渡辺志保とDJ YANATAKE J.Cole『The Off-Season』を語る

渡辺志保 J. Cole『i n t e r l u d e』を語る INSIDE OUT

渡辺志保さんとDJ YANATAKEさんが2021年5月17日放送のblock.fm『INSIDE OUT』の中でJ・コールの最新アルバム『The Off-Season』について話していました。

(DJ YANATAKE)じゃあ、本丸に行きますか?

(渡辺志保)そうね。これね、やっぱり……J・コールさんね。あえて私、ちょっと1曲目には持ってこなかったですよね(笑)。まずはニッキーちゃんの話をと思ったんですけども。

渡辺志保 Nicki Minaj『Beam Me Up Scotty』を語る
渡辺志保さんが2021年5月17日放送のblock.fm『INSIDE OUT』の中でニッキー・ミナージュがリリースした『Beam Me Up Scotty』を紹介していました。

(渡辺志保)で、J・コールさんも久しぶりに……約3年ぶりのアルバム。通算6枚目のアルバムということで、『The Off-Season』をリリースしまして。元々、『The Off-Season』があって。その後に『It’s a Boy』っていうたぶんミックステープが控えていて。最終的には『The Fall Off』っていうプロジェクトに全てが集約されるそうなんですけれども。それを『’The Fall Off’ Era』っていう風にJ・コールさんは呼んでいるんですけども。

そこから言うと、そのプロジェクトの第一弾という風に言うこともできるのかな? 『The Off-Season』が出ました。で、J・コールについてはね、特に一から説明する必要は全くないと思うんですけれども。それでも、先週は『i n t e r l u d e』という曲がリードシングルとしても発表されましたけれども。

渡辺志保 J. Cole『i n t e r l u d e』を語る
渡辺志保さんが2021年5月10日放送のblock.fm『INSIDE OUT』の中でJ・コール『i n t e r l u d e』を紹介していました。

(渡辺志保)まあ、どんな内容になるのか、非常にやっぱり当たり前だけども、誰もが楽しみにしていて。一説によると、Spotifyがクラッシュしたっていうニュースなんかも流れましたし。それぐらい皆さん、アクセス集中してJ・コールの新譜を聞いていたということですけれども……私、やっぱりさ、まあまあアルバムを1曲目から聞くじゃん。普通ね。『9 5 . s o u t h』っていう曲じゃない? 1曲目。で、最初にJ・コールが何て言うのか、すごい楽しみなわけじゃん? で、再生ボタンをタップすると、いきなりキャムロンの声が聞こえてきてさ。本当にびっくりしたの。いい意味で!

J.Cole『9 5 . s o u t h』

(渡辺志保)で、事前に発表されていた、J・コールが「こういうトラックリストです」って発表してたトラックリストには、これは最近の流行りで。トラヴィス・スコットとかもやっているけども。あえてフィーチャリングアーティストの名前を書かないんですよね。最近のイケてるトップラッパーたちは。

(DJ YANATAKE)本当だよね。

(渡辺志保)で、曲名しか書いてないし。ましてや、J・コールはここ数枚のアルバムでずっとノーゲストだったんですよね。全部、自分1人で。フィーチャリングゲストはなしでアルバムを作り上げてきたアーティストだから。まあまあ、普通にファンは「今回もゲストはいないんだな」って。

(DJ YANATAKE)直前に発表したトラックリストにもね、何もなかったからね。

(渡辺志保)かつ、プロデューサーのクレジットとかはご丁寧に最初に、もう前日に前もって出してくださっていて。だけれども、ゲストアーティストがいるとは一言も仰ってなかったんですよね。で、たとえばさ、これが最初に聞こえた声が21サヴェージとか、元々J・コールと関係あるアーティストだったら「ああ、こいつが今回のゲストなんだ」って思うけど。「Killa Cam’」ってキャムロンが出てきて。本当に本当に私はびっくりしまして。

かつ、この楽曲『9 5 . s o u t h』で使われてるネタも元々はジェイ・Zが『U Don’t Know』っていう曲で使っていた、まあまあその当時のリスナーにしてみれば「うわっ、ジェイ・Zと同じあのネタじゃん!」と思う大ネタを使ってるわけですよね。

(渡辺志保)で、最後の方になるとなんか急にちょっとずつやかましさがアップしていって。なんと、リル・ジョンまで参加しているんですよね。びっくりしましたね! で、リル・ジョンの昔の曲で『Put Yo Hood Up』っていう曲。正しく言うと、LIL JON & The East Side Boyz名義の、本当に一番やかましい時代の曲を最後にサンプリングしていらっしゃる。

(渡辺志保)だから1曲の中にキャムロンのそのニューヨークのハーレムの要素。2000年代ぐらいのヒップホップの要素と、ジェイ・Zの『The Blueprint』の要素。そして、リル・ジョンのやかましいクランクの要素が1曲になって。そしてアルバムのオープニングトラックとして配置されている。それで、先週もアイザイア・ラシャドのアルバムにデューク・デュースが参加しているっていう話をしましたけども。

(渡辺志保)やっぱりね、今の人たちが皆さん、クランクを求めている!

