半の生放送なわけ。制作局全体で取りくむ番組の結構大事なポジションというか。中継サブのメインディレクター。これ、普通だったら30代前半の若いディレクターがやつのよ。若手から中堅ぐらいに、やっぱり脂がのっているディテクターがやる。大変だから。タフだし。

そこに、もう俺よりも年齢が上の、ほぼ部長クラスの女性。これ、名前を仮に「マコさん」ってするね。そのマコさんがなったの。「マコさんが? えっ? なんで?」って。俺より6つぐらい上だから、50代というか。もう部長クラスよ。部長クラスの女性がそのメインディレクターになっていたんだって。で、「えっ、どういうこと?」ってなって。みんな、びっくりするじゃん? 普通にだって、そんな大特番を部長クラスがやることないでしょう?

そしたら、そのサブに当日配置された若手ADとかディレクターが一瞬、パニックになって。「えっ、なんで?」って。ざわつくじゃん? 普通に。なんだったら三宅とか、そういうディレクターがやるものだから。で、みんな、何が起こってるのか原因を探り始めたら……それを探った後輩からの電話で、「どうやらマコさんは会社を退社する」っていう。で、マコさんって『家、ついて行ってイイですか?』のプロデューサーなんだけど。いろんな人の人生の岐路を見ているじゃん? そしたらね、「私もこのままじゃいけない」と思って。それで「会社を辞めて、ニューヨークに留学する」って決めたんだって。急に。

俺よりも5、6個上なんだけど。「ああ、そうなんだ」っていうのがあって。マコさん、昔ニューヨークに留学されていたことがあって。その留学を大学を卒業しないで……仕事があったから。戻ってきて、テレ東で仕事をしたから。だからその最後の1年を取り戻しに行くっていうことで。30年ぶりだか20年ぶりだかわかんないけど。っていうので、「辞める」ってなって。それは全然いいのよ。全然いいの。素晴らしいことだと思うし。

そしたら、そのマコさんが「最後の思い出作りに、私にメインディレクターをやらせてほしい」って言ったんだって。「最後にやりたい」って。そうしたらテレ東の上層部が「なるほど。いいだろう、やろう!」っつって。フハハハハハハハハッ! そうなって。どんだけ浪花節がOKな会社だ?っていう感じなんだけども。「みんなで支えよう! マコの気持ちを!」ってなって。ここに史上最年長の中継ディレクターが爆誕したわけ(笑)。

史上最年長の中継ディレクター爆誕

(佐久間宣行)20代じゃないからね。もう、本当にすごいのよ。爆誕したわけ。ここに最年長女性ディレクターが。そしたら、それを受け入れたんだけど、当日スタッフは知らなかったわけ。それでビビって音楽祭の前日。みんな最終スタンバイとかリハーサルするわけ。あと事前収録とか。で、そのメインディレクターのマコさんはもちろんね、参戦するわけ。メインディレクターだから。でも、やっぱり慣れてないから緊張して現場が一瞬、「えっ? なに? 大丈夫? 大丈夫?」みたいな

そしたら……これはADの証言ね。ADからの証言なんだけど、ここから1個、視点が変わります。ディレクター三宅の証言。ディレクター三宅はテロップ担当だったって。生放送で。で、テロップ担当っていうのは歌詞のスーパーをどんどん入れていく仕事だから、大変だけど前日はそんなにバタバタはしない。歌詞を覚えるくらい。それが、ADから電話がかかってきて。「三宅さんもサブに来てください。ちょっとマコさんがテンパってるんで……」って言われて。「えっ? どういうこと?」ってなって。三宅も「なんで行かなきゃいけないんだよ?」と思ってサブに行ったんだって。

そしたらその現場が騒然としてて。テロップ担当の三宅も集められて。そしたらマコさんから「私、テレビ東京を辞める。最後の本番がテレビ東京音楽祭。それで音楽祭が終わった足でそのまま空港に行ってニューヨークに行くんだ」って言ったんだって(笑)。音楽祭が終わった足でそのままニューヨークに行くんだよ? 衝撃じゃない? で、それは衝撃なんだけど……そしたら三宅がそれを聞いて「じゃあ、俺が支えますっ!」って。フハハハハハハハハッ!

