東野幸治 レッド・ツェッペリンとブルーザー・ブロディを語る

東野幸治 レッド・ツェッペリンとブルーザー・ブロディを語る 東野幸治のホンモノラジオ

東野幸治さんが2021年5月28日放送のABCラジオ『東野幸治のホンモノラジオ』の洋楽紹介コーナーでレッド・ツェッペリン『移民の歌』を選曲。ブルーザー・ブロディの思い出と絡めて話していました。

(東野幸治)さあ、そして洋楽なんですけれども。これ、毎週毎週、いろいろ考えるんですよ。「あの時代、この時代の洋楽、何にしよう?」って考えていて。今回もやっぱりイギリスからで。普通ならだんだんだんだんと今、現代に近づいていくですけど。思い出せば思い出すほどどんどん過去の方に行ってしまって。今回は恐らく1967年とか8年ぐらい。だから僕が生まれた時ぐらい。1歳、2歳ぐらいの時の楽曲なんですよ。レッド・ツェッペリンっていうバンド。これ、だからビートルズとか、ローリング・ストーンズの後ぐらいにハードロックみたいな。ブルースのような、ロックのような、サイケデリックな感じのバンドがいてて。レッド・ツェッペリン。

なんか飛行船とか、たしかそういう意味で。ほんでレッド・ツェッペリンとディープ・パープルで二大ハードロックバンドだったんです。で、その中でメジャーな方がディープ・パープル。「ドゥンドゥンドゥーン、ドゥンドゥンドゥドゥーン♪」って始まる、これがディープ・パープルなんですよね。

(東野幸治)で、やっぱりだからビートルズが人気だったらローリング・ストーンズが好きになるように、やっぱり天の邪鬼やから「ディープ・パープルよりは……」ってことでレッド・ツェッペリンというバンドを知って。それで当時、「三大ギタリスト」ってよく言われてたんですよ。今から20年、30年ぐらい前にお笑いビッグスリーって言ったらたけしさん、タモリさん、さんまさんみたいに言われていたように。たのきんトリオの3人とか。新御三家とかね。郷ひろみ、西城秀樹、野口五郎とか。「3」が好きですから。

で、三大ギタリストって言われたのがエリック・クラプトン。親日家で、クリームっていうバンドを組んでたりとかして。アルコール依存症になったりとか、いろいろプライベートで不幸なことがあって。20、30年ほど前ぐらいからK-1が好きになって。表参道とか裏原とかのガードレールに座ってたりとかっていう目撃情報もあって。で、『Unplugged』っていって有名なギタリストなんですけども、アコースティックな感じで昔の楽曲とかを弾いたりもしているというエリック・クラプトン。

あと、ジェフ・ベックっていう、主にバンドっていうよりは単体ですごいギタリストっていう人と。あと、ジミー・ペイジっていう。これが三大ギタリスト。そのジミー・ペイジがレッド・ツェッペリンのギタリストなんすよ。で、ボーカルがロバート・プラントっていう人で。2人ともなんとなくパンタロンを履いていて。ちょっとこう、サイケデリックな、カラフルなオレンジ系のシャツ。胸がはだけていて、ちょっと胸毛が見えて。で、肩ぐらいまでの髪の毛で、ちょっとパーマをかけるみたいな感じで。

で、ドラムがジョン・ボーナムっていう人で。あとベースもいてるんですけど、ベースはなんかいまいち存在感がないけど。主にこの3人で。当時、60年代後半ですから、もう本当に酒、女、ドラッグ。三大要素を全部やってるっていう感じで。当時のバンド、よくあるんですけど。いろんな国に行ってライブするんですけど。で、ホテルに入る。スイートルームに入る。そこにグルーピーっていう、今でいう追っかけのファン。グルーピーとかがやってきて。もうなんかお酒やドラッグや、なんかようわからん感じになって。そのスイートルームにある家具とか電化製品を下に投げるっていうね。もうこれ、よくやってたんですよ。ロックスターは(笑)。

