渡辺志保 TikTokダンスクレジット問題を語る

渡辺志保 TikTokダンスクレジット問題を語る MUSIC GARAGE:ROOM 101

渡辺志保さんが2021年6月4日放送のbayfm『MUSIC GARAGE:ROOM 101』の中でTikTokなどで浸透しつつある「ダンスクレジット」について話していました。

(渡辺志保)ここで私からもう1曲、お届けしたいんですけども。最近、私が学んだことをここで皆さんにシェアしたいと思うんですが。最近、ニューヨーク・タイムズとか、その他にもアメリカのエンタメニュースを伝えるメディアでちょこちょこ話題になっている問題なんですが。TikTokにおけるダンスクレジットの問題があるそうなんですね。

で、最近、TikTokとか、あとはTikTokで流行った動画をYouTubeなどに転載している動画などがあるんですけども。そこでかならず「DC」って書いてあるんですよ。「DC+アカウント名」みたいな。たとえば「DC Shiho Watanabe」みたいな感じでノートが記されていることが多くて。

(渡辺志保)で、この「DC」ってなんだろうな?って思っていたら、それは「Dance Credit」の略なんですって。なので「Dance Credit Shiho Watanabe」って書いてあったら「この動画の中で踊られているダンスは渡辺志保さんが作りましたよ」っていう意味のクレジットなんですよね。それがなぜ、そういうことになったのか?っていうと、今、どんどんどんどん振り付け、ダンスがバイラルヒットすることによって、そのオリジネーター。元々、その振り付けを作った人が全く得をしていない。その人になんの利益も生まれていないっていう問題があるということです。

それがあまりよろしくない形で表面化したのが、先日、ジミー・ファロンというアメリカで有名な司会者、俳優の方がいますけども。ジミー・ファロンが夜のトーク番組(『Tonight Show』)というものを持っていまして。ザ・ルーツがハウスバンドとしてその番組に出ているんですけども。で、そのジミー・ファロンのショーにアディソン・レイという女性アーティスト、女性インフルエンサー、セレブリティが出演したわけなんですね。で、そのアディソン・レイちゃんは何で有名になったのかっていうと、それがTikTokなんですね。

まだ若干19歳とかハタチとか、それぐらいの若さで。しかもTikTokも始めてまだ1年半とか1年とか。それぐらいのレベルなんですけども、今やTikTok上のフォロワー数が8000万人もいるインフルエンサーになっていて。最近、自分でもアーティストデビューをしてシングルを発表したという流れがあります。で、私はなぜ、このアディソン・レイのことを知っていたかっていうと、ちょっと前にカーダシアン家とつるんでいたんですよね。

で、私はまだ全部は見ていないんですけども。カーダシアン家のリアリティーショーの最終シーズンにこのアディソン・レイ、ちょこちょこ出ていて。しかも、カーダシアン家の長女、コートニー・カーダシアンと最近友達付き合いをしているっていう。それが本当の友情なのか、それとも商業的ななにかを見込んだ嘘の友情なのかっていうようなゴシップ記事を読んでこのアディソン・レイのことを知ったわけなんですけども。

(渡辺志保)で、このアディソン・レイがジミー・ファロンの番組に出た時、TikTokで流行っている8個のダンスムーブを披露したんですね。演奏はザ・ルーツがバックでゴージャスなインストゥルメンタルを演奏していたわけなんですけども。そこで披露した8個のダンスっていうのが、実は全て若い黒人の子たちが作ったダンスムーブなんですって。

で、それを彼女は番組中でそういうったことに全く触れず……「このダンスは私が作ったわけじゃなくて、○○が作りました。こっちは○○が作りました」と一切言わず、自分で笑顔で踊っていたということなんです。