だからADもわかったんだろね。「あいつだったら熱くなる」って。で、「関係ないけど。当日スタッフだけど、前日から入れよう。入れちゃえ、入れちゃえ!」って(笑)。で、案の定三宅が……これ、三宅の視点だけど。「佐久間さん、俺、支えなきゃいけないと思って」っつってて(笑)。で、またその余計な熱いやつが1人、加わったわけ。テレビ東京音楽祭にね(笑)。

それで当日ですよ。当日。朝から技術打ち合わせっていうのが始まるわけ。で、音楽祭なんてもう本当にエース中ニュースの技術が集まるわけ。強面の、しかもメイン中継なんてベテランしか来ないから。カメラマンたちは普通に若いじゃん。でも、もうカメラマン上がりのベテランとかがいるから技術打ち合わせもただでさえピリピリするのね。「えっ、これ何? 何カメ? 決まってんの?」とか。みんなピリピリするの。

そこに……「なんでマコがいるの?」ってなるじゃん。やっぱり(笑)。もうとうにプロディーサーやってる人がいるってなったら技術がやっぱり大変な日だから。結構ピリピリし始めたんだって。「なに? これ、どうすんの?」って連打してきたら、マコさんがちょっとパニックになって。そしたらそれがもう本当、周囲の若手が技術が何か言うたびに「いや、これはですね……」って。音声が何か言っても「ああ、これはですね……」って。もうマコさんにしゃべらせない。水戸黄門のシステム。じゃあ、何でやってるんだよ?っていう(笑)。

助さんと格さんがガンガンに……だからもう本当、ディレクターできるクラスの若手がガンガンに技術を仕切っているわけ。で、その中にはテロップ担当の三宅もいるわけ。で、それが、次第に「どうやら今日がマコさんの最終出社日らしい」っていうのが広まり始めたの。たぶんがADが言い始めたんだろうね。「いや、実は……」っつって。そしたら、やっぱり技術のおじさんたちも長くやってるから、マコさんとの思い出もあるわけ。AD時代とかも知ってるわけ。「マコ、お前、今日で辞めるの?」みたいな。それで「みんなでマコを助けよう!」みたいな空気に……謎の一致団結感が生まれて。

で、三宅曰くね、「あの時、もう俺たち、ワンチームでしたね」っつってたよ?(笑)。いや、違うんだよ。いい番組を作る方向でワンチームはわかるんだけど、別にその「マコさん卒業特番」とかじゃないから(笑)。で、サブが……これはADの証言ね。「サブが、ちょっと異様な熱気になってたんですよ。なんかもう、番組作りはもちろんみんなちゃんとやってますけど。異様な熱気というか。みんな、声出すようになってて。なんか、高校の文化祭の最後の、『これでお別れだ』みたいな感じ、佐久間さんわかります? あんな空気なんですよ。正直僕、『本番の3時間前なのに……こいつら、持たねえな』って思いました」つってて(笑)。

だから、その本番の3時間前なのに「やるぞっ!」みたいな空気になり始めて。ADたちはちょっと冷めているの。若いから(笑)。で、おじさんたちが「やるぞっ! マコ、やるぞっ!」みたいな空気になっていて。で、リハが多少のミスもありながら、みんなで。もワンチームだから。三宅も言うようにワンチームだから。それでもう、いよいよ本番の直前よ。本番の直前でベテランのTK(タイムキーパー)さんが「本番1分前です!」って。さすがにもう大特番だから。あっちには、国分太一さんとか。みんないるわけ。歌手の方々もいるから。

で、天王洲スタジオなのね。六本木の方でもその画面見ながら、その1分前ぐらい。現場が緊張した時に天王洲スタジオ側。中継じゃなくて現場の方のスタジオにいる演出の福本っていうやつから急に連絡が来たんだって。で、福本ってのはずっと音楽畑で。なんだったら「鬼の福本」とか「軍曹」って言われるぐらい、仕事はできるけどピリッとしたやつなのね。ADも福本に怒られたらピリッとするぐらい真面目でいいやつなんだけど。そいつから1分前ぐらいに連絡が来たんだって。「すいません、入電です!」みたいな感じで。

だから、「なんかあっちでトラブルがあっちであったんじゃないか? そんなトラブルがもし起きたら、マコさんでその対処できるのか? 1分前なのに……」って。そしたら福本が「マコさん」「えっ、なんだろう?」「今日、最高の思い出、作りましょう!」っつったんだって。フハハハハハハハハッ! 福本、元バンドマンなのよ。結婚式でね、自分で演奏しながら。「いやーちょっと弾きたくなかったんですけど……」って。「嘘つけ! お前、朝からリハやってただろ?」っていうやつなのよ。福本、熱いやつなのよ(笑)。

「マコさん。今日、最高の思い出、作りましょう!」

(佐久間宣行)福本が「マコさん。今日、最高の思い出、作りましょう!」っつって。ちょっと、本体の方もそうなっちゃったんだよ。こっちのその中継チームのマコイズムが本体にも行っちゃって。それで本体のエースの福本が「最高の思い出、作りましょう!」っつって。そしたらマコさんから涙ぐみながらその六本木のスタジオにいる福本に向かって「うん! 最高の思い出、作ろうね!」っつって。始まる前から(笑)。ちょっとその、少し涙ぐんで。そしたらサブが……これ、ADの証言ね。「うわーっ!」ってなって。演出チームが生放送、ゾーンみたいになって。

