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渡辺範明と宇多丸『ファイナルファンタジー10』を語る

渡辺範明と宇多丸『ファイナルファンタジー10』を語る アフター6ジャンクション

渡辺範明さんが2021年4月22日放送のTBSラジオ『アフター6ジャンクション』の中でプレイステーション2時代のドラゴンクエストとファイナルファンタジーについてトーク。『ファイナルファンタジー10』について話していました。

(宇多丸)といったあたりで、まずはそのプレイステーション2時代の最大のトピックはやはりスクウェア・エニックス……というか、この大河シリーズの前提が崩れちゃったんだけどっていう(笑)。

(渡辺範明)そうですね(笑)。まあ実際、合併後も開発チーム、開発文化をそれぞれ混ぜないようにしようっていう感じで最初は進んだんで。両タイトルの色合い自体は今後もある程度、維持されていくって感じになります。

(宇多丸)なるほど。じゃあ、ドラクエ・FFはどうなっていたのか?っていうところに行ってみましょうか。続いてのテーマはこちらです。

(宇内梨沙)3DグラフィックRPGのひとつの到達点。『ファイナルファンタジー10』。

(宇多丸)ねえ。宇内さん、今客観的にタイトル読みしてますけど、全然そういう立場じゃないですよね。きっと、気持ち的には(笑)。

(宇内梨沙)そうですね。

(宇多丸)さっきから顔、上げないもんね。どうなってんだよ(笑)。

(宇内梨沙)「到達点」どころかもう、「最高峰」っていう立ち位置ですね。私にとっては。

(宇多丸)ちなみに宇内さんはおいくつぐらいの時にこれ、やってたんでしたっけ?

宇内梨沙さんのFF10体験

(宇内梨沙)2001年に10が発売されたので、ちょうど10歳。小学校高学年の時に。兄が元々購入していて、兄が学校から帰ってくる前にコソコソと兄の部屋に入り込んでプレーしてましたね。

(宇多丸)ちょっと大人な感じもあったんですかね。やっぱりね。そこからいろいろね、学んだことというかね。いろいろと思い入れたということですが。そのストーリーにもグッと来たということですよね?

(宇内梨沙)元々、初めですまともに触ったRPGが『ファイナルファンタジー10』で。それまではもう10歳の子供って、難しい物語だったり、すごく文章を読まなきゃいけないゲームって難解すぎてプレーできない。それまでは、特にそのマリオ系のゲームでたぶんたくさん遊んでたんですけど。兄と一緒に。で、初めてのFFが……どうして私、これがすんなり入ってきたかっていうと、FF史上でも珍しいフルボイスのゲームだったんですね。

(宇多丸)全部、そのセリフに声が当てられている。

(宇内梨沙)たとえばムービーシーンだったり、大事なところだけ声が当てられるっていうもの、あったりしますけど。もう本当に全員、ちょっと会話するだけでも全部、声が当てられていて。だから、その文章を読まなくても物語がすっと入ってくるっていうのが小学校高学年の私にとっても、わかりやすかった。

(宇多丸)ある種、ドラマ的にね、見れますもんね。

(宇内梨沙)「音でわかる」っていうのが非常によかったですし。あと、生と死と恋愛っていうものがその大きなテーマだったので。非常にわかりやすい物語だった。『タイタニック』とかもそうですけど、子供が見てもこの2人が愛し合ってて。でも、この人がいなくなってしまって悲しいっていう、本当に王道のわかりやすい物語だったからこそ、私でも理解できた。あとは、キャラクターそれぞれが非常に個性豊かで立っていたので。なんかゲームで映画以上の物語を表現できるんだっていうのをこの『ファイナルファンタジー10』で初めて知って。ゲームってこれまでは対戦だったり、プレイヤー同士で楽しむものだって思っていたんですけども。

(宇多丸)まあ一種、即物的なね、楽しさというか。

(宇内梨沙)ただ、そうじゃなくてもう本当にいろんなこと……愛とは何か? 生死とは何か? みたいなものまで考えさせてくれるものだっていうのを『ファイナルファンタジー10』で学べたので。いまだにもう……。

(宇多丸)ある意味、その大人向けっていうか、大人の鑑賞に耐えうるような物語作品として最初にきっちりインパクトを受けたのが10ぐらいの感じですね。なるほど。はい。渡辺さん、そんな宇内さんのファーストインパクトといいましょうか。思い出、いかがですか?