(DJ YANATAKE)クランクを求めている(笑)。

(渡辺志保)うん。求めているんだなっていうことを私はこのJ・コールの……もうSpotifyがクラッシュするほどの超大作でですね、やっぱり再認識いたしました。これはちょっともう2021年の今が5月半ばですけれども。20211年の後最後まで、私はたぶんこれを言い続けねばならないと思う!

(DJ YANATAKE)なるほど(笑)。いいですねー。

(渡辺志保)そうそう。だからクランクを求めているんだなっていうことを感じたのと、あとはJ・コールのこのアルバムにはゲストがいるんだっていう。で、聞き進めて行くと、さっきも名前が出ましたけども21サヴェージの声が聞こえたり。あとはリル・ベイビーも。リル・ベイビーのバースもすごくよかったですね! 本当に自然にJ・コールとリル・ベイビーが1曲の中でスイッチするような感じがあって、すごく良かったし。

(渡辺志保)だから意外でしたけれども、ゲストがいたっていうことですよね。で、J・コールさんはこれも前々からご自身で言っていましたけども。プロのバスケ選手の道を目指していらっしゃったっていうことで。今回、このアルバムのリリースと同タイミングで、なんとルワンダのプロバスケチームに……。

(DJ YANATAKE)そうなんだよ! 先週のこの時間にそれ、わかっていたのに。JIROtokyoがそれをいち早くツイートしていたんだよね。失敗した。

(渡辺志保)そう。だからね、すごいことよね。私、だからまさにDJ K.DA.Bさんとか、どういう風に捉えているのかな?って思っていたんですよ。

(DJ YANATAKE)ああ、まああっさりしていましたけどね。出場時間も短かったみたいで。まだ10何分とかしか出ていないんだよね。で、3ポイント、1アシストとかぐらいで。まあまあ、活躍したんじゃないの、ぐらいの。

プロバスケ選手としてデビュー

(渡辺志保)そうなんだ。だからそのアメリカのラッパーがアフリカのルワンダのバスケのプロチームに入って活動するっていうのは一体どういうことなんだろう?っていう風に感じました。

(DJ YANATAKE)それでアルバムタイトルが『The Off-Season』なんだからさ。これはもう、どこまで考えられていたのかわからないけども。

(渡辺志保)かっこいい! それでなぜ『The Off-Season』っていうタイトルにしたかっていうのはオフシーズン……「シーズンオフの期間っていうのは鍛錬せねばならない時だ。それはラップもバスケも一緒で……」みたいなことを仰っていて。とにかく自分のスキルを磨き上げて……「Drill」って言っていましたね。訓練をせねばならないということを言っていて。で、その時間をかけたらかけた分だけ、自分のスキルになって戻ってくる。それはバスケもラップも一緒だ、みたいなことを仰っていて。これ、去年発表していたエッセイがありますけれども。それとね重なる部分はありますけれども。いや、かっこいいなって思って。

なんか今の時代、やっぱりそのスキルを磨いてラップをするってことはなかなか……一番大事だけど、一番語られないことなんじゃないかなとも思って。やっぱりトレンド重視とか、バイブス重視みたいに日本もアメリカも、世界的にそうなってると思うんですけれども。そんな中、やっぱりJ・コールみたいなこんなリリシズム溢れるラッパーがね、「時間をかければかけただけスキルが磨かれる」って、当たり前なんだけど。そういうことを真正面から言われるともう、「ははーっ! おっしゃる通りでございます!」っていう感じがした。

(DJ YANATAKE)あと、なんかポッと思いついてのことじゃないっていうか。やっぱりちゃんと構想があるんだなって。『Album Of The Year』っていう曲というか、フリースタイルみたいな。あの時にもこの「オフシーズン」っていう匂わせがあったりとかね。

(渡辺志保)そうなんですよね。だから、さっきも言った通り、今すでに彼はその『The Fall Off』っていう自分で決めたゴールに向かって、この『The Off-Season』も作られたというわけですから。一体、彼の頭の中ってどうなっているのかな?って思ってしまいますよね。で、私がもう若干、古い人間になりつつありますので。だからかもしれないけど、やっぱりその、「なんか1時間半でできちゃったんで。今すぐ出します」みたいな曲のよさももちろんあるし。そういう楽曲のそのフレッシュさというのももちろんあるんだけれども。やっぱり練りに練られた楽曲、練りに練られたライムを聞くと、「やっぱりこういうことよな!」っていう風に思いますし。

で、アルバムを通して、やっぱり「ラッパーたるものは……」っていう感じですけれども。J・コールもやっぱり「いかに自分が優れたラッパーであるか。いかに自分が頂点に立っていて、他のやつらは手が届かないのか」ということをラップしてるんですけど。やっぱりそれが気持ちよく響くっていうか。「ああ、もっとちょうだい!」みたいな。

(DJ YANATAKE)しかも、先週志保も話していたけどさ。フリースタイルができないわけでもないじゃないん。めちゃくちゃバズっていたじゃん?