それで一番投げてたんがレッド・ツェッペリンだと言われてるぐらいに投げまくってる人で。で、ライブになったら全員が技術あるから。ソロの、言ったらインストみたいな感じで。ギター弾いたりとか。毎回楽曲は同じやけど、同じように弾かないテクニシャンみたいなことは『ミュージック・ライフ』に書いてあったんですよ。ほぼほぼ生で見たことないです。僕が好きになった頃にはもう解散してますけれども。デビュー当時の話で。で、噂によると、これはホンマかどうか知りませんけども。ジミー・ペイジがギターソロをやったらもう長いから。ロバート・プラントっていうボーカルが袖に引っ込んで。楽屋に帰って女の子とエッチして帰ってきて歌う、みたいな逸話が……ホンマかどうかわからんけど、そんな話もあるぐらいのレッド・ツェッペリンをちょっとかけたいなと思って。

で、じゃあ楽曲を何にするかな?っていう時に浮かんだのが『天国への階段』か『移民の歌』なんですよ。で、どっちにしようかな?っていう時に『移民の歌』にしたいと。

(東野幸治)なぜ『移民の歌』かというと、これもこの『ホンモノラジオ』で話すネタが30年前、40年前の話で本当に申し訳ないんですけど。僕ね、ブルーザー・ブロディが死ぬほど好きなんですよ。全日本プロレスが僕、小学校の時……5年生ぐらいの時に大好きで。

お笑い芸人って土曜日の夜8時、何を見てたか?って言ったら『ひょうきん族』か『8時だョ!全員集合』なんですよ。で、『ひょうきん族』が始まる前は『欽ドン!』……『欽ちゃんのドンとやってみよう!』がフジテレビでやってたんですよ。たしかね。それがお化け番組で。『8時だョ!全員集合』がそれを倒して、次に『ひょうきん族』が倒すみたいな。お笑い好きはそれの系譜。それを追っかけてるんですけど。僕はずっとね、日本テレビの全日本プロレス中継を見てたんですよ。もう大好きで。

土曜8時の全日本プロレス中継

(東野幸治)で、特に好きなのが年末の世界最強タッグリーグ戦というのがあって。ジャイアント馬場、ジャンボ鶴田組とか。ミル・マスカラス、ドス・カラスっていう覆面レスラーの兄弟コンビ。とか、ブッチャー、シーク組とか。ザ・ファンクスとか。たしか俺ね、小学校5年ぐらいの時……だからクリスマスぐらいですよ。決勝がザ・ファンクス。テリー・ファンクとドリー・ファンク・ジュニア。兄弟で青いパンツを履いていて。日本の中では言うたらベビーフェイス。善玉者で。ほんで悪役がブッチャー、シーク組。その決勝やったんですよ。

それ、今でも覚えてますけど。決勝が始まるけど、ブッチャーって「地獄突き」って言うて、人差し指と中指で相手の喉を突くんですよ。あと、エルボーとかの技があるんですけおdも。ザ・シークってなんにもないんですよ。アラブの怪人で。いつものサウジアラビアの皇太子みたいな感じで、白い布切れに輪っかを頭に着けて登場するんですけど。もうずっとね、客席をウロウロしてるんですよ。で、客席をウロウロして。たまに口にガソリンみたいなのを含んで、火を持ってバーッて火を吹いたりとか。ほぼほぼ技って蹴る、殴る、キャメルクラッチだけなんですよ。

で、そのブッチャー、シーク組対ザ・ファンクスの戦いがあって。ほんで、そん時にたぶんね、ザ・シークがパンツの中にね……だいたい反則レスラーっていつもパンツの中に凶器を隠し持つんですよ。だから栓抜きとか、五寸釘みたいな。そういうのの先っぽで頭とかおでこを突くんですよ。そしたら、おでこを突かれたレスラーは簡単に切れるようになっているんですけど。当時は子供なんかそんなん知らんから。で、そういうのをやってたけど、そん時だけたぶん優勝したいからかどうか、知らないですけど。僕からするとね。フォークなんですよ。フォークを持って、テリー・ファンクの方。『キン肉マン』で言うテリーマンですよ。言うたら女の子に人気の次男で。中川家で言ったら礼二っぽい。前に前に出てくる。だからドリーが剛やったら礼二がテリー・ファンクなんですよ。