(渡辺範明)そうですね。たしかに僕の中での『ファイナルファンタジー10』の位置づけも、やっぱりファイナルファンタジーシリーズが7から3Dのファイナルファンタジーというのを作り始めて。それの一旦の完成形というのが10だと思ってるんですね。で、技術的なことで言うと、リアルタイム描画の3Dの背景ができるようになって。前は実は3Dっぽくしてるけど、背景は書き割りだったりとかしたんですけど。プレステ1時代は。これが本当に3D背景できるようになったり。

あとはフェイシャルモーションっていう、要するに表情ですね。表情がキャラクターに入れられるようになったっていうのも、今思えばそこが切れ目だったり。あと、さっき宇内さんががおっしゃったような、ボイスですね。これが入ったのもここが初めてということで。やっぱり、そのドラマを語る上で普通に考えたら絶対必要でしょうっていう表情とか声とかがここで初めて入ったことで、本当にドラマができるようになったってのが10の技術的なブレークスルーだと思います。

(宇多丸)ああ、なるほどね。宇内さんの感動にもちゃんと技術的な裏付けがあったっていうことなんですね。やっぱり感情移入するもんね。

(宇内梨沙)そうですね。

技術的にドラマを語るための要素が揃った

(渡辺範明)で、こういう語り口を手に入れた10が何を、どんな物語を語ったか?ってことが大事だなと思ってるんですけど。10って、見た感じで言うと一見、ちょっとチャラい雰囲気なんですよ。主人公のティーダも結構明るくって。どっちかっていうと、リア充っぽいキャラというか、チャラく見えるので。で、実は背景とか世界観みたいなものも、ビジュアルで見るとなんかサイバーパンクっぽい暗い世界観だった『FF7』とかに比べて、すごい南国で明るい雰囲気なんですよね。なので、そういう感じに見られがちなんですけど、実際はさっき宇内さんがおっしゃったように「死」がかなりモチーフになっていて。実質は災害の話なんですよね。

(宇多丸)災害の話?

(渡辺範明)で、「シン」というですね、巨大災害……まあ、巨大な怪獣みたいなものですけど。これが定期的に訪れて、いっぱい人が死んだりとか、街が壊れたりとかするっていう世界観になっていて。これは沖縄の死生観がベースになってるという風に言われてるので、やっぱりその台風とかみたいな、そういう災害をイメージした世界観になってます。で、放っておいたらいっぱい人が死んでしまうので、それをどうにか封じるために召喚士という人たちが旅をして、このシンを封印しようとする。ということで、ヒロインのユウナはそのための旅に出るんですけど。

でも、そのシンは封印したとしても、実は数年経つと、また蘇ってしまうということで。まあ、ちょっともう20年前のゲームなんてめちゃくちゃネタバレしますけど。このシンを召喚士が封印すると、召喚士はその代償として自分が死んでしまうとうんという設定になってるので、命がけでシンを封印するのに、実際には数年しか平和な時は訪れないということで。この悲しいループをですね、どうにかして止めたいって思うのが主人公のティーダというような構造になってます。

(宇多丸)うんうん。なるほど、なるほど。

(渡辺範明)で、ティーダはですね、実はこのスピラというゲーム世界とはまた別の、ザナルカンドという土地から、ちょっと異世界転生的な感じでやってくる主人公なので、まあ異界の人なんですけど。このザナルカンドっていうものの設定がまたちょっと面白くって。ティーダって、ザナルカンドはですね、このスピラがという世界の中で1000年前に滅びた街だということがゲームを進めてるとわかってくるんですよ。なので、過去から未来にタイムスリップしてきた人なのかなという風に思ってゲームが進んでいくんですけど。

