星野源さんが2021年4月27日放送のニッポン放送『星野源のオールナイトニッポン』の中で新曲『不思議』についてトーク。リスナーからの質問に回答しながら楽曲制作や作詞、レコーディング、アートワークなどについて話していました。
(星野源)さあ、そんなわけで先日、星野源の最新曲『不思議』配信リリースされました。皆さん、たくさん感想をいただきまして。あと質問もいただきまして、ありがとうございます。質問を中心にね、ちょっと読んでいきながら、そして曲をかけていきたいと思います。もう発売しているんで、たくさんラジオリクエストとかもしてくださっているようで。ありがとうございます。皆さん、どんどんリクエストしてください。
東京都の方。「源さん、『不思議』配信スタート、おめでとうございます。英語も片仮名もない日本語だけの歌詞。源さんの紡いだ言葉が美しくて、歌詞を見ているだけでもこみ上げてくるものがありました。ドラマの主題歌ですので、もちろんドラマの登場人物やストーリーを意識されて書かれたと思うんですが、その他に何を思われて書かれた歌詞なのか、お話をお伺いしたいです」。
ええとですね、ドラマ主題歌ということで。もちろんやっぱりドラマの中でしっかり響く音楽にしたいなと思いながら作っていたんですけど。台本を2話分ぐらい、3冊分ぐらいまでもらった中で曲を書いていったんですけど。その先がどうなるのか、全然知らない状況で書いているので。だからこの曲の中に、このドラマの展開が隠されてるとかっていうことはないです。
なんですけど、まあそもそもこのドラマという中で、おそらくここで曲がかかるであろうっていうタイミングみたいなものはなnとなく、その1話、2話では聞いていたので、そこにしっかり響くようにっていうところとか。あと、その歌詞の中では「幼い頃の記憶 今夜食べたいもの 何もかもが違う なのになぜそばにいたいの 他人だけにあるもの」っていう歌詞があるんですけど。
それは何となくですね、登場人物の2人が……川口春奈さんと横浜流星くんのタイプが全然違うっていう。そういう中でのラブストーリーっていうのが前情報としてはあったので。何かそういうものが基本にあるような世界観っていうのは何となく意識をしました。で、この曲をオファーしていただいた時に思ったのが、「沁みるラブソングをお願いします」っていうのと、こう「今回もキュンで」っていう。「今回もですか?」みたいな(笑)。もう火曜の10時のといえば、たぶん『逃げ恥』から始まってるのだろうか? わかんない。その前から? 俺、ちょっとよく分かってないんだけど。
『逃げ恥』の時にそのAPの女の子が「ムズキュンで行きたいんです」って言われて。「なんじゃ、そりゃ!」って言っていて(笑)。「なにそれ?」って言っていて(笑)。そしたらもう、今に繋がるぐらいさ……だからたぶん俺が記憶してるのは、その女の子が思いついて。「それをタグにしたいんです」ってことだったんですよ。だからその子がぱっと思いついてやったことが今に繋がってるとかって思うと、その子はすごいよねって思うし。すっごい若い子だったんだけど。
なので、その「やはりまたキュンなのですね?」「そうです」っていう。「今度はうちキュンです」「なるほど!」みたいな。そういう中で、塚原あゆ子と新井順子さん。もう当番組でおなじみの2人ですけれども。僕は『MIU404』という刑事ドラマでお世話になったお二人で。お二人とも、いわゆるラブコメみたいのはもう全然やってきていないんだと。シリアスなラブストーリーとかはあるけれども、そういうのはあまりなくて……っていうところで。だから「キュン」というものに対して「得意だ」というタイプではないんだと。でも、お二人の性格からして、本当にたぶんものすごく真剣に取り組むんだろうなと思ったんですよね。
なんか、ズラすとか、ちょっと斜に構えたというよりかは、ちゃんと「キュンとは何ぞや?」ということとか、あとその中での人間関係みたいなことをきっとしっかり描くんだろうなうと思ったんですよね。だから、自分もちゃんとそのラブソングっていうものに斜に構えたりとか、何かをズラして表現するんじゃなくて、自分にとってのキュンとかラブとかって何だろう?って思ったんですよね。で、それをしっかり表現しようと思って。それで音も歌詞も書いてきました。