で、テリー・ファンクの右腕かな? 右腕のその注射を打つところにガンガン、フォークで刺すんですよ。で、「ギャーッ!」って。ファンとかも絶叫して。もうガンガンに刺す。で、いい味を出しているジョー樋口っていうスキンヘッドのちっちゃいお爺ちゃんみたいなレフェリーがテリーがガンガンガンガン、ブッチャーとシークにフォークで腕を刺されて。「うわーっ!」ってのたうち回っているんですよ。で、ドリーが「これはアカン!」ってなって。タッグチームやから。テリーがリングの中にいる時はロープの外で待っているんですけども。

「これはアカン!」ってなって兄貴やから入ってくるんですよ。ほんだらもうジョー樋口がいつもね、ドリーを止めるのよ。「お前、アカン、アカン!」って止めている隙に、後ろでブッチャーとシークがフォークでガンガン腕を刺すんですよ。で、テリーはのたうち回ってギャーギャー言うて。みんなも絶叫してる中、それで5分、10分休憩して。ほんで、「これは処置をせなアカン」っていうことで。なんか若手レスラーかなんかで、試合中ですけども。なぜかテリー・ファンクだけ控室に帰っていくんですよ。

ほんでドリーが1人でブッチャーの地獄突きとかエルボーとかシークのキャメルクラッチとか殴る、蹴るみたいなのを順番にやられて。もう万事休す!ってなって。「ワン、ツー、ス……」ぐらいの時に返すんですよ。ほんで「ワーッ!」ってなって。もう本当にすごいのよ! 俺、小学校5年の時に見てて。ドキドキしながら。ほんでもさすがにこれ、ドリーはアカンってなって。だんだんと「ワン、ツー」で返していたのが「ワン、ツー……」で返すとか。カウント2.5、2.6、2.7、2.8ぐらいになって。

で、最終的にブッチャーかなんかでエルボーがなんか決まったんかな? もうこれはアカンわって思ってジョー樋口側の「ワン、ツー」ってやって。「優勝はブッチャー、シーク組かな?」って思ったら……右腕に包帯を巻いたテリーが走ってきて! 花道からブワーッて走ってきて。もう怒り狂って。右手はもう使われへんから、左でガンガンガンガン怒って、ブッチャーとシークを殴り続けんねん。ほんで「うわーっ!」ってなって。ブッチャーとシークがついに押されて。反則負けで。それで最終的にザ・ファンクスが優勝するっていうの子供ながらに見て。「すげえな!」と思って。

(東野幸治)で、そこから毎年、俺の年末は世界最強タッグを見るっていうのを毎年やってた中……ごめんなさいね。レッド・ツェッペリンの話、ちょっと長くなりますけども(笑)。そんな中、ある年に全日本プロレスにブルーザー・ブロディっていうのが来日するんですよ。これは後に『プロレススーパースター列伝』という少年サンデーで連載した漫画で書いてあったんですけども。いろんなレスラーのエピソードを書いてる漫画があるんですけども。当時、スタン・ハンセンっていうのがいて。ウエスタン・ラリアットっていって。ブルーノ・サンマルチノとニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンで戦った時に相手の首の骨を折ったっていう。ほんで「すごいやつだ!」ってなって、全日本でエース格で来るんですけども。

ブルーザー・ブロディリーも同じ大学のアメフト部やったんですよ。アメフト部で、それで1回、新聞記者になったインテリやねんけども、プロレスラーに転向してやってくるんですけど。そのブルーザー・ブロディが2メートル越えで体重が……もうすごいデカいんですよ。だから日本人とかめちゃくちゃちっちゃく感じるぐらいデカくて、なおかつめちゃくちゃスピーディーで。めちゃくちゃジャンプ力があって。で、ボディースラムっていう技があるじゃないですか。相手の股間に右腕入れて、肩に担いで投げるっていう。あれも俺、初めて見てびっくりしたんですけども。ブルーザー・ブロディは重いやつでも軽々と持ち上げて。ヒョイッて投げたら相手がめっちゃ飛ぶんですよ。で、ドーン!ってなったりとか。

