星野源とWANIMA KENTA「世の中のずらし方・振り向かせ方」を語る

星野源 WANIMA『Chilly Chili Sauce』を語る J-WAVE

星野源さんが2021年5月29日放送のJ-WAVE『WOW MUSIC』の中でWANIMA KENTAさんと「世の中のずらし方、人々の振り向かせ方」について話していました。

(KENTA)はい。続いては制作についてもお伺いしたいんですけども。「SAKEROCKの頃から歌っている今に至るまで、音楽に振り向かないような人たちを振り向かせる。世の中をずらすという気持ちでやっていて、自分が好きなものも自分が作ることで中心に持っていってやるという目標でものづくりを繰り返している」という記事を読み、僕はすごく感銘を受けました。なんかすごく反骨精神を僕は感じて。やっぱり自分たちもスリーピースで……スリーピースでの新しい可能性とかを追い求めていて。バンドサウンドでの表現方法だったり、手法というのをスリーピースでやれないか?っていうのを考えてたので。話せる範囲でいいので、世の中のずらし方や振り向かせ方、なにかアドバイスをいただけたら……。

(星野源)ずらし方か……。なんかね、あんまり偉そうなことは言えないっていうか、わかんないんだけど。なんて言うか、昔から自分が好きだって思うものとか、自分がやりたいと思ってることを否定されることが多くて。「それ、やってもしょうがないんじゃないの?」とか「伝わらないんじゃないの?」とか。でも、それを自分はやりたいし。「これは絶対に面白い」と思っていて。「でも世の中の人で、そんなものが好きな人はあんまりいないよ」みたいなことを言う人ばっかりだったの。で、「つまんないな」って思っていて。

なんか、やっぱりそいつらを振り向かせたいというか。それで、結構傷つくことが多かったんですよね。仲間はずれになることが多くて。それでも、なんか仲間に入りたいから頑張るんだけど無理で。「じゃあ、もう自分の世界を作るしかないんだな」っていうことに気付いて。「誰かの仲間に入ろう努力をするんじゃなくて、俺は自分の陣地を作って。そこに来たい人はどうぞっていう感じにしよう」と。それで「自分の音楽をやるんだ」っていう思いがすごく強かったんだよね。

(KENTA)うんうん。

「もう自分の世界を作るしかない」

(星野源)で、SAKEROCKに関してはインストバンドで。当時、そのSAKEROCKを始めて割とすぐにコラボブームがすごかったんですよ。インストバンドといえば、絶対にボーカリストを呼んでくるっていう。「えっ、それ、インストバンドじゃないじゃん?」っていう。でも、そんなのばっかりだったの。で、それがすごい嫌で。なんか、インストバンドのまま、みんなに聞いてもらったり、見てもらえるにはどうしたらいいか?っていうのをずっと考えてた。

だから昔からすごく流行っているような、みんなが注目していて、みんながやってることをやるっていうことがなかったから。みんなが絶対、全員こっちを向いてないところでやって。それで振り向いてもらうっていうことしかしたことないから。だから、そういうのが癖になってるというか。で、「ただここで自分たちの好きなことだけをやっていても何も変わらない」っていうことは身に染みて分かっているから。だったら、もういろんなところに行って、グワーッと首根っこをつかんで、バーッと持ってくるみたいな。

だからこそれこそ、一時期は演劇の音楽を「やらせてください!」っていろんな人に言いに行って。音楽をやらせてもらうようになって。で、その演劇だったり、コントだったり……それこそバナナマンのお二人のコント公演の音楽をやるようになったりとか。それで最初に作った曲が『会社員』の元になっていたりするんだけども。そうすると、やっぱり振り向く人がちょっと出てくるんだよね。

あと、当時はネットもなかったから。オーディションを受けて事務所に売るぐらいしかなかったのよ。当時、音楽としてデビューするには。だから、いろんなところに送るんだけど、やっぱりことごとく落ちて。あとは地道にライブするぐらいしかないんだけど。なんかそれをやっていてもしょうがねえなと思って。まず、自分たちでCDを作って。それを俺1人でかばんに詰め込んで、街中のレコード屋に行って「売ってくれませんか?」って言いに行くっていう。そういうとこから始めているから。だからなんか、まあ、そういうのは好きなんだけどね。こう、振り向いてもらうっていうのが好きだっていうのもあるけども。

やっぱりそうすると、もうだいたいがダメなんだけど。9割はダメなんだけど。1割の心ある人たちが……だいたいは門前払いなんだけど。「うーん。じゃあ、1回聞いてみるわ。ちょっと待っていてね」っつって奥に行って。それをドキドキしながら待っていて。それで出てきて「じゃあ、10枚」って言われて「ありがとうございます!」みたいな(笑)。で、その人がライターの仕事もやっていて、雑誌でちょっと書いてくれてまた広がって……とか。そういう風にしてSAKEROCKが広がっていったから。

自分のやることがすぐ通用すると思っていない

(星野源)だからなんか、そもそも自分のやることがすぐ通用すると思ってない。それは歌でもそうだし。だから歌を届けるにはどうしたらいいか?っていうのをいつも……宣伝だったりもそうだし。ミュージックビデオとかも好きだから。「どういう風にしたら届くか?」っていうのをいつも考えている。

(KENTA)次は曲についてもお伺いしたいんですけども。今まで制作してきた曲の中で、生み出すのに苦労したり、思い出に残っている曲はありますか?

(星野源)思い出に残ってる曲……いろいろある。いろいろあるなー。一番最近で『創造』っていう曲があって。それはDAWをはじめて、ちゃんと自分で打ちこみして、プリプロして。それを生演奏にまたしていくっていう曲だったんだけど。そのスーパーマリオブラザーズの35周年のテーマソングで。だから、マリオ的な要素を……普通だったら、そういう要素の音を入れたら任天堂さんに怒られるんだけど。「今回、いくら入れてもいいですよ」っていう感じだったのね。

(KENTA)ああ、もうあのコインのチャリンチャリンチャリンとか?

(星野源)コインの音とかもね。でも、実際にそうなると、「実際のSEをただ入れるだけだとつまんないな。よし、全部弾き直すぞ!」みたいになって(笑)。それで全部、アナログシンセで弾いているの。キノコを取った時の大きくなる音とか。

(KENTA)ああ、源さんがですか?

(星野源)僕が弾いていたり。あと、バンドメンバーが弾いていたり。で、それをちゃんと曲に組み込もうと思って……それがもう、壮絶だったの。その作曲が(笑)。自分の曲としてもちゃんと成立させたいから。ただのファンソングじゃ絶対にダメだから。自分のものづくりっていうものをちゃんと曲にしようと思って。その上で、わかる人にはわかるっていうことで。マリオの……僕が一番好きなのはゲームボーイのスーパーマリオランドっていうゲームの1面のBGM。それが大好きなんだけども。それをわかるかわからないかぐらいで、ちゃんと曲に合ってる状態は裏メロとして入れたり。だからなんか、そういうのを自然に全部組み込むっていうのかな? それをやるのがすごい大変で。2、3ヶ月ぐらい、ずっとそれをやっていたの(笑)。

(KENTA)1曲をですか?(笑)。

(星野源)そう(笑)。

星野源『創造』

<書き起こしおわり>

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