なので、何て言うんだろうな? まあ、ドラマの世界で響くっていうのはもちろん大前提としつつ、たとえばドラマを見ていない人とか、たとえばそのキュン的な今回の『着飾る恋』の……たとえば家がすごい素敵だったりするじゃない? あれ、セットだと思うんだけど。ヤバいよね。あれ、家をマジで建てているもんね? すごいよね! だから、そういうところに「いや、こんな家、無理だよ」とか「こんな家に暮らしたいけど、ちょっと自分の生活の流れだとこれは無理だよ」とかっていう人とかにしっかり届くように作りたいなと思ったんですよね。
だから、なんか根源的な愛とか……恋愛ですね。恋愛とか、愛ということとか、あとはキュンとすることとは?っていうのを自分の中でですね、ずーっと探っていくような、そんな作業でした。きっとそうすることによって、そのドラマの中の世界観もそうだし、ドラマを見ていない人だったりとかもキュンとしてもらえるのではないかと。そんな風に思いながら作りました。
さらにちょっと質問とかもね、いっぱい来てるんで、読んでいきたいと思います。「新曲の『不思議』、めちゃくちゃ聞いています。『愛や恋に向き合って作った』と言われてましたが、本当に愛がぎっしり詰まっていて大好きな曲になりました。今回クレジットを見ると、源さんのところにたくさん楽器が書かれてあって、聞いたことのないものだったので調べてみると、いろんなシンセサイザーを弾かれていますね。今回、こんなにシンセサイザーを使おうと思ったきっかけが何かあるんでしょうか? 源さんが買ったものでしょうか? お家が楽器だらけになっているのでしょうか? ぜひお聞きしてみたいです」。
そうですね。正直今、楽器だらけです(笑)。もう……止まらねえ(笑)。あれもこれもほしい! で、今回ですね、鍵盤っていうか、キーボードを使って作曲をするように去年の外出自粛期間に作った『折り合い』という曲から、DAW、デスクトップミュージックというか、パソコンで打ち込みをする勉強を始めまして。
(星野源)そこから……それまではキーボードを使って作曲するってことはなかったんですけど。キーボードを弾けるようになりたいと。元々、うちの実家には、親父が弾いているアップライトピアノがあって。で、ちゃんと習ってこなかったことを今、とても後悔してたんですよね。ちゃんと勉強しておけばよかったっていう(笑)。なんで、親父に教えてもらう『Imagine』とか、あと『戦場のメリークリスマス』とか。あと、ジャズのスタンダードの一節とか。そういうのだけ覚えて。だから指の形だけ覚えてて、コードとか弾き方とか何も知らないみたいな、その程度だったんですけど。
もうキーボードで弾きたいなっていうか、ギターの良さっていうのとキーボードの良さっていうのがまた全然違くて。それはコードの響きっていうものが全然違くて。いわゆる片手の、自分のギターで弾く時の、親指は抜くとしてもその他の4本の指でできる和音のハーモニーと、両手を使ってするハーモニーの響きが全然違くて。自分が出したい音っていうのをいつもギターで出しつつ、それをバンドメンバーに伝えて。「この音にしたいんです。ああ、その音、その音!」みたいな。そういうので1個、クッションがいつもあったんですけど。
それを勉強することによって、最初から「この響きで」っていうのができるようになって。もうずっと、2ヶ月弱ぐらいですかね? ずっとプロフェットという機械を弾きながら、もう白目を剥きながら……本当にマジで白目を剥きながらずっと和音というか、ハーモニーを捜し続けるみたいな。
白目を剥いてハーモニーを探し続ける