「その中でやっぱり三宅さんが一番熱い顔、してましたね」っつって。あいつ、テロップ担当なのよ? あいつ、テロップ出すだけなんだから、別に熱くなる必要ないのよ。冷静さが必要なのよ。本当は。1個ずつ、押していかなきゃいけないんだから。だからあいつね、Creepy Nutsでミスっているからね(笑)。アドリブなのに歌詞を入れちゃってるんだから。なんだけど、それで始まって。もうヤバい空気なんだって。ADの証言によると。もうブワーッて勢いで始まって。「始まったぞーっ!」みたいな感じになって。

で、本番が始まって、サブのディレクターの役目としてまず最初、MC陣の名前テロップを入れていくわけよ。それ、サブのディレクターの仕事。ここから、横にいた三宅の証言に変わるの。リハで死ぬほど練習していたマコさん。三宅が「大丈夫かな?」って思って見たら……「緊張だったんでしょうね。佐久間さん。尋常じゃない手の震えだったんですよ。マコさん。俺、この人支えてえって思いました!」っつってて(笑)。「いや、お前はテロップを入れろよ! お前はお前のテロップを入れろ!」っていう(笑)。

で、多少のミスはあったものの、何とか4時間、本当に大事故もなく。しかも結構いい本番ができたらしいのよ。ADたちも言っていた。「やっぱりおじさんたちが本気になるとすごいっすね」っていう感じで、いい本番が終わったんだって。で、無事本番終了した。六本木の方、アーティストとかいる方は普通に撤収とか打ち上げとかやっているかもしれないけども、サブの方って普通は淡々と終わるんだけども。でも、こっち違うよね。だって、卒業なんだから。明日、ニューヨークに行っちゃうんだから。

で、サブで卒業式が始まったのね。で、マコさんがお別れの言葉を言ったんだって。技術とか皆さんに。「みんなのおかげで無事、やりきることができました。懐メロが流れているブロックの時に、自分の制作人生を思い出して、『この曲の時はこんなこともあったな。この曲の時はこんなことがあったな』って思い返したら、いつの間にか泣いてました。みんな、歌の力ってすごいよ!」って言ったんだって。フハハハハハハハハッ!

これさ、ちょっと待ってよ? 「歌の力ってすごいよ」って、そういう話? あと、マコさん、歌畑の人じゃないからね?(笑)。「みんな、歌の力ってすごいよ!」って言って。それでADが「えっ? 『歌の力ってすごいよ』? どういうこと?」って思って。それでパッと見たら、ベテラン技術陣が目に涙をためて。「マコはいいこと言うなー」っつって(笑)。「やっぱり歌の力ってすごいよな! マコーッ!」ってなって(笑)。

で、サブが感動の空気に包まれて。で、花束の贈呈の後、みんなで記念撮影して。マコさんがサブからブワーッて出ていって。「これで終わった」と思って。それでADたちが「いやー、すげえもんを見たな」と思ったんだって。それで技術も拍手で送り出してさ。「いや、いい本番だった。歴史に残る本番だった!」みたいになったんだって。

それで、その後の話なんだけど。その直後に、そのADたちが今半のすき焼き弁当を技術の分、用意してなかったことが判明して、めちゃくちゃブチ切れられたっていう。フハハハハハハハハッ! 「てめえ、なんで用意してねえんだよ!」「感動してたじゃーん……」っていう(笑)。っていう、テレビ東京ちょっといい話ね(笑)。

(中略)

(佐久間宣行)あとね、さっきのフリートークのおまけなんだけども。テレ東音楽祭が終わった翌日、ニューヨークにそのまま……本当に空港に行ったんだって。だから何人かの仲のいいスタッフだけ、お見送りに行ったんだって。空港にね。成田に行ったんだって。そしたらマコさん、大量の荷物とギターを抱えていたんだって。「あれ? マコさんってギター、やっていたかな?」って思ってそのディレクターがね、「マコさん、ギターやってましたっけ?」っつったら「うん、最近始めた」って(笑)。

ギターを持って旅立つマコさん

(佐久間宣行)なんか面白くない? ニューヨークに行く直前に最近始めたギターを抱えてニューヨークに行くんだよ? もうそうなると、弾き語りで食っていこうとする人みたいな。ストリートの人みたいになっちゃうから。ということらしいよ。今はもう、ニューヨークにいらっしゃるんでね。あれですけども。

<書き起こしおわり>

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