ゲームが進んでいくと、実はこのティーダがやってきたザナルカンドっていうのは過去の世界ではなくて、ザナルカンドという街が1000年前に滅びる時に、その街が滅びるのは嫌だと思った魔法使いがその街の住人たちを1回眠らせて。その人たちに夢を見させるっていう形で、夢の中でこの街をずっと維持するという、特殊な魔法をかけたという。その夢の中で維持されている、いわゆるちょっとバーチャルな世界。そんなバーチャルな街からやってきたのがティーダという主人公だということはわかる。というところで、僕はこれをやった時にですね、「ああ、これはつまりティーダはゲームの主人公っていうことなんだ」っていう。まあ、当たり前のことを言ってるみたいなんですけど。

要するに、バーチャルな存在……この世界の住人ではなく、この世界の外からやってきているバーチャルの存在であるところのつまり、我々ゲームプレイヤーのことを言っているのがティーダなんだなという風に思いまして。で、このティーダはだから……さっきのシンというのはそのティーダの出身のこの夢のザナルカンドというのを維持するために、逆にこのスピラの住人たちを定期的に殺していかないいけない。

その犠牲のもと、そのバーチャルなザナルカンドというものが成り立ってるわけなんですよね。なので、そのサイクルを止めると、逆にティーダ自身も、ティーダの出身地であるザナルカンドも消えてしまうという。そういうことで「このゲームの世界に外からやってきて、その悲しい運命を止めて、自身は消えていくという主人公……ということはこれ、つまり俺たちのことじゃん」みたいな。そんなところにすごく面白みを感じました。

で、実はこの『FF10』って、さっきの冒頭の宇内さんの「最後かもしれない」っていう語りがそうなんですけど。ずっとティーダの回想として語られていくんですよ。ゲームが始まった時から。だから『FF10』が始まった時からもうずっと、ティーダが既に終わった話として回想をしていくんですけど。これも非常にゲームの主人公としてはかなり特殊な形で。普通、ゲーム主人公ってむしろ、記憶喪失とかにして。設定上。で、プレイヤーと知識のレベルを揃えた方が感情移入がしやすいんですよ。

(宇多丸)ああ、たしかに。記憶喪失多い問題ですね。

(渡辺範明)そうなんですけども。逆にこの回想としていろんなことを語ってくと、主人公とプレイヤーの距離っていうのがすごい離れちゃうので。「なんでこんなことをするのかな?」ってはじめて遊んだ時に僕は思ったんですけど。実はこれがプレイしていくに従って、だんだんティーダとユウナのことが好きになっていって。しかも、ティーダっていうのはなんか自分たち自身のことを示しているんだってことがだんだんわかってくると、最終的にそのゲームの中の時制がティーダがしゃべっている回想の出発点。

つまり、その最終決戦の場所であるザナルカンド。旅の終着点に近づくにしたがって、なんかゲーム中の時制と僕たち、このプレイヤーとしての気持ちがだんだん一致度が高まっていって、最後までやるとなんか知らんけどすごい感情移入させられてしまうという。うん。なんかむちゃくちゃ巧妙な語り口になってるっていうのがこの10が「名作だ」とよく言われる所以じゃないかなと思っているんですね。

(宇内梨沙)うんうん!

主人公ティーダの回想としてストーリーが語られる

(宇多丸)宇内さん、プレイした実感と一致しますか? そこは。

(宇内梨沙)いや、まあさすがに10歳でプレイしてるので、そこまで考えてはやってないんですけど。私、どうしてここまでティーダとユウナに対して、本当に……私、ここまでキャラが好きなのって、何度も何度もティーダの話をするじゃないですか? ここまで好きなのって、相当いろんなゲームをプレイしてるけど珍しいぐらいに刷り込まれてるのって、本当にその感情移入させる方法。その時間の使い方とかも含め、なるほどなって。ここまで異常に思い入れのある作品になるのって、そういうところに細かい工夫があるんだなって思いました。