ダンスの作り手を示さずにテレビで紹介

(渡辺志保)で、それが非常にバッシングを受けてしまったんですよね。で、これだけを聞くとテレビ番組でよくありがちな企画なんじゃないか?っていう風にも思うと思うんですけども。それこそ、ニューヨーク・タイムズの記事なんかを読むと、やっぱり今の時代、バイラルになるということはイコール、お金が発生する。利益が発生する。金儲けの道具になるって言ったらちょっと下品かもしれないですけども。立派な職業のひとつとまで言っていいかはわからないですが。もちろん、その金銭が発生する重要な出来事なわけですよね。ネット上で口コミヒットするっていうことは。

で、その機会を白人の女の子が奪ったという図式でこの問題に関しては非常に議論がなされているという状況です。これはイコール、若い黒人たちに利益がもたらされるチャンスを白人が奪ってしまったという図式で問題になっているということです。

(渡辺志保)この問題、ネット上の記事などで調べると2000年の映画『Bring It On』。日本語のタイトルは『チアーズ!』という作品ですが。この映画のことがしばしば言及されるんですね。で、私も当時、『チアーズ!』がめちゃくちゃ好きで。家で何回も妹と一緒に見ていたんですけども。

改めて、この『チアーズ!』をアマゾンプライムで見返したら「あっ!」って思って。コンプトンにあるブラックハイスクール……黒人の生徒さんが多く通う高校のチアリーディング部が作った振り付けを白人の子たちが多く通う高校のチアリーディング部の方がパクって。で、「この振り付けで大会で優勝しよう!」っていう、その白人の方の学校のお決まりの振り付けになっちゃっていて。それが黒人コミュニティーからの搾取だっていうことで。そうした問題もひとつ、描いていた映画だったりするんですけども。それと全く今、同じことがTikTok上で行われているという風にその映画『チアーズ!』を持ち出して説明している記事も多かったです。

で、もし……日本でも同様の問題が起こりうる可能性というのは非常にあるでしょうし。中学生ぐらいの子が作った振り付けを有名なダンサーさんが使って。それでインスタグラムだとかYouTubeなどでヒットして、有名なダンサーさんにばかりお金が入るみたいなことは十分、ありうることだと思うんですけども。現在のアメリカの場合にはそこにさらに人種の階層的な問題もはらんでいるということで今、とても議論がなされていると同時に、冒頭にお伝えしました「DC(Dance Credit)」というものをかならず明記するという対策も取られているということでした。

音楽だと、たとえば1曲につき絶対に作詞家、作曲家、アーティスト、出版権、原盤権っていう細かい権利がいくつもわかれていて、印税が分配される人というものが明確になっているわけですが。ダンスってそういうことはないわけですよね。それで今、TikTokやインスタグラム、YouTube。それからたくさん話題になっていたのはDubsmashっていうさらにちょっとアンダーグラウンド寄りというか、さらにコミュニティーが小さい動画配信アプリがあって。そのDubsmashなんかも問題にはなっていたんですけども。

だから、そういうところで披露されるダンスっていうのはなかなか、クレジットがあって印税がどういう風に分配されるみたいな仕組みがないでしょうから。これから、そういう法整備みたいなものが進んでいくんだろうか? とも思いましたし。そのクレジットを与えて、その人にちゃんとお金であったり、あとはなによりもリスペクトが集まるようにするということは本当に大事なことだと思いました。

というわけで、そのTikTokでも大ブームになった1曲を紹介したいと思うんですけども。K Campというラッパーの『Lottery』という曲が2019年の曲なんですけども去年、TikTok上で超超バイラルヒットして。で、その『Lottery』に振り付けを付けたのがジャライア・ハーモンさんというアトランタに済むまだ14歳の女の子なんですけども。彼女もまた、自分のクレジットがないままこのダンスばっかりがバイラルヒットになっちゃって。

それに対して非常に憤慨しているという記事がニューヨーク・タイムズにも載っておりました。「Renegade Challenge」という名前でたくさんネット上にもアップされているので。興味がある方は「K Camp Renegade Challenge」とかで検索すると出てくると思います。というわけで、ここでお届けしましょう。K Campで『Lottery』。

K Camp『Lottery』


<書き起こしおわり>

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