なので、いわゆる実際のコードとか、素早く弾けるわけじゃ全然ないので。いつもサクちゃんっていうね、ピアニストであり、キーボーディスト。いつも僕がライブを一緒にやっているサクちゃんがコードとかのあたりはレコーディングでは弾いているんですけども。それは僕が全部、1個ずつ弾いて。ちょっとずつちょっとずつ、もう本当に……6時間で1小節とか、そういうレベルで作っていって。「これがいいんだぜー!」って言いながら。だから、ボイシングっていうんですけど。
たとえばそのコードの中で「ド」っていう音があったとしたら、なんていうの? そのドをどこの指の位置で弾くかとか。その、一番下の音から一番上の間の音で、どの音でそれを表現というか、構成するか。1オクターブ上のところで弾いてもいいし、下で弾いてもいいんだけど、どの並びで。で、どれを上にして、どれを下にしてとかっていう、その響きで全然変わってくるので。それを延々とやっていて。なので、自分でそうやって作ったハーモニーっていうのを全部そのまま弾いてもらっているっていう感じですね。
だから、今回はもうほぼ全部、ずっとツルッと作って、それを生に差し替えていくっていうか。その場で、また生にする時に「こうして、こうして」って言いながら、また膨らましていくっていうような形を作りました。なので、シンセ……もうシンセが好きすぎてですね(笑)。そう。ちょっと買い過ぎてるところがあるんですけども。まだまだちょっとほしいのがありましてね。ちょっとヤバいっす(笑)。そんな感じです。
続いて、三重県の方。「新曲『不思議』、リリースおめでとうございます。今回、『不思議』のクレジットをサイトの方で見させていただきました」。そうですね。歌詞とかえメンバークレジットとかスタッフクレジットは僕、星野源のホームページにありますので、よかったら見てください。
「長岡さんやハマさんといったいつも一緒によくやられている方の名前の他にドラマーに石若駿さんのお名前があり、驚いたと同時にとても嬉しかったです。石若さんが参加することになった経緯やレコーディングの際のお話などがあれば、ぜひお聞かせください」という。石若くんはですね、ドラマーで。ジャズドラマーでもあり、自分で歌ったりもする人なんですけど。最近はmillennium paradeとかでもよく見ますね。
石若駿のドラム
で、僕は実は3年以上前、『POP VIRUS』を作っている時に石若くんのドラムをなにかで聞いて。「ああ、いいな」と思って。「音を聞かせてほしい」って言って、サウンドテストじゃないけど、来てもらって。「こういうの、叩いてほしい」って言って叩いてもらってとか、そういうのをやった日があったんですよ。で、そのアルバム曲に参加してもらおうと思って曲を作る予定だったんだけど、実際の収録曲が他で十分にできてしまうたっていうと、石若くんのドラミングが映えるような曲っていうのが思いつかなかったので。その時は。
なので「やろうね。曲を書くね」って言ってたんだけど、一緒にやれなかったですよ。なので、ずっとやりたいなと思っていたので今回、やることができて。とても嬉しかったですね。石若くんが僕の名前を時々出してくれたりとかしてて。僕のファーストとかセカンドとか、その後のとか。ライブとかも来てくれていたみたいで。そういうのもあって、すごく嬉しかったですね。一緒にできて。なんだけど、石若くんが普段やらないタイプのドラミングをちょっとお願いしたので、レコーディングを「うわーっ!」って言いながらやっていましたけども(笑)。それでもめちゃめちゃ素敵でしたね。めちゃめちゃ真面目で、かつ、すごくいい気持ちを持ってる人っていうかね。気持ちがいい人なんで。本当にまたね、ちょっと一緒にやりたいなと改めて思いました。そんな感じですかね。
神奈川県川崎市の方。「新曲『不思議』聞かせていただきました。久しぶりに恋をしたいという衝動に駆られました。今、このご時世的に出会いが難しい状況であり、また自分は今、国家試験の勉強してる最中で、恋の方をお休みしていますが、国家試験に合格し、自分に彼女ができたらこの曲を彼女とのドライブデートでかけたいといろいろなことを妄想してしまいました。最高の曲をありがとうございます」。ありがとうございます。いいですね!