(渡辺志保)ああ、L.A. Leakersのラジオ用にやっていたやつね。しかもマイク・ジョーンズの曲なんかもラジオ局側が用意してやっていましたけども。フリースタイルね。

(DJ YANATAKE)それで、だからこの間のZORNとかと結構かぶるかもなって。

(渡辺志保)ああ、そうかもしれない。やっぱり実直なラッパーっていう感じがしますよね。本当にね。だから本当にいいものを聞けましたっていう感じがして。

(DJ YANATAKE)でもやっぱりね、DJ的に聞くと、「ああ、かけやすいな」って一聴して思うような曲ってあんまりないんですよ。

(渡辺志保)そうよね。だってフックがない曲とかもあるし。

(DJ YANATAKE)でも、やっぱりアルバムアーティストなのかな?っていう。アルバムというフォーマットをすごく大事にしているアーティストなのかな?って。でも、来週のチャート、すごいことになるんでしょう?

(渡辺志保)ねえ。今、65万枚ぐらいの売上見込みっていうことらしいので。で、SpotifyとかAppleMusicとかも全部、J・コールの曲がバーッとランクインして。チャートを制しているわけですけども。すごい熱い気分になりながら聞いたし。やっぱり1曲目の『9 5 . s o u t h』を本当にリピートして聞いちゃって。私、最初に間違えてクリーンバージョンで聞いちゃったの。子供がいるから、最近家ではクリーンバージョンで聞くことが多いんですけども。でも、最後のリル・ジョンのガナリのところが明らかにFワードとか言ってるのにさ、それが全部シュッて消えていて。「ええっ? あれっ?」みたいな。それですかさずクリーンバージョンじゃないオリジナルのバージョンを探して。「こっちだ!」と思って爆音で聞いて。めちゃめちゃテンション高まったっす。で、ここでかけるのは、そのリル・ジョンは置いておいて……結構ラップヘッズ的にはこの曲が一番盛り上がっているかなっていう。

(DJ YANATAKE)僕もおじさん的には最初、これに引っかかりましたよ。もう聞いていて……ちょっと仕事をしていて、昼休みになった瞬間。この曲にたどり着いた瞬間に「おおっ!」って思って(笑)。

(渡辺志保)ありましたね(笑)。なので、今からかけるのは『m y . l i f e』っていう曲で。21サヴェージ、そしてモレイが参加していて。このモレイの歌うフックが本当に泣けるなって思ったので。「俺の人生はこの俺の持ち物が全てだ」っていう風にフックが始まるんですけども。「俺のライム、俺のペン、俺のノートパッド(メモ帳)」っていう。ライムとペンとメモ帳で人生が形成されているんですよね。めっちゃかっこいい!っていう。ラッパーの基本の「き」だと思いますけども。

だって今、メモ帳でラップを書くラッパーがどんだけいるんだ?っていう感じだと思うんですよね。でも、そこをやっぱりライムとペンとノートって言い切る、モレイが歌っていますけどもこのJ・コール、やっぱりかっけーな!って思いましたので。ちょっと皆さんにここで聞いていただきたいと思います。

(DJ YANATAKE)そうですね。先に1個、言っておくとサビでスタイルズ・Pとファラオ・モンチの『The Life』。もうすごう当時、ロウカスというアンダーグラウンドの優良レーベルがあったんですが。その1、2を争うクラシック曲をモチーフにしたフックなんでね。おじさんたちは「はっ? ううーっ!」ってなったっていう(笑)。「J・コールぅ!」って(笑)。

(渡辺志保)「ファラオ・モンチ、来たーっ!」って(笑)。

(DJ YANATAKE)でも、この曲が一番人気っぽいよね。

(渡辺志保)ねえ。そうだと思いますよ。やっぱり21とのタッグも聞き応えがありますし。というわけで、お聞きいただきましょう。J・コールの待望のアルバム『The Off-Season』から『m y . l i f e feat. 21 Savage, Morray』。

J.Cole『m y . l i f e feat. 21 Savage, Morray』

(渡辺志保)はい。J・コール『m y . l i f e feat. 21 Savage, Morray』でした。この沁みるフック、いかがでしたでしょうか? ファラオ・モンチさんも喜んでいるんじゃないかな?っていう風に思いますが。

(DJ YANATAKE)そうですね。ぜひ若くて今、初めて聞いたという方。J・コールは知っていてもファラオ・モンチは知らないという方はぜひ。すごいかっこいいんで!

(渡辺志保)本当に(笑)。

(DJ YANATAKE)俺、J・コールを途中で止めてさ、探して聞いちゃったもんね。

(渡辺志保)ああ、やっぱり? そうですか。さすが。いやいや、でもそれがまたラップの面白いところっていう感じがしますしね。しかも、J・コールがロウカスを持ってくるっていうのがまたね。リル・ジョンを持ってくるのと同じぐらい熱いなって思いますね。ありがとうございます。

<書き起こしおわり>

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