あと、ドロップキックも言うたらもう頭の高さまで全然飛べるし。馬場さんの16文キックもすごいかもわからんけど、ブルーザー・ブロディのキックなんてぐらいエグいぐらい痛そうに見えるし。で、登場の時はチェーンを持ってマタギみたいな格好で。だからベストみたいな。裸に上、なんか毛並みのいい……だから壁画のクロマニヨン人みたいなベストを着て。黒パンツにファーのついた靴を履いてやってて。それが世界最強タッグリーグでブルーザー・ブロディ、ジミー・スヌーカ組っていうのが出てくるんですよね。で、その時の登場の曲がレッド・ツェッペリンの『移民の歌』なんですよ。

それは俺、だから中学の時ぐらいはレッド・ツェッペリンを知っていたけども。で、ブルーザー・ブロディが好きになって。「あれ? これ、どっかで聞いた曲やな?」と思ったら、ツェッペリンの『移民の歌』やって。それでさらに好きになったのもあるんですよ。で、ジミー・スヌーカとブロディがコンビを組むんです。で、なかなかいい感じになるんやけども。ジミー・スヌーカ、ちょっと軽量級で。空手殺法みたいなのをするんですけど、いつも最終的にはそれがやられて負けちゃうっていうのが多かったんですよ。

ホンマはブルーザー・ブロディがコーナーポストとか、いろんなところから走ってきて、キングコング・ニードロップみたいな。めちゃくちゃジャンプして、自分のひざを相手の頭にドン!ってやってやっつけるみたいなのが多かったんですけど。それである時からハンセン、ブロディ組が登場するんですよ。で、「ええっ?」ってなって。「超獣コンビ」って言われて。それの決勝がジャンボ鶴田、天龍源一郎対スタン・ハンセン、ブルーザー・ブロディ組だったんですよ。ほんで決勝で、それを俺もリアルタイムというか、普通に土曜日の8時に見てて。

鶴田・天龍 VS ハンセン・ブロディ

(東野幸治)会場もなんか両国国技館……蔵前から両国になったんかな? 異様な熱気で。どっちかって言ったら、たしかにジャンボ鶴田、天龍源一郎も人気やけども。そん時はほぼ5分5分か6:4ぐらいでもうハンセン、ブロディの方が人気なんですよ。ほんで、それがやっていくうちにどんどんどんどんハンセン、ブロディが押していって。場外に落ちたり。なんか天龍を2人でやっつけたり。鶴田を2人でやっつけたりとかやりながら。ちょっと場外に落ちたりした時に……20分ぐらい経ったんかな? 鶴田が下に落ちて。天龍源一郎も下におって。たしかブロディが天龍の頭を鷲掴みにして。リングの中にパッと入れるんですよ。

ほんでブロディがまた上がってきて。天龍源一郎をロープに振った時にスタン・ハンセンがもう左腕のサポーターを上げた瞬間、もう両国が「うわーっ!」ってなって。ほんでウエスタン・ラリアットで「ワン、ツー、スリー」で勝負がついて優勝して。その時、後でブロディが同じように「ワン、ツー、スリー!」ってやってるのがすごく健気でよかったんですよ(笑)。一応、立てるっていう。まあ、外国人プロレスラーの中で言うたら一番トップ。横綱は当時、スタン・ハンセンで。その次がブロディみたいな感じで立てて優勝するってなって。もうすごく子供心に嬉しかって。

(東野幸治)で、その後、アニマルとホークのロード・ウォリアーズが緊急来日するんですけども。その時に、ブルーザー・ブロディからすると自分はハンセンと同格。もしくはハンセンの次という自覚があるけど。このロード・ウォーリアーズがタッグでやってきて、5分ぐらいで勝負を終わらすっていうような、一時すごい、瞬間風速がすごいブームになるんですけども。全日本プロレス側がやけにそれを、ロード・ウォリアーズをプッシュするから、ブルーザー・ブロディがちょっと拗ねはって。新日本プロレスの方に行くんですよ。

で、猪木さんとかとやったりとかってやっていく。そんな中、プエルトリコがどこかで試合終わりにレスラーの方と喧嘩になり。レスラーの方がナイフかなんかでブロディを刺して、41歳で亡くなるんですよ。「えっ、亡くなったんや!」って当時、そのニュースを聞いてショックを受けたんですけれども。そのブルーザー・ブロディの入場曲でレッド・ツェッペリンのこの『移民の歌』を聞いてほしいと思います。それでは『ホンモノラジオ』、始まります!

Led Zeppelin『Immigrant Song』

<書き起こしおわり>

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