(宇多丸)ねえ。だから技術的には……さっきおっしゃった、そのゲーム技術的にもドラマとして感情移入できるっていう条件が揃った上で、その語られる物語ももう、ゲームプレイヤーが特にやっぱり完全に感情移入できるような構造が出来上がってるということですね。

(渡辺範明)そうですね。遊んでいってこそ、感情移入するような構造になってるということですね。まあFFではね、珍しいです。こんなに全体構成がうまくできてるのは。FFはね、普通はもっとガチャガチャしてるもんなんですよ。

(宇多丸)なんかね、いろいろなことをやってみました、みたいなね。

(渡辺範明)そうですね。やっぱり旅の始まりの時点で、「ザナルカンドまでシンを倒しに行く旅です」って言って。その旅の目的が最後まで完遂されるパターンって、めちゃくちゃ珍しいんですよ。FFだと。普通は「なんやかんやあって、こいつと戦うことになりました」っつってラスボスと戦うので。戦ったあとで「あれ? なんでゼロムスと戦ったんだっけ?」ってだいたい、なるんですよ。

(宇多丸)なるほど(笑)。

(渡辺範明)だからこの10はね、そういう意味ではFFの中での異色と言ってもいいかもしれないですね。

(宇多丸)なるほど。そして、すごい完成度が高いってことですよね。だから宇内さんは最初にもうJRPGのひとつの到達点、金字塔をいきなり最初にやっちゃったんだよ。だから、それ以外に、それ以上がなかなかないのは当たり前っていうことかもしれないよね。ひょっとしたらね。

JRPGのひとつの到達点

(宇内梨沙)うんうん。だからそこから私、9、8、7ってどんどんさかのぼっていったんですね。家に全部ソフトがあったから。でもやっぱり10をどれも超えてない。うん。

(宇多丸)で、やっぱり僕、『マイゲーム・マイライフ』をやってても。やっぱり10派の思い入れ度って、群を抜いたものがあって。やっぱりそういうことなんですかね。今、おっしゃったようないろんな構造が。

(渡辺範明)だからやった人とやってない人の温度差が一番デカいゲームだと思いますね。

(宇多丸)なるほど。温度差が(笑)。

(宇内梨沙)私、当時は見てなかったんですけど。改めてYouTubeとかで『FF10』の当時のCMとかを見たんですよ。そのコマーシャルが10の良さを伝えるっていうよりも、「すっごい恋愛模様が描かれたゲームが出るぜ」みたいな……。

(宇多丸)だからやっぱりチャラみの方を強調してたから。入り口としてはね。

(宇内梨沙)だからその印象しかない……ゲームをプレイせずに、その印象しかない人の『FF10』のイメージと、実際に10を最後までやって、物語を見切った人のイメージとでは、たしかに最も離れてると思う。

(宇多丸)ああ、なるほどね。だからある種、ポップなイメージっていうのはお客を引き入れる意味ではもちろん有効だったわけだから。なんだけど、なるほどね。そうか。なんとなく、今までのいろんな齟齬がわかった気がします(笑)。ということで『ファイナルファンタジー10』で一旦、ある意味JRPG、言っちゃえばそのRPGっていう国産RPGが進んできた進化の方向の完成をひとつ、ここで見たという感じみたいですけども。じゃあ、その後はどうなっていくのか? 続いて、行ってみましょう。

(宇内梨沙)示されたもうひとつの可能性。『ファイナルファンタジー12』が表現したものとは?

<書き起こしおわり>

渡辺範明と宇多丸『ファイナルファンタジー12』を語る
渡辺範明さんが2021年4月22日放送のTBSラジオ『アフター6ジャンクション』の中でプレイステーション2時代のドラゴンクエストとファイナルファンタジーについてトーク。『ファイナルファンタジー12』について話していました。
アトロク「国産RPGクロニクル」書き起こしまとめ
TBSラジオ『アフター6ジャンクション』でドロッセルマイヤーズ・渡辺範明さんが『ドラゴンクエスト』と『ファイナルファンタジー』を中心に日本のRPGの発展の歴史を紹介したシリーズ「国産RPGクロニクル」の書き起こし記事のまとめです。
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