ドライブって絶対に合うでしょうね! いやー、意味なくレインボーブリッジの方とか、行きたくなるよね。これは。それはね、わかります。続いて。東京都の15歳の方。「中学1年の頃から3年間、星野源オタクという共通点で仲良くしていた子を新曲『不思議』を語っていたら、そのまま恋バナになり、両想いだったことが判明しました。約3年間の恋が実りました。現在、高校1年生で別々の学校ですが……」。それもいいですね! ああ、それもいいですよね! 別々になってるっていう。
「……早速、今度一緒に帰る約束をしました」。かわいいぜ(笑)。「源さんがいなかったら仲良くなることもなかったと思います。うれし涙を流しながら今も『不思議』を聞いています。人生で一番幸せです。ありがとうございます」という。おめでとうございます。ねぶり棒です! フゥーッ! いいねえ! もう昔の俺だったら「クソがっ!」とか言っていると思うけど、さすがに15歳には言えない(笑)。あの本当におめでとう。嬉しいね。いやー、いいじゃない。なにそれ? 「『不思議』を語っていたら、そんな恋バナになり、両想いだったことが判明しました」って。ねぶり棒、お送りします(笑)。
宮城県の17歳の方。「昨日0時に配信リリースされた『不思議』、もう何回もリピートしています。寝る前に2回。朝起きて2回。登校中に3回。下校中に3回。10回聞いています。今日だけで。あとTikTokに先ほど上げられたピアノを弾いている源さん。ハートを撃ち抜かれました」。ああ、そうだ。TikTokでね、もう恒例となりつつあるスタッフが僕を盗撮したビデオが上がっていますので。ぜひ星野源公式TikTok、見てみてください。
@genhoshino_official “不思議” レコーディング中 ピアノを弾く星野さん? /TBS系火曜ドラマ「着飾る恋には理由があって」主題歌 ##星野源 ##不思議 ##着飾る恋には理由があって ##着飾る恋 ##GenHoshino
(星野源)神奈川県の方。「歌い出しからゆったりと優しい歌声で楽曲の魅力に引き込まれました。『希望あふれた この檻の中で』『キラキラはしゃぐ この地獄の中で』といった歌詞の置き方にドキッとしました。『不思議』、素敵なラブソングを聞くことができて幸せです」ありがとうございます。嬉しいですね。なんかね、今のこの「歌詞の置き方」という言い方がおしゃれですね。うん。
あと、なんか言うことがあるかな? 俺。うん。随分しゃべっっているよね。じゃあ、1回聞いてみようかな? それでは、まあ自分にとっての恋愛というか、愛というのはですね、何て言えばいいんだろう? なんか過去を思い返してみると、たとえばなんかさ、お付き合いする人とかができた時に「どういうところが好きなの?」みたいなのを聞くじゃない? で、その「どういうところが好きなの?」って聞かれた時に、すぐに言えたためしが自分の場合はなくてですね。で、言ったとしても、後付けっていうか。すごい考えて「こことここがいいと思う」みたいな。「こことここが好きだと思う」みたいな。
なんかそういうのはあるんだけど……やっぱり、言葉にできないっていうか。「いや、なんかわかんないけど好きなんですよ。めちゃくちゃ好きなんですよ」っていう、なんかそういうのが自分にとって恋愛だったりするので。それには確固たる根拠があるっていう、そういう感じですかね? 言葉にすると理由があるわけじゃないんだけど、精神的な理由があるっていう、なんかそういう感じがあって。
で、自分にとってキュンってなんだろう?っていうのを思った時に、やっぱりこう、「人と自分は違うんだ。他人なんだ」っていうところを踏まえて、なのに、すごく自分のことを、気持ちを察してくれているなってことに気づいたりとか。なんか今、気持ちが通じたような気がするとか。なんかそういう、「他人である」ということがあるからこそ、キュンというものはあるのではないかってすごい思ったんですよ。
だからなんか、そういう世界の音楽というか。自分にとって音的なキュンというのもあるし。あと、歌詞においてはそういう自分の中のキュンだとかラブっていうものっていうのをしっかり正面から描きたいなと。言葉にできないものを歌にしたいなと。そういう思いで作りました。それではね、ぜひ大音量で聞いてください。星野源で『不思議』。
星野源『不思議』
(星野源)お送りしたのはリリースしました星野源の新曲で『不思議』でした。